27 / 77
27話
しおりを挟む
殿下達がいなくなってホッとしたのか疲れてそのまままた眠りについた。
目覚めると王妃様の侍女さんが私の顔をのぞいていた。
「やっと目が覚めた?また熱が出ていたのよ?喉は渇かない?」
「………あっ……」
声が掠れて出なかったので頷く。
「待っててね」
優しい声が耳に入ってきた。まだ意識がはっきりせずうとうととしながら侍女さんの話し声に耳を傾けた。
「もうしばらくここで療養になりそうよ。屋敷から何か持ってきてもらえるようにお願いしなくてもいいかしら?」
そう言いながら水の入ったコップを渡してくれた。
少しずつ水を飲む。
屋敷………
そうだった。
忘れていた……あまりにも体調が悪く……ううん、ここに居れば嫌なことを忘れられていた。考えないようにしていた。
何も伝えずここに居るけど、どうなっているのだろう。
侯爵夫人もダイガットも何も言ってきていないのかしら?
クーパー侯爵はいつも忙しく、あまり屋敷にいない。
たくさんの領地を持っているので領地を回ったり、鉱山や工場の経営など、多岐にわたる仕事に精力的に動き回るお方だ。
私になんて興味はないだろう。
お父様との事業協力もそれなりに上手くいっているようで、もう私とダイガットの政略結婚も必要ないところまできているはず。
ダイガットとあと2年もすれば離縁出来ると思っていたけど、もう少し早く離縁出来るかもしれない。
でも白い結婚で戸籍に傷をつけないで済むのは、3年間何もなく過ごしたことを証明して離縁するのがいちばんではある。
彼に度々離縁してほしいと伝えているけど、本当は白い結婚を証明する方がお互い何もなかったことになるので、そちらを選ぶべき。
でも……外国で暮らすなら離婚歴などあっても関係ないのでは?とも思ってしまう。
でも高等部を卒業してある程度の成績をおさめておくことは、平民になっても仕事に就くには有利だし……
堪えてあと2年侯爵家で過ごすのと、外国へ行ってしまうのはどちらが正しいのか……フランソア様からすれば目障りなお飾りの妻には早く出て行ってほしいだろうな。
愛するダイガットとはやく正式に結ばれたいだろうし……ダイガットだって本当は早く私を追い出したいはずだわ。
だからこそ私が王妃様の宮にいても何の音沙汰もないのだろう。
まぁ私の顔を見ると不機嫌になって文句と嫌味しか言われないから会いたくもないけど。
私もつい冷たい態度をとってしまう。あまりにも二人に興味がなさ過ぎて。
ふふっ、私もつい『離縁してほしい』と口癖のように言うようになってる。
気にはしていないけど、そんなに私が嫌いなら、さっさと離縁してくれればいいのにと思う。
愛するフランソア様を悲しませる必要はないもの。
侍女さんに尋ねた。
「あの……あとどれくらいここにいることになるのでしょう?」
治れば侯爵家に帰らなければいけない。あそこは自分がいるべき場所ではないけど、居心地の悪い伯爵家に帰るよりはまだ安心して過ごせる。
「先生が背中の傷もひどいし熱も下がらないからもうしばらくかかると言っていたわ」
「そうですか……でも王妃様のお邪魔にならないか心配です」
「王妃様が完全に治るまでここに居るようにと言われたのよ?あなたに害をなす者たちを近づけないように言われているの。
………先ほど殿下が来られたのでしょう?
あのお方は害はないと思いますがもうあんなふうに突然来ることはないと思います。王妃様がしっかり叱っておられましたから」
「殿下が叱られたのですか?」
もう18歳の殿下が叱られている姿を想像するとなんだか笑ってしまう。
幼い頃、よく二人で悪さをしてはお母様と王妃様に叱られたことを思い出した。
ここに居ると懐かしい楽しかった思い出をたくさん思い出す。
心がふわっと温かくなるのを感じた。
目覚めると王妃様の侍女さんが私の顔をのぞいていた。
「やっと目が覚めた?また熱が出ていたのよ?喉は渇かない?」
「………あっ……」
声が掠れて出なかったので頷く。
「待っててね」
優しい声が耳に入ってきた。まだ意識がはっきりせずうとうととしながら侍女さんの話し声に耳を傾けた。
「もうしばらくここで療養になりそうよ。屋敷から何か持ってきてもらえるようにお願いしなくてもいいかしら?」
そう言いながら水の入ったコップを渡してくれた。
少しずつ水を飲む。
屋敷………
そうだった。
忘れていた……あまりにも体調が悪く……ううん、ここに居れば嫌なことを忘れられていた。考えないようにしていた。
何も伝えずここに居るけど、どうなっているのだろう。
侯爵夫人もダイガットも何も言ってきていないのかしら?
