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34話 夢の中
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「アイシャ!」
遠くから声が聞こえた。
ここは夢の中?
それとも………
わたし?ううん、ここはどこ?
わたしなのにわたしではない。
わたしよりも年上の令嬢?
でも目の前で………
「君との婚約は破棄させてもらう。僕の愛する人はミランダだけなんだ」
ーーミランダ?でも目の前にいるのはミラーネ様に似ているわ。
シルヴィオ殿下?違う。
この人は誰?
わたしに似た令嬢に婚約破棄を告げミランダ様?の腰を引き寄せ優しく抱きしめていた。
二人は微笑み合い令嬢を冷たく見下ろした。
「この女を地下牢へ」
「何故?」
令嬢は真っ青な顔をして二人を見ていた。
令嬢は騎士達に無理やり連れて行かれた。
令嬢の周りには不思議な光が見える。
とても綺麗で何故か夢なのに、懐かしいと感じるわたし。今起きている夢はあまりにも酷い状態なのに。
令嬢が連れてこられた地下牢には窓すらなかった。
トイレと毛布が一枚置かれているだけ。
「入れ」
令嬢は『何もしていない」と何度も訴えても誰も聞こうとしない。
引き摺られ牢の中へと投げ入れられた。
固い石の上に座り、眠くなれば石の上に横になって眠る。
朝と夜、パンと水が運ばれてきた。
看守すらいない独房。
令嬢は食べ物を運んできてくれる女性に「お父様に会いたい」と声をかけるも返事もない。
令嬢の顔には絶望が見えた。
そしてどれくらい日が経ったのだろう。
令嬢はぐったりとして生気がなかった。
死が近づいているのがわかる。
シルヴァ殿下と呼ばれる男性とミランダ様が共に地下牢へとやってきた。
二人はとても楽しそうに令嬢の姿を見ていた。
「アーシャ、少しは反省したのか?僕の大切なミランダを襲わせようとするなんて、人として最低なことだと思わないのか?」
ーーアーシャ。
初めて彼女の名前を知った。
わたしに似ている顔。わたしに似ている名前。
そして、何故かこの場面を知っている気がする。何故?わからない、これは夢のはず。
「アーシャ様、あなたは精霊に愛された愛し子だと言われているのに、人を殺めようとするなんて。なんて恐ろしい方なの?」
悲しみを堪えながらミランダ様はアーシャを見た。
なのに目はアーシャを嘲笑うかのように一瞬ニヤッと嗤った。
アーシャはずっと黙って二人から言われる言葉を聞いていた。
ーー精霊?
わたしはその言葉に絵本の中で読んだお話に精霊が出てきたなと思った。
ーー夢の中だから精霊が出てきたのね。
「お前は返事すらできないのか?」
苛立つ殿下に向けてアーシャが微笑んだ。
「なっ!なんだその気持ち悪い笑顔は?」
殿下は不快そうにアーシャを見て舌打ちする。
アーシャは何も答えない。
「ねぇもう行きましょう。こんな汚いところにいたくないわ」
甘えるミランダ様を愛おしそうに見つめる殿下。
「ああ、なんだかとても臭いし、こんな小汚い女が僕の婚約者だったなんて、ほんと僕は見る目がなかったよ」
そう吐き捨てて殿下は去ろうとした。
そして────殿下は振り返って言った。
「この女を好きにしていいぞ」
騎士たちはニヤッと笑った。
ミランダ様はクスクス笑いながらアーシャを見た。
「あら?純潔を白騎士に捧げられるなんて名誉なことだわ。ねっ?アーシャ様」
アーシャには牢の中で逃げる場所なんてない。
「や、やめて!わたしは何日もお風呂に入っていないわ!汚いからやめて!」
白騎士たちはそんなアーシャの抵抗などなかったかのように次々に犯していった。
わたしはそんなアーシャを助けようと「やめてあげてください!駄目!」と叫んだ。
でも夢の中のアーシャは騎士達に犯されていった。わたしは両手で顔を覆い見ないようにした。そして大声で泣き叫んだ。
「やめてっ!!!」
抵抗したため頬を叩かれ、数人に地面に押し付けられた。
代わる代わる男たちがアーシャを犯していく。
口にはタオルを入れられて声すら出せない。舌を切って死ぬことすらできないでいた。
光すら入らない地下牢で男たちに弄ばれてただ横になる惨めなアーシャ。
わたしの心も張り裂けそうになる。
アーシャの心が、わたしの中に流れ込む。
ーーお父様、助けて。
言葉を発せないでいる彼女の声が何故か聞こえる。
アーシャは数日男たちに犯されて裸の状態でボロボロになって死んでいった。
この夢はあまりにも衝撃で、そして、何故か、自分がされたことのように感じる。
夢の中から逃げ出したいのにわたしはこの夢から逃れられないでいる。
✴︎ ︎ ✴︎ ︎ ✴︎ ︎ ✴︎ ︎ ✴︎ ︎
「アイシャ、頼む、助かってくれ」
祈るようにアイシャのそばにいたのは父親とシルヴィオだった。
アイシャは背中を刺され出血がひどく意識を失ったまま目を覚さないでいた。
アイシャが刺された時。
シルヴィオはメイドのミズナの叫び声に急いで駆け寄りアイシャの倒れる姿を目にした。
ミラーネはゆっくりとアイシャに近づいた。
「あら?わたし、今、聖力が使えないの。ごめんなさいね」
と笑って言った。
◆ ◆ ◆
間違えて【愛されない王妃】の話をこちらに投稿しました。
お詫び申し上げます。すみませんでした。
遠くから声が聞こえた。
ここは夢の中?
それとも………
わたし?ううん、ここはどこ?
わたしなのにわたしではない。
わたしよりも年上の令嬢?
でも目の前で………
「君との婚約は破棄させてもらう。僕の愛する人はミランダだけなんだ」
ーーミランダ?でも目の前にいるのはミラーネ様に似ているわ。
シルヴィオ殿下?違う。
この人は誰?
わたしに似た令嬢に婚約破棄を告げミランダ様?の腰を引き寄せ優しく抱きしめていた。
二人は微笑み合い令嬢を冷たく見下ろした。
「この女を地下牢へ」
「何故?」
令嬢は真っ青な顔をして二人を見ていた。
令嬢は騎士達に無理やり連れて行かれた。
令嬢の周りには不思議な光が見える。
とても綺麗で何故か夢なのに、懐かしいと感じるわたし。今起きている夢はあまりにも酷い状態なのに。
令嬢が連れてこられた地下牢には窓すらなかった。
トイレと毛布が一枚置かれているだけ。
「入れ」
令嬢は『何もしていない」と何度も訴えても誰も聞こうとしない。
引き摺られ牢の中へと投げ入れられた。
固い石の上に座り、眠くなれば石の上に横になって眠る。
朝と夜、パンと水が運ばれてきた。
看守すらいない独房。
令嬢は食べ物を運んできてくれる女性に「お父様に会いたい」と声をかけるも返事もない。
令嬢の顔には絶望が見えた。
そしてどれくらい日が経ったのだろう。
令嬢はぐったりとして生気がなかった。
死が近づいているのがわかる。
シルヴァ殿下と呼ばれる男性とミランダ様が共に地下牢へとやってきた。
二人はとても楽しそうに令嬢の姿を見ていた。
「アーシャ、少しは反省したのか?僕の大切なミランダを襲わせようとするなんて、人として最低なことだと思わないのか?」
ーーアーシャ。
初めて彼女の名前を知った。
わたしに似ている顔。わたしに似ている名前。
そして、何故かこの場面を知っている気がする。何故?わからない、これは夢のはず。
「アーシャ様、あなたは精霊に愛された愛し子だと言われているのに、人を殺めようとするなんて。なんて恐ろしい方なの?」
悲しみを堪えながらミランダ様はアーシャを見た。
なのに目はアーシャを嘲笑うかのように一瞬ニヤッと嗤った。
アーシャはずっと黙って二人から言われる言葉を聞いていた。
ーー精霊?
わたしはその言葉に絵本の中で読んだお話に精霊が出てきたなと思った。
ーー夢の中だから精霊が出てきたのね。
「お前は返事すらできないのか?」
苛立つ殿下に向けてアーシャが微笑んだ。
「なっ!なんだその気持ち悪い笑顔は?」
殿下は不快そうにアーシャを見て舌打ちする。
アーシャは何も答えない。
「ねぇもう行きましょう。こんな汚いところにいたくないわ」
甘えるミランダ様を愛おしそうに見つめる殿下。
「ああ、なんだかとても臭いし、こんな小汚い女が僕の婚約者だったなんて、ほんと僕は見る目がなかったよ」
そう吐き捨てて殿下は去ろうとした。
そして────殿下は振り返って言った。
「この女を好きにしていいぞ」
騎士たちはニヤッと笑った。
ミランダ様はクスクス笑いながらアーシャを見た。
「あら?純潔を白騎士に捧げられるなんて名誉なことだわ。ねっ?アーシャ様」
アーシャには牢の中で逃げる場所なんてない。
「や、やめて!わたしは何日もお風呂に入っていないわ!汚いからやめて!」
白騎士たちはそんなアーシャの抵抗などなかったかのように次々に犯していった。
わたしはそんなアーシャを助けようと「やめてあげてください!駄目!」と叫んだ。
でも夢の中のアーシャは騎士達に犯されていった。わたしは両手で顔を覆い見ないようにした。そして大声で泣き叫んだ。
「やめてっ!!!」
抵抗したため頬を叩かれ、数人に地面に押し付けられた。
代わる代わる男たちがアーシャを犯していく。
口にはタオルを入れられて声すら出せない。舌を切って死ぬことすらできないでいた。
光すら入らない地下牢で男たちに弄ばれてただ横になる惨めなアーシャ。
わたしの心も張り裂けそうになる。
アーシャの心が、わたしの中に流れ込む。
ーーお父様、助けて。
言葉を発せないでいる彼女の声が何故か聞こえる。
アーシャは数日男たちに犯されて裸の状態でボロボロになって死んでいった。
この夢はあまりにも衝撃で、そして、何故か、自分がされたことのように感じる。
夢の中から逃げ出したいのにわたしはこの夢から逃れられないでいる。
✴︎ ︎ ✴︎ ︎ ✴︎ ︎ ✴︎ ︎ ✴︎ ︎
「アイシャ、頼む、助かってくれ」
祈るようにアイシャのそばにいたのは父親とシルヴィオだった。
アイシャは背中を刺され出血がひどく意識を失ったまま目を覚さないでいた。
アイシャが刺された時。
シルヴィオはメイドのミズナの叫び声に急いで駆け寄りアイシャの倒れる姿を目にした。
ミラーネはゆっくりとアイシャに近づいた。
「あら?わたし、今、聖力が使えないの。ごめんなさいね」
と笑って言った。
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間違えて【愛されない王妃】の話をこちらに投稿しました。
お詫び申し上げます。すみませんでした。
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