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56話
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エマ様とサラ様とは12年も前のことなのに話が終わることなく話し続けた。
二人とも月日が経っても変わっていない。
少し歳をとったなとは思うけど、変わらない優しさとあったかさにわたしの心は満たされていく。
ーーアイシャちゃんにこのあったかい気持ちが少しでも伝わりますように
屋敷についてから二人との話で疲れていることも忘れ話し込んでいた。
「アイシャちゃん、ゴードンが帰ってきたわ」
サラ様とゴードン様は夫婦になられていた。
なんだか不思議な感じ。
わたしが少し戸惑っていると、エマ様がクスクス笑い出した。
「アイシャちゃんからすると不思議だよね、二人が夫婦なんて」
「………ちょっと…」
わたしはすこし気まずいんだけど、素直に返事をした。
「そうね、あれからいろんなことがあったわ。月日が流れて変わっていくこともたくさんあったわ」
わたしの死後、何があったかキリアン君からおおまかには話を聞いていた。
「アイシャちゃん、お父様とお兄様に会ってみる気はないかしら?」
エマ様が気にしながらも聞いてきた。
「はい、出来れば会いたいと思います。キリアン君からわたしのことを嫌っていたわけではないと教えてもらいました。
まだ本当は会うことが怖い……でもアイシャちゃんのためにも会いたいと思っています。アイシャちゃんに伝えたいんです。傷ついてもつらくても逃げないで生きて欲しいと。
わたしはもう助からないと分かっていたので、最後まで頑張って生きようともせず死ぬことを選びました。でもアイシャちゃんにはこんな健康な体があります。どんなに辛くてもアイシャちゃんにはたくさん愛してくれる人がいるんです。
だから今度こそ頑張って生きて欲しい……わたしの分まで」
ーーアイシャちゃん、わたしの言葉が聞こえているかしら?
わたしは弱い人間だった。生きることよりも死ぬことを選んだ。
最後にわたしに優しくしてくれた人たちから黙って去って一人で死んでいくつもりだった。
アイシャちゃんにはわたしみたいに生きることを諦めて失望の中で眠り続けて欲しくない。
生きていることの、命の、大切さを知って欲しい。
◇ ◇ ◇
こちらに来て数日経ったある日
「アイシャちゃん、貴女のお父様のウィリアムが病で寝込んでいるそうなの。ずっと領地で一人で暮らしていたんだけど体調を崩してルイズが王都に連れ帰ってきたらしいの」
「え?お父様がご病気?」
わたしの記憶にあるお父様はいつも元気で、忙しそうに働く姿しかなかった。
わたしを見ることのない大きな背中。
そう、わたしはいつもお父様の背中だけ見ていた気がする。
『振り返って!わたしを見て』
何度も心の中でお父様に話しかけた。
屋敷でも王宮で遠くで見かけた時も……
でもお父様の視線はわたしを見ることはなかった。
「お見舞いに行きましょう」
キリアン君が「分かった」と答えてくれた。
久しぶりの生まれ育った屋敷の前に来た。
病で倒れてから帰ることがなかった苦しいだけの思い出しかない屋敷。
思い出すだけで体が震える。
足が動かない。
わたしもそして眠っているはずのアイシャちゃんも怖がっているのか、心の中から恐怖でわたしは頭の中が真っ白になった。
そんな時、あたたかな手の温もりがわたしの心の中にほわっと染み込んできた。
「アイシャお姉ちゃん、俺がそばに居るからね」
「そうよ、わたしもいるわ」
エマ様とキリアン君がにっこりとわたしを見た。
ーーうん、大丈夫。
アイシャちゃん、わたし今度こそ逃げないから。
二人とも月日が経っても変わっていない。
少し歳をとったなとは思うけど、変わらない優しさとあったかさにわたしの心は満たされていく。
ーーアイシャちゃんにこのあったかい気持ちが少しでも伝わりますように
屋敷についてから二人との話で疲れていることも忘れ話し込んでいた。
「アイシャちゃん、ゴードンが帰ってきたわ」
サラ様とゴードン様は夫婦になられていた。
なんだか不思議な感じ。
わたしが少し戸惑っていると、エマ様がクスクス笑い出した。
「アイシャちゃんからすると不思議だよね、二人が夫婦なんて」
「………ちょっと…」
わたしはすこし気まずいんだけど、素直に返事をした。
「そうね、あれからいろんなことがあったわ。月日が流れて変わっていくこともたくさんあったわ」
わたしの死後、何があったかキリアン君からおおまかには話を聞いていた。
「アイシャちゃん、お父様とお兄様に会ってみる気はないかしら?」
エマ様が気にしながらも聞いてきた。
「はい、出来れば会いたいと思います。キリアン君からわたしのことを嫌っていたわけではないと教えてもらいました。
まだ本当は会うことが怖い……でもアイシャちゃんのためにも会いたいと思っています。アイシャちゃんに伝えたいんです。傷ついてもつらくても逃げないで生きて欲しいと。
わたしはもう助からないと分かっていたので、最後まで頑張って生きようともせず死ぬことを選びました。でもアイシャちゃんにはこんな健康な体があります。どんなに辛くてもアイシャちゃんにはたくさん愛してくれる人がいるんです。
だから今度こそ頑張って生きて欲しい……わたしの分まで」
ーーアイシャちゃん、わたしの言葉が聞こえているかしら?
わたしは弱い人間だった。生きることよりも死ぬことを選んだ。
最後にわたしに優しくしてくれた人たちから黙って去って一人で死んでいくつもりだった。
アイシャちゃんにはわたしみたいに生きることを諦めて失望の中で眠り続けて欲しくない。
生きていることの、命の、大切さを知って欲しい。
◇ ◇ ◇
こちらに来て数日経ったある日
「アイシャちゃん、貴女のお父様のウィリアムが病で寝込んでいるそうなの。ずっと領地で一人で暮らしていたんだけど体調を崩してルイズが王都に連れ帰ってきたらしいの」
「え?お父様がご病気?」
わたしの記憶にあるお父様はいつも元気で、忙しそうに働く姿しかなかった。
わたしを見ることのない大きな背中。
そう、わたしはいつもお父様の背中だけ見ていた気がする。
『振り返って!わたしを見て』
何度も心の中でお父様に話しかけた。
屋敷でも王宮で遠くで見かけた時も……
でもお父様の視線はわたしを見ることはなかった。
「お見舞いに行きましょう」
キリアン君が「分かった」と答えてくれた。
久しぶりの生まれ育った屋敷の前に来た。
病で倒れてから帰ることがなかった苦しいだけの思い出しかない屋敷。
思い出すだけで体が震える。
足が動かない。
わたしもそして眠っているはずのアイシャちゃんも怖がっているのか、心の中から恐怖でわたしは頭の中が真っ白になった。
そんな時、あたたかな手の温もりがわたしの心の中にほわっと染み込んできた。
「アイシャお姉ちゃん、俺がそばに居るからね」
「そうよ、わたしもいるわ」
エマ様とキリアン君がにっこりとわたしを見た。
ーーうん、大丈夫。
アイシャちゃん、わたし今度こそ逃げないから。
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