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ネルヴァン様?
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ネルヴァン様はわたしの目の前で不思議なくらい自然な笑顔を見せていた。
いつも会うと何かしら絡んできて、ついこちらも嫌味を返してしまうのに。
ブライアンのことを言われ、思わず焦ってしまった。盗んだわけではないけど、今はわたしの馬として世話をしているのも確かだった。
「ブライアンは君とルドルフがお気に入りらしい。大切に世話してくれているならそれでいい」
「彼も、もうわたしの家族です」
ブライアンがネルヴァン様のところへ帰りたいなら、もちろん寂しいけど手放すつもり。
でもネルヴァン様はそんなつもりはなさそう。ホッと胸を撫で下ろした。
視線を彼から外すとお店へとやって来ているミルの姿があった。
「ミル!」
手を振ると「うん??」と思わず声が出た。
ミルの後ろにいるのは、ヤリス。
職場によく顔を出す町の警備隊所属のヤリスさん。何度かデートに誘われたけど断っている人。
今日はミルとデート? じゃあわたしは……お邪魔じゃない?
ネルヴァン様を無視してミルへ視線を向けたまま悩んでいると、ミルが手を振ってきた。
「ソフィ!遅くなってごめんね」
「ううん、大丈夫よ。ところでヤリスさんとデートだった?」
それならわたしは一人でのんびり買い物でもしようと思って「わたし、遠慮しておくわ」と言った。
「違う!」
「違うわ!」
二人が必死に否定するのがおかしくて笑う。
「もう!ソフィ!知ってるでしょう?わたしの好きな人!」
「俺だって、好きなのはミルじゃない!ソフィはわかってるはずだ」
「ふふ。ミル、わかってるわ」
「ヤリスさんは今日はお仕事は?」
「うん?休みで暇だったから買い物に出掛けてたんだ。一人暮らしだから料理しないといけないからな」
「たまたま会ったからカフェに行くと話したら、じゃあ俺も!ってヤリスさんがついて来たの」
「え?いいじゃん。俺も甘いケーキ大好きなんだ」
「それより予約してる時間になったからお店に入りましょう」
ミルに手を引っ張られて慌てて店の中へ入る。
ネルヴァン様は、そんなわたし達を黙って少し離れて見ていた。ミルは、彼がわたしの知り合いだとは思っていないようだった。
店の中に入るとヤリスさんに聞こえないようにわたしの耳元でそっと囁いた。
「さっき、お店の前にいた男性とてもカッコ良かったと思わない?まとっている空気が普通じゃなかったわ。あれは高位貴族の方よね?どうしてこんなところに一人でいるのかしら?もしかしたら周囲にはたくさんの護衛が隠れているとか?」
ミルは平民だけど、町役場でたくさんの貴族とも接しているし、人の行動をよく観察していて、人当たりがいい。
誰とでも仲良くなれるミルにわたし自身も何度も救われている。
ヤリスさんがわたしに好意を抱いていることを知っているので、今日もわざわざ道で会っただけなのに、ここに連れて来たのだろう。
とてもありがたい迷惑なんだけど、ミルの笑顔には負けてしまい、腹を立てることもできなかった。
予約していたのですぐに席に通された。
外の通りが見える大きな窓。
ふと外が気になって店の入り口へ視線を向ける。
もうネルヴァン様の姿はなくなっていた。
ホッとして三人でケーキを楽しみながら話が盛り上がった。
ヤリスさんは、わたしより3歳年上。短髪で仕事柄いつもは怖そうに(わたしの視線で)見えるけど、笑うと目が垂れて可愛く見えると職場では女性陣から人気がある。それにヤリスさんはとても優しくて警備隊の中でも実力者と言われている。
町でもヤリスさん達警備隊の人たちはとても人気が高い。だからなのか、カフェの中でもヤリスさんに目をやる人は多い。
チラチラとこちらを見ている人がなんとなく気になっていると「ソフィ?どうした?」とヤリスさんが心配そうな顔をして尋ねた。
「え?ううん。ただ……なんとなく視線が……」
「そんなの気にするな。気にしてたら楽しい時間が嫌な気持ちになってしまうだろう?」
人気者のヤリスさんは人の視線に慣れすぎているのか気にも留めない。ミルも「そうそう、気にしない気にしない」とあっけらかんとしている。
わたしは多分人の視線の中、ビクビクと過ごしてきたから、見られることが苦手なのかもしれない。
王女としてずっとたくさんの人に見られてきて一番慣れているはずなのに。
それでもネルヴァン様のことは忘れ、今日は三人でいろんなお店を回り買い物を楽しんで過ごした。
家に帰ると玄関の前にネルヴァン様が立っていた。
「お帰り、今日は楽しかった?」
「どうしてここにいるのですか?」
冷たく言った。
「ねぇ?ソフィア、君は今幸せかい?」
「………………あなたには関係ないことです。もう関わらないでください。それに、わたしはソフィアではなくソフィです」
「俺は、君を愛してる」
思わずその言葉に目を見開いた。
「はっ?」
いつも会うと何かしら絡んできて、ついこちらも嫌味を返してしまうのに。
ブライアンのことを言われ、思わず焦ってしまった。盗んだわけではないけど、今はわたしの馬として世話をしているのも確かだった。
「ブライアンは君とルドルフがお気に入りらしい。大切に世話してくれているならそれでいい」
「彼も、もうわたしの家族です」
ブライアンがネルヴァン様のところへ帰りたいなら、もちろん寂しいけど手放すつもり。
でもネルヴァン様はそんなつもりはなさそう。ホッと胸を撫で下ろした。
視線を彼から外すとお店へとやって来ているミルの姿があった。
「ミル!」
手を振ると「うん??」と思わず声が出た。
ミルの後ろにいるのは、ヤリス。
職場によく顔を出す町の警備隊所属のヤリスさん。何度かデートに誘われたけど断っている人。
今日はミルとデート? じゃあわたしは……お邪魔じゃない?