クーパー侯爵はいつも忙しく、あまり屋敷にいない。
たくさんの領地を持っているので領地を回ったり、鉱山や工場の経営など、多岐にわたる仕事に精力的に動き回るお方だ。
私になんて興味はないだろう。
お父様との事業協力もそれなりに上手くいっているようで、もう私とダイガットの政略結婚も必要ないところまできているはず。
ダイガットとあと2年もすれば離縁出来ると思っていたけど、もう少し早く離縁出来るかもしれない。
でも白い結婚で戸籍に傷をつけないで済むのは、3年間何もなく過ごしたことを証明して離縁するのがいちばんではある。
彼に度々離縁してほしいと伝えているけど、本当は白い結婚を証明する方がお互い何もなかったことになるので、そちらを選ぶべき。
でも……外国で暮らすなら離婚歴などあっても関係ないのでは?とも思ってしまう。
でも高等部を卒業してある程度の成績をおさめておくことは、平民になっても仕事に就くには有利だし……
堪えてあと2年侯爵家で過ごすのと、外国へ行ってしまうのはどちらが正しいのか……フランソア様からすれば目障りなお飾りの妻には早く出て行ってほしいだろうな。
愛するダイガットとはやく正式に結ばれたいだろうし……ダイガットだって本当は早く私を追い出したいはずだわ。
だからこそ私が王妃様の宮にいても何の音沙汰もないのだろう。
まぁ私の顔を見ると不機嫌になって文句と嫌味しか言われないから会いたくもないけど。
私もつい冷たい態度をとってしまう。あまりにも二人に興味がなさ過ぎて。
ふふっ、私もつい『離縁してほしい』と口癖のように言うようになってる。
気にはしていないけど、そんなに私が嫌いなら、さっさと離縁してくれればいいのにと思う。
愛するフランソア様を悲しませる必要はないもの。
侍女さんに尋ねた。
「あの……あとどれくらいここにいることになるのでしょう?」
治れば侯爵家に帰らなければいけない。あそこは自分がいるべき場所ではないけど、居心地の悪い伯爵家に帰るよりはまだ安心して過ごせる。
「先生が背中の傷もひどいし熱も下がらないからもうしばらくかかると言っていたわ」
「そうですか……でも王妃様のお邪魔にならないか心配です」
「王妃様が完全に治るまでここに居るようにと言われたのよ?あなたに害をなす者たちを近づけないように言われているの。
………先ほど殿下が来られたのでしょう?
あのお方は害はないと思いますがもうあんなふうに突然来ることはないと思います。王妃様がしっかり叱っておられましたから」
「殿下が叱られたのですか?」
もう18歳の殿下が叱られている姿を想像するとなんだか笑ってしまう。
幼い頃、よく二人で悪さをしてはお母様と王妃様に叱られたことを思い出した。
ここに居ると懐かしい楽しかった思い出をたくさん思い出す。
心がふわっと温かくなるのを感じた。
2,403
あなたにおすすめの小説
【完結】「心に決めた人がいる」と旦那様は言った
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
「俺にはずっと心に決めた人がいる。俺が貴方を愛することはない。貴女はその人を迎え入れることさえ許してくれればそれで良いのです。」
そう言われて愛のない結婚をしたスーザン。
彼女にはかつて愛した人との思い出があった・・・
産業革命後のイギリスをモデルにした架空の国が舞台です。貴族制度など独自の設定があります。
----
初めて書いた小説で初めての投稿で沢山の方に読んでいただき驚いています。
終わり方が納得できない!という方が多かったのでエピローグを追加します。
お読みいただきありがとうございます。
彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。
好きな人と友人が付き合い始め、しかも嫌われたのですが
月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
ナターシャは以前から恋の相談をしていた友人が、自分の想い人ディーンと秘かに付き合うようになっていてショックを受ける。しかし諦めて二人の恋を応援しようと決める。だがディーンから「二度と僕達に話しかけないでくれ」とまで言われ、嫌われていたことにまたまたショック。どうしてこんなに嫌われてしまったのか?卒業パーティーのパートナーも決まっていないし、どうしたらいいの?
麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
戦場からお持ち帰りなんですか?
satomi
恋愛
幼馴染だったけど結婚してすぐの新婚!ってときに彼・ベンは徴兵されて戦場に行ってしまいました。戦争が終わったと聞いたので、毎日ご馳走を作って私エミーは彼を待っていました。
1週間が経ち、彼は帰ってきました。彼の隣に女性を連れて…。曰く、困っている所を拾って連れてきた です。
私の結婚生活はうまくいくのかな?
心を失った彼女は、もう婚約者を見ない
基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。
寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。
「こりゃあすごい」
解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。
「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」
王太子には思い当たる節はない。
相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。
「こりゃあ対価は大きいよ?」
金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。
「なら、その娘の心を対価にどうだい」
魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる