67 / 156
離縁してあげますわ!
【13】
しおりを挟む
仕事が忙しいことに感謝をしたのは今回が初めてかもしれない。
殿下からのダメ出しで手直しをした。気がつけば朝までみんなで過ごした日もあった。
「アリア様、ご主人に叱られませんか?」
オズマンが心配そうに聞いてきた。
うん、ここ最近仮眠室か職場でしか生活していない。
流石に周りに心配され始めた。
そろそろみんなに伝えるべき?
「うーん………わたしハンクスと離縁したの。だから屋敷に帰らなくても大丈夫なの」
「えっ?」
「うそっ?」
「やっぱり⁈」
う、うん?やっぱり?
わたしがその声の方へと視線を向けるとバツが悪そうに顔を背けた部下。
「気がついてた?」
「あーー、いや、ただ、カラ元気?に見えていたので」気不味そうに部下が返事をした。
「そっか、元気に明るく仕事をしようと思って頑張ってたつもりだったけどわかっちゃうものなのね」
「え?気づきませんでしたよ?」
何人かはそう言ってくれた。
「わたし、一応書類上、子爵位だけは残っているの。だからまだ貴族として生きていくことになると思う。仕事の能力に爵位は要らないと思ってはいるけど、上のお方達は爵位でしか人をみないから、あって損はないもの」
「確かに。王城勤めは爵位がものを言いますもんね」
みんな「うんうん」と頷いた。
ほんと、もっと実力がものを言う世界になって欲しい。それならわたしはもっともっと頑張るのに。
たぶんわたしは補佐以上の昇進はない。
こうして上の人たちからダメ出しをされながら必死で部下たちのお尻を叩いて仕事をしていくしかない。
そんな話をしていると
「アリアは実力でここまで這い上がってきたんだ。十分すごいと思うよ」
殿下が話に混ざってきた。
「殿下……」
話を聞かれていると思っていなくて思わず唖然としたけど、我に返った。
「あっ、あ、ありがとうございます」
「まぁいつも僕の下でうろちょろしていたアリアがここまできたんだ」
一言余計だと思う。思わず小さくチッと舌打ちしてしまった。
殿下はそれに気がついていたみたいで、チラッとわたしを横目で見てフッと笑った。
なんだかその笑顔が悔しい。
またつい負けず嫌いが出てしまう。
「アリアの離縁は一昨日許可されたよ」
わたしの方をポンっと叩いて耳打ちした殿下。
ギャザがハンクスから受け取った書類を提出したと連絡が来ていた。
離縁の承諾書を事前に準備していたとはいえやはり数日かかったようだ。
ああ、ハンクスと本当に離縁したんだ。
殿下の言葉を聞いて、実感が湧いてきた。
これからは一人。もうギャザたちと仲良く過ごすことはない。
帰ってこないハンクスを待つことも、また女の人と夜を過ごしているのだろうとやきもちを焼くこともなくなった。
愛していない、好きではない、もうハンクスのことなんてどうでもいい。
ずっとそう思うことでなんとか過ごしてきた。
だけどやっぱり初恋は簡単に忘れられず、なぜか心が痛い。
「アリア様?」
オズマンが驚いた顔をしてわたしを見た。
ふと気がつくとみんながわたしの顔を驚いた顔をして見つめていた。
「えっ?」
手に落ちる雫。
ーー涙?
自分では気づかなかった。
涙が出ていた。
恥ずかしさとそして苦しさからわたしは駆け出した。
どこへ行けばいいのかわからない。だけど泣いている姿を見られたくない。
強がって頑張っていたのに。
こんな弱い自分を他人に見られたくない。
廊下を走っているといきなり腕を掴まれた。
「アリア!」
聴き慣れた声。でも今は聴きたくない声。
「離して!触らないで!」
殿下に声を荒げてしまった。
「アリア!」
わたしは殿下の手を振り払い走り出そうとした。
すると殿下がわたしを抱きしめた。
◆ ◆ ◆
いつも読んでいただきありがとうございます。
【裏切られたあなたにもう二度と恋はしない】
久しぶりに辛く切ないお話を始めました。
よろしくお願いします。
殿下からのダメ出しで手直しをした。気がつけば朝までみんなで過ごした日もあった。
「アリア様、ご主人に叱られませんか?」
オズマンが心配そうに聞いてきた。
うん、ここ最近仮眠室か職場でしか生活していない。
流石に周りに心配され始めた。
そろそろみんなに伝えるべき?
「うーん………わたしハンクスと離縁したの。だから屋敷に帰らなくても大丈夫なの」
「えっ?」
「うそっ?」
「やっぱり⁈」
う、うん?やっぱり?
