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姫。②
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『病』という名の軟禁状態は続いた。
わたしが姫様だと使用人達は言うけど、目覚めてからの日々は到底姫様として扱われているとは思えない。
確かに広い部屋にはバスルームもありこの部屋だけで一日中過ごすことはできる。だけど、部屋から出してもらえない。
外から鍵がかけられて完全に軟禁状態だった。
隠し通路を見つけていなければわたしは今頃頭がおかしくなっていたかも。
あれから時間を見つけてはこっそりと部屋を抜け出している。
少しずつ情報も入ってきた。
わたしの名前は『ソフィア』らしい。
でもその名を呼ぶ人はあまりいない。
『姫様』であるわたしは病に伏せているので、この城の人たちはこの一年ほど姫様の姿を見ていないらしい。
わたしが目覚める前から、あの部屋で本当に病で寝込んでいたらしい。
今のわたしは、平民と変わらない服装、髪も三つ編みのおさげにしているので、皆の知る『姫様』ではないので、城の中を歩き回っても誰も気がつかないみたい。
たまに使用人に声をかけられ、洗濯場で洗い物をしたり、調理場に連れて行かれ料理補助をしたりしていろんな話を耳にする。
オリビア様は神聖な力を持っているらしい。
神からのお告げがあり国中を探して回り、オリビア様を見つけ出した。そして城で一年以上、お姫様のような立場で暮らしているらしい。
その言葉通り国王と王妃、そしてオリビア様の三人は、まるで親子のように仲睦まじく共に散歩する姿や、庭でお茶を飲む姿を遠くから何度も見ている。
笑い合い楽しそうにしている姿を見てもわたしは特に何も感じない。
以前のソフィアなら傷ついているかもしれない。でもわたしはソフィアではないし、記憶もないから、あの人達を両親とは思えない。
おかげで遠くから見つめても『なるほど』と思うだけだ。
そんなある日、いつものようにお散歩中。
「ちょっとソフィ、いいところにいたわ。手伝ってちょうだい」
よくわたしに仕事をくれるソラさん。
「はい」
いつものように快く返事をした。
ブラブラしているわたしに対して疑問も持たないのは、最初は不思議だった。
でもわたしのことをこの城に勤める誰かの娘だと思っているらしいとわかった。
平民の子供は学校に通ってはいるけど大体午前中だけで、午後からは親の仕事を手伝ったり、余暇の時間は城の敷地内にある開放されている図書館に来たりしている子もいる。
特に城に勤めている人の子供は割と成績が優秀な子供が多く、午後からも図書館などで勉強をしている子供も多い。
皆いずれはこの城で働きたいと思っているのだろう。
他の人に比べて高給で休みもしっかりあるので人気の職場らしい。
あとはわたしのように声をかけられてお駄賃を稼ぐ子も多い。
わたしは完全にお駄賃目当てだと思われている。
ソラさんは急いでわたしを東屋に連れて行った。
「何をするんですか?」
「もうすぐ陛下達がここでお茶をするので準備を手伝ってほしいの。昨日風が強くて砂埃でテーブルや椅子は汚れているし、花も風で倒れているから植え替えもしないといけなくて。手が足りないの」
国王達がお茶をここで飲むためだけにたくさんの使用人たちが手間のかかる準備をしないといけない。
なんだか理不尽な気はするがこれが仕事なら仕方がない。
庭師が集められ急いで花の植え替えをしていた。風で飛ばされてきた東屋の周囲のゴミや枯葉をみんなが拾い集めていた。
椅子やテーブルを磨き地面も綺麗にした。
たくさんの焼き菓子が並べられ、高級な茶器が準備されていた。
優雅なティータイムを彩るティーポットに思わず見とれているとソラさんが「気をつけてね、触ってはダメよ?私たちじゃとてもじゃないけど弁償出来ないからね」と教えてくれた。
コクンと頷き思わずササっと離れた。
わたしがもらってためたお駄賃じゃ弁償出来そうもないもの。
準備も終わりまだ14歳の小娘であるわたしの仕事は終わり、その場から去ろうとした。
「ちょっと待って。お駄賃はあとでいい?もう、陛下達が近くまで来ているらしいの」
「あ、はい、大丈夫です」
みんなの視線の方へわたしも目を向けた。
陛下達、仲の良い三人が東屋へ向かって歩いてきているのが見えた。
「早くあんたも並んで」
促され慌ててソラさんの横に並んだ。
しばらくすると陛下達が横に整列して頭を下げているわたし達の前を通った。
国王両陛下もそばに従う側近達も、目の前に『ソフィア姫』がいることに気が付かなかった。
オリビア様が二人と楽しそうに話している姿はまるで親子のようでそこに娘のソフィアは存在しないようだ。
ソフィア姫が病で寝込んでいても記憶喪失になっていても、一度も顔を出すことも心配をしているという話がないことも、『なるほど』と納得してしまった。
まぁソフィア姫は悲しいかもしれないけど、残念ながらわたしは悲しむことも傷つくこともない。
ただ、一瞬オリビア様と目が合った。
彼女は『ソフィア姫』に気がついたようだ。勝ち誇った顔をこちらへ向けた。
あら?聖女様ってお優しくて心がとても綺麗なのだと思っていたけど、ただの『普通の人』だったみたい。
わたしが姫様だと使用人達は言うけど、目覚めてからの日々は到底姫様として扱われているとは思えない。
確かに広い部屋にはバスルームもありこの部屋だけで一日中過ごすことはできる。だけど、部屋から出してもらえない。
外から鍵がかけられて完全に軟禁状態だった。
隠し通路を見つけていなければわたしは今頃頭がおかしくなっていたかも。
あれから時間を見つけてはこっそりと部屋を抜け出している。
少しずつ情報も入ってきた。
わたしの名前は『ソフィア』らしい。
でもその名を呼ぶ人はあまりいない。
『姫様』であるわたしは病に伏せているので、この城の人たちはこの一年ほど姫様の姿を見ていないらしい。
わたしが目覚める前から、あの部屋で本当に病で寝込んでいたらしい。
今のわたしは、平民と変わらない服装、髪も三つ編みのおさげにしているので、皆の知る『姫様』ではないので、城の中を歩き回っても誰も気がつかないみたい。
たまに使用人に声をかけられ、洗濯場で洗い物をしたり、調理場に連れて行かれ料理補助をしたりしていろんな話を耳にする。
オリビア様は神聖な力を持っているらしい。
神からのお告げがあり国中を探して回り、オリビア様を見つけ出した。そして城で一年以上、お姫様のような立場で暮らしているらしい。
その言葉通り国王と王妃、そしてオリビア様の三人は、まるで親子のように仲睦まじく共に散歩する姿や、庭でお茶を飲む姿を遠くから何度も見ている。
笑い合い楽しそうにしている姿を見てもわたしは特に何も感じない。
以前のソフィアなら傷ついているかもしれない。でもわたしはソフィアではないし、記憶もないから、あの人達を両親とは思えない。
おかげで遠くから見つめても『なるほど』と思うだけだ。
そんなある日、いつものようにお散歩中。
「ちょっとソフィ、いいところにいたわ。手伝ってちょうだい」
よくわたしに仕事をくれるソラさん。
「はい」
いつものように快く返事をした。
ブラブラしているわたしに対して疑問も持たないのは、最初は不思議だった。
でもわたしのことをこの城に勤める誰かの娘だと思っているらしいとわかった。
平民の子供は学校に通ってはいるけど大体午前中だけで、午後からは親の仕事を手伝ったり、余暇の時間は城の敷地内にある開放されている図書館に来たりしている子もいる。
特に城に勤めている人の子供は割と成績が優秀な子供が多く、午後からも図書館などで勉強をしている子供も多い。
皆いずれはこの城で働きたいと思っているのだろう。
他の人に比べて高給で休みもしっかりあるので人気の職場らしい。
あとはわたしのように声をかけられてお駄賃を稼ぐ子も多い。
わたしは完全にお駄賃目当てだと思われている。
ソラさんは急いでわたしを東屋に連れて行った。
「何をするんですか?」
「もうすぐ陛下達がここでお茶をするので準備を手伝ってほしいの。昨日風が強くて砂埃でテーブルや椅子は汚れているし、花も風で倒れているから植え替えもしないといけなくて。手が足りないの」
国王達がお茶をここで飲むためだけにたくさんの使用人たちが手間のかかる準備をしないといけない。
なんだか理不尽な気はするがこれが仕事なら仕方がない。
庭師が集められ急いで花の植え替えをしていた。風で飛ばされてきた東屋の周囲のゴミや枯葉をみんなが拾い集めていた。
椅子やテーブルを磨き地面も綺麗にした。
たくさんの焼き菓子が並べられ、高級な茶器が準備されていた。
優雅なティータイムを彩るティーポットに思わず見とれているとソラさんが「気をつけてね、触ってはダメよ?私たちじゃとてもじゃないけど弁償出来ないからね」と教えてくれた。
コクンと頷き思わずササっと離れた。
わたしがもらってためたお駄賃じゃ弁償出来そうもないもの。
準備も終わりまだ14歳の小娘であるわたしの仕事は終わり、その場から去ろうとした。
「ちょっと待って。お駄賃はあとでいい?もう、陛下達が近くまで来ているらしいの」
「あ、はい、大丈夫です」
みんなの視線の方へわたしも目を向けた。
陛下達、仲の良い三人が東屋へ向かって歩いてきているのが見えた。
「早くあんたも並んで」
促され慌ててソラさんの横に並んだ。
しばらくすると陛下達が横に整列して頭を下げているわたし達の前を通った。
国王両陛下もそばに従う側近達も、目の前に『ソフィア姫』がいることに気が付かなかった。
オリビア様が二人と楽しそうに話している姿はまるで親子のようでそこに娘のソフィアは存在しないようだ。
ソフィア姫が病で寝込んでいても記憶喪失になっていても、一度も顔を出すことも心配をしているという話がないことも、『なるほど』と納得してしまった。
まぁソフィア姫は悲しいかもしれないけど、残念ながらわたしは悲しむことも傷つくこともない。
ただ、一瞬オリビア様と目が合った。
彼女は『ソフィア姫』に気がついたようだ。勝ち誇った顔をこちらへ向けた。
あら?聖女様ってお優しくて心がとても綺麗なのだと思っていたけど、ただの『普通の人』だったみたい。
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