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52話
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「ビアンカ様」
声をかけてきたのは女騎士の方だった。
「はい?」
「そろそろ陽が落ちて寒くなります。奥様達には先に帰っていただきました。ビアンカ様もまだ体調が完全ではありませんので帰りませんか?」
「あっ……ごめんなさい……」
「謝ることではありませんよ?またここに来たくなったらいつでも会いに来れます。お母様もとても嬉しく思っていると思います」
女騎士さんの話し方はとても優しく言葉には思いやりがあり不思議なくらい心に響いた。
「はい、私も会えてとても嬉しくてつい時間を忘れてしまいました」
「森の中は薄暗くなると危険が伴います。少し早歩きになりますが大丈夫ですか?」
女騎士さんと侯爵家の護衛の二人が待っていてくれた。
二人とも嫌な顔もせず待ち続けてくれたことに感謝しながら屋敷へと戻った。
帰る間に女騎士さんがこの国のことを話してくれた。
名前はオリエさん。
この国の人ではないらしい。
オリソン国は一度崩壊し、新たに作られた新国で国王はまだ若く、有能であれば平民でも文官として雇い入れてくれる。本人にやる気さえあれば働く場所には困らないと教えてくれた。
オリエさんに送られて屋敷に戻るとお祖母様達が夕食を食べずに待っていてくれた。
「遅くなりすみませんでした」
「いいのよ。アーシャとゆっくり話はできたかしら?」
「はい」
叔父様家族も一緒に囲む食卓は賑やかでとても明るい、おかげでお料理もいつもより美味しくてついたくさん食べてしまう。
食事が終わる頃、お祖母様がオリエさんのことを少しだけ話してくれた。
「彼女は騎士だけど、この国に来る前はシャトナー国の王太子妃だったのよ?」
「えっ?」
確かに平民には見えなかった。
品があり話し方もとても綺麗で所作も美しくどこかの国の貴族令嬢だったのだろうと思ってはいた。
「ああ、オリエ様がビアンカの騎士としてそばにいてくれたのか?」
叔父様もご存知らしい。
「はい」
「オリエ様は元王太子だったイアン様と離縁されてこの国にやって来たんだ。そしてイアン様も王太子をやめて、今はこの国で官僚として働き、いろいろあったようだが二人はもうすぐこの国で結婚するんだ」
「王太子をやめて追いかけて来たんですか?」
「もう一人いるのよ?」
「もう一人?」
「ああ、イーサン様ですね。彼はカトリーヌ様を追いかけてこの国にやって来たんだ。そして今はこの国で王太子だったシャルトー国の大使としてこの国で夫婦で暮らしているんだ」
「この国はもう一人、受け入れることになりそうだな」
「殿下はもう国へ帰られたと思います」
「彼は公爵家にいるはずだが?」
公爵家……王妃様の実家であり、妹であるお祖母様の生家でもある。
お祖母様は侯爵家に嫁ぎ、王妃様のお父様が公爵家を継いだ。
殿下は公爵家の孫だ。だから公爵家に住んでいてもおかしくはない……姿が見えないから帰ったと思い込んでいた!
信じられない!
「ビアンカ、フェリックスはもう王太子ではない。殿下と呼ぶのはそろそろやめたほうがいい」
「でも……」
「ああ、俺もそう思う」
「へっ?」
私の背後から聞こえる声……
「どうしてここに居るのですか?」
◆ ◆ ◆
【完結】え?嫌です、我慢なんて致しません!わたしの好きにさせてもらいます
で、イーサン様とカトリーヌが出て来ます。
その話の中で、アーシャという名が出て来ますが、ビアンカの母とは全く別の人です。
名前が被ってしまい申し訳ありません。
声をかけてきたのは女騎士の方だった。
「はい?」
「そろそろ陽が落ちて寒くなります。奥様達には先に帰っていただきました。ビアンカ様もまだ体調が完全ではありませんので帰りませんか?」
「あっ……ごめんなさい……」
「謝ることではありませんよ?またここに来たくなったらいつでも会いに来れます。お母様もとても嬉しく思っていると思います」
女騎士さんの話し方はとても優しく言葉には思いやりがあり不思議なくらい心に響いた。
「はい、私も会えてとても嬉しくてつい時間を忘れてしまいました」
「森の中は薄暗くなると危険が伴います。少し早歩きになりますが大丈夫ですか?」
女騎士さんと侯爵家の護衛の二人が待っていてくれた。
二人とも嫌な顔もせず待ち続けてくれたことに感謝しながら屋敷へと戻った。
帰る間に女騎士さんがこの国のことを話してくれた。
名前はオリエさん。
この国の人ではないらしい。
オリソン国は一度崩壊し、新たに作られた新国で国王はまだ若く、有能であれば平民でも文官として雇い入れてくれる。本人にやる気さえあれば働く場所には困らないと教えてくれた。
オリエさんに送られて屋敷に戻るとお祖母様達が夕食を食べずに待っていてくれた。
「遅くなりすみませんでした」
「いいのよ。アーシャとゆっくり話はできたかしら?」
「はい」
叔父様家族も一緒に囲む食卓は賑やかでとても明るい、おかげでお料理もいつもより美味しくてついたくさん食べてしまう。
食事が終わる頃、お祖母様がオリエさんのことを少しだけ話してくれた。
「彼女は騎士だけど、この国に来る前はシャトナー国の王太子妃だったのよ?」
「えっ?」
確かに平民には見えなかった。
品があり話し方もとても綺麗で所作も美しくどこかの国の貴族令嬢だったのだろうと思ってはいた。
「ああ、オリエ様がビアンカの騎士としてそばにいてくれたのか?」
叔父様もご存知らしい。
「はい」
「オリエ様は元王太子だったイアン様と離縁されてこの国にやって来たんだ。そしてイアン様も王太子をやめて、今はこの国で官僚として働き、いろいろあったようだが二人はもうすぐこの国で結婚するんだ」
「王太子をやめて追いかけて来たんですか?」
「もう一人いるのよ?」
「もう一人?」
「ああ、イーサン様ですね。彼はカトリーヌ様を追いかけてこの国にやって来たんだ。そして今はこの国で王太子だったシャルトー国の大使としてこの国で夫婦で暮らしているんだ」
「この国はもう一人、受け入れることになりそうだな」
「殿下はもう国へ帰られたと思います」
「彼は公爵家にいるはずだが?」
公爵家……王妃様の実家であり、妹であるお祖母様の生家でもある。
お祖母様は侯爵家に嫁ぎ、王妃様のお父様が公爵家を継いだ。
殿下は公爵家の孫だ。だから公爵家に住んでいてもおかしくはない……姿が見えないから帰ったと思い込んでいた!
信じられない!
「ビアンカ、フェリックスはもう王太子ではない。殿下と呼ぶのはそろそろやめたほうがいい」
「でも……」
「ああ、俺もそう思う」
「へっ?」
私の背後から聞こえる声……
「どうしてここに居るのですか?」
◆ ◆ ◆
【完結】え?嫌です、我慢なんて致しません!わたしの好きにさせてもらいます
で、イーサン様とカトリーヌが出て来ます。
その話の中で、アーシャという名が出て来ますが、ビアンカの母とは全く別の人です。
名前が被ってしまい申し訳ありません。
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