【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

文字の大きさ
14 / 156
離縁してください

【14】

しおりを挟む
 ✴︎✴︎✴︎✴︎アレック✴︎✴︎✴︎✴︎    


「俺はお前なんか愛していない!」

 何がプレゼントだ?わたしを愛している?

 ふざけるな!俺はずっとシルビアだけを愛しているんだ。シルビアが大切だから、仕方なく我慢してソニア殿下の護衛をしているんだ!

 結婚なんてできるわけない!もし血が繋がっていなくても……

「俺はお前なんか好きではない!死んでもお前と結婚はしない!」

「な、何を言っているの?わたしのことが好きなはずよ!だからシルビアがあんなことになってもアレックは会いに行かなかったじゃない!」

「会いに行かなかったんじゃない!行けなかったんだ!ソニア殿下が俺の大切なシルビアに何をするかわからないから!」

「大切な…シルビア?や、やだ、アレックが一番大切なのはわたしでしょう?ずっとそばにいてくれたわよね?わたしとあなたは相思相愛だと言われてるわ。それに……王命で無理やりシルビアと結婚させられただけ………だからシルビアに冷たいし、屋敷にだって帰ろうとしない……わたしを愛しているから……」

 ソニア殿下が俺に恐る恐る手を伸ばし、そっと俺の服に触れた。

 縋ってこようとする殿下の手を払いのけた。

 殿下は目を見開き俺を恐怖の顔で見つめた。まるで俺が何か悪いことをしたかのように。

「どうして………わたしはずっと……あなただけを見てきたわ。あなたを愛してるの。あなたがシルビアと無理やり結婚させられた時どんなに辛かったか、苦しかったか……その手でシルビアを抱いたの?
 その口でシルビアにキスをしたの?愛しているなんて彼女に囁いた?許せないの……全て許せない……シルビアを殺してやるわ……あの女がいなくなれば、あなたはわたしの元に帰ってくるのよね?
 いつものアレックに戻ってくれるわよね?」

 俺はカッとなった気持ちを落ち着かせた。このまま感情をぶつけて仕舞えば、この人はシルビアに何をするかわからない。

 いや、もう目がおかしい。焦点が合ってない。
 俺は一度も殿下を愛しているなんて言っていないし、殿下のためにそばにいたわけではない。あくまで仕事だった。最近はシルビアに害を加えないように見張っていただけだ。

 俺がそばにいれば勝手に動くことができないから。

 俺の出生の秘密を殿下に伝えるか?いや、この人には伝えないと判断したのは陛下だ。この国の近衛騎士である俺が勝手にバラすことはできない。

 周りにいる使用人達は俺と殿下の会話をただ固唾を呑んで訊いている。誰も発しようとしない。

 同僚は俺を憐れんだ顔をしていた。

 重たい空気の中、俺は大きな溜息をついた。

「はあーー………殿下、あなたはもうすぐ隣国の婚約者の元に嫁がれる身です。ここでの発言は全て無かったことにいたします。どうかお幸せになってください。
 わたしはもうあなたの護衛騎士はたった今辞めさせていただきます」

 俺は頭を深々と下げた。

 別に殿下を敬っている訳ではない。

 殺したいほど憎んでいるし、軽蔑している。
 だがもうこんな女どうでもいい。

 俺はずっとこんな女のせいでシルビアとの大切な時間を邪魔されていたと思ったら、騎士なんて捨てたらいいと思った。

 いや、こんな国捨てたらいい。

 俺にとって大切なのはシルビアなんだ。あんな小娘に振り回されて愛するシルビアに辛い思いをさせてしまった。

 俺が今できることはシルビアと向き合うこと。嫌われても仕方ない……怒鳴られても仕方ない……拒絶されても……いや、立ち直れないか……それでも………

「愛している」と伝えなければ。

 王女の部屋から出ようと扉のノブに手を置く。

「許さない………シルビアもアレックも……」

 俺の背中に向かってそんな言葉を放つ殿下。

 この言葉に怯えシルビアを守るためにと耐えてきた。だが一生この言葉を聞き続けるのか?この女が嫁ぐまでと我慢するのか?

 この女がもし嫁がなければ?俺は蛇のような執念深いこの女に取り憑かれシルビアを諦めて暮らすのか?

「俺のシルビアに何かしたら許さない」

 俺はそう吐き捨てると殿下の顔すら見ないで部屋を後にした。

 急いで廊下を走った。

 同僚が部屋を出る時目で合図してくれた。

 バライズ殿下に今のことは話してくれるだろう。後の対処は殿下に頼む。

 俺はそんなことよりシルビアのところへ向かった。

 シルビアに会いたくて寝てるところを何度か訪ねた。起きている時に会いたかったが監視が厳しく、着替えを取りに帰る朝方に少しだけ顔を見るしかなかった。

 なんでもっと早く殿下に対して割り切らなかったのだろう。




 俺は屋敷に着くとすぐにシルビアの部屋へ向かった。

 だがそこには……シルビアはミゼルと楽しそうに話している声が聞こえてきた。

 シルビアは若い男が苦手になって部屋を出られなかったんじゃないのか?

 俺はシルビアの部屋に入れず扉の外で固まってただじっと立ち尽くしていた。


しおりを挟む
感想 155

あなたにおすすめの小説

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

心の中にあなたはいない

ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。 一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。

【完結】あなたを忘れたい

やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。 そんな時、不幸が訪れる。 ■□■ 【毎日更新】毎日8時と18時更新です。 【完結保証】最終話まで書き終えています。 最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。

彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら

赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。 問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。 もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?

白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』

鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」 公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。 だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。 ――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの? 何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。 しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。 それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。 そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。 温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。 そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。 「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」 「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」 離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。 そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。

処理中です...