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二章 学園少女と遺物
学園
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あれから時が経ち春に成った。ローニャは遂に学園に入学する時が来た。ローニャは寮に移り住む為身仕度をする。と言っても荷物は前日にある程度学園に送ってある為、服などの生活品しか残っては無い。
支度を済ませ、カーバッツから貰った制服を着て部屋を出る準備をする。長い間住んでいた部屋を眺める。そしてローニャは部屋を出た。宿屋の店主に深く御礼を言い、宿屋を後にした。
宿の外で待っていたカーバッツと一緒に馬車に乗り、学園に向かう。馬車に揺られる事数十分、ローニャは学園に着いた。とてつもなく大きな建物を眺めながら歩く。校門の前でカーバッツが立ち止まり、話し掛けてきた。
「んじゃ俺はここまでだ、頑張れよ!」
「ありがとう、またね。」
そう言って二人は別れた。そしてローニャは校門を通った。校舎に向かって歩いていると、校舎の入り口前で四人の少女が待っていた。ローニャはその四人に近付く。うち三人はアリス達だった。
「ローニャちゃん!入学おめでとう!」
「これで私達は同級生ですわね一緒に学園生活を楽しみましょう!」
「うん。」
ローニャは二人にそう返事をすると、ふともう一人の見知らぬ少女に目を向けた。少女はローニャ達を眺めながら嬉しそうにうんうんと頷いている。すると少女はローニャの視線に気付いた。
「おっと。ごっほん!初めまして!私の名は【マリンスベリー・ルーデルハイト】、この学園の学園長だ。マーリンお姉さんって呼んでもいいゾ!」
決めポーズをしながらの元気な自己紹介に四人は静かになった。それ当時にローニャは少女が学園長である事に驚いた。そして同時にその少女がその見た目とは裏腹に四百歳を超えているという事を思い出した。
「えっと…変な人だけどとってと良い人だよ。」
アリスが苦笑いをしながら言う。ローニャはカーバッツが言っていた変な奴という言葉にほんの少し納得した。
「変とは失礼だな、これでも学園長なんだぞ?まぁいいや、そんな事よりローニャくんだっけ?入学おめでとう。我が校は君を歓迎するよ。早速君が暮す寮室へ案内するよ。付いてきたまえ」
学園長にそう言われローニャは付いて行った。数分歩き寮室へ案内された。部屋には前日に送っていたローニャの剣等の大きな荷物が置いてあった。
「ここがこれから君が暮す部屋だよ。君的には一人の方が良いかもだけど、うちは寮制の生徒が多くてね、共同で我慢してね。けどそこの二人と同じ部屋だからすぐに慣れると思う。それじゃあ準備出来たら教室に行くように。またね。」
そう言って学園長は去っていった。ローニャは荷物を棚にしまい、三人と教室へ向かった。
アリスが教室の扉を開き中に入る。教室はかなり広く大勢の生徒が居た。ローニャは初めて見る光景に驚いたがすぐにフードを深く被り下を向きながら適当な席に座った。机にペン等の道具を広げ大人しく待っていると、一人の生徒が話し掛けてきた。
「なぁ、お前何で室内でフード被ってんだ?てか何でフードついてんの?」
「あ…えっと…」
ローニャは返答をしようとしたが口籠ってしまい上手く話せなかった。そこへ助け舟を出した。
「この子は今年から新しく入学したんですよ。フードなのはちょっと事情があるみたい。」
「ふーん…どおりで見た事無いと思った。」
そこへ違う生徒が集まって来て。
「え?何?新入生?どんな子?」
次々と人が集まって来てローニャは更に縮こまった。そこへ更一人の生徒が聞き覚えのある声で大きな声を出した。
「な!お前は!何で学園に居るんだ!?どうやって入った!」
その声の主は物凄い気迫でローニャの前に立ち詰め寄った。ローニャはその生徒を見た事があるような気がしたが、どうにも思い出せなかった。
「誰?」
「な!?僕の事を忘れたのか!?ラッシュ・ノートンだ!」
名前を聞いてローニャはようやく思い出した。
「ん?あ…ああ…ダンジョンの時に居た変な奴。」
「変な奴とは何だ!」
そこへアリスが割って入った。
「ノートンくん、ローニャちゃんは人見知りだからあんまり強く当たるのは」
「うるさい!君には関係無い!」
ラッシュが口うるさく怒鳴っていると、教室に一人の男性が入ってくる。それを見て生徒達は即座に解散し席に座った。男性が教壇に立ち喋り始めた。
「え~おはよう諸君。初等部から居る者は知っていると思うが今年からは新入生が居るので、念の為に改めて自己紹介をしておこう。私の名は【アルフレッド・ノイマン】初等部から居る者は知っていると思うが、私は主に算術を教えていく。では自己紹介はこの辺にして授業を始める。」
ローニャは教科書を開き静かに授業を聞いた。それなりには図書館で勉強をしていた為、ついて行けない事は無かった。
授業が終わり溜息を吐いて背もたれにより掛かる。そこへアリス達がやって来た。
「中等部となると結構難しくなるね。ローニャちゃんはついて行けた?」
「まぁ…それなりに。」
「そっか…ローニャ熱心に勉強してたもんね。」
「わ、私もそれなりについて行けましたわよ?」
「マテリアちゃんは絶対分かって無かったでしょ。」
「あのくらいは問題ないだろ。」
「レーナちゃんは師匠さんのお店の手伝いしてるから計算は得意だよね。」
そんな話をして次の授業の教師が来るのを待った。
数分後、教室に学園長がやって来た。学園長は教壇に立ち喋り始めた。
「さてニ限目は魔術の授業だ。中等部と成った諸君に教えるのは勿論【中級魔法】だ。中級魔法は知っての通り【初級魔法】よりも扱いが難しく、そして普通は適正のある者しか扱え無い。適性無しで使えたとしても、かなりの魔力を消費する事になるだろう。故に諸君に教えるのはあくまでそれぞれの適正の中級魔法だ。その為口頭では伝わりづらい、だから今から訓練場に行く。皆付いて来たまえ。」
学園長に言われるまま、生徒達は校庭にある訓練場やって来た。訓練場には既に数人の教師が待機していた。
「さて、それではそれぞれ中級魔法に必要な魔力調整を行って貰う。各自安全な距離まで広がってそれぞれで調整を行ってくれたまえ。分からないものは教員を呼ぶように。」
それから生徒達はそれぞれで魔法の訓練を始めた。教師に教わりながら難しい顔を浮かべる者や余裕の表情を浮かべる者も居る。そんな中、ローニャはアリス達の訓練をぼーっと眺めていた。
「あれ、やらないの?」
「いや、無属性に中級とかあるの?本でも見た事無いし」
「さぁ、けどローニャちゃんは凄い力を発揮してるから気付かず使ってるのかも。」
「やる事無いなら俺らに無属性魔法教えろよ。役に立ちそうだし。」
「別にいいけど。」
ローニャはアリス達に自分が覚えた通りの魔法を一つ程教え始めた。その場面を学園長に見つかり学園長がローニャ達に近寄った。
「君達、好奇心が有るのは結構だが、ちゃんと自分の属性もしっかり特訓したまえよ。それとローニャくん。ちょっと来てくれるかい。」
「え?あ、はい」
学園長がローニャを連れて生徒達から少しだけ離れた場所に向うと学園長は手をかざし魔法を発動した。
「《クリエイト:ロックゴーレム》」
そう唱えると何も無い場所に岩が集まり次の瞬間、岩出来た人型のゴーレムが現れた。そして学園長は振り返りゴーレムを指さしてローニャに言い放った。
「君はどうやら無属性魔法しか使えないと聞いた。」
その言葉と共に後で見ていた生徒達が数人クスクスと笑い始めた。
「そこ!笑わない!ゴホン。気にする事は無い。話を戻そう。無属性は使ってみないと実感が沸かないだろう。だからあの的にこの玉を魔法を発動して思い切り投げてみて。」
学園長はそう言って黒い鉄球をローニャに渡した。ローニャはそれを受け取る。ローニャはこの時は魔法を全て解除していた為鉄球が意外と重い事に驚いた。ローニャはその鉄球を持って学園長が指定した場所に立ち魔法を発動した。
(《筋力強化》《怪力付与》《命中補正》《身体能力強化》)
これらを発動し、構えて、力いっぱい鉄球を投げた。鉄球は大砲のような音を立てながら的目掛けて飛んでいき、的を粉砕して壁にめり込んだ。その光景を見ていた生徒も教員も皆唖然していた。その中で学園長とアリスら四人だけが拍手していた。
「お見事だローニャくん。私はあの的をかなり強固に作った筈なんだが、まさか粉砕されるとはね。え~諸君無属性魔法には明確に階級というものは無いが使い方によっては化けるものだ。彼女は無属性に適性があるから他人以上に無属性を扱える。諸君も余裕があれば無属性は覚えておくように。それじゃあ。私が的を作るから、魔法を試したい者は並びなさい。それとローニャくん、外ではそのくらいが良いかもだけど、学園では危険だから君は力加減を調整できる様にした方が良いかな。」
「はい。」
最後に小声で指導され素直に返事をした。
その後火が付いたのか、次々と生徒達は魔法を試し始めた。皆初級から中級の魔法を放つが何故かローニャが基準になり、ほぼ全員が的を破壊出来ず、悔しそうにしている。そんな中、アリスが的の前に立った。アリスは教員から訓練用の弓を借りて的を狙った。
「《アローエンチャント:アクアペネトレイト》」
そう唱えると激しい水流が矢にを覆い始めた。その状態で狙いを済まし、矢を放った。矢は見事的の胴体を貫通した。
「やはり君のオリジナル魔法は素晴らしいな。」
「ありがとうございます。けどまだまだですね。頭を狙ったんですけど。」
「魔法と弓の同時使用だけでも凄い事だ。水流の圧力を制御出来るようになれば更に狙いが正確になるだろう。自信を持てば君はこれからもっと上達していくさ。」
アリスは学園長に頭を下げローニャとレーナの元に向かった。
「いつも思うけど、何で弓に魔法を乗せるの?」
「実は私魔法を操るの下手で、何かに乗せて撃たないとうまく扱えないんだ。」
「そうなんだ。」
「レーナはやらないの?」
「俺はいいや、俺も魔法は苦手だし。」
そんな話をしているとマテリアの番が回ってきた。三人はマテリアを離れた場所から見守った。
「では行きます。《フレイムキャノン》!」
マテリアは炎の玉を召喚し、そして炎の玉は後部から炎を噴射し始めた。その炎は段々と収束し始めた、蒼く輝き出し、そして超高速で的へ発射された。そしてその玉が的に当たると激しい爆発を起こした。少しして煙が晴れようやく的が姿を表した。的は片腕が無くなり、少し溶けていた。それを見てマテリアは少し残念そうにしたが元々的が硬い事もあり腕だけでも破壊できた事に喜んでいた。
「見事だよ。威力も申し分無い。発射の速度を早めるのと複数発射出来るようになれば、かなり強くなるだろう。」
「本当ですか!?私頑張ります。」
マテリアは上機嫌でローニャ達の元に向かった。
「見ててくださいましたか?私だって出来るんですわよ!」
「凄かったよ!何時の間に覚えたの?」
「私だって日々勉強しているんです。アリスだってさっきの魔法は独学でしょう?」
「まぁね。」
その後四人で魔法の特訓を続けて数分後に学園長から招集がかかり生徒達は一箇所に集まった。そして全員が集まると学園長が話し始めた。
「え~諸君、今日は手順をすっ飛ばして実践をしてもらってわかったと思うが、中級魔法は初級魔法と違いかなりの魔力を消費する。その為実際に敵と戦う際は最初から中級を使うのではなく、先ずは初級魔法で様子見をし、魔力を温存、弱い敵ならば中級魔法で直ぐに終らせるでもいいが、相手が強い敵なら初級魔法で相手の体力を少しずつ削り、最後に中級や上級魔法で止めを刺す。という戦い方が最も効果的だ。まぁ元々魔力が多いなら最初から中級や上級でもいいかも知れないが、あまりオススメはしない。現在冒険者等の実戦を経験したもの、或いは将来する者は覚えておくように。以上!ではこれで私の授業は終わりだ。解散!」
学園長の話が終わりようやく授業が終わった。
教室に戻ろうと歩き出す。すると
「おい!」
と大声で呼び止められ振り返ると、眉間に皺を寄せ悔しそうな表情を浮かべるラッシュが立っていた。四人が一斉に振り返りラッシュを見ると、ラッシュは四人、特にローニャに向けて威勢を放った。
「僕は絶対に認めないぞ!お前らなんかより僕の方が優れてるんだからな!」
そう言い放ってラッシュは早歩きで去っていった。
「何が言いたかったんだろ。」
ローニャが疑問を抱いているとレーナが理由を話した。
「あいつ、さっき枝飛ばして人形を壊そうとしてたけど壊すどころか傷つける事すら出来てなかったみたいでな。んでお前ら三人だけが人形を壊せてたから悔しいんだろ。ま、ほっとけよ、どうせ口先だけだし。」
三人はそう言いながら歩くレーナの後ろを追いかけて教室に戻ろった。
その後午前の授業を終え、昼食を済ませて廊下で三人で話し合う。
「これからどうする?俺は運動がしたい。」
「う~ん、私は勉強かな。」
「私はアリスについて行きますわ。」
「ローニャはどうする?」
「私は本が読みたい。」
「じゃあ、私達と図書室に行かない?」
「良いよ。」
「え~。んじゃ俺も行く。」
話し合いの末、四人で図書室に向かった。それぞれで違う本を取りアリスとマテリアは勉強を。ローニャとレーナは読書をした。しかしレーナは少し退屈そうだった。そこへ男が話し掛けてきた。
「ミレオレーナ。勉強か?にしては励んではいないようだが。」
その男の姿を見るなりレーナは一気に顔が強張り、機嫌が悪くなった。
「あ?てめぇには関係ねーだろ。失せろ。」
何時に無く荒い口調で男に威嚇をする。しかし男はそれに動じる事は無く、それどころか男はレーナに説教を始めた。
「口が悪いな。お前は“俺の妹なんだ”。俺の妹らしい振る舞いをしろ。」
「は!今更兄貴面かよ。甘えて欲しいならもっと兄貴らしくしたらどうだ?まぁどの道俺はお前なんか家族とすら思いたく無いけどな。血が繋がってるだけで虫酸が走る。」
「いい加減子供みたいな振る舞いはやめろ。見苦しいぞ。」
そこで男がチラッと三人に視線を向けた。
「そんな奴らとつるんでいるから成長しないんだ。友達は選んだ方が良いぞ。それに、そいつは噂の野蛮人だろう。そんな奴と一緒に居るとお前まで野蛮になるぞ。」
男の言葉に少しずつイラついていたレーナが三人を馬鹿にするような言葉を聞いて、遂に怒りを抑えられなくなった。
「てめぇいい加減にしやがれ!俺が誰と関わろうが俺の勝手だろうが!人の生き方に口出しすんじゃねえ!」
「レーナちゃん落ち着いて。もう出よ。」
レーナの怒号が図書室に響いた。そこへ
「貴方達、図書室では静かにしなさい。」
教員に注意されレーナは部屋を急ぎ足で出て行った。それをアリスが追いかけ、マテリアとローニャは本を片付けてから跡を追った。
マテリアに付いていくと中庭の隅のベンチで頭を抱えるレーナとレーナを宥めているアリスが見えた。二人に駆け寄り、ローニャは事情を聞いた。
「さっきの誰なの?だいぶ失礼な奴だったけど。」
「あの人はレーナちゃんのお兄さんだよ。この学園の高等部。初めて会った時からあの人はあんな感じなんだ。」
「初めて御顔を見た時は格好よくて素敵な先輩だと思っていましたのに。いざ話してみれば、話せば話すほど酷い人なのですわ。」
そこへ震えた声でレーナが事情を話し始めた。
「俺が幼い頃は仲が良かったんだ。俺は元々都市外れの村に住んでた。俺の母親は元【聖女】で、強い光の適性を持ってて、父親は複数の適性を持った【英雄適性】を持ってるんだ。両親がそんなだから兄貴は複数適性を持ってて、しかも光の適性まであった。俺は勿論喜んださ。俺は兄貴の事は好きだったし、尊敬してた。だから兄貴なら当然だって思った。でも俺の適性が【地属性】だけだって分かってから、段々と両親は私を見なくなった。最初は家族でやっていた畑仕事も、兄貴にはやらせなくなって、母親は兄貴の面倒を見るからってやらなくなって。父親は他の仕事があるからってやらなくなって。最後には私だけがやるようになってた。食事も四人で食卓を囲んでたのが、兄貴だけが豪勢な食事を用意されて、段々と私の食事が貧相になって行って。最後には少ない金だけ渡して自分で調達しろとか言う始末だ。そんな風に兄貴を贔屓する生活が続いてたから、兄貴はどんどん傲慢で我儘に成って行った。しかも段々贔屓はエスカレートして行って。私が近所の店の手伝いをして貰ってた小遣いを兄貴やれとか言って取り上げられたりもした。兄貴がやらかした事を「あいつはそんな事しない」とか言って私に責任を押し付けたり。やりたくもない剣の稽古に付き合わされて、仕舞にはあいつは本物の剣を持ち出して、嫌だって言ってる私を無視して斬り掛かって来て、逃げようとした私の背中を斬りつけた事もある。その時はまたまた通り掛かった隣人が助けてくれたけど、親はまた「そんな事有り得ない」「勝手に怪我した」の一点張りで認めようとしなかった。そんな嫌気が指すような日々にを続けて、私が7歳位の頃に兄貴が父親の大事にしてた物を壊したんだ。でもその時も兄貴は責められず、私が責められた。私はやってないって反論しただ。でも両親は「嘘をつくな」「お前以外有り得ない」としか言わない、兄貴は両親の後でニヤニヤしてるだけだった。最終的には「反省するまで帰ってくるな」とか言って大雨の中に私を追い出しやがったんだ。私はむしゃくしゃして、いっそ家出してやろうと思って。村を向けだしたんだ。でもその先で倒れて。気が付いたら師匠に拾われてた。私は恩返しをしたいのもあったけど。何より師匠の仕事に憧れて弟子入りしたんだ。そっからずっと師匠の元で働いてて、もう何年も家に帰ってない。師匠に学園に入らないかって勧められて入ったはいいけど、あいつが居る事は知らなかったから、あいつを見た時は驚いたよ。話し掛けられた時はあいつも変わってると思って期待したけど。変わってるどころか、更に傲慢さに拍車がかかってて、それでもう家に帰る気が一生消えたよ。」
「大変だったんだね。」
「お前程じゃないけどな。」
「大変さは人によって違う。と思う…。少なくとも私の母親は酷い人じゃなかったから。お互い家族で大変な目にあったけど、その分良い事もあったし、私は好きなだけ肉が食べれた。」
「何だそれ、もっとあったろ。」
「後、色んな人に出会えた。ここに居る三人も含めて。」
ローニャの言葉に照れくさそうにしながらも少し嬉しそうだった。話をして少し気持ちが落ち着いたのか、レーナはそしてスッと立ち上った。
「なーんか話したらスッキリしたぜ。悪いな、変な話聞かせちまって。それと聞いてくれてありがとな。」
「気にするな、またいつでも聞いてやる。」
「口調変わってるぞ。」
「さ!もう戻りますわよ、時間ギリギリですわね。」
そう言ってマテリアが急ぎ足で教室に向うのを三人で追いかけた。
支度を済ませ、カーバッツから貰った制服を着て部屋を出る準備をする。長い間住んでいた部屋を眺める。そしてローニャは部屋を出た。宿屋の店主に深く御礼を言い、宿屋を後にした。
宿の外で待っていたカーバッツと一緒に馬車に乗り、学園に向かう。馬車に揺られる事数十分、ローニャは学園に着いた。とてつもなく大きな建物を眺めながら歩く。校門の前でカーバッツが立ち止まり、話し掛けてきた。
「んじゃ俺はここまでだ、頑張れよ!」
「ありがとう、またね。」
そう言って二人は別れた。そしてローニャは校門を通った。校舎に向かって歩いていると、校舎の入り口前で四人の少女が待っていた。ローニャはその四人に近付く。うち三人はアリス達だった。
「ローニャちゃん!入学おめでとう!」
「これで私達は同級生ですわね一緒に学園生活を楽しみましょう!」
「うん。」
ローニャは二人にそう返事をすると、ふともう一人の見知らぬ少女に目を向けた。少女はローニャ達を眺めながら嬉しそうにうんうんと頷いている。すると少女はローニャの視線に気付いた。
「おっと。ごっほん!初めまして!私の名は【マリンスベリー・ルーデルハイト】、この学園の学園長だ。マーリンお姉さんって呼んでもいいゾ!」
決めポーズをしながらの元気な自己紹介に四人は静かになった。それ当時にローニャは少女が学園長である事に驚いた。そして同時にその少女がその見た目とは裏腹に四百歳を超えているという事を思い出した。
「えっと…変な人だけどとってと良い人だよ。」
アリスが苦笑いをしながら言う。ローニャはカーバッツが言っていた変な奴という言葉にほんの少し納得した。
「変とは失礼だな、これでも学園長なんだぞ?まぁいいや、そんな事よりローニャくんだっけ?入学おめでとう。我が校は君を歓迎するよ。早速君が暮す寮室へ案内するよ。付いてきたまえ」
学園長にそう言われローニャは付いて行った。数分歩き寮室へ案内された。部屋には前日に送っていたローニャの剣等の大きな荷物が置いてあった。
「ここがこれから君が暮す部屋だよ。君的には一人の方が良いかもだけど、うちは寮制の生徒が多くてね、共同で我慢してね。けどそこの二人と同じ部屋だからすぐに慣れると思う。それじゃあ準備出来たら教室に行くように。またね。」
そう言って学園長は去っていった。ローニャは荷物を棚にしまい、三人と教室へ向かった。
アリスが教室の扉を開き中に入る。教室はかなり広く大勢の生徒が居た。ローニャは初めて見る光景に驚いたがすぐにフードを深く被り下を向きながら適当な席に座った。机にペン等の道具を広げ大人しく待っていると、一人の生徒が話し掛けてきた。
「なぁ、お前何で室内でフード被ってんだ?てか何でフードついてんの?」
「あ…えっと…」
ローニャは返答をしようとしたが口籠ってしまい上手く話せなかった。そこへ助け舟を出した。
「この子は今年から新しく入学したんですよ。フードなのはちょっと事情があるみたい。」
「ふーん…どおりで見た事無いと思った。」
そこへ違う生徒が集まって来て。
「え?何?新入生?どんな子?」
次々と人が集まって来てローニャは更に縮こまった。そこへ更一人の生徒が聞き覚えのある声で大きな声を出した。
「な!お前は!何で学園に居るんだ!?どうやって入った!」
その声の主は物凄い気迫でローニャの前に立ち詰め寄った。ローニャはその生徒を見た事があるような気がしたが、どうにも思い出せなかった。
「誰?」
「な!?僕の事を忘れたのか!?ラッシュ・ノートンだ!」
名前を聞いてローニャはようやく思い出した。
「ん?あ…ああ…ダンジョンの時に居た変な奴。」
「変な奴とは何だ!」
そこへアリスが割って入った。
「ノートンくん、ローニャちゃんは人見知りだからあんまり強く当たるのは」
「うるさい!君には関係無い!」
ラッシュが口うるさく怒鳴っていると、教室に一人の男性が入ってくる。それを見て生徒達は即座に解散し席に座った。男性が教壇に立ち喋り始めた。
「え~おはよう諸君。初等部から居る者は知っていると思うが今年からは新入生が居るので、念の為に改めて自己紹介をしておこう。私の名は【アルフレッド・ノイマン】初等部から居る者は知っていると思うが、私は主に算術を教えていく。では自己紹介はこの辺にして授業を始める。」
ローニャは教科書を開き静かに授業を聞いた。それなりには図書館で勉強をしていた為、ついて行けない事は無かった。
授業が終わり溜息を吐いて背もたれにより掛かる。そこへアリス達がやって来た。
