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23話
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「ビアンカ様ぁ」
マックスおじさんの声が遠くから聞こえた。
だめだよ、ここに来たら。
あなたじゃ継母にやられるだけだから。
そう思ったのに私に多い被さって代わりに鞭で打たれ始めた。
その時。
「おやめなさい」
意識が遠のき始めた時、誰かが止めた。
ああ、マックスおじさん、巻き込んでごめんなさい。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
痛い……
背中が燃えるように熱い……痛みで体が動かない……
この前の高熱の時より体が辛い………
「うっ……」
「よかった……やっと目覚められましたね」
知らない人の声。でもその声はとても心配そうで優しい。
誰?
「………………」
目を開けて周囲を見たけど知らない場所。
でもとても素敵な部屋で私の部屋とはまるで違う。可愛らしい家具がセンスよく置かれていた。
ここはどこ?
優しく声をかけてくれた女性が、私が不安そうにしているのに気がつき説明してくれた。
「まだ背中が痛むでしょう?痛み止めをまず飲みましょう。あとで薬も付け替えてあげますからね」
「……ありがとうございます」
「ここは、王妃様の王宮内の一室です。ビアンカ様が……倒れられているのを王妃様がちょうど馬車で通っていて気が付かれてここに連れ帰ったのです」
「王妃様が?」
王妃様は私の母の従姉妹で二人はとても仲が良かった。
幼い頃はよく母に連れられて王宮に遊びに来ていた。王太子殿下や他の弟妹達とも仲が良かった時もあった。
母が亡くなってからは全く来なくなったんだよね。
あの意識を失う前に聞こえた声は王妃様だったんだ。
痛みを堪えながらなんとか声を絞り出した。
「あの……私を庇って鞭で打たれたマックスおじさんと、女の子はどうなりましたか?」
「大丈夫よ。男の人はきちんと手当てをして侯爵家が責任を持って面倒を見ているわ。女の子はあなたのおかげで怪我もせず元気にしているわ」
「…………よかった」
ホッとしたのか、痛み止めが効いてきたのかまた眠たくなった。
うとうととし始めた私に女性は優しく声をかけてきた。
「アーシャ、あなたが亡くなってからビアンカはとても辛い思いをして暮らしていたのね。何も知らずにいたわたくしを許して。今度こそは王妃様と絶対守るからね」
アーシャ………という言葉が眠ってしまう寸前の私の耳に聞こえてきた。
母の名前……懐かしい。もうどれくらい母の名前を耳にしていなかったのだろう。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
「眠ってしまったの?」
王妃がビアンカが目覚めたと聞いて部屋にやってきたのに、ビアンカは青白い顔をしたまままた眠りについていた。
痩せ細った体、痛々しい背中。そして太ももの古傷の鞭で打たれたあと。
今も熱が上がったり下がったりで体は衰弱していた。
「ビアンカは自分を助けた御者と、助けた女の子のことを心配していました」
「そう……ほんと馬鹿な子ね。どれほど酷い目に遭ったのか……あの時わたくしがあの道を通らなかったら、あの女はビアンカにさらにどんな酷いことをしていたのか……考えただけで恐ろしいわ」
「はい。アーシャが亡くなった後すぐにミラー伯爵が再婚したと聞いていましたが、悪い噂は聞いておりませんでした。それにクーパー侯爵家のダイガット殿と結婚したと聞いていましたし、あそこなら安心してビアンカを任せられると思っておりました」
「あまり他家のことに口出しはできないから黙っていたけど、調べれば調べるほどビアンカの境遇はあまりにも酷いわ。もう侯爵家には帰すべきではないと思っているの」
「王妃様、アーシャはわたくしの親友でした。王妃様が一人の令嬢を助けると問題になりかねます。わたくしがビアンカを庇護下におきます。クーパー侯爵家やミラー伯爵家など蹴散らしてあげますわ」
「あら?わたくしがビアンカを庇護下においても親戚だから問題ないわ。これまで放置してしまったんだもの。わたくしだって守ってあげたいの」
二人はビアンカの部屋から出て話し合った。
諜報員が調べてきた資料をパラパラとめくった。
「まずはミラー伯爵夫人を罰しないといけませんね。これまで表では優しい夫人だと言われていたのに、たくさんの人の前であんな酷い仕打ちを平気でしたのは、ビアンカに対してかなり鬱憤が溜まっていたのでしょう」
「そうみたいね、屋敷内ではビアンカに対してよく体罰を行なっていたようね。それも自分の鬱憤を解消するためだけに」
「この一年、伯爵との関係が上手く行っていなくてイライラしていたようですね」
二人は報告書を読めば読むほど胸がムカムカとしてきて、眉を顰めた。
マックスおじさんの声が遠くから聞こえた。
だめだよ、ここに来たら。
あなたじゃ継母にやられるだけだから。
そう思ったのに私に多い被さって代わりに鞭で打たれ始めた。
その時。
「おやめなさい」
意識が遠のき始めた時、誰かが止めた。
ああ、マックスおじさん、巻き込んでごめんなさい。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
痛い……
背中が燃えるように熱い……痛みで体が動かない……
この前の高熱の時より体が辛い………
「うっ……」
「よかった……やっと目覚められましたね」
知らない人の声。でもその声はとても心配そうで優しい。
誰?
