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57話
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「そうよ、わたしもいるわ」
エマ様とキリアン君がにっこりとわたしを見た。
ーーうん、大丈夫。
アイシャちゃん、わたし今度こそ逃げないから。
わたしは重たい足を一歩前に踏み出した。
不思議にあとは普通に足が動いた。
ーーお父様はわたしを見てどう思うかしら?お兄様は嫌な顔をしないかしら?
心の中ではやっぱりやめておけばよかったかななんて思いながらも隣にいるエマ様とキリアン君のおかげで屋敷の中に入ることができた。
10年以上経っているのに屋敷の中はあまり変わっていなかった。
「お姉ちゃんはだあれ?」
屋敷に入ると5歳くらいの男の子がわたしを見てキョトンとしていた。
「初めましてわたしはアイシャ・レオンバルドと申します。本日はウィリアム様のお見舞いに伺いました」
「お祖父様の?」
わたしは男の子の目線に合わせるために屈んでにっこり笑った。
「お祖父様のところに案内してくれるかしら?」
「いいよ!」
わたしはエマ様とキリアン君に頭を下げて男の子と一緒にお父様の部屋へと向かった。
屋敷に入ってから何人かの見覚えのある使用人の人と目が合った。
みんなわたしを見て驚き、固まっていた。
涙を流して頭を下げている人もいた。
わたしに優しくしてくれた人たちばかりだった。
ーー声を掛けるべきなのかしら?
でもこの国では転生なんてみんな知らない。
魔法すらない国。
キリアン君はどうして魔力があるのかしら?
ふと感じた疑問……
わたしは男の子の後をついて行きながら、懐かしい廊下を歩く。
いつも床に這いながら掃除をした廊下。
必死で拭いた窓。
鞭で打たれた部屋。
思い出すのは辛い日々ばかり。
この屋敷に楽しい思い出も会いたい人もいない。
……なのにお父様に会いにきた。
過去を清算するために。
男の子はニコニコ笑いながら、部屋の前に立つと
「ここだよ」
と言って指を口にあてて、「静かにね」と教えてくれた。
ニコッと微笑み返して頷く。
扉をノックする手が震える。
部屋から「はい、どうぞ」と返事が聞こえた。
ゆっくりと扉を開ける。
そこにいたのは……静かにベッドで寝ている弱りきっている男性だった。
返事をしたのは侍女さんだったみたい。
「あ、アイシャ様?……そんなまさか」
その言葉を聞いてわたしは侍女さんを見た。
「お久しぶりですミーゼさん」
「やはりアイシャ様……」
ミーゼさんは突然座ったと思ったら頭を床にくっつけた。
「アイシャ様すみませんでした。お助けできなくて、ずっと辛い思いばかりさせて。なのにわたしは図々しくも今も生きてこちらで仕事をしています。申し訳ありません」
泣きながら必死でわたしに謝る姿があまりにも切なかった。
「ミーゼさん、頭を上げて立ってください」
わたしはミーゼさんのそばにいくと、背中に手を置いた。優しく触れた。
「わたしはミーゼさん達のおかげでこの屋敷でなんとか過ごすことが出来ました。夜中にこっそり食事を届けてくれたり、薬を塗ってくださいましたよね?
わたしに怒ったふりをしながら手助けしてくれたのもミーゼさん達でした。
わたしの方こそ助けてくれてありがとうございました。きちんとお礼も言えずこの屋敷を去ってしまったこと心残りでした。
みんなにお礼を言いたかった。貴女達のおかげでわたしはこの地獄のような屋敷で生きられたんです」
「でも、アイシャ様はご病気になられて苦しい思いをして亡くなられました。わたし達の所為です。お助けすることが出来ませんでした」
「違う、わたしの病気は簡単に助かる病気ではなかったの、特にこの国では治療をすることは出来なかったわ」
ミーゼさんは泣き止むことがなかった。
後ろにいた男の子が不思議そうな顔をしてわたしに話しかけた。
「アイシャ様とはお父様の死んだ妹の名前だよ?どうしてお姉ちゃんがその名前を名乗っているの?」
どう答えていいのか悩んでしまった。
本当のことを伝えていいのか……
「アイシャ……本当にアイシャなんだね」
ベッドからか細い声が聞こえてきた。
「お祖父様、大丈夫?寝てないと駄目だよ!」
お父様はベッドから何とか起きようとしていた。
ミーゼさんは急いでお父様のところへ行き背中を支えて起きる手助けをしていた。
「……お父様……無理しないでください」
「アイシャ、アイシャ、君が転生したことはカイザ様に聞いて知っていた。しかし会えるとは思っていなかった。いや、わたしには会う資格がないと思っていたんだ。すまなかった」
あの威厳がありいつも怖い顔をしたお父様が泣き出した。
エマ様とキリアン君がにっこりとわたしを見た。
ーーうん、大丈夫。
アイシャちゃん、わたし今度こそ逃げないから。
わたしは重たい足を一歩前に踏み出した。
不思議にあとは普通に足が動いた。
ーーお父様はわたしを見てどう思うかしら?お兄様は嫌な顔をしないかしら?
心の中ではやっぱりやめておけばよかったかななんて思いながらも隣にいるエマ様とキリアン君のおかげで屋敷の中に入ることができた。
10年以上経っているのに屋敷の中はあまり変わっていなかった。
「お姉ちゃんはだあれ?」
屋敷に入ると5歳くらいの男の子がわたしを見てキョトンとしていた。
「初めましてわたしはアイシャ・レオンバルドと申します。本日はウィリアム様のお見舞いに伺いました」
「お祖父様の?」
わたしは男の子の目線に合わせるために屈んでにっこり笑った。
「お祖父様のところに案内してくれるかしら?」
「いいよ!」
わたしはエマ様とキリアン君に頭を下げて男の子と一緒にお父様の部屋へと向かった。
屋敷に入ってから何人かの見覚えのある使用人の人と目が合った。
みんなわたしを見て驚き、固まっていた。
涙を流して頭を下げている人もいた。
わたしに優しくしてくれた人たちばかりだった。
ーー声を掛けるべきなのかしら?
でもこの国では転生なんてみんな知らない。
魔法すらない国。
キリアン君はどうして魔力があるのかしら?
ふと感じた疑問……
わたしは男の子の後をついて行きながら、懐かしい廊下を歩く。
いつも床に這いながら掃除をした廊下。
必死で拭いた窓。
鞭で打たれた部屋。
思い出すのは辛い日々ばかり。
この屋敷に楽しい思い出も会いたい人もいない。
……なのにお父様に会いにきた。
過去を清算するために。
男の子はニコニコ笑いながら、部屋の前に立つと
「ここだよ」
と言って指を口にあてて、「静かにね」と教えてくれた。
ニコッと微笑み返して頷く。
扉をノックする手が震える。
部屋から「はい、どうぞ」と返事が聞こえた。
ゆっくりと扉を開ける。
そこにいたのは……静かにベッドで寝ている弱りきっている男性だった。
返事をしたのは侍女さんだったみたい。
「あ、アイシャ様?……そんなまさか」
その言葉を聞いてわたしは侍女さんを見た。
「お久しぶりですミーゼさん」
「やはりアイシャ様……」
ミーゼさんは突然座ったと思ったら頭を床にくっつけた。
「アイシャ様すみませんでした。お助けできなくて、ずっと辛い思いばかりさせて。なのにわたしは図々しくも今も生きてこちらで仕事をしています。申し訳ありません」
泣きながら必死でわたしに謝る姿があまりにも切なかった。
「ミーゼさん、頭を上げて立ってください」
わたしはミーゼさんのそばにいくと、背中に手を置いた。優しく触れた。
「わたしはミーゼさん達のおかげでこの屋敷でなんとか過ごすことが出来ました。夜中にこっそり食事を届けてくれたり、薬を塗ってくださいましたよね?
わたしに怒ったふりをしながら手助けしてくれたのもミーゼさん達でした。
わたしの方こそ助けてくれてありがとうございました。きちんとお礼も言えずこの屋敷を去ってしまったこと心残りでした。
みんなにお礼を言いたかった。貴女達のおかげでわたしはこの地獄のような屋敷で生きられたんです」
「でも、アイシャ様はご病気になられて苦しい思いをして亡くなられました。わたし達の所為です。お助けすることが出来ませんでした」
「違う、わたしの病気は簡単に助かる病気ではなかったの、特にこの国では治療をすることは出来なかったわ」
ミーゼさんは泣き止むことがなかった。
後ろにいた男の子が不思議そうな顔をしてわたしに話しかけた。
「アイシャ様とはお父様の死んだ妹の名前だよ?どうしてお姉ちゃんがその名前を名乗っているの?」
どう答えていいのか悩んでしまった。
本当のことを伝えていいのか……
「アイシャ……本当にアイシャなんだね」
ベッドからか細い声が聞こえてきた。
「お祖父様、大丈夫?寝てないと駄目だよ!」
お父様はベッドから何とか起きようとしていた。
ミーゼさんは急いでお父様のところへ行き背中を支えて起きる手助けをしていた。
「……お父様……無理しないでください」
「アイシャ、アイシャ、君が転生したことはカイザ様に聞いて知っていた。しかし会えるとは思っていなかった。いや、わたしには会う資格がないと思っていたんだ。すまなかった」
あの威厳がありいつも怖い顔をしたお父様が泣き出した。
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