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(まだ)離縁しません
中編 6
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旦那様はシェリーゼ様に気がつきなんとなく居心地の悪さからか「向こうへ行こう」とわたしの肩を抱いた。
ーーえっ?初めての旦那様との接触?
考えてみたらエスコートで手を差し出されて手が触れ合うことはあったけどそれ以外の接近はしたことがない。
幼い頃、肩車をしてもらったり抱っこしてもらったりした時くらいかな。
今日の夜会もまだダンスは踊っていないもの。ずっとご挨拶ばかりでそんな暇はなかったし。
そう思いつつ少し照れながら旦那様とこの場所から離れようとした時。
「ジョンソン?久しぶりね?」
シェリーゼ様の方から声をかけてきた。
旦那様はチッと舌打ちをして振り返った。
「ああ、久しぶりだね」
シェリーゼ様のそばにいた夫人達は興味津々といった雰囲気でこちらを楽しそうに見ていた。
もちろんみんな一瞬で扇子を口元にあてて表情は隠したのだけど、目が笑ってる、バレバレだわ。
わたしは旦那様の手に少し力が入ったことに気がついた。
ーーちょ、ちょっと肩が痛い!
思わず体を旦那様にわかるように少しだけ動かすとハッと我に返った旦那様が手の力を緩めてくれた。
「……旦那様?」
小さな声で声をかけてみたら「あっ……すまない」と言いつつ、全くわたしのことを見ようともしない。
完全にシェリーゼ様に気が入ってしまってる。
ーーえ?もしかして離縁したけど本当はまだ愛しているとか?政略だとか言ってたけど本当は旦那様は好きだったの?
だからわたしに白い結婚を申し入れたのかな?わたしならお金のための結婚だと割り切って旦那様を好きにならないだろうし、安心だから?
周りのご夫人達も旦那様の様子をニヤニヤとしながら窺っているのがわかる。
わたしはこんな時どうするのが一番いいのかしら?
傷ついた顔をして彼女達を喜ばせる?
ーーやだな、馬鹿馬鹿しい。
シェリーゼ様に微笑みかけてみる?
ーーなんのために笑うの?はああ……
旦那様にヤキモチを焼いてわたしに気持ちを向けさせる?
ーー別に旦那様がシェリーゼ様にお心が残っていても興味ないわ。どうしよう?
とりあえず「旦那様!旦那様!」と小さな声で彼を呼んだ。
「う、うん?」
なんとかわたしの言葉に反応した。
「旦那様、みんなが見ていますよ?旦那様はシェリーゼ様のことを今も愛しているのですか?みんなとても興味津々で旦那様のことを見ておりますけど?」
「はっ?」
旦那様は本当に我に返ったようで「馬鹿な……」と言うとシェリーゼ様に「失礼する」と言って立ち去った。
ーーいや、わたし、置いて行かないで!
わたしも慌ててみんなに頭を、“優雅”に下げて満面の微笑みで「失礼致しますわ」と言ってその場を立ち去った。
バルコニーに行った旦那様を追いかけて、「旦那様?」と声をかけた。
「アンナ、さっきはすまなかった」
「いえいえ、旦那様……」
「………君は、いや、多分さっき周りに居た人達は勘違いしただろうな」
「勘違い?え?旦那様は今もシェリーゼ様を愛していることですか?」
「はああーー」
旦那様は面倒くさそうにため息をついた。
「やっぱり……違うんだ。彼女がフランを引き取りたいと言い出したんだよ。もちろん俺はフランを彼女に渡すつもりはない。だけど、さっきの彼女を見て、アレは妊娠しているのでは?と思ったんだ」
「ああ、そうですね。フランがとても悲しそうに泣いていました。自分だけのお母様ではなくなると」
「フランは……知っていたのか……そして君の前では泣いたのか?」
「旦那様の前ではフランは何も言わなかったのですか?あの、やけ食い事件の理由はご存知ないのですか?」
「やけ食い?ああ、君が食べすぎて寝込んだことか?あれはフランがシェリーゼの妊娠を知って落ち込んでやけ食いしたのか?」
「そうですよ!やけ食いすれば嫌なことなんて忘れると思って二人でやけ食いしたんです!」
「で、フランは何事もなかったのに、君は食べすぎて寝込んだのか?」
「うーん、確かに。でもフランはフランなりに頑張って納得したみたいです。お母様が幸せならぼくも幸せなんだって言ってました」
「そうか……4歳のフランが……フランはやはり母親と暮らしたいと思っているのだろうか?」
ーーえ?わたしに訊く?