ネルヴァン様を無視してミルへ視線を向けたまま悩んでいると、ミルが手を振ってきた。
「ソフィ!遅くなってごめんね」
「ううん、大丈夫よ。ところでヤリスさんとデートだった?」
それならわたしは一人でのんびり買い物でもしようと思って「わたし、遠慮しておくわ」と言った。
「違う!」
「違うわ!」
二人が必死に否定するのがおかしくて笑う。
「もう!ソフィ!知ってるでしょう?わたしの好きな人!」
「俺だって、好きなのはミルじゃない!ソフィはわかってるはずだ」
「ふふ。ミル、わかってるわ」
「ヤリスさんは今日はお仕事は?」
「うん?休みで暇だったから買い物に出掛けてたんだ。一人暮らしだから料理しないといけないからな」
「たまたま会ったからカフェに行くと話したら、じゃあ俺も!ってヤリスさんがついて来たの」
「え?いいじゃん。俺も甘いケーキ大好きなんだ」
「それより予約してる時間になったからお店に入りましょう」
ミルに手を引っ張られて慌てて店の中へ入る。
ネルヴァン様は、そんなわたし達を黙って少し離れて見ていた。ミルは、彼がわたしの知り合いだとは思っていないようだった。
店の中に入るとヤリスさんに聞こえないようにわたしの耳元でそっと囁いた。
「さっき、お店の前にいた男性とてもカッコ良かったと思わない?まとっている空気が普通じゃなかったわ。あれは高位貴族の方よね?どうしてこんなところに一人でいるのかしら?もしかしたら周囲にはたくさんの護衛が隠れているとか?」
ミルは平民だけど、町役場でたくさんの貴族とも接しているし、人の行動をよく観察していて、人当たりがいい。
誰とでも仲良くなれるミルにわたし自身も何度も救われている。
ヤリスさんがわたしに好意を抱いていることを知っているので、今日もわざわざ道で会っただけなのに、ここに連れて来たのだろう。
とてもありがたい迷惑なんだけど、ミルの笑顔には負けてしまい、腹を立てることもできなかった。
予約していたのですぐに席に通された。
外の通りが見える大きな窓。
ふと外が気になって店の入り口へ視線を向ける。
もうネルヴァン様の姿はなくなっていた。
ホッとして三人でケーキを楽しみながら話が盛り上がった。
ヤリスさんは、わたしより3歳年上。短髪で仕事柄いつもは怖そうに(わたしの視線で)見えるけど、笑うと目が垂れて可愛く見えると職場では女性陣から人気がある。それにヤリスさんはとても優しくて警備隊の中でも実力者と言われている。
町でもヤリスさん達警備隊の人たちはとても人気が高い。だからなのか、カフェの中でもヤリスさんに目をやる人は多い。
チラチラとこちらを見ている人がなんとなく気になっていると「ソフィ?どうした?」とヤリスさんが心配そうな顔をして尋ねた。
「え?ううん。ただ……なんとなく視線が……」
「そんなの気にするな。気にしてたら楽しい時間が嫌な気持ちになってしまうだろう?」
人気者のヤリスさんは人の視線に慣れすぎているのか気にも留めない。ミルも「そうそう、気にしない気にしない」とあっけらかんとしている。
わたしは多分人の視線の中、ビクビクと過ごしてきたから、見られることが苦手なのかもしれない。
王女としてずっとたくさんの人に見られてきて一番慣れているはずなのに。
それでもネルヴァン様のことは忘れ、今日は三人でいろんなお店を回り買い物を楽しんで過ごした。
家に帰ると玄関の前にネルヴァン様が立っていた。
「お帰り、今日は楽しかった?」
「どうしてここにいるのですか?」
冷たく言った。
「ねぇ?ソフィア、君は今幸せかい?」
「………………あなたには関係ないことです。もう関わらないでください。それに、わたしはソフィアではなくソフィです」
「俺は、君を愛してる」
思わずその言葉に目を見開いた。
「はっ?」
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