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3-2. 三つの奇妙な果実
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一行は王都の近くのダンジョンにエントリーした。
ダンジョンの洞窟は暗く、ジメジメしており、カビ臭い。
「さて、三十七階だったよね?」
ヴィクトルはつい先日までこもっていたダンジョンを思い出し、少し懐かしく感じながら聞いた。
「そうです。急がないと……」
女の子が泣きそうな声で言う。
一階ずつ丁寧に降りていたら何時間かかるか分からない。さてどうしたものかと考えていると、
「今、聞いてみるからちょっと待ってて」
そう言って、ルコアはiPhoneを出して何かをタップする。
「あ、私~、元気? うん……、うん……。それでね、王都のダンジョンに来てるのよ。……。そうなのよー」
何やら世間話をしている。ヴィクトルも女の子も困惑した。
ルコアはそのまま会話を続ける。
「で、三十七階の落とし穴あるでしょ。そうそう。その落ち先まで送って欲しいんだけど。……。いい? 悪いわね。はいはい」
いきなりすごい話になって、二人とも唖然とする。なぜそんなことができるのか、全く理解できなかったのだ。
ルコアは電話を切ると、
「こっちですよ」
そう言って入り口わきの細い通路を行く。すると、純白の魔法陣が地面で光っているのが見えてきた。
「え? まさかこれって……」
「そうですよ、この先に遭難者が居ます」
ルコアはドヤ顔で言う。
いわゆるダンジョンの管理者、ダンジョンマスターとルコアが知り合いということなのだろう。魔物もルコアもレヴィアが創ったものであるなら、確かにそうであってもおかしくはないが……、ヴィクトルは常識がガラガラと崩れていくのを感じた。
そして、大きく深呼吸をすると、意を決して魔法陣を踏んだ。
◇
気がつくとヴィクトルはさんさんと太陽の照りつける草原にいた。
青空の下で綺麗な水の小川が流れ、向こうには森が広がっている。自然景観型のフロアらしい。
女の子とルコアも次々と現れる。
索敵の魔法を展開していくと……、森の奥に三人の弱々しい人間の反応がある。どうやらまだ生きているようだ。
しかし、近くには魔物の反応もあり、予断は許さない状況である。
「僕、行ってくるよ。二人はここで待ってて。彼らを連れて帰るから」
ヴィクトルがそう言うと、ルコアは、
「主さま、気を付けて」
と、ニッコリとほほ笑んだ。
女の子は涙目で手を合わせ、ヴィクトルに頭を下げる。
ヴィクトルは飛行魔法で一気に反応があった近くまで来ると、慎重に森の中へと降りて行った。森は巨木が生い茂り、鬱蒼として見通しはあまり効かない。
反応の方へ歩いて行くと、三つの白い繭のような物が巨木の枝から宙づりにされているのが見えた。よく見ると、繭の下には顔が半分のぞいている。冒険者がヒモでグルグル巻きにされ、逆さづりにされているようだ。
「ん――――!」「んー、ん――――!」
冒険者たちはヴィクトルに何かを言っている。
「助けに来ましたよ――――!」
ヴィクトルは能天気にそう言いながらスタスタと歩く。だが、右手には魔力をこめ、鈍く赤く光らせておいた。
シュッ!
直後、そばの樹の上から蜘蛛の糸がヴィクトルに向けて放たれる。
ヴィクトルは待っていたかのようにそれを左手でガシッとつかむと同時に、
「炎槍!」
と、叫んで樹上の魔物に鮮烈な炎の槍を食らわせた。
グギャァァァ!
断末魔の叫びを森に響かせながら、巨大な蜘蛛の魔物が火だるまになって地面に落ち、のたうち回り、最後には魔石になって消える。
よし! と思った時だった。地中からクワガタムシのアゴのような巨大なハサミが二本、いきなり突き出して、ヴィクトルに襲いかかる。
蜘蛛もこいつも冒険者たちを囮にして、助けに来る者を狙おうとしていたのだ。
しかし、ヴィクトルは慌てることなく、手刀でパキン! パキン!とハサミを折ると、逆にそのハサミの根元をガシッとつかみ、そのまま一気に引き抜いた。
「そんなの僕には効かないよ」
ズボッと抜け出てきたのは全長三メートルはあろうかと言う巨大な幼虫だった。ブヨブヨとした白い肌がウネウネしながらうごめく。
ヴィクトルはそのまま空中高く放り投げると、
「風刃!」
と、叫んで、風の刃で幼虫をズタズタに切り裂いた。
ギョエェェェ!
