【完結】あなたとの離縁を目指します

たろ

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二度目の人生にあなたは要らない。離縁しましょう。

【6】

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「起きてください!」

 ミーナの明るい、でも優しい声が聞こえた。

「もう朝なの?」

「はい!昨日は食事食べなかったんですね?」

 昨日のまま置かれていたパンとサラダをミーナはチラッと見て溜息をついた。

「だってミーナが持ってきた食べ物以外怖くて食べられないわ」

「これは大丈夫だと思いますよ?」

「どうしてそう思うの?何が入っているかわからないわよ?」

「うーん、だって、悪意を感じないですもの」

 ミーナは魔力はないけど、勘が鋭い。

 直感で見分けてしまう。これはこれですごい特技。

 わたしもそんな能力があればいいのに……

「すぐ朝食をもらってきます!わたしもお腹が空いているんです」

「よろしくね」

 ーー今日こそはここを出る準備をしなければ。

 オーグに心の中で呼びかけてみる?

 “オーグ!ねぇ?きこえてる?”

 “…………………”

 ーーはあ、こんなことしても返事なんてないわよね?

 ミーナがいない間に自分の持ち物を調べた。

 マルワ国から持ってきたものなんてない。お父様に一つだけ欲しい物を言えと言われて、即答で『ミーナ』と答えた。

 嫁ぐことが決まってすぐにミーナがついて来てくれるとわたしに言ってくれた。だけどそんな願いは叶わないと思って諦めていた。だけど温情なのか?お父様が一つだけ望みを叶えてくれた。

 わたしの唯一のミーナ。

 この国に来てからのわたしはセデンに優しく迎え入れられた。ただ、周りはそれを良しと思っていないだけ。

 それでもミーナとセデンのおかげでここの暮らしも悪くはなかった。
 アイリーン妃が来るまでは。そしてミーナが死んでしまうまでは、それなりに幸せだった。

 二人での朝食を終えて、ミーナにどう切り出そうかと悩んでいたら、部屋に入ってきたのはコザックだった。

「朝食が終わりましたらさっさと診療所へ来てください。ったく、無能のくせに、トロくさい。まだ治療が終わってないこと忘れたんですか?」

「………わかったわ、ミーナは食器を片付けておいてくれるかしら?」

 ミーナについては来るなと、暗に伝えた。

 ミーナはこくりと頭を動かして、いそいそと食器を片付け始めた。

 わたしはミーナを置いてコザックについて行くことにした。

「さっさと歩いてください」

 ーーあなたよりわたしの方が若いし、ずっと痩せてるから早く歩けますけど?

 と言い返したいところだけど、言えば何倍にもなって返ってくるのはわかってるからそのまま黙ってついて行く。

 昨日治療した人たちはわたしの顔を見て、なんとも言えない顔をして頭を下げた。

 今まで馬鹿にしてきた無能なわたしがまさか怪我を治してくれるとは思っても見なかったのだろう。

 ーーここの国の人たちはお礼すら言えないのね。

 なんだか馬鹿馬鹿しくて笑いそうになった。

 軽い怪我の人たちはなぜか昨日は治すことが出来なかった。だから今日こそは……と思いやってきた。

 軽蔑した目でわたしを見ている騎士達。
「どうせ治らないんだろう」と呟く人もいた。

 ーーうん、わたし自身もやってみないとわからない。多分昨日は酷い怪我の人にしか癒しの魔法が効かなかった。でも今日は……

 軽く傷に手をかざす。

 ふわっと微かに光ると傷が……消えた。

「へっ?」騎士が変な声を上げた。
 ーーうん、だって昨日は全く何の反応もなかったもの。
 期待なんてしないわよね。

「あ、ありがとうございます」

 ーーうわぁ、お礼って言われると何だか照れ臭いものなのね。

 してもらって当たり前、治すのがお前の仕事だろう。
 って感じの態度しかされたことがないわたしにとって、今の言葉は何よりも嬉しくそしてくすぐったい気分。

 ーーさあ、やろう!

 気分を良くしたわたしはどんどん治療していった。

 それをなんとも言えない顔をしてコザックは見ていた。何か言い掛かりをつけたいのだろう。

 だけど今のところ何も言えずにいる。それがさらに彼の気分を損ねていた。

「ふうん、イリアナ妃、本当に癒しの力が強くなったんだ」

 振り返るとレンが腕を組んでわたしを見ていた。

 コザックはへこへことしながらレンのところへ手を擦り合わせて近寄っている。

 ーーうわぁ、20歳以上年下のレンに頭を下げてご機嫌取りするなんて、わたしなら嫌だわ。

 わたしはいくら蔑まれてもご機嫌取りだけはしない。……王妃は怖いけど……これは体に刻み込まれたからだと思う。
 蹴られたり殴られたり……は痛いもの。

 王妃のそばにいると萎縮して体が震える。

 はああ、これだけは死んで時を巻き戻しても、魔力が強くなっても変わらないわ。

 わたしはレンを無視して治療を続けた。
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