裏切られ殺されたわたし。生まれ変わったわたしは今度こそ幸せになりたい。

たろ

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ルバート伯爵家。③

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 ルバート伯爵家のお屋敷はこの町で一番大きなお屋敷。

 誰に聞いても場所を知っている。

 おかげで迷子にならずに門の前まで辿り着いた。

 門番の守衛さんに名前を言って許可証を見せた。

 前もって訪れることを知っていてくれて、すぐに門を通された。

 屋敷は広大で、屋敷までの通路の両脇は花々が綺麗に咲いていた。

 庭師により手入れがされているのがわかる。
 屋敷もかなりの大きさだった。
 おじちゃんのお兄さんは伯爵として富を築いているのだろう。

 なのにわたしがここに来たことで迷惑をかけてしまうかもしれない。

 大好きなおじちゃんの親族に迷惑をかけてしまうかもしれないと思うと少し気後れしてしまう。

 屋敷の玄関まで来ると中から数人の人が出てきた。

 そこには……

「ソフィア様!」

 どこか懐かしい声。

 村のおじちゃんとは全く似ていない。
 貴族らしい服装で身なりを整えていて、顎に髭が生えている。
 記憶にない男性なのに、声が……

「ソフィア様!ルドーです!」

 ルドー?ルドー……あ……

「ルドー?ルドネルなの?」

「はい!今日はルドルフは置いてこられたんですね?」

「ええ」

 ルドルフの名前はルドネルの名からもらってつけた。

「会いたかった!どうして貴方がここに居るの?」

「わたしは長男である兄が亡くなって仕方なく貴女の護衛騎士を辞めて、伯爵家を継いだんです」

「もう会えないと思っていたわ」

「貴女が弟の村にやってきたと知って16歳まではその村で匿ってほしいと弟に頼んだんです」

「おじちゃんはわたしのことを最初から知っていたの?」

「はい、何度か弟は城に遊びに来て姫様の姿を遠くから見ておりましたので」

「そう……だからとても親切にしてくれたのね」

 おじちゃんの優しさにどれだけ心を癒やされ救われたか。ずっとそばにいたかった。

「どうぞ中にお入りください」

「ルバート伯爵様、お招きいただきありがとうございます」

 スカートの裾を軽く持ち上げカーテシーをした。
「おやめください!」

「わたしは名もない平民です。貴族の方に対して敬うのは当然のことです」

「ソフィア様……わたしは今もまだ貴女の従者だと思っております」

「その気持ちだけで嬉しいわ」

 さっきの護衛たちは彼がつけてくれたのだろうか?
 冷たくあしらい置いてきてしまったことを少し後悔したけどルドーが何も言わないのでわたしもあえて触れずにいた。

「ソフィア様、どうぞ。ソフィア様が大好きだったりんごジュースです」

 ルドーはわたしをいくつだと思っているのかしら?

 もう紅茶の味もわかるのに。だけどわたしの大好きだった搾りたてのりんごジュースをニコニコしながら出してくれる姿が、昔と重なった。

 泣き虫だったわたし。
 よく泣いているとルドーが自らりんごを擦り下ろしてジュースを作ってくれた。

「美味しい」

 一口飲んで思わず顔がほころぶ。

 もう一口、そしてまた一口。
 すぐにグラスは空になってしまった。

 ルドーは「おかわりをどうぞ」とピッチャーからりんごジュースを注いでくれた。

「ありがとう」

 思わず顔が赤くなった。子供みたいに喜んで飲んでしまった。

 周囲にいたメイドはルドーがお世話する姿に目を疑っていた。
 思い出す。
 ルドーはとても無愛想で冷たく見られていた。顔はかっこいいのに、女性に声をかけられてもつっけんどんで淡々と返事をするので怖がられていた。

 思わず「プッ」と笑い出したら「どうなさいました?突然笑い出して」とルドーが眉をひそめた。

「だってルドーって、いつも怖い顔をして女性に怖がられていたじゃない?メイドさんたちが貴方のその姿を見て驚いているから、今も無愛想なんじゃない?」

 クスクス笑いながらメイドさんたちの顔を見るとコクンと頷いていた。

 やっぱり。

「ゴホンッ。ですがこれでも妻も息子もおります。家族は……多分怖がっていないと思います」

「まぁ!結婚しているの?おめでとう!」

「ありがとうございます。ただ、二人は領地へ行っているのでここにはいません。ぜひ会っていただきたいので、しばらくこちらでお過ごしください」

「ダメよ。わたし、宿屋に部屋を借りているもの」

「ああ、あそこはわたしの部下が経営しているんです。ですから気にしないでください」

「でも……明日は服屋さんと約束しているの」

「あそこもわたしの部下の妻が経営しているので時間はいくらでも都合がつきます」

「ねぇ?ルドー?貴方が全て整えてたわけではないわよね?」

「服屋はたまたまあなたが入ったんです。でもちょうどよかったです。その店の店主を呼び寄せて服を選ぶつもりでしたので」

 ニコニコ笑うルドーに呆れながらもはっきりと断ることにした。

「ここに来たのはおじちゃんの顔を立てるためと、もしよければ仕事を紹介してもらえないかと思ったからなの。貴方にお世話になるつもりはないわ」

 ルドーに迷惑は絶対かけたくない。

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みんなの感想(5件)

hassirossi
2025.12.30 hassirossi

ソフィの芯があっておもねらない、孤高の気高さがカッコいいです!好き!あと柔道やってた意外性もw

2025.12.30 たろ

感想ありがとうございます!

ソフィの強さ、作者も好きです。

書いてて楽しいです!

解除
こてつむり
2025.12.24 こてつむり

今度こそ、今度こそ幸せになって欲しい😭

2025.12.25 たろ

感想ありがとうございます。

幸せになれるように頑張ります

解除
hassirossi
2025.12.24 hassirossi

14歳で出奔して16歳になるという事は2年近く村で暮らしていた訳でその間のアチラの様子はどうなっていたんだろう?まだまだ謎が多くて早く続きが読みたいです…!ルドルフの存在が癒し(*´ω`*)

2025.12.25 たろ

感想ありがとうございます

ドルトフがソフィアを守ります!唯一の家族です!

解除

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