「中等部となると結構難しくなるね。ローニャちゃんはついて行けた?」
「まぁ…それなりに。」
「そっか…ローニャ熱心に勉強してたもんね。」
「わ、私もそれなりについて行けましたわよ?」
「マテリアちゃんは絶対分かって無かったでしょ。」
「あのくらいは問題ないだろ。」
「レーナちゃんは師匠さんのお店の手伝いしてるから計算は得意だよね。」
そんな話をして次の授業の教師が来るのを待った。
数分後、教室に学園長がやって来た。学園長は教壇に立ち喋り始めた。
「さてニ限目は魔術の授業だ。中等部と成った諸君に教えるのは勿論【中級魔法】だ。中級魔法は知っての通り【初級魔法】よりも扱いが難しく、そして普通は適正のある者しか扱え無い。適性無しで使えたとしても、かなりの魔力を消費する事になるだろう。故に諸君に教えるのはあくまでそれぞれの適正の中級魔法だ。その為口頭では伝わりづらい、だから今から訓練場に行く。皆付いて来たまえ。」
学園長に言われるまま、生徒達は校庭にある訓練場やって来た。訓練場には既に数人の教師が待機していた。
「さて、それではそれぞれ中級魔法に必要な魔力調整を行って貰う。各自安全な距離まで広がってそれぞれで調整を行ってくれたまえ。分からないものは教員を呼ぶように。」
それから生徒達はそれぞれで魔法の訓練を始めた。教師に教わりながら難しい顔を浮かべる者や余裕の表情を浮かべる者も居る。そんな中、ローニャはアリス達の訓練をぼーっと眺めていた。
「あれ、やらないの?」
「いや、無属性に中級とかあるの?本でも見た事無いし」
「さぁ、けどローニャちゃんは凄い力を発揮してるから気付かず使ってるのかも。」
「やる事無いなら俺らに無属性魔法教えろよ。役に立ちそうだし。」
「別にいいけど。」
ローニャはアリス達に自分が覚えた通りの魔法を一つ程教え始めた。その場面を学園長に見つかり学園長がローニャ達に近寄った。
「君達、好奇心が有るのは結構だが、ちゃんと自分の属性もしっかり特訓したまえよ。それとローニャくん。ちょっと来てくれるかい。」
「え?あ、はい」
学園長がローニャを連れて生徒達から少しだけ離れた場所に向うと学園長は手をかざし魔法を発動した。
「《クリエイト:ロックゴーレム》」
そう唱えると何も無い場所に岩が集まり次の瞬間、岩出来た人型のゴーレムが現れた。そして学園長は振り返りゴーレムを指さしてローニャに言い放った。
「君はどうやら無属性魔法しか使えないと聞いた。」
その言葉と共に後で見ていた生徒達が数人クスクスと笑い始めた。
「そこ!笑わない!ゴホン。気にする事は無い。話を戻そう。無属性は使ってみないと実感が沸かないだろう。だからあの的にこの玉を魔法を発動して思い切り投げてみて。」
学園長はそう言って黒い鉄球をローニャに渡した。ローニャはそれを受け取る。ローニャはこの時は魔法を全て解除していた為鉄球が意外と重い事に驚いた。ローニャはその鉄球を持って学園長が指定した場所に立ち魔法を発動した。
(《筋力強化》《怪力付与》《命中補正》《身体能力強化》)
これらを発動し、構えて、力いっぱい鉄球を投げた。鉄球は大砲のような音を立てながら的目掛けて飛んでいき、的を粉砕して壁にめり込んだ。その光景を見ていた生徒も教員も皆唖然していた。その中で学園長とアリスら四人だけが拍手していた。
「お見事だローニャくん。私はあの的をかなり強固に作った筈なんだが、まさか粉砕されるとはね。え~諸君無属性魔法には明確に階級というものは無いが使い方によっては化けるものだ。彼女は無属性に適性があるから他人以上に無属性を扱える。諸君も余裕があれば無属性は覚えておくように。それじゃあ。私が的を作るから、魔法を試したい者は並びなさい。それとローニャくん、外ではそのくらいが良いかもだけど、学園では危険だから君は力加減を調整できる様にした方が良いかな。」
「はい。」
最後に小声で指導され素直に返事をした。
その後火が付いたのか、次々と生徒達は魔法を試し始めた。皆初級から中級の魔法を放つが何故かローニャが基準になり、ほぼ全員が的を破壊出来ず、悔しそうにしている。そんな中、アリスが的の前に立った。アリスは教員から訓練用の弓を借りて的を狙った。
「《アローエンチャント:アクアペネトレイト》」
そう唱えると激しい水流が矢にを覆い始めた。その状態で狙いを済まし、矢を放った。矢は見事的の胴体を貫通した。
「やはり君のオリジナル魔法は素晴らしいな。」
「ありがとうございます。けどまだまだですね。頭を狙ったんですけど。」