わたしがその声の方へと視線を向けるとバツが悪そうに顔を背けた部下。
「気がついてた?」
「あーー、いや、ただ、カラ元気?に見えていたので」気不味そうに部下が返事をした。
「そっか、元気に明るく仕事をしようと思って頑張ってたつもりだったけどわかっちゃうものなのね」
「え?気づきませんでしたよ?」
何人かはそう言ってくれた。
「わたし、一応書類上、子爵位だけは残っているの。だからまだ貴族として生きていくことになると思う。仕事の能力に爵位は要らないと思ってはいるけど、上のお方達は爵位でしか人をみないから、あって損はないもの」
「確かに。王城勤めは爵位がものを言いますもんね」
みんな「うんうん」と頷いた。
ほんと、もっと実力がものを言う世界になって欲しい。それならわたしはもっともっと頑張るのに。
たぶんわたしは補佐以上の昇進はない。
こうして上の人たちからダメ出しをされながら必死で部下たちのお尻を叩いて仕事をしていくしかない。
そんな話をしていると
「アリアは実力でここまで這い上がってきたんだ。十分すごいと思うよ」
殿下が話に混ざってきた。
「殿下……」
話を聞かれていると思っていなくて思わず唖然としたけど、我に返った。
「あっ、あ、ありがとうございます」
「まぁいつも僕の下でうろちょろしていたアリアがここまできたんだ」
一言余計だと思う。思わず小さくチッと舌打ちしてしまった。
殿下はそれに気がついていたみたいで、チラッとわたしを横目で見てフッと笑った。
なんだかその笑顔が悔しい。
またつい負けず嫌いが出てしまう。
「アリアの離縁は一昨日許可されたよ」
わたしの方をポンっと叩いて耳打ちした殿下。
ギャザがハンクスから受け取った書類を提出したと連絡が来ていた。
離縁の承諾書を事前に準備していたとはいえやはり数日かかったようだ。
ああ、ハンクスと本当に離縁したんだ。
殿下の言葉を聞いて、実感が湧いてきた。
これからは一人。もうギャザたちと仲良く過ごすことはない。
帰ってこないハンクスを待つことも、また女の人と夜を過ごしているのだろうとやきもちを焼くこともなくなった。
愛していない、好きではない、もうハンクスのことなんてどうでもいい。
ずっとそう思うことでなんとか過ごしてきた。
だけどやっぱり初恋は簡単に忘れられず、なぜか心が痛い。
「アリア様?」
オズマンが驚いた顔をしてわたしを見た。
ふと気がつくとみんながわたしの顔を驚いた顔をして見つめていた。
「えっ?」
手に落ちる雫。
ーー涙?
自分では気づかなかった。
涙が出ていた。
恥ずかしさとそして苦しさからわたしは駆け出した。
どこへ行けばいいのかわからない。だけど泣いている姿を見られたくない。
強がって頑張っていたのに。
こんな弱い自分を他人に見られたくない。
廊下を走っているといきなり腕を掴まれた。
「アリア!」
聴き慣れた声。でも今は聴きたくない声。
「離して!触らないで!」
殿下に声を荒げてしまった。
「アリア!」
わたしは殿下の手を振り払い走り出そうとした。
すると殿下がわたしを抱きしめた。
◆ ◆ ◆
いつも読んでいただきありがとうございます。
【裏切られたあなたにもう二度と恋はしない】
久しぶりに辛く切ないお話を始めました。
よろしくお願いします。
1,123
あなたにおすすめの小説
私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません
藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は
愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。
夫が愛人を持つことも、
その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。
けれど――
跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。
その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。
私は悟ったのだ。
この家では、息子を守れないと。
元々、実家との間には
「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。
ならば話は簡単だ。
役目を終えた私は、離縁を選ぶ。
息子と共に、この家を去るだけ。
後悔しているようですが――
もう、私の知るところではありません。
これ以上私の心をかき乱さないで下さい
Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。
そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。
そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが
“君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない”
そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。
そこでユーリを待っていたのは…
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
なぜ、私に関係あるのかしら?
シエル
ファンタジー
「初めまして、アシュフォード公爵家一女、セシリア・アシュフォードと申します」
彼女は、つい先日までこの国の王太子殿下の婚約者だった。
そして今日、このトレヴァント辺境伯家へと嫁いできた。
「…レオンハルト・トレヴァントだ」
非道にも自らの実妹を長年にわたり虐げ、婚約者以外の男との不適切な関係を理由に、王太子妃に不適格とされ、貴族学院の卒業式で婚約破棄を宣告された。
そして、新たな婚約者として、その妹が王太子本人から指名されたのだった。
「私は君と夫婦になるつもりはないし、辺境伯夫人として扱うこともない」
この判断によって、どうなるかなども考えずに…
※ 中世ヨーロッパ風の世界観です。
※ ご都合主義ですので、ご了承下さい、
※ 画像はAIにて作成しております
嘘つきな唇〜もう貴方のことは必要ありません〜
みおな
恋愛
伯爵令嬢のジュエルは、王太子であるシリウスから求婚され、王太子妃になるべく日々努力していた。
そんなある日、ジュエルはシリウスが一人の女性と抱き合っているのを見てしまう。
その日以来、何度も何度も彼女との逢瀬を重ねるシリウス。
そんなに彼女が好きなのなら、彼女を王太子妃にすれば良い。
ジュエルが何度そう言っても、シリウスは「彼女は友人だよ」と繰り返すばかり。
堂々と嘘をつくシリウスにジュエルは・・・
すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…
アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。
婚約者には役目がある。
例え、私との時間が取れなくても、
例え、一人で夜会に行く事になっても、
例え、貴方が彼女を愛していても、
私は貴方を愛してる。
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 女性視点、男性視点があります。
❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。
【完結】あなたを忘れたい
やまぐちこはる
恋愛
子爵令嬢ナミリアは愛し合う婚約者ディルーストと結婚する日を待ち侘びていた。
そんな時、不幸が訪れる。
■□■
【毎日更新】毎日8時と18時更新です。
【完結保証】最終話まで書き終えています。
最後までお付き合い頂けたらうれしいです(_ _)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる