あなたの愛はもう要りません。

たろ

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29話

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 ここに来て1週間が過ぎた。

 背中の痛みはまだあるけどもうベッドからも出られたし、そろそろ侯爵家へ帰らないと………と、侍女さんに話したはずなのに……

「ビアンカ、少しお散歩でもしましょう」
 シャルマ夫人にのんびりと散歩に誘われた。

 それも昔、勝手に花を摘んで叱られたあの花が咲いている庭園に行き、王妃様と3人でのんびりと紅茶をいただき、王宮専属のパテシェの高級なお菓子を頂いている。

「ビアンカは痩せすぎだから甘い物をしっかり食べないといけないわ」
「そうね、アーシャが心配しているわ」

 2人はお腹いっぱいだと言っても食べるように勧めてくださる。

 いや、病み上がりなので、いくら美味しくてもそんなに食べられないのだけど、遠慮していると思われているらしい。

 仕方なくお菓子を口に運ぶ。

 ゴクッと唾を飲み込み、そろそろずっと言わなきゃと思って、なかなか話せなかった言葉を口にした。



「あの……私……助けて頂きここで療養させて頂いてとても感謝しております。そろそろ体調も良くなってきましたので家へ帰ろうかと思っております」

 なのに、なぜか完全に無視。


「ねぇ、ビアンカ。あなた、ダイガットとはもうそういう関係にはなっているの?」

「へっ?」
 そういう関係?………はっ!いやいやあり得ない!気持ち悪い!あんなにフランソア様ベッタリの男と⁈

「あら?もう結婚して一年過ぎたのよね?」

「どうなの?」

 王妃様に公爵夫人、そんなこと昼間っから16歳になったばかりの小娘に訊く?

 目を見開いて思わず大きく首を横に振る。

「絶対、あり得ないです。手すら握っておりませんし、あまり屋敷で彼と会うこともないし、ましてや会話することも滅多にありません」

「ダイガットがビアンカと話さないの?」

 お二人とも高貴なお方なのに、今は興味津々のただのおばさまなのだ。

 うふふと笑いながら楽しそうに聞いてくる。

 シャルマ夫人も「そうなのね」となぜか納得したように頷いた。

「そう、それならよかった」

 はい、よかったです。

 白い結婚を目指しているので。

 ダイガットはフランソア様に差し上げるので、私は必要ないのです。

 ああ、でも、この国にいる間に一度くらいは恋をしてみたかったかも。

 あんなに愛し合う2人を目の前でみせられ続けたせいなのか、ほんの少し、恋愛っていいかもなんて思ってしまう。

 まだ一応人妻で、離縁を何度も伝えている立場ではあるけど。

 2人の会話に時々、すごい質問がブッ込まれるけど、とりあえず笑顔でやり過ごすことにした。
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