「魔法と弓の同時使用だけでも凄い事だ。水流の圧力を制御出来るようになれば更に狙いが正確になるだろう。自信を持てば君はこれからもっと上達していくさ。」
アリスは学園長に頭を下げローニャとレーナの元に向かった。
「いつも思うけど、何で弓に魔法を乗せるの?」
「実は私魔法を操るの下手で、何かに乗せて撃たないとうまく扱えないんだ。」
「そうなんだ。」
「レーナはやらないの?」
「俺はいいや、俺も魔法は苦手だし。」
そんな話をしているとマテリアの番が回ってきた。三人はマテリアを離れた場所から見守った。
「では行きます。《フレイムキャノン》!」
マテリアは炎の玉を召喚し、そして炎の玉は後部から炎を噴射し始めた。その炎は段々と収束し始めた、蒼く輝き出し、そして超高速で的へ発射された。そしてその玉が的に当たると激しい爆発を起こした。少しして煙が晴れようやく的が姿を表した。的は片腕が無くなり、少し溶けていた。それを見てマテリアは少し残念そうにしたが元々的が硬い事もあり腕だけでも破壊できた事に喜んでいた。
「見事だよ。威力も申し分無い。発射の速度を早めるのと複数発射出来るようになれば、かなり強くなるだろう。」
「本当ですか!?私頑張ります。」
マテリアは上機嫌でローニャ達の元に向かった。
「見ててくださいましたか?私だって出来るんですわよ!」
「凄かったよ!何時の間に覚えたの?」
「私だって日々勉強しているんです。アリスだってさっきの魔法は独学でしょう?」
「まぁね。」
その後四人で魔法の特訓を続けて数分後に学園長から招集がかかり生徒達は一箇所に集まった。そして全員が集まると学園長が話し始めた。
「え~諸君、今日は手順をすっ飛ばして実践をしてもらってわかったと思うが、中級魔法は初級魔法と違いかなりの魔力を消費する。その為実際に敵と戦う際は最初から中級を使うのではなく、先ずは初級魔法で様子見をし、魔力を温存、弱い敵ならば中級魔法で直ぐに終らせるでもいいが、相手が強い敵なら初級魔法で相手の体力を少しずつ削り、最後に中級や上級魔法で止めを刺す。という戦い方が最も効果的だ。まぁ元々魔力が多いなら最初から中級や上級でもいいかも知れないが、あまりオススメはしない。現在冒険者等の実戦を経験したもの、或いは将来する者は覚えておくように。以上!ではこれで私の授業は終わりだ。解散!」
学園長の話が終わりようやく授業が終わった。
教室に戻ろうと歩き出す。すると
「おい!」
と大声で呼び止められ振り返ると、眉間に皺を寄せ悔しそうな表情を浮かべるラッシュが立っていた。四人が一斉に振り返りラッシュを見ると、ラッシュは四人、特にローニャに向けて威勢を放った。
「僕は絶対に認めないぞ!お前らなんかより僕の方が優れてるんだからな!」
そう言い放ってラッシュは早歩きで去っていった。
「何が言いたかったんだろ。」
ローニャが疑問を抱いているとレーナが理由を話した。
「あいつ、さっき枝飛ばして人形を壊そうとしてたけど壊すどころか傷つける事すら出来てなかったみたいでな。んでお前ら三人だけが人形を壊せてたから悔しいんだろ。ま、ほっとけよ、どうせ口先だけだし。」
三人はそう言いながら歩くレーナの後ろを追いかけて教室に戻ろった。
その後午前の授業を終え、昼食を済ませて廊下で三人で話し合う。
「これからどうする?俺は運動がしたい。」
「う~ん、私は勉強かな。」
「私はアリスについて行きますわ。」
「ローニャはどうする?」
「私は本が読みたい。」
「じゃあ、私達と図書室に行かない?」
「良いよ。」
「え~。んじゃ俺も行く。」
話し合いの末、四人で図書室に向かった。それぞれで違う本を取りアリスとマテリアは勉強を。ローニャとレーナは読書をした。しかしレーナは少し退屈そうだった。そこへ男が話し掛けてきた。
「ミレオレーナ。勉強か?にしては励んではいないようだが。」
その男の姿を見るなりレーナは一気に顔が強張り、機嫌が悪くなった。
「あ?てめぇには関係ねーだろ。失せろ。」
何時に無く荒い口調で男に威嚇をする。しかし男はそれに動じる事は無く、それどころか男はレーナに説教を始めた。
「口が悪いな。お前は“俺の妹なんだ”。俺の妹らしい振る舞いをしろ。」
「は!今更兄貴面かよ。甘えて欲しいならもっと兄貴らしくしたらどうだ?まぁどの道俺はお前なんか家族とすら思いたく無いけどな。血が繋がってるだけで虫酸が走る。」
「いい加減子供みたいな振る舞いはやめろ。見苦しいぞ。」
そこで男がチラッと三人に視線を向けた。
「そんな奴らとつるんでいるから成長しないんだ。友達は選んだ方が良いぞ。それに、そいつは噂の野蛮人だろう。そんな奴と一緒に居るとお前まで野蛮になるぞ。」
男の言葉に少しずつイラついていたレーナが三人を馬鹿にするような言葉を聞いて、遂に怒りを抑えられなくなった。
「てめぇいい加減にしやがれ!俺が誰と関わろうが俺の勝手だろうが!人の生き方に口出しすんじゃねえ!」
「レーナちゃん落ち着いて。もう出よ。」
レーナの怒号が図書室に響いた。そこへ
「貴方達、図書室では静かにしなさい。」
教員に注意されレーナは部屋を急ぎ足で出て行った。それをアリスが追いかけ、マテリアとローニャは本を片付けてから跡を追った。
マテリアに付いていくと中庭の隅のベンチで頭を抱えるレーナとレーナを宥めているアリスが見えた。二人に駆け寄り、ローニャは事情を聞いた。
「さっきの誰なの?だいぶ失礼な奴だったけど。」
「あの人はレーナちゃんのお兄さんだよ。この学園の高等部。初めて会った時からあの人はあんな感じなんだ。」
「初めて御顔を見た時は格好よくて素敵な先輩だと思っていましたのに。いざ話してみれば、話せば話すほど酷い人なのですわ。」
そこへ震えた声でレーナが事情を話し始めた。
「俺が幼い頃は仲が良かったんだ。俺は元々都市外れの村に住んでた。俺の母親は元【聖女】で、強い光の適性を持ってて、父親は複数の適性を持った【英雄適性】を持ってるんだ。両親がそんなだから兄貴は複数適性を持ってて、しかも光の適性まであった。俺は勿論喜んださ。俺は兄貴の事は好きだったし、尊敬してた。だから兄貴なら当然だって思った。でも俺の適性が【地属性】だけだって分かってから、段々と両親は私を見なくなった。最初は家族でやっていた畑仕事も、兄貴にはやらせなくなって、母親は兄貴の面倒を見るからってやらなくなって。父親は他の仕事があるからってやらなくなって。最後には私だけがやるようになってた。食事も四人で食卓を囲んでたのが、兄貴だけが豪勢な食事を用意されて、段々と私の食事が貧相になって行って。最後には少ない金だけ渡して自分で調達しろとか言う始末だ。そんな風に兄貴を贔屓する生活が続いてたから、兄貴はどんどん傲慢で我儘に成って行った。しかも段々贔屓はエスカレートして行って。私が近所の店の手伝いをして貰ってた小遣いを兄貴やれとか言って取り上げられたりもした。兄貴がやらかした事を「あいつはそんな事しない」とか言って私に責任を押し付けたり。やりたくもない剣の稽古に付き合わされて、仕舞にはあいつは本物の剣を持ち出して、嫌だって言ってる私を無視して斬り掛かって来て、逃げようとした私の背中を斬りつけた事もある。その時はまたまた通り掛かった隣人が助けてくれたけど、親はまた「そんな事有り得ない」「勝手に怪我した」の一点張りで認めようとしなかった。そんな嫌気が指すような日々にを続けて、私が7歳位の頃に兄貴が父親の大事にしてた物を壊したんだ。でもその時も兄貴は責められず、私が責められた。私はやってないって反論しただ。でも両親は「嘘をつくな」「お前以外有り得ない」としか言わない、兄貴は両親の後でニヤニヤしてるだけだった。最終的には「反省するまで帰ってくるな」とか言って大雨の中に私を追い出しやがったんだ。私はむしゃくしゃして、いっそ家出してやろうと思って。村を向けだしたんだ。でもその先で倒れて。気が付いたら師匠に拾われてた。私は恩返しをしたいのもあったけど。何より師匠の仕事に憧れて弟子入りしたんだ。そっからずっと師匠の元で働いてて、もう何年も家に帰ってない。師匠に学園に入らないかって勧められて入ったはいいけど、あいつが居る事は知らなかったから、あいつを見た時は驚いたよ。話し掛けられた時はあいつも変わってると思って期待したけど。変わってるどころか、更に傲慢さに拍車がかかってて、それでもう家に帰る気が一生消えたよ。」
「大変だったんだね。」
「お前程じゃないけどな。」
「大変さは人によって違う。と思う…。少なくとも私の母親は酷い人じゃなかったから。お互い家族で大変な目にあったけど、その分良い事もあったし、私は好きなだけ肉が食べれた。」
「何だそれ、もっとあったろ。」
「後、色んな人に出会えた。ここに居る三人も含めて。」
ローニャの言葉に照れくさそうにしながらも少し嬉しそうだった。話をして少し気持ちが落ち着いたのか、レーナはそしてスッと立ち上った。
「なーんか話したらスッキリしたぜ。悪いな、変な話聞かせちまって。それと聞いてくれてありがとな。」
「気にするな、またいつでも聞いてやる。」
「口調変わってるぞ。」
「さ!もう戻りますわよ、時間ギリギリですわね。」
そう言ってマテリアが急ぎ足で教室に向うのを三人で追いかけた。
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