【完結】二度目の恋はもう諦めたくない。

たろ

文字の大きさ
40 / 55

新たな生活。

 マリアナの屋敷にお世話になりながら新しい生活が始まった。ほとんどの使用人がマリアナのところで働いていたのでわたしは一人、王城にある女子寮に入ることにした。

 屋敷を建て直して暮らすのもいいけど、なんだか怖くなった。
 イザベラ様が捕まったとは言え女一人で屋敷を構えるのはもうやめよう、そう思ってしまうくらい火事の跡は見るも無惨だった。

「セレンも我が家で一緒に暮らしましょう」
 マリアナ達夫婦から引き止められたが新婚の家庭にずっとお邪魔するのは気が引ける。

 使用人をまとめて雇用してくれただけでもありがたい。
 サムエルはもう6歳。彼のことだけが気がかりなので

「たまに遊びに来させてもらうわ。サムエルも置いてもらえてありがとう」

「もちろんよ。息子のアランのお世話もしてくれるししっかりして頭もいいの。いずれは我が家の執事として迎えたいと思っているのよ」

「ありがとう、彼にかかるお金はわたしが出すから」

 わたしのしていた投資はこの一年でさらにお金が増えていた。バッカムに任せていたのだけど、しっかりと運用してくれていたのだ。

 バッカムは「お嬢様が目覚めた時、居場所がないと困りますからね」と言ってくれた。たぶん屋敷を建て直すことを考えてくれていたのだと思う。

「ごめんね、今は怖くて無理。しばらくは王城の寮に入ってのんびりと暮らすわ」

「お嬢様がいきなり他人と同じ空間で暮らすことになるなんて、大丈夫ですか?」

「うん、今はたくさん人がいるところが気分的にも安心だし、いくらマリアナと仲が良くても厚かましくずっといるのは流石に居心地が悪いもの」

 いずれはバッカムとエリノアのためにも屋敷は買うつもり。だけど今は寮に入りのんびりと暮らすことにした。

 騎士団の事務員に戻らないで魔導士のところで勉強することになった。

 あまりにも自分を顧みないで魔法を使い過ぎたので、一から勉強をするようにと団長を始め第二王子からも説教をされてしまった。

「セレンの仕事はここにはない。まずは自分の力の限界を覚えることだ。このままでは人を助ける前に君が先に死んでしまう」

 団長は厳しくも優しくわたしに言った。

「君のおかげでどれだけの命が救われたかわからない。救われた者達にもそれぞれの家庭がありその周りの人達の心も救われることになるんだ。君が一人救えばその周りの者達の心もそして今ある生活も救われる。
 それくらい君はすごいことをしたんだ。だが君自身が犠牲になってはならない。
 そのためにもまずはきちんとした魔法の使い方を覚えた方がいい」

「えっ?わたし仕事に戻れないのですか?」

「まずは魔導士の元に行き、勉強かな」

 第二王子からもそう勧められてしまった。

 そしてわたしは魔導士になるべく勉強を始めた。

 なんだか自分でもよくわからないうちにどんどん違う方向へと生活が変わっていく。

 毎日、ひたすら癒しの魔法を怪我をした騎士達にかけていく。

 え?これって前と変わらないじゃない。

 と思ったらその後魔力量を測り「しばらく休め」と突然二、三日の休みをもらう。

 こんな生活をして半年後、ふと気がつくと魔力が安定していることに気がついた。

 朝起きても怠くないし、癒しの魔法を使っても疲れることがなくなった。

「魔導士様!体がとっても楽なんですけど?」

「そりゃそうだろう、お前はがむしゃらに魔力を使いまくって治療してたんだ。まずは体の魔力量を一定に保つところから始めたんだ。それに毎日いろんな治療をしていくことでお前自身もコツを覚えた。今までは滅多に使わないのにいざとなるとたくさんの人を治療することになるから無理をしていたんだ。毎日治療をすれば体も安定してくる。それに技術も上がるしな」

「え?でも以前も練習はしていましたよ?」

「あの時は俺がしっかり指導してなかっただろう。今回は魔力の使い方を教えながらの治療だから全く違う。お前はひたすら練習すればいいと思っていたからな、へたに魔力の多いやつは力尽くでなんでもやろうとするんだ」

「はは、確かに。だから治療すると相手がとても痛がったんですよね?今は誰からも痛いと言われなくなりました!」

 ウキウキしながら寮に戻る。
 寮にはたくさんの王城に勤める人たちが住んでいる。

 わたしのような(元?)貴族は少なく平民の女官やメイドの仕事をしている人が多い。気さくで優しい。そしてお酒を飲むと豪快で女ばかりの世界なので毎日が楽しい。

「セレン、おかえり!今日はどうする?」

「一杯付き合います!」

「わたしが作ったこのサラダ食べてみて!ドレッシングが絶妙に美味しいのよ」

「それって野菜をただ切って厨房にあったドレッシングかけただけじゃない」
 隣で酔っていたメイドの子がクスクス笑った。

「あら?失礼ね。一応綺麗に盛ったんだから料理よ」

「じゃあわたしが一品作ってきます」

 お腹も空いたし厨房に行って自分の夕飯をもらうついでに、わたし専用の食糧庫から肉や野菜を出してきて三品ほど作った。

「はい、簡単野菜炒めとチキンソテーとエビのフリッターです」

「やったあ、セレンありがとう」

「さあみんなで楽しく飲んじゃいましょう」

 その後も仕事から帰ってきた人たちが合流してみんなでわいわい言いながら夜遅くまで飲んだ。


 飲んで次の日はみんなわたしの部屋にやってくる。

「セレン気持ち悪い」
「頭が痛い」

 ここでは毎朝二日酔いの人のため癒しの魔法を使う。

 これ絶対魔導士様にバレたら怒られるやつだよね。

 そう思いながら毎日楽しく過ごしていた。








あなたにおすすめの小説

【完結】愛してるなんて言うから

空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」  婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。  婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。 ――なんだそれ。ふざけてんのか。  わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。 第1部が恋物語。 第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ! ※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。  苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。

一途な皇帝は心を閉ざした令嬢を望む

浅海 景
恋愛
幼い頃からの婚約者であった王太子より婚約解消を告げられたシャーロット。傷心の最中に心無い言葉を聞き、信じていたものが全て偽りだったと思い込み、絶望のあまり心を閉ざしてしまう。そんな中、帝国から皇帝との縁談がもたらされ、侯爵令嬢としての責任を果たすべく承諾する。 「もう誰も信じない。私はただ責務を果たすだけ」 一方、皇帝はシャーロットを愛していると告げると、言葉通りに溺愛してきてシャーロットの心を揺らす。 傷つくことに怯えて心を閉ざす令嬢と一途に想い続ける青年皇帝の物語

沈黙の指輪 ―公爵令嬢の恋慕―

柴田はつみ
恋愛
公爵家の令嬢シャルロッテは、政略結婚で財閥御曹司カリウスと結ばれた。 最初は形式だけの結婚だったが、優しく包み込むような夫の愛情に、彼女の心は次第に解けていく。 しかし、蜜月のあと訪れたのは小さな誤解の連鎖だった。 カリウスの秘書との噂、消えた指輪、隠された手紙――そして「君を幸せにできない」という冷たい言葉。 離婚届の上に、涙が落ちる。 それでもシャルロッテは信じたい。 あの日、薔薇の庭で誓った“永遠”を。 すれ違いと沈黙の夜を越えて、二人の愛はもう一度咲くのだろうか。

【完結】彼を幸せにする十の方法

玉響なつめ
恋愛
貴族令嬢のフィリアには婚約者がいる。 フィリアが望んで結ばれた婚約、その相手であるキリアンはいつだって冷静だ。 婚約者としての義務は果たしてくれるし常に彼女を尊重してくれる。 しかし、フィリアが望まなければキリアンは動かない。 婚約したのだからいつかは心を開いてくれて、距離も縮まる――そう信じていたフィリアの心は、とある夜会での事件でぽっきり折れてしまった。 婚約を解消することは難しいが、少なくともこれ以上迷惑をかけずに夫婦としてどうあるべきか……フィリアは悩みながらも、キリアンが一番幸せになれる方法を探すために行動を起こすのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも掲載しています。

大好きな旦那様はどうやら聖女様のことがお好きなようです

古堂すいう
恋愛
祖父から溺愛され我儘に育った公爵令嬢セレーネは、婚約者である皇子から衆目の中、突如婚約破棄を言い渡される。 皇子の横にはセレーネが嫌う男爵令嬢の姿があった。 他人から冷たい視線を浴びたことなどないセレーネに戸惑うばかり、そんな彼女に所有財産没収の命が下されようとしたその時。 救いの手を差し伸べたのは神官長──エルゲンだった。 セレーネは、エルゲンと婚姻を結んだ当初「穏やかで誰にでも微笑むつまらない人」だという印象をもっていたけれど、共に生活する内に徐々に彼の人柄に惹かれていく。 だけれど彼には想い人が出来てしまったようで──…。 「今度はわたくしが恩を返すべきなんですわ!」 今まで自分のことばかりだったセレーネは、初めて人のために何かしたいと思い立ち、大好きな旦那様のために奮闘するのだが──…。

【完結済】次こそは愛されるかもしれないと、期待した私が愚かでした。

こゆき
恋愛
リーゼッヒ王国、王太子アレン。 彼の婚約者として、清く正しく生きてきたヴィオラ・ライラック。 皆に祝福されたその婚約は、とてもとても幸せなものだった。 だが、学園にとあるご令嬢が転入してきたことにより、彼女の生活は一変してしまう。 何もしていないのに、『ヴィオラがそのご令嬢をいじめている』とみんなが言うのだ。 どれだけ違うと訴えても、誰も信じてはくれなかった。 絶望と悲しみにくれるヴィオラは、そのまま隣国の王太子──ハイル帝国の王太子、レオへと『同盟の証』という名の厄介払いとして嫁がされてしまう。 聡明な王子としてリーゼッヒ王国でも有名だったレオならば、己の無罪を信じてくれるかと期待したヴィオラだったが──…… ※在り来りなご都合主義設定です ※『悪役令嬢は自分磨きに忙しい!』の合間の息抜き小説です ※つまりは行き当たりばったり ※不定期掲載な上に雰囲気小説です。ご了承ください 4/1 HOT女性向け2位に入りました。ありがとうございます!

すれ違う思い、私と貴方の恋の行方…

アズやっこ
恋愛
私には婚約者がいる。 婚約者には役目がある。 例え、私との時間が取れなくても、 例え、一人で夜会に行く事になっても、 例え、貴方が彼女を愛していても、 私は貴方を愛してる。  ❈ 作者独自の世界観です。  ❈ 女性視点、男性視点があります。  ❈ ふんわりとした設定なので温かい目でお願いします。

【完結】この胸が痛むのは

Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」 彼がそう言ったので。 私は縁組をお受けすることにしました。 そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。 亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。 殿下と出会ったのは私が先でしたのに。 幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです…… 姉が亡くなって7年。 政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが 『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。 亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……  ***** サイドストーリー 『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。 こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。 読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです * 他サイトで公開しています。 どうぞよろしくお願い致します。