54 / 77
54話
しおりを挟む
彼の問いに素直に返事をすることはできない。
大好きだから……私なんかが彼の隣にいては駄目だと思う。
もうすぐこの侯爵邸を後にして私は平民になり働くつもりだ。
高等部を卒業できなかった私が働ける場所はあまり多くはないけどビリーさんが雇ってくれそうなお店を紹介してくれると言っていたのでこれから頑張って一人で生きていくつもりだ。
もちろんまだ継母の脅威はなくなってはいないけど、ずっと隠れて震えながら生きるのも嫌。
「ビアンカ……答えてくれ?俺の気持ちは勝手な押し付けなのか?お前はずっと俺のそばにいると約束しただろう?俺もずっとお前を守ると約束した」
「………」
答えられるわけがない。貴方の気持ちに応えてしまわないように手を握りしめた。
「ビアンカ!お前は俺の後ろに……いや、俺の横に笑ってずっといてくれればいい。絶対に一生お前を守る。子供の頃は守る力すらなかった。でも今は違う。やっと自由になれた、何のしがらみもなく堂々とビアンカのそばで守ることができる」
「でも……」
「いいから俺のそばにいてくれ!名ばかりとはいえダイガットが夫だとお前が思っていた時俺は腹が立って仕方がなかった」
彼は肩で大きく息を吐いた。
「なんであんな奴のそばにお前がいないといけないんだ、いくらお前を守るためとはいえ許せなかった。だけど王族でしかない俺に勝手は許されない。自由なんてない、俺の意思なんてない。それでもマリアナが俺の婚約者候補でいてくれたおかげで他の女と婚約せずに済んだ」
王族だからこそ力がある。だけどそれは権力があるからこそどんなことでもしていいとは限らない。権力とは個人の欲望や利益を満たすための手段ではなく、国民の福祉、正義、秩序を守るために使わなければならない。
だから彼は私を個人的に守ることができなかった。それは王妃様自身もそうだった。
クーパー侯爵家が私を受け入れたのは王妃様のお気持ちを配慮してのことだったのだろう。そこに多少の打算もあったのかもしれないけど。
「この国では俺は公爵家の孫でしかない。お前を堂々と守ることができる。ずっとそばにいろ、これは……命令だけど……願いだ」
「……私の身分は平民だよ?」
「それなら俺だって平民だ、同じだろう?」
「いいの?」
「いいからここに居る。ビアンカ愛しています」
「私も……ずっと諦めようと思っていたのに……もう諦めなくていい?」
「俺はずっと諦めなかったぞ。何があっても最後まで抗うつもりだった」
「ありがとう」
大好きだから……私なんかが彼の隣にいては駄目だと思う。
もうすぐこの侯爵邸を後にして私は平民になり働くつもりだ。
高等部を卒業できなかった私が働ける場所はあまり多くはないけどビリーさんが雇ってくれそうなお店を紹介してくれると言っていたのでこれから頑張って一人で生きていくつもりだ。
もちろんまだ継母の脅威はなくなってはいないけど、ずっと隠れて震えながら生きるのも嫌。
「ビアンカ……答えてくれ?俺の気持ちは勝手な押し付けなのか?お前はずっと俺のそばにいると約束しただろう?俺もずっとお前を守ると約束した」
「………」
答えられるわけがない。貴方の気持ちに応えてしまわないように手を握りしめた。
「ビアンカ!お前は俺の後ろに……いや、俺の横に笑ってずっといてくれればいい。絶対に一生お前を守る。子供の頃は守る力すらなかった。でも今は違う。やっと自由になれた、何のしがらみもなく堂々とビアンカのそばで守ることができる」
「でも……」
「いいから俺のそばにいてくれ!名ばかりとはいえダイガットが夫だとお前が思っていた時俺は腹が立って仕方がなかった」
彼は肩で大きく息を吐いた。
「なんであんな奴のそばにお前がいないといけないんだ、いくらお前を守るためとはいえ許せなかった。だけど王族でしかない俺に勝手は許されない。自由なんてない、俺の意思なんてない。それでもマリアナが俺の婚約者候補でいてくれたおかげで他の女と婚約せずに済んだ」
王族だからこそ力がある。だけどそれは権力があるからこそどんなことでもしていいとは限らない。権力とは個人の欲望や利益を満たすための手段ではなく、国民の福祉、正義、秩序を守るために使わなければならない。
だから彼は私を個人的に守ることができなかった。それは王妃様自身もそうだった。
クーパー侯爵家が私を受け入れたのは王妃様のお気持ちを配慮してのことだったのだろう。そこに多少の打算もあったのかもしれないけど。
「この国では俺は公爵家の孫でしかない。お前を堂々と守ることができる。ずっとそばにいろ、これは……命令だけど……願いだ」
「……私の身分は平民だよ?」
「それなら俺だって平民だ、同じだろう?」
「いいの?」
「いいからここに居る。ビアンカ愛しています」
「私も……ずっと諦めようと思っていたのに……もう諦めなくていい?」
「俺はずっと諦めなかったぞ。何があっても最後まで抗うつもりだった」
「ありがとう」
2,659
あなたにおすすめの小説
彼が愛した王女はもういない
黒猫子猫
恋愛
シュリは子供の頃からずっと、年上のカイゼルに片想いをしてきた。彼はいつも優しく、まるで宝物のように大切にしてくれた。ただ、シュリの想いには応えてくれず、「もう少し大きくなったらな」と、はぐらかした。月日は流れ、シュリは大人になった。ようやく彼と結ばれる身体になれたと喜んだのも束の間、騎士になっていた彼は護衛を務めていた王女に恋をしていた。シュリは胸を痛めたが、彼の幸せを優先しようと、何も言わずに去る事に決めた。
どちらも叶わない恋をした――はずだった。
※関連作がありますが、これのみで読めます。
※全11話です。
麗しのラシェール
真弓りの
恋愛
「僕の麗しのラシェール、君は今日も綺麗だ」
わたくしの旦那様は今日も愛の言葉を投げかける。でも、その言葉は美しい姉に捧げられるものだと知っているの。
ねえ、わたくし、貴方の子供を授かったの。……喜んで、くれる?
これは、誤解が元ですれ違った夫婦のお話です。
…………………………………………………………………………………………
短いお話ですが、珍しく冒頭鬱展開ですので、読む方はお気をつけて。
戦場からお持ち帰りなんですか?
satomi
恋愛
幼馴染だったけど結婚してすぐの新婚!ってときに彼・ベンは徴兵されて戦場に行ってしまいました。戦争が終わったと聞いたので、毎日ご馳走を作って私エミーは彼を待っていました。
1週間が経ち、彼は帰ってきました。彼の隣に女性を連れて…。曰く、困っている所を拾って連れてきた です。
私の結婚生活はうまくいくのかな?
心を失った彼女は、もう婚約者を見ない
基本二度寝
恋愛
女癖の悪い王太子は呪われた。
寝台から起き上がれず、食事も身体が拒否し、原因不明な状態の心労もあり、やせ細っていった。
「こりゃあすごい」
解呪に呼ばれた魔女は、しゃがれ声で場違いにも感嘆した。
「王族に呪いなんて効かないはずなのにと思ったけれど、これほど大きい呪いは見たことがないよ。どれだけの女の恨みを買ったんだい」
王太子には思い当たる節はない。
相手が勝手に勘違いして想いを寄せられているだけなのに。
「こりゃあ対価は大きいよ?」
金ならいくらでも出すと豪語する国王と、「早く息子を助けて」と喚く王妃。
「なら、その娘の心を対価にどうだい」
魔女はぐるりと部屋を見渡し、壁際に使用人らと共に立たされている王太子の婚約者の令嬢を指差した。
【完結】貴方の望み通りに・・・
kana
恋愛
どんなに貴方を望んでも
どんなに貴方を見つめても
どんなに貴方を思っても
だから、
もう貴方を望まない
もう貴方を見つめない
もう貴方のことは忘れる
さようなら
あなたが捨てた花冠と后の愛
小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。
順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。
そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。
リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。
そのためにリリィが取った行動とは何なのか。
リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。
2人の未来はいかに···
花嫁は忘れたい
基本二度寝
恋愛
術師のもとに訪れたレイアは愛する人を忘れたいと願った。
結婚を控えた身。
だから、結婚式までに愛した相手を忘れたいのだ。
政略結婚なので夫となる人に愛情はない。
結婚後に愛人を家に入れるといった男に愛情が湧こうはずがない。
絶望しか見えない結婚生活だ。
愛した男を思えば逃げ出したくなる。
だから、家のために嫁ぐレイアに希望はいらない。
愛した彼を忘れさせてほしい。
レイアはそう願った。
完結済。
番外アップ済。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる