41 / 55
お久しぶりです
しおりを挟む
どうして彼に会うことがなかったのだろう。
ううん、たぶん彼が私に会わないように避けていたのだろう。
気付かなかった。
どうして今更こんなところで再会するのだろう。
今日も沢山の怪我人や病人の治療をしていたら
「強盗に大怪我をさせられた男性の治療をお願いします」
と王城外からやって来た医者に頼まれた。
たまに医者では治らない患者さんをわたしのところまで連れてくる。
この王城にはわたしの他にあと二人癒しの魔法が使える人がいる。交代で治療をしているのだけど、今日はたまたま「代わってくれない?」と先輩に頼まれて「嫌です」と断らなくて休みを返上して治療をしていた。
「この人です」と抱えて来た騎士を見てわたしは固まった。
向こうもハッとした顔をしたけど、お互い怪我人の治療が先なので何も話さずわたしは治療を始めた。
強盗にお金を取られまいと必死に抵抗したらしくお腹や背中を蹴られて内臓までダメージを与えられていた。
わたしは患者さんの手を握り魔力を流す。
もう今は相手に痛みを与えないで治療することもできる。そして完全に治すのではなくある程度のところで治療をやめるようにしている。
残りの怪我は自然治癒で治してもらう。体のためにも無理やり治すより再生する力を残した方がまた怪我した時のためにもいいのだと魔導士様に言われている。
『お前のように何でもかんでも治してしまったら次怪我した時本人が辛い目に遭うんだ!』と怒られた。
さっきの騎士……スティーブ様はわたしの休憩を待っていたようだ。
診療所を出て食堂へ行こうとしたら、外で剣を振り鍛錬している姿のスティーブ様がわたしを見て鍛錬をやめた。
そして少し戸惑いながらもわたしのところへやって来た。
「セレン…嬢、久しぶりです。本当は貴女が目覚めた時に顔を出さなければいけなかったのに遅くなってすみません」
「え?何故謝るのですか?」
「貴女が一年近く寝込む原因になったのは俺のせいです」
「貴方の?…………あの火傷の人?」
「死にかけた俺を助けてくれてありがとう。だけどそのせいで貴女が死にかけた……なのに今まで顔を出すこともしなかった……申し訳ない」
「……スティーブ様はまだ完全に治ってないのでしょう?」
「えっ?」
「わたしあの時魔力が枯渇して最後まで治せなくて、あの人大丈夫だったのかなと思っていたんです。
みんなにその人のことを聞いても「さあ?」とか「その人のことはよくわからない」と濁されて本当のことを教えてもらえなかったんです。
だから勝手に助けられなくて亡くなったのかもと思い、もう聞くのをやめていたんです」
「……貴女のおかげで命は助かりました。その後しばらくはリバビリと火傷の治療でずっと入院していました。やっと最近少しずつ仕事を始めたところです」
「やっぱり……スティーブ様が歩いている姿が少しぎこちなく感じたんです。ちょっと手を出してください」
「え、あ、いや、だけどーー」
「いやではありません。わたしが治療をした患者さんなのですから最後まで診させてください」
そう言ってスティーブ様の手を握りしめた。
ーーやっぱり、まだ完全に治ってない。体の中がまだガタガタで流れが悪い。外も中も悪いところだらけだわ。
わたしの治癒能力は魔導士様曰くこの国では一番だと言われた。他の人は完全に治すことが出来ない病気や怪我もわたしなら治せるらしい。
以前だったら出来なかったけど指導を受けて技術も上がり一度魔力を空にしたことでわたしの魔力はさらに増え、癒しの魔力の使い手としては、うん、とっても優秀になった。
スティーブ様にそっと魔力を流した。
「どうですか?」
「とても……軽くなった……俺は………君に助けてもらえる資格なんてないのに……」
「ほんとですよ、貴方、イザベラ様とどんな別れ方をしたんですか?我が家の屋敷はなくなったんですよ!」
「すまない……まさかイザベラが火事を起こすなんて……」
「まぁ普通に考えて逆恨みですもの。スティーブ様が悪いわけではありませんけど、お二人は愛し合っていたのに別れているなんて知りませんでした」
「……イザベラとは……いや、言い訳なんで今更だ……俺は公爵家を出た身だが、それなりに財産分けはしてもらったので君の屋敷くらいなら用意できる」
「え?要りません!どうして貴方がそんなことする必要があるのですか?」
「しかし君の大切な屋敷は焼けてしまった。君の友人には断られたんだが、君に会えたら弁償させてもらいたいと思っていたんだ」
「マリアナには会ったのですか?」
「君が入院中お見舞いに行って、もう二度と来るなと追い返されたんだ」
「ふふっ、マリアナらしいわ」
想像しただけでなんだか笑ってしまった。
スティーブ様もあれだけ刺々しかったのに、柔らかくなった話し方をしていてなんだか不思議な気持ちだった。
もう離縁して三年も経っている。
意地っ張りで彼の前ではいつも気が張って過ごしていたけど、わたしももう19歳。大人になったのかまぁそれなりに?話せている。
ううん、たぶん彼が私に会わないように避けていたのだろう。
気付かなかった。
どうして今更こんなところで再会するのだろう。
今日も沢山の怪我人や病人の治療をしていたら
「強盗に大怪我をさせられた男性の治療をお願いします」
と王城外からやって来た医者に頼まれた。
たまに医者では治らない患者さんをわたしのところまで連れてくる。