「………………」
目を開けて周囲を見たけど知らない場所。
でもとても素敵な部屋で私の部屋とはまるで違う。可愛らしい家具がセンスよく置かれていた。
ここはどこ?
優しく声をかけてくれた女性が、私が不安そうにしているのに気がつき説明してくれた。
「まだ背中が痛むでしょう?痛み止めをまず飲みましょう。あとで薬も付け替えてあげますからね」
「……ありがとうございます」
「ここは、王妃様の王宮内の一室です。ビアンカ様が……倒れられているのを王妃様がちょうど馬車で通っていて気が付かれてここに連れ帰ったのです」
「王妃様が?」
王妃様は私の母の従姉妹で二人はとても仲が良かった。
幼い頃はよく母に連れられて王宮に遊びに来ていた。王太子殿下や他の弟妹達とも仲が良かった時もあった。
母が亡くなってからは全く来なくなったんだよね。
あの意識を失う前に聞こえた声は王妃様だったんだ。
痛みを堪えながらなんとか声を絞り出した。
「あの……私を庇って鞭で打たれたマックスおじさんと、女の子はどうなりましたか?」
「大丈夫よ。男の人はきちんと手当てをして侯爵家が責任を持って面倒を見ているわ。女の子はあなたのおかげで怪我もせず元気にしているわ」
「…………よかった」
ホッとしたのか、痛み止めが効いてきたのかまた眠たくなった。
うとうととし始めた私に女性は優しく声をかけてきた。
「アーシャ、あなたが亡くなってからビアンカはとても辛い思いをして暮らしていたのね。何も知らずにいたわたくしを許して。今度こそは王妃様と絶対守るからね」
アーシャ………という言葉が眠ってしまう寸前の私の耳に聞こえてきた。
母の名前……懐かしい。もうどれくらい母の名前を耳にしていなかったのだろう。
✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎
「眠ってしまったの?」
王妃がビアンカが目覚めたと聞いて部屋にやってきたのに、ビアンカは青白い顔をしたまままた眠りについていた。
痩せ細った体、痛々しい背中。そして太ももの古傷の鞭で打たれたあと。
今も熱が上がったり下がったりで体は衰弱していた。
「ビアンカは自分を助けた御者と、助けた女の子のことを心配していました」
「そう……ほんと馬鹿な子ね。どれほど酷い目に遭ったのか……あの時わたくしがあの道を通らなかったら、あの女はビアンカにさらにどんな酷いことをしていたのか……考えただけで恐ろしいわ」
「はい。アーシャが亡くなった後すぐにミラー伯爵が再婚したと聞いていましたが、悪い噂は聞いておりませんでした。それにクーパー侯爵家のダイガット殿と結婚したと聞いていましたし、あそこなら安心してビアンカを任せられると思っておりました」
「あまり他家のことに口出しはできないから黙っていたけど、調べれば調べるほどビアンカの境遇はあまりにも酷いわ。もう侯爵家には帰すべきではないと思っているの」
「王妃様、アーシャはわたくしの親友でした。王妃様が一人の令嬢を助けると問題になりかねます。わたくしがビアンカを庇護下におきます。クーパー侯爵家やミラー伯爵家など蹴散らしてあげますわ」
「あら?わたくしがビアンカを庇護下においても親戚だから問題ないわ。これまで放置してしまったんだもの。わたくしだって守ってあげたいの」
二人はビアンカの部屋から出て話し合った。
諜報員が調べてきた資料をパラパラとめくった。
「まずはミラー伯爵夫人を罰しないといけませんね。これまで表では優しい夫人だと言われていたのに、たくさんの人の前であんな酷い仕打ちを平気でしたのは、ビアンカに対してかなり鬱憤が溜まっていたのでしょう」
「そうみたいね、屋敷内ではビアンカに対してよく体罰を行なっていたようね。それも自分の鬱憤を解消するためだけに」
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二人は報告書を読めば読むほど胸がムカムカとしてきて、眉を顰めた。
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