66 / 156
離縁してあげますわ!
【12】
しおりを挟む
ハンクスとの話し合いはなかなか離縁まではいかない。
もうそろそろハッキリさせないと。ずるずる話しても平行線のままだわ。
「わたしと結婚生活を続けてもあなたに益は何もないわ。離縁しましょう、それがお互いのためだと思うの」
「嫌だと言ったら?」
「ふふっ、離縁したいからわたしの部屋のベッドでミュエルさんと寝たんでしょう?
決定打が必要だった?わたしを惨めにさせて楽しかった?どうせこんな地味眼鏡では抱きたくもないわよね?さっさと捨てればよかったのよ」
言ってて惨めになる。
だけど泣きたくない。ハンクスの前では泣いてなんかあげない。平気な顔をしてあなたとさよならするの。
「ああそうだな。利用しようと近づいて結婚したのに口は堅いし、忙しすぎて俺との時間も少ない。素直じゃないし可愛げすらない」
ハンクスはため息をついた。
だったらさっさと捨てたらいい。可愛げなくて何が悪いの?
わたしを愛してもいない男に素直になんてなれない。
悔しくて唇を噛んでしまう。口の中に鉄の味がする。
「ここに離縁するための書類を用意してあります。国からの離縁の承諾書もあります」
この国では結婚も離縁も国からの承諾が必要だ。平民は自由に結婚や離縁ができる。でも貴族は厳しく管理されていた。
「あなたの有責で離縁しますので、わたしにはあなたと同等の爵位は残ったままで再婚できる権利をいただきます」
離縁すれば普通ならわたしは男爵家に戻るか平民になる。でもこの国のルールで相手の有責の場合、領地や爵位は相手のものであるけど、夫人だった頃の爵位は再婚や就職、生きていく上で必要な地位は、離縁の時の爵位を認めてもらえる。
なので子爵位として就職できるので仕事も選べる範囲は広がる。再婚する時も子爵位として再婚できるので伯爵家や頑張れば侯爵位の相手と再婚することも可能だ。
まぁ立場だけで、領地も何も持っているわけではないけど。
男爵位のままだったら子爵位か頑張っても伯爵位までの相手としか結婚できなかっただろう。
まぁ再婚ありきの話で、わたしは再婚する気もない。
もう恋愛なんて懲り懲り。就職だって自分の実力で這い上がったので彼の爵位なんて必要としない。でも男爵位では侮られることも多々あるのは確かで、子爵位の方が仕事はやりやすい。
「君は再婚するつもりなのか?」
「そんなことわからないわ。まだあなたと離縁すらしていないのよ?あなたのように妻がいながら不倫する人にはわからないでしょうけど」
嫌味を交えながらそう言った。
本当はもう全くもって恋愛に興味すらないのだけど。初恋は打ち砕かれ男なんて信用する気すら失せたもの。
「俺は………今もアリアを愛していると言ったら?」
「ふふっ、そんな冗談は要らないわ。ここにある書類はサインしてギャザに渡して。
もうこの屋敷には戻らない。あなたと会うのも今日が最後ね?今までありがとう」
彼に優しく微笑んだ……つもり。
泣き顔なんて見せない。最後は彼に精一杯着飾って眼鏡も外してわたしなりの美しい姿で別れを告げた。
彼に一礼して部屋を出た。
廊下で待っていたファラに
「荷物は後で誰かに取りにこらせるわ」と伝えた。
スレンが少し離れたところに立っていた。
わたしの姿を見ると「アリア様!」と涙声で抱きついてきた。
「スレン、また会いましょう。ここには帰ってこれないけど、街の新しくできたカフェに行って美味しいケーキを食べましょうね?」
スレンを抱きしめて、優しく頬づりした。
三年も一緒に暮らしたスレンはわたしにとっては歳の離れた弟のようだった。
ギャザとファラも大切な家族のように接してきた。3人と別れることが一番辛い。
ギャザが王城へと送ってくれた。
「ギャザ、ありがとう」
ギャザは深々と頭を下げてくれた。
「またお会いできる日を楽しみにしております」
「わたしも……」
ハンクスには涙すら出なかったのにギャザとの別れには涙が溢れた。
ギャザやファラ、スレンがいたからあの屋敷で3年も過ごすことができた。3人の温かさに仕事の疲れもハンクスとの確執も忘れることができた。
わたしは王城にある寮へ足を向けた。
結婚前から住んでいる寮は解約せずにそのまま借りていた。離縁するなんてその時は思ってもいなかった。ただ仕事が忙しく帰れない時用にとそのまま借りていた。
寮なので部屋の掃除も行き届いていたし仮眠室が空いていない時はこの寮で仮眠することも多かった。
それくらいハンクスとの結婚生活はすれ違っていた。わたし自身仕事ばかりでハンクスと過ごす努力をしていなかったのかもしれない。
彼自身わたしを愛していなかったけど、わたしも愛されようと努力はしていなかったのかもしれない。
寮のベッドに倒れ込むように寝そべると、枕に顔を埋めた。
もう周りの目を気にしないで済む。
わたしは声を出して泣いた。
「うっ……ううっ……」
ハンクスのことなんてとうの昔に諦めていたはずなのに。もうどうでもいいはずなのに。
初恋はとても苦くて苦しくて、どれだけ彼を愛していたのか今更ながら苦しくて……泣きたいだけ泣いた。
明日からはまた笑顔で仕事に戻らなければ。あのにっくき殿下の前では泣き腫らした顔なんて見せたくない。
だけど今は……涙が枯れるまで泣き続けたい気分だった。
もうそろそろハッキリさせないと。ずるずる話しても平行線のままだわ。
「わたしと結婚生活を続けてもあなたに益は何もないわ。離縁しましょう、それがお互いのためだと思うの」
「嫌だと言ったら?」
「ふふっ、離縁したいからわたしの部屋のベッドでミュエルさんと寝たんでしょう?
決定打が必要だった?わたしを惨めにさせて楽しかった?どうせこんな地味眼鏡では抱きたくもないわよね?さっさと捨てればよかったのよ」
言ってて惨めになる。
だけど泣きたくない。ハンクスの前では泣いてなんかあげない。平気な顔をしてあなたとさよならするの。
「ああそうだな。利用しようと近づいて結婚したのに口は堅いし、忙しすぎて俺との時間も少ない。素直じゃないし可愛げすらない」
ハンクスはため息をついた。
だったらさっさと捨てたらいい。可愛げなくて何が悪いの?
わたしを愛してもいない男に素直になんてなれない。
悔しくて唇を噛んでしまう。口の中に鉄の味がする。
「ここに離縁するための書類を用意してあります。国からの離縁の承諾書もあります」
この国では結婚も離縁も国からの承諾が必要だ。平民は自由に結婚や離縁ができる。でも貴族は厳しく管理されていた。
「あなたの有責で離縁しますので、わたしにはあなたと同等の爵位は残ったままで再婚できる権利をいただきます」
離縁すれば普通ならわたしは男爵家に戻るか平民になる。でもこの国のルールで相手の有責の場合、領地や爵位は相手のものであるけど、夫人だった頃の爵位は再婚や就職、生きていく上で必要な地位は、離縁の時の爵位を認めてもらえる。
なので子爵位として就職できるので仕事も選べる範囲は広がる。再婚する時も子爵位として再婚できるので伯爵家や頑張れば侯爵位の相手と再婚することも可能だ。
まぁ立場だけで、領地も何も持っているわけではないけど。
男爵位のままだったら子爵位か頑張っても伯爵位までの相手としか結婚できなかっただろう。
まぁ再婚ありきの話で、わたしは再婚する気もない。
もう恋愛なんて懲り懲り。就職だって自分の実力で這い上がったので彼の爵位なんて必要としない。でも男爵位では侮られることも多々あるのは確かで、子爵位の方が仕事はやりやすい。
「君は再婚するつもりなのか?」
「そんなことわからないわ。まだあなたと離縁すらしていないのよ?あなたのように妻がいながら不倫する人にはわからないでしょうけど」
嫌味を交えながらそう言った。
本当はもう全くもって恋愛に興味すらないのだけど。初恋は打ち砕かれ男なんて信用する気すら失せたもの。
「俺は………今もアリアを愛していると言ったら?」
「ふふっ、そんな冗談は要らないわ。ここにある書類はサインしてギャザに渡して。
もうこの屋敷には戻らない。あなたと会うのも今日が最後ね?今までありがとう」
彼に優しく微笑んだ……つもり。
泣き顔なんて見せない。最後は彼に精一杯着飾って眼鏡も外してわたしなりの美しい姿で別れを告げた。
彼に一礼して部屋を出た。
廊下で待っていたファラに
「荷物は後で誰かに取りにこらせるわ」と伝えた。
スレンが少し離れたところに立っていた。
わたしの姿を見ると「アリア様!」と涙声で抱きついてきた。
「スレン、また会いましょう。ここには帰ってこれないけど、街の新しくできたカフェに行って美味しいケーキを食べましょうね?」
スレンを抱きしめて、優しく頬づりした。
三年も一緒に暮らしたスレンはわたしにとっては歳の離れた弟のようだった。
ギャザとファラも大切な家族のように接してきた。3人と別れることが一番辛い。
ギャザが王城へと送ってくれた。
「ギャザ、ありがとう」
ギャザは深々と頭を下げてくれた。
「またお会いできる日を楽しみにしております」
「わたしも……」
ハンクスには涙すら出なかったのにギャザとの別れには涙が溢れた。
ギャザやファラ、スレンがいたからあの屋敷で3年も過ごすことができた。3人の温かさに仕事の疲れもハンクスとの確執も忘れることができた。
わたしは王城にある寮へ足を向けた。
結婚前から住んでいる寮は解約せずにそのまま借りていた。離縁するなんてその時は思ってもいなかった。ただ仕事が忙しく帰れない時用にとそのまま借りていた。
寮なので部屋の掃除も行き届いていたし仮眠室が空いていない時はこの寮で仮眠することも多かった。
それくらいハンクスとの結婚生活はすれ違っていた。わたし自身仕事ばかりでハンクスと過ごす努力をしていなかったのかもしれない。
彼自身わたしを愛していなかったけど、わたしも愛されようと努力はしていなかったのかもしれない。
寮のベッドに倒れ込むように寝そべると、枕に顔を埋めた。
もう周りの目を気にしないで済む。
わたしは声を出して泣いた。
「うっ……ううっ……」
ハンクスのことなんてとうの昔に諦めていたはずなのに。もうどうでもいいはずなのに。
初恋はとても苦くて苦しくて、どれだけ彼を愛していたのか今更ながら苦しくて……泣きたいだけ泣いた。
明日からはまた笑顔で仕事に戻らなければ。あのにっくき殿下の前では泣き腫らした顔なんて見せたくない。
だけど今は……涙が枯れるまで泣き続けたい気分だった。
1,255
あなたにおすすめの小説
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
心の中にあなたはいない
ゆーぞー
恋愛
姉アリーのスペアとして誕生したアニー。姉に成り代われるようにと育てられるが、アリーは何もせずアニーに全て押し付けていた。アニーの功績は全てアリーの功績とされ、周囲の人間からアニーは役立たずと思われている。そんな中アリーは事故で亡くなり、アニーも命を落とす。しかしアニーは過去に戻ったため、家から逃げ出し別の人間として生きていくことを決意する。
一方アリーとアニーの死後に真実を知ったアリーの夫ブライアンも過去に戻りアニーに接触しようとするが・・・。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
全てを捨てて、わたしらしく生きていきます。
彩華(あやはな)
恋愛
3年前にリゼッタお姉様が風邪で死んだ後、お姉様の婚約者であるバルト様と結婚したわたし、サリーナ。バルト様はお姉様の事を愛していたため、わたしに愛情を向けることはなかった。じっと耐えた3年間。でも、人との出会いはわたしを変えていく。自由になるために全てを捨てる覚悟を決め、わたしはわたしらしく生きる事を決意する。
私と幼馴染と十年間の婚約者
川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。
それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。
アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。
婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?
理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
白い結婚の末、離婚を選んだ公爵夫人は二度と戻らない』
鍛高譚
恋愛
白い結婚の末、「白い結婚」の末、私は冷遇され、夫は愛人を溺愛していた――ならば、もう要らないわ」
公爵令嬢 ジェニファー・ランカスター は、王弟 エドワード・クラレンス公爵 のもとへ政略結婚として嫁ぐ。
だが、その結婚生活は冷たく空虚なものだった。夫は愛人 ローザ・フィッツジェラルド に夢中になり、公爵夫人であるジェニファーは侮辱され、無視され続ける日々。
――それでも、貴族の娘は耐えなければならないの?
何の愛もなく、ただ飾り物として扱われる結婚に見切りをつけたジェニファーは 「離婚」 を決意する。
しかし、王弟であるエドワードとの離婚は容易ではない。実家のランカスター家は猛反対し、王宮の重臣たちも彼女の決断を 「公爵家の恥」 と揶揄する。
それでも、ジェニファーは負けない。弁護士と協力し、着々と準備を進めていく。
そんな折、彼女は北方の大国 ヴォルフ公国の大公、アレクサンダー・ヴォルフ と出会う。
温かく誠実な彼との交流を通じて、ジェニファーは 「本当に大切にされること」 を知る。
そして、彼女の決断は、王都の社交界に大きな波紋を呼ぶこととなる――。
「公爵夫人を手放したことを、いつか後悔しても遅いわ」
「私はもう、あなたたちの飾り人形じゃない」
離婚を巡る策略、愛人の凋落、元夫の後悔――。
そして、新たな地で手にした 「愛される結婚」。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる