137 / 184
第三部 暗殺者編
第137話 (真)王へ報告
しおりを挟む
謁見の間を出たブランドとジャクリンは、城外へは出ず、そのままとある部屋に向かった。王と宰相の執務室である。
ブランドは王にクレイについて詳しく説明するつもりでアポを取ってあったのだ。クレイの素性については隠しておきたかったが、王家が本気になって調べればすぐに正体など分かってしまうだろうから、隠し立てはしないほうがよいと判断した。
実は先程の謁見はダイナドー侯爵をはじめとした貴族たちに見せるための茶番で、実際にはこちらが本当の報告なのである。
執務室に入ると、中には王と宰相だけしか居なかった。
王 「先程ぶりだな。それでは話を聞こうかブランド。ダンジョン攻略の功労者の正体について…?」
ブランドは一瞬だけ躊躇したが、それを見て宰相が言った。
宰相 「この部屋には何重にも魔法によるセキュリティが掛けてある、何を話しても漏れる心配はないから安心するがよい」
ブランド 「…本当はもうご存知なのではないですか? その冒険者の名はクレイ。私の息子です」
宰相 「確か、十年前に家を追放して平民に堕とされた三男だったか」
ジャクリン 「ご存知だったんですか?!」
宰相 「王家の諜報部に隠し事などできんさ。どこの貴族が何人子供を捨てたか、殺した、すべて把握しておる。ヴァレット家の三男を殺そうとした叔母が居たことなどもな?」
そう言われて、ジャクリンは驚いたようなおちゃらけたような複雑な表情をした。
ブランド 「追放したつもりはないのですが…。貴族をやめ平民になる事は、クレイ本人が望んだ事だったので」
宰相 「それは…家に迷惑を掛けたくないと遠慮しただけではないのか?」
ブランド 「そういう気持ちもあったかも知れませんが、貴族になりたくないというのは本心だったように思います」
王 「その気持は少し、分からんでもないがな」
宰相 「貴族は面倒ですからなぁ」
ジャクリン 「それを王や宰相が言ってしまいますか?」
王 「ああ、私だって、いち冒険者となって自由にあちこち行ってみたいと思う事はあるからな」
ブランド 「貴族でも平民でも、私は息子がやりたいと思う道を応援してやるつもりでした。
クレイには優れた魔導具作りの才能がありましたから、それを生かしてそのまま貴族として生きる道もあったと思うのです。
結局、貴族籍を捨て、いち職人として市井で生きていく事を本人も選びました。冒険者になったのも、魔導具の素材を自分で取りに行くためだったようです。
ただ…行方不明になったと聞いた時は、冒険者になるのはやめさせるべきだったと後悔いたしましたが」
宰相 「それも聞いていたよ。迷宮都市のダンジョンに挑んで帰ってこなかったと」
王 「ブランドが息子の事で心を傷めていたのは気づいていた。見ている事しか私にはできなかったが…
その息子が生還したとは、実に喜ばしい。我が事のように嬉しいよ」
ブランド 「ありがとうございます」
宰相 「なるほど、古代遺跡ダンジョンで、古代遺物を手に入れ、ダンジョンを攻略するほどの実力を手に入れたというわけか」
ブランド 「…まぁ一言で言ってしまえばそんなところになりますか」
王 「再起不能の怪我をした父を癒やし、高難度ダンジョンを攻略してしまうほどの実力を、な」
宰相 「その力、是非とも王家のため、いや国のために役立てて欲しいところだ」
王 「今回の功績の褒美として叙爵する事も考えていたのだが…
…本人にその気はなさそうだな?」
宰相 「分かりませぬぞ? 王命とあらば、従うかも知れません」
ブランド 「恐れながら、そのような事はお止めいただきたく…」
宰相 「まぁ、無理に叙爵しようとして国外に逃げられても困るしな」
宰相 「せっかく優秀な冒険者が現れたのだ、できれば国内に確保しておきたいですな」
ブランド 「ええ、おそらくですが、無理強いされれば、クレイはまた出奔してしまうと思います」
王 「分かっている、無理強いはせんよ。だが、本人の希望を尋ねてみるくらいはよいであろう?」
ブランド 「その程度であれば、まぁ…」
宰相 「ならば、一度連れて参れ。姿を消したというのは嘘なのであろう、ヴァレット子爵?」
ブランド 「いえ、それは本当です、私にも連絡の手段がないのです。休養が明ければまた戻ってくるとは思いますが」
宰相 「連絡がつき次第、早急に王宮へ来させるが良い。これは子息のためでもあるぞ。おそらくダイナドー侯爵やその他の貴族も動くであろうからな」
ブランド 「…御意」
ブランドは王にクレイについて詳しく説明するつもりでアポを取ってあったのだ。クレイの素性については隠しておきたかったが、王家が本気になって調べればすぐに正体など分かってしまうだろうから、隠し立てはしないほうがよいと判断した。
実は先程の謁見はダイナドー侯爵をはじめとした貴族たちに見せるための茶番で、実際にはこちらが本当の報告なのである。
執務室に入ると、中には王と宰相だけしか居なかった。
王 「先程ぶりだな。それでは話を聞こうかブランド。ダンジョン攻略の功労者の正体について…?」
ブランドは一瞬だけ躊躇したが、それを見て宰相が言った。
宰相 「この部屋には何重にも魔法によるセキュリティが掛けてある、何を話しても漏れる心配はないから安心するがよい」
ブランド 「…本当はもうご存知なのではないですか? その冒険者の名はクレイ。私の息子です」
宰相 「確か、十年前に家を追放して平民に堕とされた三男だったか」
ジャクリン 「ご存知だったんですか?!」
宰相 「王家の諜報部に隠し事などできんさ。どこの貴族が何人子供を捨てたか、殺した、すべて把握しておる。ヴァレット家の三男を殺そうとした叔母が居たことなどもな?」
そう言われて、ジャクリンは驚いたようなおちゃらけたような複雑な表情をした。
ブランド 「追放したつもりはないのですが…。貴族をやめ平民になる事は、クレイ本人が望んだ事だったので」
宰相 「それは…家に迷惑を掛けたくないと遠慮しただけではないのか?」
ブランド 「そういう気持ちもあったかも知れませんが、貴族になりたくないというのは本心だったように思います」
王 「その気持は少し、分からんでもないがな」
宰相 「貴族は面倒ですからなぁ」
ジャクリン 「それを王や宰相が言ってしまいますか?」
王 「ああ、私だって、いち冒険者となって自由にあちこち行ってみたいと思う事はあるからな」
ブランド 「貴族でも平民でも、私は息子がやりたいと思う道を応援してやるつもりでした。
クレイには優れた魔導具作りの才能がありましたから、それを生かしてそのまま貴族として生きる道もあったと思うのです。
結局、貴族籍を捨て、いち職人として市井で生きていく事を本人も選びました。冒険者になったのも、魔導具の素材を自分で取りに行くためだったようです。
ただ…行方不明になったと聞いた時は、冒険者になるのはやめさせるべきだったと後悔いたしましたが」
宰相 「それも聞いていたよ。迷宮都市のダンジョンに挑んで帰ってこなかったと」
王 「ブランドが息子の事で心を傷めていたのは気づいていた。見ている事しか私にはできなかったが…
その息子が生還したとは、実に喜ばしい。我が事のように嬉しいよ」
ブランド 「ありがとうございます」
宰相 「なるほど、古代遺跡ダンジョンで、古代遺物を手に入れ、ダンジョンを攻略するほどの実力を手に入れたというわけか」
ブランド 「…まぁ一言で言ってしまえばそんなところになりますか」
王 「再起不能の怪我をした父を癒やし、高難度ダンジョンを攻略してしまうほどの実力を、な」
宰相 「その力、是非とも王家のため、いや国のために役立てて欲しいところだ」
王 「今回の功績の褒美として叙爵する事も考えていたのだが…
…本人にその気はなさそうだな?」
宰相 「分かりませぬぞ? 王命とあらば、従うかも知れません」
ブランド 「恐れながら、そのような事はお止めいただきたく…」
宰相 「まぁ、無理に叙爵しようとして国外に逃げられても困るしな」
宰相 「せっかく優秀な冒険者が現れたのだ、できれば国内に確保しておきたいですな」
ブランド 「ええ、おそらくですが、無理強いされれば、クレイはまた出奔してしまうと思います」
王 「分かっている、無理強いはせんよ。だが、本人の希望を尋ねてみるくらいはよいであろう?」
ブランド 「その程度であれば、まぁ…」
宰相 「ならば、一度連れて参れ。姿を消したというのは嘘なのであろう、ヴァレット子爵?」
ブランド 「いえ、それは本当です、私にも連絡の手段がないのです。休養が明ければまた戻ってくるとは思いますが」
宰相 「連絡がつき次第、早急に王宮へ来させるが良い。これは子息のためでもあるぞ。おそらくダイナドー侯爵やその他の貴族も動くであろうからな」
ブランド 「…御意」
12
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります
竹桜
ファンタジー
武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。
転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる