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第三部 暗殺者編
第138話 実家へ
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ヴァレットの街から姿を消したクレイ達。どこに居るかというと、実は、リルディオンでクレユカのメンバー達と打ち上げをしていただけなのだが。
リルディオンが提供する決してなくならない料理と酒に、宴は三日三晩続き、クレユカのメンバーは全員二日酔いで倒れていたが、クレイは頃合いを見計らい、ルルとリリを連れてヴァレットの街に戻ってきた。
ちなみにルルとリリも二日酔いで倒れていたが、クレイが治癒魔法を使って治した。そう、クレイは治癒魔法を使えるようになっていた。否、もちろん魔法ではなく、回復の魔法陣を体に刻んだのであるが。(裸になると、クレイの体はかなりの魔法陣が刻まれた状態となってしまっている。)回復の魔法陣に魔力を流すと自身を回復してくれる。自分以外の者の回復は、光魔法で回復の魔法陣を相手の体に照射・描画する事で実現している。
と言っても、クレイ自身は酒をあまり飲んでいなかったので治療は必要なかったのだが。前世の頃も今世でも、酒をあまり美味いと感じた事がなく、ほとんど飲んでいなかったためである。
ヴァレットの街から王都までは馬車で半日強という距離である。父は王都に用がある時はだいたい2泊3日という行程で出掛けていた。王との謁見は泊まりになる事はほとんどないので、その後、王都にある屋敷に寄って雑事を片付ける。移動日でその前後一日ずつという感じである。(もちろん王都での用が片付かなければ長引くこともあったが。)それを覚えていたクレイは、今回も同じであろうと父が王都に向けて出発してから4日目に街にもどってきたのだが、予想は当たっていたようだ。
(余談ではあるが、他の貴族と同様、ヴァレット家も王都に屋敷を持っている。と言ってもかなり小さめの屋敷であるが。遠方に領地を持つ貴族と比べて、比較的行き来が容易であるので、王都の屋敷は簡易的なものとなっているのだ。)
ルル 「ここが領主様のお屋敷にゃ?」
リリ 「大きいですにゃ」
クレイが奴隷をこの屋敷に連れてくるのは初めての事である。
ルル 「なんか怖そうな人が門の前に立っていますにゃ」
クレイ 「門番のダラスだな」
門番に用件を伝えて領主へ取次を頼むのが手順であるが、ダラスはクレイの顔を見たとたん、話も聞かずに門を開け始めている。
ダラス 「これは、ぼっち―――クレイ様、おかえりなさい」
ルル 「いまぼっちって言ったにゃ」
リリ 「クレイはボッチじゃないにゃ、ルルとリリが居るにゃ」
クレイ 「呼び方もそうだが、『おかえりなさい』もおかしいだろう。俺はもうヴァレット家とは関係ない、平民のクレイだよ」
ダラス 「領主様からは(クレイの事は)家族として扱うようにと言われておりますので」
クレイ 「赤の他人の平民として扱ってくれないと、他の人間に見られた時に、色々問題があると思うんだが…」
ルル 「クレイは領主様の家族にゃ?」
リリ 「前に言ってたにゃ。クレイは領主様の息子だったってにゃ」
クレイ 「それは秘密だから外で言っちゃダメなやつだぞ」
リリ 「ごめんなさいですにゃ」
クレイ 「まぁ命がけで守るほどの秘密ではないから、ヤバイ時は喋ってもいいぞ」
ルル 「りょうかいにゃ」
敬礼するルル。ガルム小隊の真似である。
リリは気を効かせて、クレイより先行して扉を開けようとしたが、手を触れる前に扉が開いた。
執事が出てきて恭しく頭を下げる。
セバス 「おかえりなさいませ、クレイ様。ご領主様がお待ちです」
リリ 「びっくりしたにゃ! 勝手に開いたにゃ」
ルル 「きっと門番が連絡したにゃ」
クレイ 「そうじゃないんだよ、それが…」
クレイ 「子供の頃からずっと不思議なんだが、どうやって来客を察知しているんだ?」
客に扉を開けさせるなどあり得ないという事で、この執事は来客がある度に必ず先に扉を開けて出迎えるのである。だが、そもそもどうやって来客を察知しているのかが分からないのだ。常に扉の外を観察している者が居るわけでもないのである。
