【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻

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7. 賞金首ゴードン・ブラック

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「射ればいいんでしょ?」

 碧眼が、鋭く光る。

 獲物を狙う鷹のような、射手の目。

「でも」

 シエルは、矢をつがえながら付け加えた。

「何も起こらなかったら、次はあんたを射抜くからね?」

 その脅しすら、どこか優雅に聞こえる。

 レオンは、微塵も怯まなかった。

「いいよ? その時は好きにして」

 揺るぎない声だった。

 その自信は、どこから来るのだろう。

 シエルは不思議に思いながら、弓を構えた。

 ふぅぅぅぅ……。

 シエルが、呼吸を整える。

 その瞬間。

 世界が、静止したように見えた。

 そこに現れたのは、真の弓手の姿だった。

 背筋がピンと伸びる。呼吸が深く整う。全神経が、弓と矢と標的という三点に集中していく。

 月光のような銀髪が、路地裏に吹き込む微かな風に揺れる。

 汚れた男装も、埃まみれの顔も、今この瞬間だけは消え去っていた。

 そこにいるのは、弓を引くためだけに生まれてきた、一人の射手。

 ――美しい。

 レオンは、息を呑んだ。

 弓を引き絞るその姿は、まるで狩猟の女神アルテミスのよう。

 神話から抜け出してきたかのような、圧倒的な存在感。

 これが、神弓の継承者の真の姿。

 彼女の潜在能力は、やはり本物だった。

 シエルの唇が、小さく動いた。

 何かを呟いている。祈りか、それとも自分自身へのルーティーンか。

 そして。

 ヒュッ!

 朝の空気を切り裂いて、矢が放たれた。

 一直線に、楡の木へと飛んでいく。

 正確無比。寸分の狂いもない軌道。

 腐敗した枝の根元に、矢は突き刺さった。

 タン、という軽快な衝撃音。

 そして――。

 メキメキ、メキメキ……。

 不吉な音を立てて、巨大な枝がゆっくりと傾き始める。

 百年の歳月を経た太い枝が、自らの重みに耐えきれず、ゆっくりと、しかし確実に落下していく。

 ベキベキ、バキバキという破壊音。

 次の瞬間、その下を一台の馬車が通りかかった。

 豪華な装飾が施された、明らかに裕福な者が乗る馬車。

 ニ頭立ての立派な馬が、優雅に蹄を鳴らして石畳を進んできた。

 タイミングは、完璧。

 ドガァァァァン!という轟音と共に、巨大な枝が馬車の天蓋に直撃した。

 馬が恐怖の嘶きを上げ、前足を高く振り上げる。御者が「うわあああ!」と悲鳴を発し、手綱を手放した。

 バランスを崩した馬車は、そのまま無様に横転する。

 車輪が空を向いて、滑稽なほど勢いよく回転していた。

 ガラガラと荷物が散乱し、馬たちが暴れ、大通りは一瞬にして大混乱に陥った。

「きゃあっ!」

 ルナが可愛らしい悲鳴を上げる。両手で口を押さえ、緋色の瞳を大きく見開いている。

「な、なにさせるのよ!!」

 エリナが怒鳴った。剣を構えたまま、信じられないという顔でレオンを睨む。

「どうすんのよ! 大事件だわ! 下手したら殺人未遂よ!?」

 シエルが慌てふためく。自分が放った矢が引き起こした結果に、顔面蒼白になっている。

「あらあら」

 だが、ミーシャだけは違った。

 聖女の微笑みを浮かべたまま、その空色の瞳が興味深そうに輝いている。

「大変なことになりましたわね。ふふっ」

 その笑いには、明らかに面白がっている響きがあった。仮面の下の本性が、わずかに顔を覗かせている。

 レオンは、そんな混乱を意に介さない。

 むしろ、満面の笑みを浮かべていた。

 全て、計画通り。

「あの馬車に乗っているのは、賞金首の男だ」

 レオンは、四人に向かって宣言した。

「捕縛して、金にしよう」

 ニヤリと余裕を見せる。

「……は?」
「賞金……首?」
「何言ってんの?」
「おやおや……?」

 四人の美少女たちが、呆然と立ち尽くす。

 レオンは路地裏から飛び出し、横転した馬車へと駆け寄る。

 横転した馬車から、一人の男が這い出してきた。

 左頬に古い刀傷。小太りの体躯に不釣り合いな高級商人服。

 一見すると、ただの裕福な商人に見える。

 だが、その目つきは獣のように鋭い。腰には巧妙に隠された短剣の膨らみが見える。服の下には、おそらく複数の暗器を仕込んでいるだろう。

 レオンの脳裏に、【運命鑑定】の情報が流れ込む。


【賞金首:ゴードン・ブラック】
罪状:詐欺、横領、殺人九件
懸賞金:金貨二百枚
戦闘能力:Cランク相当
 
特徴:左頬の刀傷、変装の達人
弱点:左膝に古傷あり(二年前の逃走時に負傷)
 
警告:極めて狡猾。逃走の達人。油断禁物。



 金貨二百枚。

 それだけあれば、当面の資金は十分だ。宿も取れるし、装備も整えられる。

 何より――この場で捕まえれば、彼女たちに【運命鑑定】の力を証明できる。

「動くな!」

 レオンは叫んだ。

「賞金首ゴードン・ブラック! お前を捕縛する!」

 男の体が、ビクリと硬直した。

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