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主の恋は難題だ
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主の恋は難題だ
「あれ、セラ様のところに行かれたはずでは....」
振り返り、主の様子が尋常でないことに気づいた。
主の様子が目に見えて幸せそうになったのはあの日、賊に襲われた次の日からだ。あの様子を見れば何があったのかくらい容易に想像がついた。相当落ち込んでいただけに回復、それどころかかつてなく寛容で仕事に意欲的に取り込む主に喜んでいたのだ。それが今夜、執務室に戻り、あの日以上に沈み込んでいる――――
「なあ、クシェル。」
「なんでしょうか。」
「俺は、そんなに軽い男だと思われているのだろうか。」
項垂れながら問われた言葉にクシェルは考える。
セラに出会う前のレオは結構な遊び人だった。適当に女を引っ掛けていたことも多々あった。それをセラが風の噂で知ったのなら、そのうちの1人だと思っている可能性はゼロではない。
ましてやセラの自己認識の低さもある。
周りから見れば、信じられない程溺愛しているのだが。
「遊びだと思われていると?」
「流石にそれはないと思うんだが...。結婚前に、関係なんて持てるわけないだろう?」
「まさか、誘われたのですか?」
あのセラが。あまりにも意外だが、そうだとしたら――――
「結婚の可能性を考えていない、ということでしょうね。」
「そう....なんだろうな。俺が抱かないのは自分の傷のせいだと思ってるらしい。」
流石に気の毒になってきた。主がどれ程我慢しているか、恐らく1番よく知っている身としては。
「もういっそ、全て知っていると話せばどうでしょう?」
「まだベルシュタイン辺境伯に了承を得たわけじゃない。中途半端に期待させて、上手くいかなければ余計苦しむと思ったんだが...」
「しかし今のままでは余計に拗れているでしょう。」
「ライの件もだ。不安に思っているだろうに実は見つかっていましたなんて知ったら、今度は俺が嫌われることを危惧しなきゃならない。」
「セラ様もそろそろ殿下の性格の悪い部分を見るべきな気はしますがね。」
「...分かってる。このままではダメだ。はぁ....明日商人が来るのに一体どうするんだ...」
主がこれ程愚痴るのは初めてだ。それ程のショックだったことが伺える。
ここ最近、休暇も貰い、優しくなっていた主を励ましたい気分になった。
「殿下のセラ様を思う気持ちは本物です。ベルシュタイン辺境伯の件も、王には手を回しているのですし、話しても問題ないのでは?」
「そうだな...このままだとベルシュタイン辺境伯に話す前にセラが潰れる。セラが俺への気持ちを自覚した時点で気を抜いた。俺が思っていた以上に不安定だ。」
「あれ程の虐待と家族を抱えての旅を続けたのでは仕方ないでしょう。セラ様は強い方です。今は初めてのことで不安定でも、時間が経てば変わるはずです。」
「なんだ、今日はいつになく優しいな。」
「殿下にここまで弱られると調子が狂います。」
「お前に話していると少し落ち着いた。悪かったな。付き合わせて。」
「いいえ。殿下はあまり自分のことをお話になりませんので。たまには悪くありません。」
嘘ではない。いつも人間味のない顔を見せていた主が今はこんなに人間らしい顔を見せている。
それは間違いなくセラのお陰なのだ。
「部屋に戻る。お前も早く休め。」
「お言葉に甘えて、そうさせていただきます。」
本当に変わった。自分が落ち込んでいても他人を気遣うなんて。
「セラ様と、和解出来るといいですね。」
「ああ、そうだな。」
恋路に悩む主が、なんだか微笑ましくなった。
もっとも――――明日の商人とのドレス選びは地獄だろうが。
「あれ、セラ様のところに行かれたはずでは....」
振り返り、主の様子が尋常でないことに気づいた。
主の様子が目に見えて幸せそうになったのはあの日、賊に襲われた次の日からだ。あの様子を見れば何があったのかくらい容易に想像がついた。相当落ち込んでいただけに回復、それどころかかつてなく寛容で仕事に意欲的に取り込む主に喜んでいたのだ。それが今夜、執務室に戻り、あの日以上に沈み込んでいる――――
「なあ、クシェル。」
「なんでしょうか。」
「俺は、そんなに軽い男だと思われているのだろうか。」
項垂れながら問われた言葉にクシェルは考える。
セラに出会う前のレオは結構な遊び人だった。適当に女を引っ掛けていたことも多々あった。それをセラが風の噂で知ったのなら、そのうちの1人だと思っている可能性はゼロではない。
ましてやセラの自己認識の低さもある。
周りから見れば、信じられない程溺愛しているのだが。
「遊びだと思われていると?」
「流石にそれはないと思うんだが...。結婚前に、関係なんて持てるわけないだろう?」
「まさか、誘われたのですか?」
あのセラが。あまりにも意外だが、そうだとしたら――――
「結婚の可能性を考えていない、ということでしょうね。」
「そう....なんだろうな。俺が抱かないのは自分の傷のせいだと思ってるらしい。」
流石に気の毒になってきた。主がどれ程我慢しているか、恐らく1番よく知っている身としては。
「もういっそ、全て知っていると話せばどうでしょう?」
「まだベルシュタイン辺境伯に了承を得たわけじゃない。中途半端に期待させて、上手くいかなければ余計苦しむと思ったんだが...」
「しかし今のままでは余計に拗れているでしょう。」
「ライの件もだ。不安に思っているだろうに実は見つかっていましたなんて知ったら、今度は俺が嫌われることを危惧しなきゃならない。」
「セラ様もそろそろ殿下の性格の悪い部分を見るべきな気はしますがね。」
「...分かってる。このままではダメだ。はぁ....明日商人が来るのに一体どうするんだ...」
主がこれ程愚痴るのは初めてだ。それ程のショックだったことが伺える。
ここ最近、休暇も貰い、優しくなっていた主を励ましたい気分になった。
「殿下のセラ様を思う気持ちは本物です。ベルシュタイン辺境伯の件も、王には手を回しているのですし、話しても問題ないのでは?」
「そうだな...このままだとベルシュタイン辺境伯に話す前にセラが潰れる。セラが俺への気持ちを自覚した時点で気を抜いた。俺が思っていた以上に不安定だ。」
「あれ程の虐待と家族を抱えての旅を続けたのでは仕方ないでしょう。セラ様は強い方です。今は初めてのことで不安定でも、時間が経てば変わるはずです。」
「なんだ、今日はいつになく優しいな。」
「殿下にここまで弱られると調子が狂います。」
「お前に話していると少し落ち着いた。悪かったな。付き合わせて。」
「いいえ。殿下はあまり自分のことをお話になりませんので。たまには悪くありません。」
嘘ではない。いつも人間味のない顔を見せていた主が今はこんなに人間らしい顔を見せている。
それは間違いなくセラのお陰なのだ。
「部屋に戻る。お前も早く休め。」
「お言葉に甘えて、そうさせていただきます。」
本当に変わった。自分が落ち込んでいても他人を気遣うなんて。
「セラ様と、和解出来るといいですね。」
「ああ、そうだな。」
恋路に悩む主が、なんだか微笑ましくなった。
もっとも――――明日の商人とのドレス選びは地獄だろうが。
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