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第一部 転生編
第10話 クロネコの正体
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それから、クレイは部屋に籠もり、曽祖父の残してくれた資料の研究をする日々を送る事になる。
クレイの両親も、もともと放任気味な性格ではあったのだが、クレイに家を継がせる事はまずないだろうという判断もあり、クレイが曽祖父の資料をすべて自室に運び込み籠もりきりになっていても何も言わなかった。
むしろ、将来、古代語の研究あるいは魔道具の研究者として自立できるかも知れないと考え、資料など必要なものがあれば用意してやるようにと家令に命じたのであった。
そして、何年かの時が流れた。
いくら前世の知識を思い出して大人の意識があったとしても、この世界の言語はゼロから覚えたばかりである。その状態から、いまでは誰も読めない資料も少ない古代魔法言語の解読まで行うのは困難を極めた。
とはいえ時間だけはあったので、解読は徐々に進んだ。進捗は遅遅としていたものの、それは曽祖父の研究に比べれば飛躍的な進歩と言えた。クレイには前世のプログラミングの知識があったので、それがかなり役に立ったのだ。
だが、ついに資料も尽き、そこで行き詰まってしまう。
そして、未だ、クレイは魔法を発動する事も、魔道具の魔法陣を書くこともできないでいた……。
魔法が既に世界に実装されている機能であるなら、起動コマンドを実行すれば魔法は発動するはず……なのだが、いくらクレイが呪文を唱えようとも、決して魔法が発動する事はなかった。
魔力がないせいなのかと仮説を立て、魔石を握り締めながらやってみたりもしたのだが、それでも駄目であった。
クレイには前世の記憶がある。どうしてそうなったのか分からないが、クレイの持つ環境は、この世界のシステムとは異なるものなのではなかろうか。
クレイは、この世界のアーキテクチャと、クレイの持つ異世界(地球)のアーキテクチャが異なっているためではないかと推測した。
ステータスボードがこの世界の人間と自分とではデザインが違っていた。クレイのそれはまるで地球のOS「ドアーズ」のコマンド入力画面である。
仮に、クレイの持つ魔法のシステム体系が、この世界のそれとは異なるものであった場合、この世界のプログラムを実行する事ができないのは当然であろう。
ドアーズのOS上で、ドアーズのライバルOSであった “tOS” 用のプログラムを実行しようとしてもできないのと同じである。
そもそも、地球には魔力などというものはなかった。地球のシステムが引き継がれてしまったとしたら、クレイの魔力がゼロであったのも腑に落ちる。
だが、そうなると手詰まりである。このまま成果を出せずに終わるのかと諦めかけたクレイであったが……
父が資料・情報の取り寄せに協力するよう執事に命じてくれていたお陰で、ある日、それが進展する。
どうやら、現在は絶滅してしまったが、数十年前までは、古代魔法言語を研究する学者が王宮に居たらしい事が分かったのだ。
彼らは、古代魔法言語を直接詠唱し、魔法を発動する事もできたのだそうだ。
ただし、一つの簡単な魔法を発動するのにも、呪文の詠唱に三日三晩掛かるなど、使い物にならないものであっため、王が代替わりした時に、無駄だと切り捨てられ、学者は王宮から追放され、古代魔法言語の研究は終わってしまったらしい。
そして、先日、その研究を行っていた学者の最後の一人が亡くなったらしい。何かクレイの研究に関係があるかもと、執事がそれを教えてくれたのだ。
クレイはその情報に飛びついた。そして執事に無理をしてでもその学者の遺品・資料を入手してくれるよう頼み込んだのである。
そして幸いにも、その学者は曽祖父とも知り合いであったようで、伝手が繋がり、資料を手に入れる事ができたのであった。
その資料はその学者以外には意味不明な内容で、あやうく廃棄されるところであったのを引き取る事ができたのだが
それはクレイにとっては宝の山であった。その資料をもとに、古代魔法言語の解析が飛躍的に進んだのである。
古代魔法言語を詠唱し、それで魔法を発動する。これもクレイにはピンと来るものがあった。それは、地球のプログラミング言語で言うところのインタプリタ方式であろう。
これは、プログラムをマシン語に変換してから実行するのではなく、逐次マシン語に変換しながら実行させていく方式である。その方式故、処理に時間が掛かるのが特徴である。
三日三晩詠唱して大した魔法が発動できなかったというが、さもあらん。ごく簡単な、一瞬発光するだけの魔法のプログラムですら万単位の行数が必要であったのだから。
それまでどうやっても魔法を発動する事ができなかったクレイも、この方式で魔法の発動に成功した。
研究者が使っていた魔法陣が刻まれた金属のプレートの前で、ごく簡単な(それでも数万行単位の)呪文を読み上げる事で、魔法を発動する事ができたのである。
やっと、ここまできた。これはクレイにとっては大きな進歩であった。
逐次変換方式で魔法を発動させるためには、魔法陣が必要であった。この魔方陣こそが、逐次変換方式という魔法を発動させるための、コンパイル済みのプログラムであったのだ。
自身が直接魔法を発動するのは無理であっても、クレイは魔道具は使うことができた。魔道具は、魔法陣が刻まれている。
つまり、クレイも魔法陣を使えば魔法が使えるということである。
そこでやっと、クレイは自身のスキルの意味を悟った。
クレイ=奏は日本での学生時代、プログラミングの解析・デバッグに、とある古いフリーのツールを使っていた。
そのツールは、デコンパイル※など、いわゆるリバースエンジニアリングを行うためのツールが含まれていた。
※プログラム言語で書かれたソースコードをマシン語に変換してコンピュータが実行できるようにする処理をコンパイルというが、コンパイル済みのアプリケーションをソースコードの形に戻す事をデコンパイルという。
それらの解析ツールの名前が通称「クロネコ」であったのだ。
クレイの両親も、もともと放任気味な性格ではあったのだが、クレイに家を継がせる事はまずないだろうという判断もあり、クレイが曽祖父の資料をすべて自室に運び込み籠もりきりになっていても何も言わなかった。
むしろ、将来、古代語の研究あるいは魔道具の研究者として自立できるかも知れないと考え、資料など必要なものがあれば用意してやるようにと家令に命じたのであった。
そして、何年かの時が流れた。
いくら前世の知識を思い出して大人の意識があったとしても、この世界の言語はゼロから覚えたばかりである。その状態から、いまでは誰も読めない資料も少ない古代魔法言語の解読まで行うのは困難を極めた。
とはいえ時間だけはあったので、解読は徐々に進んだ。進捗は遅遅としていたものの、それは曽祖父の研究に比べれば飛躍的な進歩と言えた。クレイには前世のプログラミングの知識があったので、それがかなり役に立ったのだ。
だが、ついに資料も尽き、そこで行き詰まってしまう。
そして、未だ、クレイは魔法を発動する事も、魔道具の魔法陣を書くこともできないでいた……。
魔法が既に世界に実装されている機能であるなら、起動コマンドを実行すれば魔法は発動するはず……なのだが、いくらクレイが呪文を唱えようとも、決して魔法が発動する事はなかった。
魔力がないせいなのかと仮説を立て、魔石を握り締めながらやってみたりもしたのだが、それでも駄目であった。
クレイには前世の記憶がある。どうしてそうなったのか分からないが、クレイの持つ環境は、この世界のシステムとは異なるものなのではなかろうか。
クレイは、この世界のアーキテクチャと、クレイの持つ異世界(地球)のアーキテクチャが異なっているためではないかと推測した。
ステータスボードがこの世界の人間と自分とではデザインが違っていた。クレイのそれはまるで地球のOS「ドアーズ」のコマンド入力画面である。
仮に、クレイの持つ魔法のシステム体系が、この世界のそれとは異なるものであった場合、この世界のプログラムを実行する事ができないのは当然であろう。
ドアーズのOS上で、ドアーズのライバルOSであった “tOS” 用のプログラムを実行しようとしてもできないのと同じである。
そもそも、地球には魔力などというものはなかった。地球のシステムが引き継がれてしまったとしたら、クレイの魔力がゼロであったのも腑に落ちる。
だが、そうなると手詰まりである。このまま成果を出せずに終わるのかと諦めかけたクレイであったが……
父が資料・情報の取り寄せに協力するよう執事に命じてくれていたお陰で、ある日、それが進展する。
どうやら、現在は絶滅してしまったが、数十年前までは、古代魔法言語を研究する学者が王宮に居たらしい事が分かったのだ。
彼らは、古代魔法言語を直接詠唱し、魔法を発動する事もできたのだそうだ。
ただし、一つの簡単な魔法を発動するのにも、呪文の詠唱に三日三晩掛かるなど、使い物にならないものであっため、王が代替わりした時に、無駄だと切り捨てられ、学者は王宮から追放され、古代魔法言語の研究は終わってしまったらしい。
そして、先日、その研究を行っていた学者の最後の一人が亡くなったらしい。何かクレイの研究に関係があるかもと、執事がそれを教えてくれたのだ。
クレイはその情報に飛びついた。そして執事に無理をしてでもその学者の遺品・資料を入手してくれるよう頼み込んだのである。
そして幸いにも、その学者は曽祖父とも知り合いであったようで、伝手が繋がり、資料を手に入れる事ができたのであった。
その資料はその学者以外には意味不明な内容で、あやうく廃棄されるところであったのを引き取る事ができたのだが
それはクレイにとっては宝の山であった。その資料をもとに、古代魔法言語の解析が飛躍的に進んだのである。
古代魔法言語を詠唱し、それで魔法を発動する。これもクレイにはピンと来るものがあった。それは、地球のプログラミング言語で言うところのインタプリタ方式であろう。
これは、プログラムをマシン語に変換してから実行するのではなく、逐次マシン語に変換しながら実行させていく方式である。その方式故、処理に時間が掛かるのが特徴である。
三日三晩詠唱して大した魔法が発動できなかったというが、さもあらん。ごく簡単な、一瞬発光するだけの魔法のプログラムですら万単位の行数が必要であったのだから。
それまでどうやっても魔法を発動する事ができなかったクレイも、この方式で魔法の発動に成功した。
研究者が使っていた魔法陣が刻まれた金属のプレートの前で、ごく簡単な(それでも数万行単位の)呪文を読み上げる事で、魔法を発動する事ができたのである。
やっと、ここまできた。これはクレイにとっては大きな進歩であった。
逐次変換方式で魔法を発動させるためには、魔法陣が必要であった。この魔方陣こそが、逐次変換方式という魔法を発動させるための、コンパイル済みのプログラムであったのだ。
自身が直接魔法を発動するのは無理であっても、クレイは魔道具は使うことができた。魔道具は、魔法陣が刻まれている。
つまり、クレイも魔法陣を使えば魔法が使えるということである。
そこでやっと、クレイは自身のスキルの意味を悟った。
クレイ=奏は日本での学生時代、プログラミングの解析・デバッグに、とある古いフリーのツールを使っていた。
そのツールは、デコンパイル※など、いわゆるリバースエンジニアリングを行うためのツールが含まれていた。
※プログラム言語で書かれたソースコードをマシン語に変換してコンピュータが実行できるようにする処理をコンパイルというが、コンパイル済みのアプリケーションをソースコードの形に戻す事をデコンパイルという。
それらの解析ツールの名前が通称「クロネコ」であったのだ。
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