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姫。④
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「姫様、オリビア様はとてもお優しく素敵なお方だったでしょう?」
ニコニコと訊いてくるのはいつもの侍女達。
記憶がないのでわたしにとって初対面のオリビア様のことを褒め称えて自慢げに話してくる。
別に侍女達が自慢することでもないのに。
「オリビア様のそばに仕えることができる者はみんなとても誇らしく思っているのですよ」
「本当に羨ましいです」
両手を握りしめて目をキラキラさせて話している侍女達に「そうなのね」「へぇ」ととりあえず相槌を打って適当に合わせておく。
それは姫様のわたしに仕えることに不満があると言っていることになるのよね?
「オリビア様は聖女様なのよね?この国で何をされたの?」
「何がとは?」
「え?だからどんな力があるの?その褒め称えられた出来事とは何かしら?」
オリビア様本人に訊いた言葉を侍女達にも訊いてみる。
本人はまともに答えられなかったけど、みんなはどう思っているのかしら?
「まぁ!わたし達が知ることなど出来るわけがございませんわ」
え?知らないの?聖女様なのに?そんなに褒めてるのに?
「尊い聖女様のお姿を遠くから見れるだけで十分幸せなんです。オリビア様がこの国にいてくださること、この国の王女としてみんなを導いてくださることが我々国民の暮らしの平和と安定に繋がるのです」
「なるほど。聖女様とはお飾りの象徴なのね?」
「まぁまぁ!そんな言葉をここで吐かないでください!いくら姫様とはいえ許せない発言です!」
「そうです!お飾りなんて!聖女様はこの国の象徴です」
「あなた達のわたしへの態度の方がよっぽど許せないと思うけど?」
「どう言う意味でしょう?」
「だってこの国の王である陛下の血のつながった娘を軟禁状態にしているくせに、不敬だとは思わないの?」
「そ、それは………聖女様に危害を加えられたら困りますから……」
危害って何?まるでわたしが聖女様にヤキモチを妬いているみたいじゃない?
「それは陛下達の命令?」
「上からの指示でございます」
「上からねぇ?ふうん、わかったわ」
「おわかりいただけたならよかったですわ。姫様は大人しくお部屋で過ごすことが賢明だと思います」
侍女達はそう言い残すとそそくさと部屋を出て行った。
後ろ暗いのだろう。いつものパターンだとしばらくはこの部屋にやって来ない。
わたしはいつもの隠し通路から外に出ることにした。
わたしに仕える気位だけは高く、姫様を見下している侍女よりも、外に出てよく会うソラさん達にお世話して欲しいと思ってしまう。
いつものようにソラさんに出会い仕事を頼まれた。
「今日は庭師と一緒に花壇の花の植え替えをお願いできる?」
「はい!喜んで!」
お駄賃ももらえるし庭師のおじさん達はとても優しいから大好きだ。
ついでに体も動かせて太陽の光をいっぱい浴びれて良いことづくし!
わたしは慣れた場所へ行き「おじさん!お手伝いを頼まれました!」と声をかけに行った。
「おお、ソフィちゃん、よろしく頼む」
「もちろん!頑張ります」
「ソフィちゃんを見てると孫を思い出すよ」
「うちの孫もとても可愛いんじゃ」
「まぁ!じゃあ、女の子なんですね?」
「いや、男じゃ」
「ああ、じゃあまだ小さいのかな?」
「……20歳じゃ」
「わたしとあまり比べない方がいいかも」
「ははははは」
庭師のおじちゃん達とはくだらない会話を楽しみながらわたしは雑草取りをした。
みんなで笑い合いながら作業をしていると、ふとこちらへの視線を感じた。
誰かしら?
ずっと下を向いたまま話をしていたので頭を上げた。
そこにいたのは……
「あっ………失礼いたしました。国王陛下にご挨拶申し上げます」
わたしは慌てて立ち上がり深々と頭を下げた。
ニコニコと訊いてくるのはいつもの侍女達。
記憶がないのでわたしにとって初対面のオリビア様のことを褒め称えて自慢げに話してくる。
別に侍女達が自慢することでもないのに。
「オリビア様のそばに仕えることができる者はみんなとても誇らしく思っているのですよ」
「本当に羨ましいです」
両手を握りしめて目をキラキラさせて話している侍女達に「そうなのね」「へぇ」ととりあえず相槌を打って適当に合わせておく。
それは姫様のわたしに仕えることに不満があると言っていることになるのよね?
「オリビア様は聖女様なのよね?この国で何をされたの?」
「何がとは?」
「え?だからどんな力があるの?その褒め称えられた出来事とは何かしら?」
オリビア様本人に訊いた言葉を侍女達にも訊いてみる。
本人はまともに答えられなかったけど、みんなはどう思っているのかしら?
「まぁ!わたし達が知ることなど出来るわけがございませんわ」
え?知らないの?聖女様なのに?そんなに褒めてるのに?
「尊い聖女様のお姿を遠くから見れるだけで十分幸せなんです。オリビア様がこの国にいてくださること、この国の王女としてみんなを導いてくださることが我々国民の暮らしの平和と安定に繋がるのです」
「なるほど。聖女様とはお飾りの象徴なのね?」
「まぁまぁ!そんな言葉をここで吐かないでください!いくら姫様とはいえ許せない発言です!」
「そうです!お飾りなんて!聖女様はこの国の象徴です」
「あなた達のわたしへの態度の方がよっぽど許せないと思うけど?」
「どう言う意味でしょう?」
「だってこの国の王である陛下の血のつながった娘を軟禁状態にしているくせに、不敬だとは思わないの?」
「そ、それは………聖女様に危害を加えられたら困りますから……」
危害って何?まるでわたしが聖女様にヤキモチを妬いているみたいじゃない?
「それは陛下達の命令?」
「上からの指示でございます」
「上からねぇ?ふうん、わかったわ」
「おわかりいただけたならよかったですわ。姫様は大人しくお部屋で過ごすことが賢明だと思います」
侍女達はそう言い残すとそそくさと部屋を出て行った。
後ろ暗いのだろう。いつものパターンだとしばらくはこの部屋にやって来ない。
わたしはいつもの隠し通路から外に出ることにした。
わたしに仕える気位だけは高く、姫様を見下している侍女よりも、外に出てよく会うソラさん達にお世話して欲しいと思ってしまう。
いつものようにソラさんに出会い仕事を頼まれた。
「今日は庭師と一緒に花壇の花の植え替えをお願いできる?」
「はい!喜んで!」
お駄賃ももらえるし庭師のおじさん達はとても優しいから大好きだ。
ついでに体も動かせて太陽の光をいっぱい浴びれて良いことづくし!
わたしは慣れた場所へ行き「おじさん!お手伝いを頼まれました!」と声をかけに行った。
「おお、ソフィちゃん、よろしく頼む」
「もちろん!頑張ります」
「ソフィちゃんを見てると孫を思い出すよ」
「うちの孫もとても可愛いんじゃ」
「まぁ!じゃあ、女の子なんですね?」
「いや、男じゃ」
「ああ、じゃあまだ小さいのかな?」
「……20歳じゃ」
「わたしとあまり比べない方がいいかも」
「ははははは」
庭師のおじちゃん達とはくだらない会話を楽しみながらわたしは雑草取りをした。
みんなで笑い合いながら作業をしていると、ふとこちらへの視線を感じた。
誰かしら?
ずっと下を向いたまま話をしていたので頭を上げた。
そこにいたのは……
「あっ………失礼いたしました。国王陛下にご挨拶申し上げます」
わたしは慌てて立ち上がり深々と頭を下げた。
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