【完結】内緒で死ぬことにした〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を、なぜわたしは生まれ変わったの?〜  

たろ

文字の大きさ
68 / 97

68話

しおりを挟む
キリアン様に返事をしないといけない。

でもわたしには「行きたい」とは言えなかった。

だってわたしは記憶の残るアイシャであって、前世のままのアイシャではない。

ーー怖い。また家族に捨てられるかも…

でも、もう会えなくなると思うとキリアン様と会える日は、いつも以上に大事な時間になった。
指導してもらっている間は必死で頑張ってるけど、その後のお茶の時間は少しでも長くいたい。

最近この気持ちに名前がついた。

わたしはキリアン様に恋してるみたい。

前世のアイシャの記憶では幼い可愛いキリアン君。わたしが眠り続けている間のキリアン様は、わたしをやはりお姉ちゃんとして慕っていた。

でもわたしに対してはまだ親しくないはずなのに、「アイシャ」と呼んでいつもそばに居てくれた。

そう、気がつけばいつもそばに居て、魔力制御の仕方や魔法もたくさん教えてくれた。
キリアン様は魔法使いとしても優秀だけど、指導者としてもかなり優れていると思う。
わかりやすいし丁寧なので、わたしでも覚えやすい。

自分の属性ではない魔法も知識を持っていて、わたしに教えてくれた。
もちろんお祖父様やロウトも時間の空いている時は教えてくれた。

でもキリアン様が一番わかりやすかった。

お茶の時間が楽しみだったのも今この気持ちに気がついてからはわかる。
キリアン様が好きだったから。

優しく微笑むキリアン様、わたしが辛い時気がつけばいつもそばに居てくれるキリアン様。
わたしの学園での話を楽しそうに聞いてくれる。
一緒にお買い物に行ったりピクニックに行ったりと、塞ぎ込むわたしを外に連れ出してくれたキリアン様。
魔力暴走の時も自分が怪我をしてでもわたしを止めて庇ってくれる。
暴走した時、抱きしめて止めてくれた。
止めてくれずあのままだったらわたしは屋敷を半壊にしていたかもしれない。
屋敷の人達に大怪我をさせていたかもしれない。

それに……キリアン様が抱きしめてくれた時とても暖かかった。……心の中がふわっと感じた。

キリアン様への気持ちを「兄」だと思っていたけど、本当は「恋」だった。
ずっとわたしの怪我を治してくれた人に会ってみたくて、前世のアイシャがキリアン様と仲良くしているのを眠り続けているくせに気になって、再び目覚めたらキリアン様は家族のように当たり前のように近くにいる。

そんなキリアン様がいなくなったらぽっかりと穴が空いてしまう。

でもメリッサやロウトと離れるなんて考えられない。
お祖父様だって一人残すなんて嫌。
友達とも会えなくなるのは寂しい。

わたしにだってこの国にもたくさんの楽しい思い出も離れたくない人達もいる。

でも向こうの国にも会いたい人そばに居たい人がいる。

そんなことを考えていると、時間は勝手に過ぎ去っていく。

夕食を食べ終わりロウトが付いてきてくれて屋敷の敷地の中を散歩した。
「アイシャ様、少し外を歩きませんか?」

ロウトが珍しいことを言う。

「ええ、わかったわ」

少し肌寒くなってきた時間、メリッサがストールを持ってきて

「アイシャ様外は冷えますので」と掛けてくれた。

「ありがとう」
メリッサもわたしの後ろからついて来てくれる。

暗くなった屋敷の周りにはたくさんの灯り。
その灯りが庭に咲く花々を美しく見せてくれる。

星空もとても綺麗だった。

「ロウト、話があるのよね?」

「そうです、アイシャ様、わたしとメリッサは貴女がどこで暮らそうとわたしの主人は貴女だけです。
ですからずっと貴女について行きます」

「アイシャ様、わたしも貴女について行きたい。素直になってください。日々アイシャ様の顔から笑顔がなくなっています、それが答えではないのですか?」

「………二人はバナッシユ国について来てくれると言うの?
家族を置いて向こうに住んでもいいの?」

「………わたしとメリッサは……実は今付き合っております。お互い長い時間をアイシャ様のおかげで過ごしていて気がつけば大事な人になっていました。だから二人でならアイシャ様のそばで新しい家庭を築けます」

「え?うそ……全く気が付かなかったわ」
メリッサの顔を振り返ってみると、少し照れていた。

「使用人如きの恋愛事情を主に悟られるわけにはいきません」

ロウトも「まあ、恋愛に無知で鈍感なアイシャ様がわかるわけないですよ」

「うっ、確かに」
ロウトの砕けた話し方が好き。

二人だけの時はお兄さんみたいに接してくれる。

メリッサはいつも見守ってくれてお世話をしてくれるお姉さんみたいな人。

二人とも仕事なんだからそれ以上の感情なんて必要ないのに、いつもわたしを心配してくれる、優しい二人。
わたしの大好きな二人が結婚……
塞ぎ込んでいたくせに、今はとっても嬉しくて

「そっかあ、もしバナッシユ国へ行っても二人と離れなくていいのか」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

【書籍化決定】愛など初めからありませんが。

ましろ
恋愛
お金で売られるように嫁がされた。 お相手はバツイチ子持ちの伯爵32歳。 「君は子供の面倒だけ見てくれればいい」 「要するに貴方様は幸せ家族の演技をしろと仰るのですよね?ですが、子供達にその様な演技力はありますでしょうか?」 「……何を言っている?」 仕事一筋の鈍感不器用夫に嫁いだミッシェルの未来はいかに? ✻基本ゆるふわ設定。箸休め程度に楽しんでいただけると幸いです。

私が嫌いなら婚約破棄したらどうなんですか?

きららののん
恋愛
優しきおっとりでマイペースな令嬢は、太陽のように熱い王太子の側にいることを幸せに思っていた。 しかし、悪役令嬢に刃のような言葉を浴びせられ、自信の無くした令嬢は……

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

完結 貴族生活を棄てたら王子が追って来てメンドクサイ。

音爽(ネソウ)
恋愛
王子の婚約者になってから様々な嫌がらせを受けるようになった侯爵令嬢。 王子は助けてくれないし、母親と妹まで嫉妬を向ける始末。 貴族社会が嫌になった彼女は家出を決行した。 だが、有能がゆえに王子妃に選ばれた彼女は追われることに……

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

あなたには彼女がお似合いです

風見ゆうみ
恋愛
私の婚約者には大事な妹がいた。 妹に呼び出されたからと言って、パーティー会場やデート先で私を置き去りにしていく、そんなあなたでも好きだったんです。 でも、あなたと妹は血が繋がっておらず、昔は恋仲だったということを知ってしまった今では、私のあなたへの思いは邪魔なものでしかないのだと知りました。 ずっとあなたが好きでした。 あなたの妻になれると思うだけで幸せでした。 でも、あなたには他に好きな人がいたんですね。 公爵令嬢のわたしに、伯爵令息であるあなたから婚約破棄はできないのでしょう? あなたのために婚約を破棄します。 だから、あなたは彼女とどうか幸せになってください。 たとえわたしが平民になろうとも婚約破棄をすれば、幸せになれると思っていたのに―― ※作者独特の異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。教えていただけますと有り難いです。

いくら政略結婚だからって、そこまで嫌わなくてもいいんじゃないですか?いい加減、腹が立ってきたんですけど!

夢呼
恋愛
伯爵令嬢のローゼは大好きな婚約者アーサー・レイモンド侯爵令息との結婚式を今か今かと待ち望んでいた。 しかし、結婚式の僅か10日前、その大好きなアーサーから「私から愛されたいという思いがあったら捨ててくれ。それに応えることは出来ない」と告げられる。 ローゼはその言葉にショックを受け、熱を出し寝込んでしまう。数日間うなされ続け、やっと目を覚ました。前世の記憶と共に・・・。 愛されることは無いと分かっていても、覆すことが出来ないのが貴族間の政略結婚。日本で生きたアラサー女子の「私」が八割心を占めているローゼが、この政略結婚に臨むことになる。 いくら政略結婚といえども、親に孫を見せてあげて親孝行をしたいという願いを持つローゼは、何とかアーサーに振り向いてもらおうと頑張るが、鉄壁のアーサーには敵わず。それどころか益々嫌われる始末。 一体私の何が気に入らないんだか。そこまで嫌わなくてもいいんじゃないんですかね!いい加減腹立つわっ! 世界観はゆるいです! カクヨム様にも投稿しております。 ※10万文字を超えたので長編に変更しました。

処理中です...