「さぁ?どうでしょう?そんなの分かりませんよ。多分フラン本人もわからないのではないですか?大人の都合で母親から引き離されて大人の都合で月に一回だけ会えて、大人の都合で新しい継母がやってきて、今度は母親と暮らす?
フランはそれを受け入れるのか?わかりません。でも、もうすぐ、赤ちゃんが産まれ関心はやはり赤ちゃんに向かうと思います。それは仕方がないこと……」
自分も弟が産まれてしばらく寂しかったことを思い出した。
「それをフランが受け入れてシェリーゼ様達家族と幸せに暮らすのか、旦那様と今まで通りあの伯爵家で幸せに暮らすのかなんて、どちらもやってみないとわからないことですわ」
多分
「わからない、そうだな。うん、そうだ」
「わたしはフランと過ごせる今がとても幸せですが、フランはわたしをどう思っているのか……まだクソババアでしかないかもしれませんが。
シェリーゼ様への返事はどうなさいました?」
「うん?もちろん一応断ってはいるよ。ただあのお腹を見て、彼女は一体何を考えているんだと思ったんだ。フランにお守りの仕事でもさせるつもりなのか?と思ったんだが、君のようにシェリーゼ家族と幸せになるということも考えられないわけではないんだと感じたよ。
だけど俺はフランを幸せにするつもりだから手放す気はないけどね」
「フランは旦那様といる時とても嬉しそうにされています」
「そりゃそうだろう?フランのために君と結婚したんだから」
「そうでしたね、へんな女性と再婚させられそうになったんですもんね」
「君ならフランが懐くと思ったんだ。君には気の毒なことをしたけど本当に助かっているよ、君といる時のフランは子供らしい顔をしているからね?フランは4歳ながらにあまりにもしっかりしていていつもいい子を演じていたんだ」
「それは多分わたしの精神年齢がフランに近いということですかね?」
「ははっ、フランは君のことを慕っている。もし君がフランの母親になりたいと思ってくれるなら契約は解除してプロポーズしたいと思っているんだが、いやかな?」
「………えっ?フランの母親にはなりたいですが……旦那様の妻に?………それはちょっと……」
ーーわたしまだ19歳なんだもの。
確かに結婚を半分諦めてはいるけど、まだ、ほんの少し、人を好きになってみたい気持ちはあるのよね。
ーーえっ?初めての旦那様との接触?
考えてみたらエスコートで手を差し出されて手が触れ合うことはあったけどそれ以外の接近はしたことがない。
幼い頃、肩車をしてもらったり抱っこしてもらったりした時くらいかな。
今日の夜会もまだダンスは踊っていないもの。ずっとご挨拶ばかりでそんな暇はなかったし。
そう思いつつ少し照れながら旦那様とこの場所から離れようとした時。
「ジョンソン?久しぶりね?」
シェリーゼ様の方から声をかけてきた。
旦那様はチッと舌打ちをして振り返った。
「ああ、久しぶりだね」
シェリーゼ様のそばにいた夫人達は興味津々といった雰囲気でこちらを楽しそうに見ていた。
もちろんみんな一瞬で扇子を口元にあてて表情は隠したのだけど、目が笑ってる、バレバレだわ。
わたしは旦那様の手に少し力が入ったことに気がついた。
ーーちょ、ちょっと肩が痛い!
思わず体を旦那様にわかるように少しだけ動かすとハッと我に返った旦那様が手の力を緩めてくれた。
「……旦那様?」
小さな声で声をかけてみたら「あっ……すまない」と言いつつ、全くわたしのことを見ようともしない。
完全にシェリーゼ様に気が入ってしまってる。
ーーえ?もしかして離縁したけど本当はまだ愛しているとか?政略だとか言ってたけど本当は旦那様は好きだったの?
だからわたしに白い結婚を申し入れたのかな?わたしならお金のための結婚だと割り切って旦那様を好きにならないだろうし、安心だから?
周りのご夫人達も旦那様の様子をニヤニヤとしながら窺っているのがわかる。
わたしはこんな時どうするのが一番いいのかしら?
傷ついた顔をして彼女達を喜ばせる?
ーーやだな、馬鹿馬鹿しい。
シェリーゼ様に微笑みかけてみる?
ーーなんのために笑うの?はああ……
旦那様にヤキモチを焼いてわたしに気持ちを向けさせる?
ーー別に旦那様がシェリーゼ様にお心が残っていても興味ないわ。どうしよう?
とりあえず「旦那様!旦那様!」と小さな声で彼を呼んだ。
「う、うん?」
なんとかわたしの言葉に反応した。
「旦那様、みんなが見ていますよ?旦那様はシェリーゼ様のことを今も愛しているのですか?みんなとても興味津々で旦那様のことを見ておりますけど?」
「はっ?」
旦那様は本当に我に返ったようで「馬鹿な……」と言うとシェリーゼ様に「失礼する」と言って立ち去った。
ーーいや、わたし、置いて行かないで!
わたしも慌ててみんなに頭を、“優雅”に下げて満面の微笑みで「失礼致しますわ」と言ってその場を立ち去った。
バルコニーに行った旦那様を追いかけて、「旦那様?」と声をかけた。
「アンナ、さっきはすまなかった」
「いえいえ、旦那様……」
「………君は、いや、多分さっき周りに居た人達は勘違いしただろうな」
「勘違い?え?旦那様は今もシェリーゼ様を愛していることですか?」
「はああーー」
旦那様は面倒くさそうにため息をついた。
「やっぱり……違うんだ。彼女がフランを引き取りたいと言い出したんだよ。もちろん俺はフランを彼女に渡すつもりはない。だけど、さっきの彼女を見て、アレは妊娠しているのでは?と思ったんだ」
「ああ、そうですね。フランがとても悲しそうに泣いていました。自分だけのお母様ではなくなると」
「フランは……知っていたのか……そして君の前では泣いたのか?」
「旦那様の前ではフランは何も言わなかったのですか?あの、やけ食い事件の理由はご存知ないのですか?」
「やけ食い?ああ、君が食べすぎて寝込んだことか?あれはフランがシェリーゼの妊娠を知って落ち込んでやけ食いしたのか?」
「そうですよ!やけ食いすれば嫌なことなんて忘れると思って二人でやけ食いしたんです!」
「で、フランは何事もなかったのに、君は食べすぎて寝込んだのか?」
「うーん、確かに。でもフランはフランなりに頑張って納得したみたいです。お母様が幸せならぼくも幸せなんだって言ってました」
「そうか……4歳のフランが……フランはやはり母親と暮らしたいと思っているのだろうか?」
ーーえ?わたしに訊く?
「さぁ?どうでしょう?そんなの分かりませんよ。多分フラン本人もわからないのではないですか?大人の都合で母親から引き離されて大人の都合で月に一回だけ会えて、大人の都合で新しい継母がやってきて、今度は母親と暮らす?
フランはそれを受け入れるのか?わかりません。でも、もうすぐ、赤ちゃんが産まれ関心はやはり赤ちゃんに向かうと思います。それは仕方がないこと……」
自分も弟が産まれてしばらく寂しかったことを思い出した。
「それをフランが受け入れてシェリーゼ様達家族と幸せに暮らすのか、旦那様と今まで通りあの伯爵家で幸せに暮らすのかなんて、どちらもやってみないとわからないことですわ」
多分
「わからない、そうだな。うん、そうだ」
「わたしはフランと過ごせる今がとても幸せですが、フランはわたしをどう思っているのか……まだクソババアでしかないかもしれませんが。
シェリーゼ様への返事はどうなさいました?」
「うん?もちろん一応断ってはいるよ。ただあのお腹を見て、彼女は一体何を考えているんだと思ったんだ。フランにお守りの仕事でもさせるつもりなのか?と思ったんだが、君のようにシェリーゼ家族と幸せになるということも考えられないわけではないんだと感じたよ。
だけど俺はフランを幸せにするつもりだから手放す気はないけどね」
「フランは旦那様といる時とても嬉しそうにされています」
「そりゃそうだろう?フランのために君と結婚したんだから」
「そうでしたね、へんな女性と再婚させられそうになったんですもんね」
「君ならフランが懐くと思ったんだ。君には気の毒なことをしたけど本当に助かっているよ、君といる時のフランは子供らしい顔をしているからね?フランは4歳ながらにあまりにもしっかりしていていつもいい子を演じていたんだ」
「それは多分わたしの精神年齢がフランに近いということですかね?」
「ははっ、フランは君のことを慕っている。もし君がフランの母親になりたいと思ってくれるなら契約は解除してプロポーズしたいと思っているんだが、いやかな?」
「………えっ?フランの母親にはなりたいですが……旦那様の妻に?………それはちょっと……」
ーーわたしまだ19歳なんだもの。
確かに結婚を半分諦めてはいるけど、まだ、ほんの少し、人を好きになってみたい気持ちはあるのよね。
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