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離縁してあげますわ!
【2】
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夫は玄関の扉を「くそっ!」と蹴飛ばしてからトボトボと何処かへ向かった。
ミュエルと呼ばれた女はハンクスの頬を一発叩いてぷんぷんと怒りながら彼とは反対方向へと帰って行った。
「………奥様?」
玄関の鍵をかけてくれた使用人……ギャザはハンクスが子供の頃からこの家に仕えてくれている30代の男性で、家の修繕から庭仕事、馬車の御者まで何でもこなす。
本来ならハンクスを主人として仕えているはずなのに、どちらかと言うとわたしのために動いてくれる。
料理や掃除担当のギャザの妻であるファラ、その息子のスレン12歳もわたしと仲良しで、
「旦那様、あんな格好でどこへ行かれるんでしょうね?」
と呆れながら玄関の鍵を開けて、二人して外を覗いていた。
「アリア様、旦那様のことお止めできず申し訳ございませんでした」
ギャザが何度も頭を下げて詫びた。
「えっ?ギャザは何も悪くないわよ?ただ……ねぇ?当直明けで帰ってきたら自分のベッドで旦那が他の女と抱き合っているなんて……気持ち悪過ぎて、眠たかったのに、目が覚めてしまったわ」
はぁーーっと、大きなため息を吐いて、椅子に座った。
テーブルに温かいコーヒーと軽く食べられるサンドイッチをファラが出してくれた。
「ありがとう……いただくわ」
わたしは王城で財務省の事務官として働いている。今決算で忙しく、24時間フル稼働中、交代で夜勤までしてなんとか膨大な決算報告書を捌いているところ。
目は充血して眼鏡をかけていてもボヤッとして視力はさらに悪くなっている。
「はい、どうぞ」
スレンが温かいタオルを持ってきてくれた。
「ありがとう、助かるわ」
スレンに軽く微笑んでタオルを受け取り、眼鏡を外すと顔にタオルを乗せた。
「あーー、気持ちいい」
さっきの気持ち悪い光景を思い出しながら「あーー、もう!ハンクスさえいなければ気持ちよく過ごせるのに!」とぶつぶつ文句を言った。
「旦那様はあんなことをするお人ではなかったんですが」
ギャザがなんとも言えない顔をしながら申し訳なさげに言う。
「ギャザ、あなたが気にすることではないわ。ハンクスはただわたしのことを愛していないだけなの……わたしももう諦めるしかないのかもしれないわ」
結婚したばかりの頃はそれなりに会話も夫婦生活もしていた。
だけどこの一年は互いにすれ違い会話すらまともにしなくなった。
ハンクスの執事の収入よりも、そして子爵家の賃貸料の収入を足しても、わたしの方が収入がいい。
わたしは地味で眼鏡のなんの取り柄もない女だけど、その辺の男よりも高収入を得ている。
王城の文官、それも事務局長の補佐役のわたしは、責任も大きいがその分収入も多い。たくさんの部下を抱え、たくさんの仕事を抱え毎日書類と睨めっこをして過ごすエリートなのだ。
国王両陛下からの覚えがめでたく、王子たちとも会えば会話をするくらいの立場のわたし。
そう、女性のくせに両陛下や王子たちから気に入られわたしは夫からも周りからもあまりよく思われていない。
おかげで夫は最初は高収入で両陛下にも顔を知られているわたしをうまく利用できると思い結婚したはずなのに、今ではどう扱うべきか困り果て、わたしのことを避けはじめた。
どうして離縁しないのかって?
わたしもまだ既婚者であることが便利がいいから。
独身に戻れば、夫に捨てられた女、こんな高飛車な女性女官になど従いたくないと侮られてしまう。
でもそろそろ潮時じゃないの?
でも……この家って居心地がとてもいいの。それに王城からも馬車に乗れば10分くらいのとてもいい立地で、今どきこんないい場所に屋敷なんて建てられない。
先祖代々引き継がれたこの屋敷、小さいながらにきちんと手入れされているし、部屋数もそれなりにあるのでお客様が来ても困ることはない。
そう……それなりに部屋はあるのに……
そんなに二人の情事の姿をわたしに見せびらかしたかったのかしら?
はああーー……どうせならハンクスが出て行ってくれないかしら?
ミュエルと呼ばれた女はハンクスの頬を一発叩いてぷんぷんと怒りながら彼とは反対方向へと帰って行った。
「………奥様?」
玄関の鍵をかけてくれた使用人……ギャザはハンクスが子供の頃からこの家に仕えてくれている30代の男性で、家の修繕から庭仕事、馬車の御者まで何でもこなす。
本来ならハンクスを主人として仕えているはずなのに、どちらかと言うとわたしのために動いてくれる。
料理や掃除担当のギャザの妻であるファラ、その息子のスレン12歳もわたしと仲良しで、
「旦那様、あんな格好でどこへ行かれるんでしょうね?」
と呆れながら玄関の鍵を開けて、二人して外を覗いていた。
「アリア様、旦那様のことお止めできず申し訳ございませんでした」
ギャザが何度も頭を下げて詫びた。
「えっ?ギャザは何も悪くないわよ?ただ……ねぇ?当直明けで帰ってきたら自分のベッドで旦那が他の女と抱き合っているなんて……気持ち悪過ぎて、眠たかったのに、目が覚めてしまったわ」
はぁーーっと、大きなため息を吐いて、椅子に座った。
テーブルに温かいコーヒーと軽く食べられるサンドイッチをファラが出してくれた。
「ありがとう……いただくわ」
わたしは王城で財務省の事務官として働いている。今決算で忙しく、24時間フル稼働中、交代で夜勤までしてなんとか膨大な決算報告書を捌いているところ。
目は充血して眼鏡をかけていてもボヤッとして視力はさらに悪くなっている。
「はい、どうぞ」
スレンが温かいタオルを持ってきてくれた。
「ありがとう、助かるわ」
スレンに軽く微笑んでタオルを受け取り、眼鏡を外すと顔にタオルを乗せた。
「あーー、気持ちいい」
さっきの気持ち悪い光景を思い出しながら「あーー、もう!ハンクスさえいなければ気持ちよく過ごせるのに!」とぶつぶつ文句を言った。
「旦那様はあんなことをするお人ではなかったんですが」
ギャザがなんとも言えない顔をしながら申し訳なさげに言う。
「ギャザ、あなたが気にすることではないわ。ハンクスはただわたしのことを愛していないだけなの……わたしももう諦めるしかないのかもしれないわ」
結婚したばかりの頃はそれなりに会話も夫婦生活もしていた。
だけどこの一年は互いにすれ違い会話すらまともにしなくなった。
ハンクスの執事の収入よりも、そして子爵家の賃貸料の収入を足しても、わたしの方が収入がいい。
わたしは地味で眼鏡のなんの取り柄もない女だけど、その辺の男よりも高収入を得ている。
王城の文官、それも事務局長の補佐役のわたしは、責任も大きいがその分収入も多い。たくさんの部下を抱え、たくさんの仕事を抱え毎日書類と睨めっこをして過ごすエリートなのだ。
国王両陛下からの覚えがめでたく、王子たちとも会えば会話をするくらいの立場のわたし。
そう、女性のくせに両陛下や王子たちから気に入られわたしは夫からも周りからもあまりよく思われていない。
おかげで夫は最初は高収入で両陛下にも顔を知られているわたしをうまく利用できると思い結婚したはずなのに、今ではどう扱うべきか困り果て、わたしのことを避けはじめた。
どうして離縁しないのかって?
わたしもまだ既婚者であることが便利がいいから。
独身に戻れば、夫に捨てられた女、こんな高飛車な女性女官になど従いたくないと侮られてしまう。
でもそろそろ潮時じゃないの?
でも……この家って居心地がとてもいいの。それに王城からも馬車に乗れば10分くらいのとてもいい立地で、今どきこんないい場所に屋敷なんて建てられない。
先祖代々引き継がれたこの屋敷、小さいながらにきちんと手入れされているし、部屋数もそれなりにあるのでお客様が来ても困ることはない。
そう……それなりに部屋はあるのに……
そんなに二人の情事の姿をわたしに見せびらかしたかったのかしら?
はああーー……どうせならハンクスが出て行ってくれないかしら?
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