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【聖女のベール】地味な薬草係の正体は、戦場を駆ける「伝説の聖女」であった
第五話 剥がされた真実
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ついに、大国ゼーレの戴冠式の日が来た。
本来ならば栄光に包まれるはずの王宮は、枯れ果てた庭園と淀んだ空気に覆われ、不気味な静寂に包まれていた。
だが、玉座に座るゼクスは狂気じみた笑みを浮かべていた。
「来る……。今日、伝説の『ベールの聖女』が必ず俺の前に現れる。返事がないのは、この俺を驚かせるための演出に違いない。大国の王となる俺の招待を無視できる女など、この世にいるはずがないのだからな!」
会場に列席した貴族たちがざわめく中、重厚な扉が開いた。現れたのは、隣国リリア王国のカイル王子。そしてその隣には、純白のベールを身に纏い、神秘的な魔力を放つ女性が立っていた。
「おお! 来た、ついに来てくれたか!」
ゼクスは王としての威厳も忘れ、歓喜の声を上げて駆け寄った。
「カイル、なぜお前が隣にいる! さぁ聖女よ、このような小国の男から離れ、真の支配者である私のもとへ来い、聖女よ! お前こそが、大国の王となる俺にふさわしい!」
しかし、カイル王子はゼクスを軽蔑の目で見据え、女性の手を握った。
「ゼクス王子。……貴殿は最後まで、何も分かっていないようだ」
女性がゆっくりと、自らの手でベールを外した。
露になったその顔を見て、ゼクスは凍り付いた。
「な、ぜ……お前が……。リーネ!? 何の冗談だ! この記念すべき日になぜお前のような泥臭い無能者がここにいる!」
ゼクスは顔を引きつらせ、周囲の参列者にも構わず絶叫した。
「ゼクス様。これが冗談に見えますか?」
リーネの声は、かつての控えめなものではなかった。凛とした、聖女としての威厳に満ちていた。
「私が裏庭で行っていたのは、あなたが仰ったような無価値な『泥遊び』ではありません。この国は、あなたがたが繰り返した戦争によって、血に染まりすぎています。私はあそこで泥に塗れながら、溢れ出した『大地の呪い』をその身に吸い上げ、この大国の結界の『根』を癒し続けていたのです」
「な……んだと……?」
「あなたがそれを『国家の恥』と呼び、私の献身を自らの手で捨てたのです。私が差し出した薬……あれこそが、呪いを吸い上げた私の魔力の結晶でした。あなたはそれを踏みにじった」
ゼクスはよろめき、後ずさりした。
「う、嘘だ! お前のような女に、そんな力があるはずがない!」
「あなたが私の慈悲を土に沈めたその瞬間に、この国の守護は失われました。……そして、あなた個人にかけられた呪いも、もう限界でしょう」
リーネがカイルと共にゼクスに背を向け、会場を去ろうとしたその瞬間だった。
王宮全体を支えていた透明な何かが、バリバリという轟音と共に崩壊した。
リーネが大国を去ったことで守護は緩やかに死に絶えていたが、今の彼女の決別の言葉によって、残っていた微かな魔力の繋がりまでもが完全に断絶したのである。
「あ、ああああ! 痛い、体が、引き裂かれる……!」
ゼクスは胸をかきむしり、玉座の前でのたうち回った。大地の呪いが魔物となって王宮に押し寄せ、守護を失ったゼクスの肉体を直接焼き始めたのだ。
彼を救う薬草を育てる者はもういない。彼のために泥にまみれる聖女も、もうここにはいない。
かつて「ゴミ」と呼んで追い出した女性が、実は国と自分を救っていた唯一の光だった。
その真実を知ったゼクスの絶叫は、崩れゆく王宮の中に虚しく響き渡るだけだった。
本来ならば栄光に包まれるはずの王宮は、枯れ果てた庭園と淀んだ空気に覆われ、不気味な静寂に包まれていた。
だが、玉座に座るゼクスは狂気じみた笑みを浮かべていた。
「来る……。今日、伝説の『ベールの聖女』が必ず俺の前に現れる。返事がないのは、この俺を驚かせるための演出に違いない。大国の王となる俺の招待を無視できる女など、この世にいるはずがないのだからな!」
会場に列席した貴族たちがざわめく中、重厚な扉が開いた。現れたのは、隣国リリア王国のカイル王子。そしてその隣には、純白のベールを身に纏い、神秘的な魔力を放つ女性が立っていた。
「おお! 来た、ついに来てくれたか!」
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「カイル、なぜお前が隣にいる! さぁ聖女よ、このような小国の男から離れ、真の支配者である私のもとへ来い、聖女よ! お前こそが、大国の王となる俺にふさわしい!」
しかし、カイル王子はゼクスを軽蔑の目で見据え、女性の手を握った。
「ゼクス王子。……貴殿は最後まで、何も分かっていないようだ」
女性がゆっくりと、自らの手でベールを外した。
露になったその顔を見て、ゼクスは凍り付いた。
「な、ぜ……お前が……。リーネ!? 何の冗談だ! この記念すべき日になぜお前のような泥臭い無能者がここにいる!」
ゼクスは顔を引きつらせ、周囲の参列者にも構わず絶叫した。
「ゼクス様。これが冗談に見えますか?」
リーネの声は、かつての控えめなものではなかった。凛とした、聖女としての威厳に満ちていた。
「私が裏庭で行っていたのは、あなたが仰ったような無価値な『泥遊び』ではありません。この国は、あなたがたが繰り返した戦争によって、血に染まりすぎています。私はあそこで泥に塗れながら、溢れ出した『大地の呪い』をその身に吸い上げ、この大国の結界の『根』を癒し続けていたのです」
「な……んだと……?」
「あなたがそれを『国家の恥』と呼び、私の献身を自らの手で捨てたのです。私が差し出した薬……あれこそが、呪いを吸い上げた私の魔力の結晶でした。あなたはそれを踏みにじった」
ゼクスはよろめき、後ずさりした。
「う、嘘だ! お前のような女に、そんな力があるはずがない!」
「あなたが私の慈悲を土に沈めたその瞬間に、この国の守護は失われました。……そして、あなた個人にかけられた呪いも、もう限界でしょう」
リーネがカイルと共にゼクスに背を向け、会場を去ろうとしたその瞬間だった。
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リーネが大国を去ったことで守護は緩やかに死に絶えていたが、今の彼女の決別の言葉によって、残っていた微かな魔力の繋がりまでもが完全に断絶したのである。
「あ、ああああ! 痛い、体が、引き裂かれる……!」
ゼクスは胸をかきむしり、玉座の前でのたうち回った。大地の呪いが魔物となって王宮に押し寄せ、守護を失ったゼクスの肉体を直接焼き始めたのだ。
彼を救う薬草を育てる者はもういない。彼のために泥にまみれる聖女も、もうここにはいない。
かつて「ゴミ」と呼んで追い出した女性が、実は国と自分を救っていた唯一の光だった。
その真実を知ったゼクスの絶叫は、崩れゆく王宮の中に虚しく響き渡るだけだった。
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