叫び声を残し、幼虫は魔石となって落ちてくる。
ヴィクトルはニヤッと笑って魔石をキャッチすると、繭になってる三人に走り寄った。
ダンジョンの洞窟は暗く、ジメジメしており、カビ臭い。
「さて、三十七階だったよね?」
ヴィクトルはつい先日までこもっていたダンジョンを思い出し、少し懐かしく感じながら聞いた。
「そうです。急がないと……」
女の子が泣きそうな声で言う。
一階ずつ丁寧に降りていたら何時間かかるか分からない。さてどうしたものかと考えていると、
「今、聞いてみるからちょっと待ってて」
そう言って、ルコアはiPhoneを出して何かをタップする。
「あ、私~、元気? うん……、うん……。それでね、王都のダンジョンに来てるのよ。……。そうなのよー」
何やら世間話をしている。ヴィクトルも女の子も困惑した。
ルコアはそのまま会話を続ける。
「で、三十七階の落とし穴あるでしょ。そうそう。その落ち先まで送って欲しいんだけど。……。いい? 悪いわね。はいはい」
いきなりすごい話になって、二人とも唖然とする。なぜそんなことができるのか、全く理解できなかったのだ。
ルコアは電話を切ると、
「こっちですよ」
そう言って入り口わきの細い通路を行く。すると、純白の魔法陣が地面で光っているのが見えてきた。
「え? まさかこれって……」
「そうですよ、この先に遭難者が居ます」
ルコアはドヤ顔で言う。
いわゆるダンジョンの管理者、ダンジョンマスターとルコアが知り合いということなのだろう。魔物もルコアもレヴィアが創ったものであるなら、確かにそうであってもおかしくはないが……、ヴィクトルは常識がガラガラと崩れていくのを感じた。
そして、大きく深呼吸をすると、意を決して魔法陣を踏んだ。
◇
気がつくとヴィクトルはさんさんと太陽の照りつける草原にいた。
青空の下で綺麗な水の小川が流れ、向こうには森が広がっている。自然景観型のフロアらしい。
女の子とルコアも次々と現れる。
索敵の魔法を展開していくと……、森の奥に三人の弱々しい人間の反応がある。どうやらまだ生きているようだ。
しかし、近くには魔物の反応もあり、予断は許さない状況である。
「僕、行ってくるよ。二人はここで待ってて。彼らを連れて帰るから」
ヴィクトルがそう言うと、ルコアは、
「主さま、気を付けて」
と、ニッコリとほほ笑んだ。
女の子は涙目で手を合わせ、ヴィクトルに頭を下げる。
ヴィクトルは飛行魔法で一気に反応があった近くまで来ると、慎重に森の中へと降りて行った。森は巨木が生い茂り、鬱蒼として見通しはあまり効かない。
反応の方へ歩いて行くと、三つの白い繭のような物が巨木の枝から宙づりにされているのが見えた。よく見ると、繭の下には顔が半分のぞいている。冒険者がヒモでグルグル巻きにされ、逆さづりにされているようだ。
「ん――――!」「んー、ん――――!」
冒険者たちはヴィクトルに何かを言っている。
「助けに来ましたよ――――!」
ヴィクトルは能天気にそう言いながらスタスタと歩く。だが、右手には魔力をこめ、鈍く赤く光らせておいた。
シュッ!
直後、そばの樹の上から蜘蛛の糸がヴィクトルに向けて放たれる。
ヴィクトルは待っていたかのようにそれを左手でガシッとつかむと同時に、
「炎槍!」
と、叫んで樹上の魔物に鮮烈な炎の槍を食らわせた。
グギャァァァ!
断末魔の叫びを森に響かせながら、巨大な蜘蛛の魔物が火だるまになって地面に落ち、のたうち回り、最後には魔石になって消える。
よし! と思った時だった。地中からクワガタムシのアゴのような巨大なハサミが二本、いきなり突き出して、ヴィクトルに襲いかかる。
蜘蛛もこいつも冒険者たちを囮にして、助けに来る者を狙おうとしていたのだ。
しかし、ヴィクトルは慌てることなく、手刀でパキン! パキン!とハサミを折ると、逆にそのハサミの根元をガシッとつかみ、そのまま一気に引き抜いた。
「そんなの僕には効かないよ」
ズボッと抜け出てきたのは全長三メートルはあろうかと言う巨大な幼虫だった。ブヨブヨとした白い肌がウネウネしながらうごめく。
ヴィクトルはそのまま空中高く放り投げると、
「風刃!」
と、叫んで、風の刃で幼虫をズタズタに切り裂いた。
ギョエェェェ!
叫び声を残し、幼虫は魔石となって落ちてくる。
ヴィクトルはニヤッと笑って魔石をキャッチすると、繭になってる三人に走り寄った。
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