裏切られ殺されたわたし。生まれ変わったわたしは今度こそ幸せになりたい。

たろ

文字の大きさ
31 / 45

城。③

しおりを挟む
「あら?この服装を見てわからないほど皆様、頭が悪いのかしら?」

 皆が見せ物として笑う。わたしは平然と答えた。

「な、何を言ってるの?」

「だって、見ればわかるでしょう?馬の世話をするために作業着を着ているのよ?」
 
 ふんっ!と鼻で笑ってやった。

「そんなことわかってるわ」
 一人の令嬢が眉をひそめてジロジロわたしを見て、ハンカチで鼻を押さえた。

「なんだか臭くないかしら?」
「ほんとだわ」
「こんな汚らしいところで恥ずかしくないのかしら?」
「平民と変わらないわね?」
「やだあ、あんな風にはなりたくないわ」
「馬なんて汚らしい」

 うーん……わたし、一応この国の姫なのに、なんて口の利き方なの?

 わたしは大きく息を吸い、吐いてから淡々と話す。

「オリビア様が平民だったからなのか、やはりその友人も平民の知識しかないのかしら?
 馬の世話をすれば匂いがあるのは当たり前のこと。人にも体臭はあるのよ?
 そんな当たり前のことも知らないの?
 それから……わたくしの体には本物の王族の血が流れています。
 そのわたくしを馬鹿にするということは国王陛下を馬鹿にしているのと同じだとわからないのですか?今からその言葉、そのままを両陛下の前でも話してください。
 わたくしが恥ずかしい人間だと、そして汚らしい馬に乗る人は恥ずかしいのだと」

 まあ、どう見てもわたしの方が平民なんだけど。ここは、『血』の繋がりで強く出ておこう。

 わたしは仕事の手を止めて、令嬢達とオリビア様を一瞥し、そのまま両陛下のいる王宮へと足を運んだ。

 本当は会いたくもないし、内心怒ってもいない。  

 脅して厩舎にもう近寄らせないようにするためだ。

 おずおずとついてくる彼女たち。

「ソフィア様……本気で陛下のところへ行かれるのですか?」

「そうよ、お父様はわたくしのことを大切にしてくださっているの。あなたが何を言ったって聞く耳を持たないわ」

 オリビア様も少し焦っていた。
 わたしが本気で陛下に会いにいこうとしているのをなんとかやめさせたいらしい。

 力づくで止めることもできるはずだけど、厩舎でオリビア様たちの行動は実はたくさんの人たちの前で見られていた。

 使用人や近衛騎士、それに数人の官僚や貴族もいた。

 実は厩舎にはちょうど乗馬を楽しもうと、官僚や貴族が遊びに来ていたのだ。

 わたしが歩き出した瞬間、彼女たちは少し離れて見えないところにいた貴族たちを見つけ、顔を真っ青にした。

 たった今自分たちが話したこと、全てを大人たちに聞かれていたのだ。

 それでもオリビア様は悪びれるわたしに文句を言いながら仕方なくついてきた。

「オリビア様は聖女様です。普通、友人たちの悪意のある言葉を窘めるものではないのですか?傍で聞いていて、共に妹であるわたくしを馬鹿にするのは人として、そして聖女様として、恥ずかしい行いだとは思いませんか?それをネルヴァン様が知ったらどう思われるでしょうね?」

 前世のわたしは言い返したりしなかった。でも今のわたしは、嫌われようと愛されまいとどうでもいいから、思ったことを口にする。

 城に戻り、初めて両陛下にお会いする。

 作業着を着たままの姿で。なんの許可も得ず。

「陛下にお会いしたいの」

 護衛騎士たちがわたしの姿に驚いてはいても誰も止めようとしない。

 だって彼らはわたしと陛下を何度も対面させようとしていたのに、わたしがそれを拒否していたのだもの。

 彼らはここに無理やり連れてはきたけど、無理やり対面させようとはしなかった。何度も頭を下げてきたけどわたしは強固に断り続けた。

 本当に会いたければ、陛下が会いに来たらいい。それをしなかったのは本気で会いたかったわけではないから。
 わたしが厩舎から離れないのも、今は気がすむまで放っておけばいいと思っていたからだと思う。

 この城から逃げ出せないのだから好きにさせていたのだと。

 だから今好きにさせてもらう。

 陛下に会うのに許可など必要ない。




しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

【完結】もう誰にも恋なんてしないと誓った

Mimi
恋愛
 声を出すこともなく、ふたりを見つめていた。  わたしにとって、恋人と親友だったふたりだ。    今日まで身近だったふたりは。  今日から一番遠いふたりになった。    *****  伯爵家の後継者シンシアは、友人アイリスから交際相手としてお薦めだと、幼馴染みの侯爵令息キャメロンを紹介された。  徐々に親しくなっていくシンシアとキャメロンに婚約の話がまとまり掛ける。  シンシアの誕生日の婚約披露パーティーが近付いた夏休み前のある日、シンシアは急ぐキャメロンを見掛けて彼の後を追い、そして見てしまった。  お互いにただの幼馴染みだと口にしていた恋人と親友の口づけを……  * 無自覚の上から目線  * 幼馴染みという特別感  * 失くしてからの後悔   幼馴染みカップルの当て馬にされてしまった伯爵令嬢、してしまった親友視点のお話です。 中盤は略奪した親友側の視点が続きますが、当て馬令嬢がヒロインです。 本編完結後に、力量不足故の幕間を書き加えており、最終話と重複しています。 ご了承下さいませ。 他サイトにも公開中です

貴方にはもう何も期待しません〜夫は唯の同居人〜

きんのたまご
恋愛
夫に何かを期待するから裏切られた気持ちになるの。 もう期待しなければ裏切られる事も無い。

【12話完結】私はイジメられた側ですが。国のため、貴方のために王妃修行に努めていたら、婚約破棄を告げられ、友人に裏切られました。

西東友一
恋愛
国のため、貴方のため。 私は厳しい王妃修行に努めてまいりました。 それなのに第一王子である貴方が開いた舞踏会で、「この俺、次期国王である第一王子エドワード・ヴィクトールは伯爵令嬢のメリー・アナラシアと婚約破棄する」 と宣言されるなんて・・・

彼女が望むなら

mios
恋愛
公爵令嬢と王太子殿下の婚約は円満に解消された。揉めるかと思っていた男爵令嬢リリスは、拍子抜けした。男爵令嬢という身分でも、王妃になれるなんて、予定とは違うが高位貴族は皆好意的だし、王太子殿下の元婚約者も応援してくれている。 リリスは王太子妃教育を受ける為、王妃と会い、そこで常に身につけるようにと、ある首飾りを渡される。

夫は家族を捨てたのです。

クロユキ
恋愛
私達家族は幸せだった…夫が出稼ぎに行かなければ…行くのを止めなかった私の後悔……今何処で何をしているのかも生きているのかも分からない…… 夫の帰りを待っ家族の話しです。 誤字脱字があります。更新が不定期ですがよろしくお願いします。

「10歳の頃の想いなど熱病と同じ」と婚約者は言いました──さようなら【完結保証】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王太子フリードリヒの婚約者として、幼い頃から王妃教育を受けてきたアメリア・エレファウント公爵令嬢。 誰もが羨む未来を約束された彼女の世界は、ある日突然1人の少女の登場によって揺らぎ始める。 無邪気な笑顔で距離を(意図的に)間違える編入生ベルティーユは、男爵の庶子で平民出身。 ベルティーユに出会ってから、悪い方へ変わっていくフリードリヒ。 「ベルが可哀想だろ」「たかがダンスくらい」と話が通じない。 アメリアの積み上げてきた7年の努力と誇りが崩れていく。 そしてフリードリヒを見限り、婚約解消を口にするが話は進まず、学園の卒業パーティーで断罪されてしまう……?! ⚠️ 本作は AI の生成した文章を一部に使っています

処理中です...