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離縁してください
【15】
俺が廊下に立っていると執事のビルがそばにやってきた。
「アレック様……今のご気分は?」
ーーそんなの最悪だってわかるだろう?
目の前で愛するシルビアが他の男と楽しそうに話しているんだから。俺は部屋の中にも入れず外に漏れてくる声を聞いてどうしていいのかすらわからないのに。
「この光景が貴方がソニア殿下と過ごされていた光景で、シルビア様が見たものと同じだとは思いませんか?」
「俺は……好きでソニア殿下のそばにいた訳ではない。お前にだけは話していたはずだ」
「はい、そして絶対にシルビア様に話さないと貴方と約束をしました。どんなにシルビア様が泣かれていてもわたしは話すことができませんでした。この悔しさがお分かりになりますか?」
「仕方がないだろう、シルビアを守るためだ」
「そうです、シルビア様が知れば怖い思いをされます。でも……知ることがあれば悲しい想いをされなくてすみました…あんな辛そうなお顔を毎日私達も見なくてすみました」
「俺は間違えていたのか?」
「そこまでは申しません。ただ、せめてシルビア様を想っていることくらいは伝えて差し上げたら良かったと思います。
『もう少しだけ待っててほしい』それだけでも理由は言えなくても、聡いシルビア様なら何も聞かずに待っていてくれたかも知れませんね」
ふと中から聞こえる笑い声。
俺が見るシルビアはいつも寂しそうにしていた。何か言いたそうに。だけど俺は優しく話しかける事もなかった。どこで影が見ているかわからない。常に緊張して気が張り詰めていた。
言い訳でしかない……そんな中でもシルビアに伝える方法はあったはずだ。それを疎かにしていたのは俺だ。
少し聞こえてくる声が大きくなった。
ミゼルが帰り際で扉の近くに二人ともいるようだ。
「ミゼル、今日は会いにきてくれてありがとう。団長にも伝えたんだけど、屋敷でお菓子作りを始めようと思うの。わたしが届けることはできないけど屋敷の者が届けてくれると言ってくれているの。わたし、少しでも早くまたみんなに会えるように頑張るわ」
「みんな待ってる。と言ってもお前のこと……隠していたけど口に出さなくても知ってる。だからこそみんな心の中ではかなり心配してるし、お前の旦那のことも怒ってる。
殿下の護衛だからとお前のところに会いに来ないなんて……最低だ」
「アレックは……彼なりに苦しみながらなんとかしようと頑張ってるわ、団長からも話を聞いたの、だからそんなこと言わないで」
「俺も少しだけ聞いてる。俺が何か言う立場じゃないのはわかってるし、なんの力にもなれない。あまりにも相手が強い力を持ってるから。だけど、それでも、俺はシルビアが苦しむのはおかしいと思う」
「ありがとう、今は……どうすればいいのかまだ考えが纏まらない。でも一歩でも前に進みたい、怖いけど、やっと、団長やミゼルに会っても震えなくて済むようになったの。
これもここの屋敷のビルやジュリ達のおかげなの。みんながわたしに寄り添ってくれたから……」
「俺がお前の旦那のこと、とやかく言っても仕方ないか……だけど、何かあったら相談に乗るから」
「ありがとう」
ミゼルが部屋から出てきた。
俺が廊下にいることに気がついていた。全く顔色ひとつ変えない。
わかっていて俺のことを話したんだろう。
ミゼルは俺に「これ以上シルビアを傷つけたらあんたを許さないから」と言って帰って行った。
俺はすぐに部屋に入るのを躊躇った。
「誰かいるの?ビル?」
シルビアの声が聞こえてきた。
俺は返事が出来なくて黙ったままでいると
「シルビア様、中に入ってもよろしいでしょうか?」とビルが声をかけた。
「アレック様……今のご気分は?」
ーーそんなの最悪だってわかるだろう?
目の前で愛するシルビアが他の男と楽しそうに話しているんだから。俺は部屋の中にも入れず外に漏れてくる声を聞いてどうしていいのかすらわからないのに。
「この光景が貴方がソニア殿下と過ごされていた光景で、シルビア様が見たものと同じだとは思いませんか?」
「俺は……好きでソニア殿下のそばにいた訳ではない。お前にだけは話していたはずだ」
「はい、そして絶対にシルビア様に話さないと貴方と約束をしました。どんなにシルビア様が泣かれていてもわたしは話すことができませんでした。この悔しさがお分かりになりますか?」
「仕方がないだろう、シルビアを守るためだ」
「そうです、シルビア様が知れば怖い思いをされます。でも……知ることがあれば悲しい想いをされなくてすみました…あんな辛そうなお顔を毎日私達も見なくてすみました」
「俺は間違えていたのか?」
「そこまでは申しません。ただ、せめてシルビア様を想っていることくらいは伝えて差し上げたら良かったと思います。
『もう少しだけ待っててほしい』それだけでも理由は言えなくても、聡いシルビア様なら何も聞かずに待っていてくれたかも知れませんね」
ふと中から聞こえる笑い声。
俺が見るシルビアはいつも寂しそうにしていた。何か言いたそうに。だけど俺は優しく話しかける事もなかった。どこで影が見ているかわからない。常に緊張して気が張り詰めていた。
言い訳でしかない……そんな中でもシルビアに伝える方法はあったはずだ。それを疎かにしていたのは俺だ。
少し聞こえてくる声が大きくなった。
ミゼルが帰り際で扉の近くに二人ともいるようだ。
「ミゼル、今日は会いにきてくれてありがとう。団長にも伝えたんだけど、屋敷でお菓子作りを始めようと思うの。わたしが届けることはできないけど屋敷の者が届けてくれると言ってくれているの。わたし、少しでも早くまたみんなに会えるように頑張るわ」
「みんな待ってる。と言ってもお前のこと……隠していたけど口に出さなくても知ってる。だからこそみんな心の中ではかなり心配してるし、お前の旦那のことも怒ってる。
殿下の護衛だからとお前のところに会いに来ないなんて……最低だ」
「アレックは……彼なりに苦しみながらなんとかしようと頑張ってるわ、団長からも話を聞いたの、だからそんなこと言わないで」
「俺も少しだけ聞いてる。俺が何か言う立場じゃないのはわかってるし、なんの力にもなれない。あまりにも相手が強い力を持ってるから。だけど、それでも、俺はシルビアが苦しむのはおかしいと思う」
「ありがとう、今は……どうすればいいのかまだ考えが纏まらない。でも一歩でも前に進みたい、怖いけど、やっと、団長やミゼルに会っても震えなくて済むようになったの。
これもここの屋敷のビルやジュリ達のおかげなの。みんながわたしに寄り添ってくれたから……」
「俺がお前の旦那のこと、とやかく言っても仕方ないか……だけど、何かあったら相談に乗るから」
「ありがとう」
ミゼルが部屋から出てきた。
俺が廊下にいることに気がついていた。全く顔色ひとつ変えない。
わかっていて俺のことを話したんだろう。
ミゼルは俺に「これ以上シルビアを傷つけたらあんたを許さないから」と言って帰って行った。
俺はすぐに部屋に入るのを躊躇った。
「誰かいるの?ビル?」
シルビアの声が聞こえてきた。
俺は返事が出来なくて黙ったままでいると
「シルビア様、中に入ってもよろしいでしょうか?」とビルが声をかけた。
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