ルル 「きっと、門番から合図があったにゃ」
クレイ 「そうじゃないようなんだよな…」
屋敷に門番と内部との連絡用の仕組は特に設けられていない。(連絡用の魔導具等をクレイが作って門番と執事に渡したという事実もない。)そもそも、門番の居ない時でもセバスは来客を出迎えるのである。しかも、訪ねてきたのが怪しい人間の時は開けることはないのである。
リリ 「気配を察知しているにゃ?」
クレイ 「おそらく、何らかのスキルを持っているのではないかと予想している」
セバス 「それは秘密でございますよ」
クレイ 「こうしていつもはぐらかされるんだ」
セバス 「仕事を一生懸命やっていれば、誰でもできるようになります」
クレイ 「そういうもんかねぇ?」
セバス 「クレイ様だって、魔導具を作るのに特殊な才能をお持ちではないですか」
クレイ 「やっぱりスキルなんだな?」
セバス 「それは秘密でございますよ」
・
・
・
領主の執務室。
ブランド 「そろそろ来るだろうと思っていたよ」
今日クレイが来るとは特に連絡していなかったが、そろそろ来るだろうと思っていたそうである。別にスキルではなく、クレイの行動を読んで予想していたとの事であった。
クレイはそれほど父親と密接に過ごしてきたつもりはないのだが、やはり家族である、性格と行動はある程度理解しあっているのであった。
ブランド 「ワルドマも来るように言っておいたんだが、遅れているようだな」
それもクレイとブランドの予想の範疇の内であったが。ワルドマはいつも遅刻気味で現れる。公的な行事ではそのような事はないのだが、家族の約束事ではそうなる事が多いのだ。
クレイ 「そろそろ来るんじゃないか?」
言ってるそばから扉が開き、ワルドマが走り込んできた。
ワルドマ 「クレイ、もう来ていたか! おお、ルルとリリじゃないか、元気だったか?!」
ルル 「ワルドマにゃ」
リリ 「元気にゃ?」
ワルドマはクレイ達のダンジョン攻略の視察に行った時にルルとリリを大変気に入ったようで、クレイと同じ用に名前で呼ぶようにと言い含めたのであった。
クレイ 「では早速、今日の用件は…」
クレイは単刀直入にダンジョンの管理権限についての話を始めた。
リルディオンが提供する決してなくならない料理と酒に、宴は三日三晩続き、クレユカのメンバーは全員二日酔いで倒れていたが、クレイは頃合いを見計らい、ルルとリリを連れてヴァレットの街に戻ってきた。
ちなみにルルとリリも二日酔いで倒れていたが、クレイが治癒魔法を使って治した。そう、クレイは治癒魔法を使えるようになっていた。否、もちろん魔法ではなく、回復の魔法陣を体に刻んだのであるが。(裸になると、クレイの体はかなりの魔法陣が刻まれた状態となってしまっている。)回復の魔法陣に魔力を流すと自身を回復してくれる。自分以外の者の回復は、光魔法で回復の魔法陣を相手の体に照射・描画する事で実現している。
と言っても、クレイ自身は酒をあまり飲んでいなかったので治療は必要なかったのだが。前世の頃も今世でも、酒をあまり美味いと感じた事がなく、ほとんど飲んでいなかったためである。
ヴァレットの街から王都までは馬車で半日強という距離である。父は王都に用がある時はだいたい2泊3日という行程で出掛けていた。王との謁見は泊まりになる事はほとんどないので、その後、王都にある屋敷に寄って雑事を片付ける。移動日でその前後一日ずつという感じである。(もちろん王都での用が片付かなければ長引くこともあったが。)それを覚えていたクレイは、今回も同じであろうと父が王都に向けて出発してから4日目に街にもどってきたのだが、予想は当たっていたようだ。
(余談ではあるが、他の貴族と同様、ヴァレット家も王都に屋敷を持っている。と言ってもかなり小さめの屋敷であるが。遠方に領地を持つ貴族と比べて、比較的行き来が容易であるので、王都の屋敷は簡易的なものとなっているのだ。)
ルル 「ここが領主様のお屋敷にゃ?」
リリ 「大きいですにゃ」
クレイが奴隷をこの屋敷に連れてくるのは初めての事である。
ルル 「なんか怖そうな人が門の前に立っていますにゃ」
クレイ 「門番のダラスだな」
門番に用件を伝えて領主へ取次を頼むのが手順であるが、ダラスはクレイの顔を見たとたん、話も聞かずに門を開け始めている。
ダラス 「これは、ぼっち―――クレイ様、おかえりなさい」
ルル 「いまぼっちって言ったにゃ」
リリ 「クレイはボッチじゃないにゃ、ルルとリリが居るにゃ」
クレイ 「呼び方もそうだが、『おかえりなさい』もおかしいだろう。俺はもうヴァレット家とは関係ない、平民のクレイだよ」
ダラス 「領主様からは(クレイの事は)家族として扱うようにと言われておりますので」
クレイ 「赤の他人の平民として扱ってくれないと、他の人間に見られた時に、色々問題があると思うんだが…」
ルル 「クレイは領主様の家族にゃ?」
リリ 「前に言ってたにゃ。クレイは領主様の息子だったってにゃ」
クレイ 「それは秘密だから外で言っちゃダメなやつだぞ」
リリ 「ごめんなさいですにゃ」
クレイ 「まぁ命がけで守るほどの秘密ではないから、ヤバイ時は喋ってもいいぞ」
ルル 「りょうかいにゃ」
敬礼するルル。ガルム小隊の真似である。
リリは気を効かせて、クレイより先行して扉を開けようとしたが、手を触れる前に扉が開いた。
執事が出てきて恭しく頭を下げる。
セバス 「おかえりなさいませ、クレイ様。ご領主様がお待ちです」
リリ 「びっくりしたにゃ! 勝手に開いたにゃ」
ルル 「きっと門番が連絡したにゃ」
クレイ 「そうじゃないんだよ、それが…」
クレイ 「子供の頃からずっと不思議なんだが、どうやって来客を察知しているんだ?」
客に扉を開けさせるなどあり得ないという事で、この執事は来客がある度に必ず先に扉を開けて出迎えるのである。だが、そもそもどうやって来客を察知しているのかが分からないのだ。常に扉の外を観察している者が居るわけでもないのである。
ルル 「きっと、門番から合図があったにゃ」
クレイ 「そうじゃないようなんだよな…」
屋敷に門番と内部との連絡用の仕組は特に設けられていない。(連絡用の魔導具等をクレイが作って門番と執事に渡したという事実もない。)そもそも、門番の居ない時でもセバスは来客を出迎えるのである。しかも、訪ねてきたのが怪しい人間の時は開けることはないのである。
リリ 「気配を察知しているにゃ?」
クレイ 「おそらく、何らかのスキルを持っているのではないかと予想している」
セバス 「それは秘密でございますよ」
クレイ 「こうしていつもはぐらかされるんだ」
セバス 「仕事を一生懸命やっていれば、誰でもできるようになります」
クレイ 「そういうもんかねぇ?」
セバス 「クレイ様だって、魔導具を作るのに特殊な才能をお持ちではないですか」
クレイ 「やっぱりスキルなんだな?」
セバス 「それは秘密でございますよ」
・
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領主の執務室。
ブランド 「そろそろ来るだろうと思っていたよ」
今日クレイが来るとは特に連絡していなかったが、そろそろ来るだろうと思っていたそうである。別にスキルではなく、クレイの行動を読んで予想していたとの事であった。
クレイはそれほど父親と密接に過ごしてきたつもりはないのだが、やはり家族である、性格と行動はある程度理解しあっているのであった。
ブランド 「ワルドマも来るように言っておいたんだが、遅れているようだな」
それもクレイとブランドの予想の範疇の内であったが。ワルドマはいつも遅刻気味で現れる。公的な行事ではそのような事はないのだが、家族の約束事ではそうなる事が多いのだ。
クレイ 「そろそろ来るんじゃないか?」
言ってるそばから扉が開き、ワルドマが走り込んできた。
ワルドマ 「クレイ、もう来ていたか! おお、ルルとリリじゃないか、元気だったか?!」
ルル 「ワルドマにゃ」
リリ 「元気にゃ?」
ワルドマはクレイ達のダンジョン攻略の視察に行った時にルルとリリを大変気に入ったようで、クレイと同じ用に名前で呼ぶようにと言い含めたのであった。
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