この王城にはわたしの他にあと二人癒しの魔法が使える人がいる。交代で治療をしているのだけど、今日はたまたま「代わってくれない?」と先輩に頼まれて「嫌です」と断らなくて休みを返上して治療をしていた。
「この人です」と抱えて来た騎士を見てわたしは固まった。
向こうもハッとした顔をしたけど、お互い怪我人の治療が先なので何も話さずわたしは治療を始めた。
強盗にお金を取られまいと必死に抵抗したらしくお腹や背中を蹴られて内臓までダメージを与えられていた。
わたしは患者さんの手を握り魔力を流す。
もう今は相手に痛みを与えないで治療することもできる。そして完全に治すのではなくある程度のところで治療をやめるようにしている。
残りの怪我は自然治癒で治してもらう。体のためにも無理やり治すより再生する力を残した方がまた怪我した時のためにもいいのだと魔導士様に言われている。
『お前のように何でもかんでも治してしまったら次怪我した時本人が辛い目に遭うんだ!』と怒られた。
さっきの騎士……スティーブ様はわたしの休憩を待っていたようだ。
診療所を出て食堂へ行こうとしたら、外で剣を振り鍛錬している姿のスティーブ様がわたしを見て鍛錬をやめた。
そして少し戸惑いながらもわたしのところへやって来た。
「セレン…嬢、久しぶりです。本当は貴女が目覚めた時に顔を出さなければいけなかったのに遅くなってすみません」
「え?何故謝るのですか?」
「貴女が一年近く寝込む原因になったのは俺のせいです」
「貴方の?…………あの火傷の人?」
「死にかけた俺を助けてくれてありがとう。だけどそのせいで貴女が死にかけた……なのに今まで顔を出すこともしなかった……申し訳ない」
「……スティーブ様はまだ完全に治ってないのでしょう?」
「えっ?」
「わたしあの時魔力が枯渇して最後まで治せなくて、あの人大丈夫だったのかなと思っていたんです。
みんなにその人のことを聞いても「さあ?」とか「その人のことはよくわからない」と濁されて本当のことを教えてもらえなかったんです。
だから勝手に助けられなくて亡くなったのかもと思い、もう聞くのをやめていたんです」
「……貴女のおかげで命は助かりました。その後しばらくはリバビリと火傷の治療でずっと入院していました。やっと最近少しずつ仕事を始めたところです」
「やっぱり……スティーブ様が歩いている姿が少しぎこちなく感じたんです。ちょっと手を出してください」
「え、あ、いや、だけどーー」
「いやではありません。わたしが治療をした患者さんなのですから最後まで診させてください」
そう言ってスティーブ様の手を握りしめた。
ーーやっぱり、まだ完全に治ってない。体の中がまだガタガタで流れが悪い。外も中も悪いところだらけだわ。
わたしの治癒能力は魔導士様曰くこの国では一番だと言われた。他の人は完全に治すことが出来ない病気や怪我もわたしなら治せるらしい。
以前だったら出来なかったけど指導を受けて技術も上がり一度魔力を空にしたことでわたしの魔力はさらに増え、癒しの魔力の使い手としては、うん、とっても優秀になった。
スティーブ様にそっと魔力を流した。
「どうですか?」
「とても……軽くなった……俺は………君に助けてもらえる資格なんてないのに……」
「ほんとですよ、貴方、イザベラ様とどんな別れ方をしたんですか?我が家の屋敷はなくなったんですよ!」
「すまない……まさかイザベラが火事を起こすなんて……」
「まぁ普通に考えて逆恨みですもの。スティーブ様が悪いわけではありませんけど、お二人は愛し合っていたのに別れているなんて知りませんでした」
「……イザベラとは……いや、言い訳なんで今更だ……俺は公爵家を出た身だが、それなりに財産分けはしてもらったので君の屋敷くらいなら用意できる」
「え?要りません!どうして貴方がそんなことする必要があるのですか?」
「しかし君の大切な屋敷は焼けてしまった。君の友人には断られたんだが、君に会えたら弁償させてもらいたいと思っていたんだ」
「マリアナには会ったのですか?」
「君が入院中お見舞いに行って、もう二度と来るなと追い返されたんだ」
「ふふっ、マリアナらしいわ」
想像しただけでなんだか笑ってしまった。
スティーブ様もあれだけ刺々しかったのに、柔らかくなった話し方をしていてなんだか不思議な気持ちだった。
もう離縁して三年も経っている。
意地っ張りで彼の前ではいつも気が張って過ごしていたけど、わたしももう19歳。大人になったのかまぁそれなりに?話せている。
128
あなたにおすすめの小説
『恋心を凍らせる薬を飲みました』 - 残りの学園生活、どうぞご自由にお遊びください、婚約者様
恋せよ恋
恋愛
愛されることを諦めた。だから、私は心を凍らせた。
不誠実な婚約者・ユリアンの冷遇に耐えかねたヤスミンは、
伝説の魔女の元を訪れ、恋心を消し去る「氷の薬」を飲む。
感情を捨て、完璧な「人形」となった彼女を前に、
ユリアンは初めて己の罪と執着に狂い始める。
「お願いだ、前のように僕を愛して泣いてくれ!」
足元に跪き、涙を流して乞う男に、ヤスミンは冷酷に微笑む。
「愛?……あいにく、そのような無駄な感情は捨てましたわ」
一度凍りついた心は、二度と溶けない。
後悔にのたうち回る男と、心を凍らせた冷徹な公爵夫人の、
終わりのない贖罪の記録。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
酷いことをしたのはあなたの方です
風見ゆうみ
恋愛
※「謝られたって、私は高みの見物しかしませんよ?」の続編です。
あれから約1年後、私、エアリス・ノラベルはエドワード・カイジス公爵の婚約者となり、結婚も控え、幸せな生活を送っていた。
ある日、親友のビアラから、ロンバートが出所したこと、オルザベート達が軟禁していた家から引っ越す事になったという話を聞く。
聞いた時には深く考えていなかった私だったけれど、オルザベートが私を諦めていないことを思い知らされる事になる。
※細かい設定が気になられる方は前作をお読みいただいた方が良いかと思われます。
※恋愛ものですので甘い展開もありますが、サスペンス色も多いのでご注意下さい。ざまぁも必要以上に過激ではありません。
※史実とは関係ない、独特の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法が存在する世界です。
春告竜と二度目の私
こもろう
恋愛
私はどうなってもいい。だからこの子は助けて――
そう叫びながらも処刑された王太子の元婚約者カサンドル。
目が覚めたら、時が巻き戻っていた。
2021.1.23番外編追加しました。
【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから
よどら文鳥
恋愛
私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。
五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。
私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。
だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。
「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」
この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。
あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。
婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。
両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。
だが、それでも私の心の中には……。
※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。
※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。
婚約解消は君の方から
みなせ
恋愛
私、リオンは“真実の愛”を見つけてしまった。
しかし、私には産まれた時からの婚約者・ミアがいる。
私が愛するカレンに嫌がらせをするミアに、
嫌がらせをやめるよう呼び出したのに……
どうしてこうなったんだろう?
2020.2.17より、カレンの話を始めました。
小説家になろうさんにも掲載しています。
【完結】彼を幸せにする十の方法
玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。
フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。
婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。
しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。
婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。
婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。
※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。
【完結】私を裏切った前世の婚約者と再会しました。
Rohdea
恋愛
ファルージャ王国の男爵令嬢のレティシーナは、物心ついた時から自分の前世……200年前の記憶を持っていた。
そんなレティシーナは非公認だった婚約者の伯爵令息・アルマンドとの初めての顔合わせで、衝撃を受ける。
かつての自分は同じ大陸のこことは別の国……
レヴィアタン王国の王女シャロンとして生きていた。
そして今、初めて顔を合わせたアルマンドは、
シャロンの婚約者でもあった隣国ランドゥーニ王国の王太子エミリオを彷彿とさせたから。
しかし、思い出すのはシャロンとエミリオは結ばれる事が無かったという事実。
何故なら──シャロンはエミリオに捨てられた。
そんなかつての自分を裏切った婚約者の生まれ変わりと今世で再会したレティシーナ。
当然、アルマンドとなんてうまくやっていけるはずが無い!
そう思うも、アルマンドとの婚約は正式に結ばれてしまう。
アルマンドに対して冷たく当たるも、当のアルマンドは前世の記憶があるのか無いのか分からないが、レティシーナの事をとにかく溺愛してきて……?
前世の記憶に囚われた2人が今世で手にする幸せとはーー?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる