裏切られ殺されたわたし。生まれ変わったわたしは今度こそ幸せになりたい。

たろ

文字の大きさ
11 / 45

姫。③

しおりを挟む
「姫様、お着替えをいたしましょう」
 いつもお世話をしてくれる侍女の一人が急かすようにドレスを一枚持ってやってきた。

「どうしたの?」

「このドレスに着替えるようにと言われましたので」

 目を逸らし理由を言わない侍女にため息をつく。

「あなたも雇われの身だものね」

 理由を尋ねても言わないのではなく言えないのだろう。

 わたしが何を聞いても答えてもらえないように。

 ここで知りたいことを知るためには外へ出て自分で情報を集めるしかない。

 わたしのところへやってくる侍女達は皆上からの命令でわたしには何も話すなと言われているようだし。

 記憶喪失のわたしにあえて無駄な情報を与えずにこの部屋で静かに過ごさせる事が国王達にとっては煩わしくないのだろう。



 ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎ ✴︎


 初めて隠れ通路からではなく堂々と部屋の扉から外に出た。

 静かな通路を歩いた。

 分かってはいたけど、ここは流石に王族のための居住地なのだろうと思われる。

 人がどこにいるのかしら?と思うくらい人気がない。廊下は灯りで照らされ、重厚感のある絨毯の上を侍女の後ろをついて歩いた。

 まるで姫様であるわたしの方が付き人のような気分だわ。

 

 部屋に入ると明るい日差しが差していてキラキラして、まるでプリンセスのお部屋のようだ。

 そこには大きな窓があり、バルコニーへ出入りするパティオドアに思わず目がいった。

 なんて素敵な部屋なんだろう。

 わたしの大人(おっさんのような)の重厚感のある部屋とは大違いだ。
 淡いベージュであつらえた可愛い家具達。
 クロスも小さな小花が描かれていて可愛らしい。カーテンも淡いピンクに可愛い花柄、レースまで施されている。

 いやぁ、姫様とは大違いだわ。


 そこにいたのは美しいドレスを着て、髪を可愛らしく結い上げ、ダイヤモンドのイヤリングに、ダイヤモンドのネックレス、腕にもダイヤモンドのブレスレットをつけたオリビア様だった。

 オリビア様と初めての対面だった。


「あなたは誰ですか?」

 記憶喪失のわたしはまず『あなた』を知らないと言う顔をして尋ねた。

 だってこの部屋に誰がいるのか、どうしてここに来なければいけなかったのか、何も知らされていないのだもの。

 わたしは「オリビア様を知っている」はずがないのだもの。

「わたし?わたしはオリビア・リシャ。この国の聖女であり王女よ」

「初めまして。わたしの名は……わかりません。わたしが誰なのか……ごめんなさい、記憶がありません」

 うん、わたしは何も聞かされていないもの。

「本当に何も覚えていないの?」

「はい、王女様はわたしのことをご存知ですか?」

 首を横に傾げ、可愛らしく質問してみる。この人の前で自分を貶めたくない。

 だってわたしはこの国の唯一の『姫』なんだもの…一応……記憶はないし何も知らないけど。

「あなたは……この国の王女よ」

「ではあなたは……お姉様なのですか?」

 いや、あなたがわたしと同じ歳の14歳って知ってるけどね?

「お姉様……違うわ。あなたとわたしは血は繋がってはいないのよ。わたしはお父様とお母様に選ばれた娘なの」

「選ばれた娘?」

「ええ、聖女として生まれ、この国のために生まれてきたの。だからお父様とお母様はわたしを心から愛しわたしを娘として選んでくれたの」

「……ではわたしは?」

「あなたは……そうね……わたしを羨んで心を壊し、記憶をなくしてしまったようなの」

「あなたを羨んだ?」

 自分に問うてみた。

 オリビア様が羨ましい?
 ううん、全く。

 両陛下に愛されたい?
 全然。

 心は壊れているの?
 え?普通だけど?

「ごめんなさい……全く記憶がありません。でも今のわたしは全くあなたを羨んでもいません。だってたった今あなたに初めてお会いしたのですから」

 にこりと微笑んだ。

「聖女様……素敵ですね?癒しの力があるのですか?」

「……癒しの力?……ないわ」

「じゃあ、結界を張るとか?回復魔法?豊穣の力?浄化能力?それとも……えっとぉ……」

「あ、あなたなんなの?そんなことできるわけがないじゃない?本の読み過ぎじゃないのかしら?」

「え?じゃあ聖女様ってどうして言われているのですか?」

 指を手に添えてあざとくコテンと首を傾げた。

「わたしには聖女の力があるからよ」

「聖女の力?それはどんな力なんですかぁ?」

「そ、それは……形ではないわ。わたしがここにいる、それが力なの」

「ほぉ、へぇ!なるほど!あなたがいることが大切なのんですね?」

「ええ、そうよ」

「あなたがいれば災いからも逃れられるんですね?
 すごい!
 ではこの国はこれから先、災害や不作に見舞われることも、他国からの侵略もありませんね?とても素敵なことですね?
 ここにいるみんなも良かったわね?この国は聖女様のお力で幸せになれるのよ?」

 手を叩いてわたしは喜んだ。

「わたしは記憶もないし何もできないただの役立たずの姫だけど、こんな素晴らしい人が王女になったのだもの。素敵、安心だわ!」

 そんな姿を傍にいた使用人や侍女、護衛騎士達が見ていた。

 うん、これで、この話は城中に行き渡るだろう。

 姫は記憶がない。
 でも聖女様を讃え、聖女様をこの国の王女として自らが認めた。

 これでわたしの立場は安泰かしら?

 もう害を及ぼすこともないし、軟禁状態はやめてもらえるかしら?

 オリビア様は顔を引きつらせながらも笑みを絶やさなかった。

 ああ、これで将来ルワナ王国へと嫁ぐことも阻止できたかしら?

 記憶もないしわたしなんかがルワナ王国へ嫁いでもなんの役にも立たないことが証明されたかしら?

 以前のわたしは誠実で努力家、真面目でそれなりに優秀だったらしいけど、今はぐうたらして部屋に引きこもっている(軟禁)だけの役立たず。

 早く噂が広まってくれることを祈ろう。

しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

夫は家族を捨てたのです。

クロユキ
恋愛
私達家族は幸せだった…夫が出稼ぎに行かなければ…行くのを止めなかった私の後悔……今何処で何をしているのかも生きているのかも分からない…… 夫の帰りを待っ家族の話しです。 誤字脱字があります。更新が不定期ですがよろしくお願いします。

「10歳の頃の想いなど熱病と同じ」と婚約者は言いました──さようなら【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子フリードリヒの婚約者として、幼い頃から王妃教育を受けてきたアメリア・エレファウント公爵令嬢。 誰もが羨む未来を約束された彼女の世界は、ある日突然1人の少女の登場によって揺らぎ始める。 無邪気な笑顔で距離を(意図的に)間違える編入生ベルティーユは、男爵の庶子で平民出身。 ベルティーユに出会ってから、悪い方へ変わっていくフリードリヒ。 「ベルが可哀想だろ」「たかがダンスくらい」と話が通じない。 アメリアの積み上げてきた7年の努力と誇りが崩れていく。 そしてフリードリヒを見限り、婚約解消を口にするが話は進まず、学園の卒業パーティーで断罪されてしまう……?! ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています

処理中です...