【完結】義妹(ヒロイン)の邪魔をすることに致します

凛 伊緒

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1章

第8話

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数日後、建国祭の前々日。
私はメリーア様にお会いする為、王都の中央通りと呼ばれる場所に来ていた。

この国は各貴族が自領を治めている。そして位が高いほど、収める土地が広くなる仕組みね。
基本的には自領の屋敷にて統治などの仕事をしていて、私のお父様も伯爵領にある屋敷で仕事しているわ。けれど貴族は王都にも別邸を持っている。その方が何かと都合が良いからという理由らしい。
私達学園生は長期休暇中などをこの別邸で過ごす。それに伴い、休暇が終わるまでは両親も王都でしばらく暮らしている。親子が揃っている方が教育的にも良いという国の考えのようね。

そういう訳で、お父様とお母様並びに、私やライラは現在王都の別邸で過ごしているわ。
当然メリーア様も公爵家が有する別邸にて生活されている。
ライラの必要な物を買う際に訪れた『ルーバディー通り』は、王都の中央通りから少し離れた場所に位置している。
因みにライラは、お父様が一時的に伯爵領へと戻った際に孤児院に立ち寄り、王都へと戻ってくると同時に連れて来た。王都での手続きも済ませられるので一石二鳥とでも考えていたのでしょう。
幸いにも両親の関係は良好のままなので、お母様の懐の深さには感服ね。


「メリーア様!」


待ち合わせ場所に着き、周囲を見渡している様子のメリーア様を呼んだ。私に気付いたメリーア様はこちらに向かってきた。私も再度歩みを進め、近付いていく。


「お待たせしてしまいましたか…?」
「いいえ、私も今来たところよ。そういえばライラさんは?」
「ライラには中央通りに行くとは伝えず、知り合いに会いに行くとだけ言っておきました。」
「確かにその方が良いでしょうね…。」
「はい…。」


実を言うと、ライラは私について来ようとした。
『どこに行くのですかっ!?』としつこく尋ねてきたので、『王都に居る知り合いに会いに行くだけ』と返したわ。
それでもまだ来ようとした為、『平民の女の子』や『人見知り』など、彼女が会う必要のない人物と思うように嘘を追加していった。
面倒だったけれど、ライラについて来られない為ならばどのような理由でも良かったわ。
メリーア様も同じ考えのようね。先日も、会う日にちを合わせる為の手紙のやり取りの中で、私と一緒にライラが来てしまわないかと心配していた。
結果としては言い包めることが出来たわ。途中からライラとの話を聞いていたお母様が、助力をしてくれたのだけど…。

『ライラ。あなたは学園入学までに覚えなければならないことが沢山あるのよ。へレアについて行く時間なんてないわ。とりあえず明日の建国祭まで我慢して頂戴。』

…とお母様に言われたライラは、渋々返事をして諦めていた。
お母様には感謝ね。


「さて…、早速行きましょうか。明日この中央通りで何が起きるかは、それぞれの場所で教えていくわね。」
「お願いします…!」


今日メリーア様と会うこととなった理由は、『乙女ゲーム』におけるヒロインのライラが、『攻略対象』と呼ばれている方々と何処でどのように出会うのかを知る為。
つまりは『出会いイベント』についてを、起こるであろうその場所にてメリーア様が直接教えてくださるそう。


「明日の前夜祭、私はクレスディア殿下と屋台を回ることになっているわ。国王陛下が『婚約者同士、有意義な時間を過すと良い。』と仰って、私達に時間の空きができるよう取り計らってくださったのよ。」
「国王陛下はよく見ていらっしゃるのですね…。」
「そうね。私や殿下があまり婚約者らしいことをしていないと分かっていらっしゃるのでしょう。学園に居る時は学業優先で王太子の仕事は減っているから、時折お茶をすることはあるのだけれどね…。」


メリーア様は王太子クレスディア殿下の婚約者として、殿下のお仕事を補佐されている。
学園でも、生徒会室にて生徒会の仕事と並行していたわ。それほど多忙な殿下や補佐をするメリーア様を、国王陛下は高く評価なされているのでしょう。本当に、私にとって見習うべき点が多い方々ね…。


「さて…、着いたわよ。ここが次の『出会いイベント』が起こる場所。」


中央通りのとある一角。建国祭の前夜祭に向けて多くの屋台が準備を進め、賑わいを見せていた。
建国祭は明日の前夜祭と明後日の建国祭当日の、2日間で行われる。殆どの貴族は前夜祭で屋台を回り、当日の午前は支度、午後からは王家主催の盛大なパーティーにて2日目を過ごす。このパーティーはほぼ全ての貴族が招待されるから、必ずライラにも何か動きがあるでしょう。
一先ずは前夜祭に集中すべきね。


「私が物語を少し変えてしまっているから、本当にここで起こるかは分からないわ…。」
「……きっと何か起こりますよ。」
「えっ…?」
「何故か…、そんな気がします。この場所でライラと誰が出会うのですか?」


私は何となく誰か予想がついたわ。
建国祭→屋台→商売ときたら……


「大商人シルド商会会長の長男、ドーフェン・シルドよ。」
「やはり彼ですか…。」
「流石はへレアね。分かっていたなんて驚きだわ。」
「建国祭で屋台となれば、彼しか思いつきませんから。」


そう言うと、メリーア様は少し笑ってから詳細を話し始めた。

ドーフェンは前夜祭が始まって数時間後、どのような商売が1番売れているかを調べる為、中央通りを見て回るそう。その時に初めてライラと会うようね。
欲しい物を買う為に走っていた時、辺りを見渡しながら歩いていたドーフェンとぶつかるという出会い方らしいわ。物語としては雑な気がするけれど、運命的な出会いと言われてしまえば納得出来なくはない。


「ライラと初めて出会ったドーフェンがどのような反応をしていたのか、それをへレアには見ていて欲しいの。」
「その『イベント』自体を妨害しなくても良いのですか?」
「妨害したところで意味が無いわ。いずれ必ず学園で会うことになるもの。それに下手に出会いイベントを妨害してしまえば、ライラさんはへレアを不審に思うでしょう。」
「そう思われては今後に影響してしまいますね…。」


ライラに私がメリーア様の味方をしていると悟られるわけにはいかない。彼女にはあくまで姉として優しく接し、既に魅了のような状態に陥っていると思わせておく必要すらある。
建国祭での『出会いイベント』を潰してしまえば、真っ先に私が疑われるでしょう。メリーア様のお言葉は正論ね。



「今回はドーフェンの反応を見る為にもライラさんの監視だけをして欲しいの。」
「勿論です。私もライラの周りの事を知っておきたいですから。」
「ありがとう。でも建国祭を楽しむことが優先よ?彼女の監視は二の次でいいから、自分第一で動いて。」
「…っ、分かりました。これほどお優しいメリーア様の為にも、全力でライラを監視しますっ!」
「全力で監視って……言葉の意味を理解しているのかしら…。」


私は最初からライラと行動を共にするつもりだった。誘った際は、『勿論行きます!建国祭に行かない理由などありませんっ!』と二つ返事で返ってきたわ。その勢いには少し驚いてしまったけれど、一緒に行ってくれるのであれば何でも良かった。

建国祭に向けて、着々と物事は進んでいる。
とはいえライラがこの先も想定通りに動くという保証が無い以上、気を抜くことなど出来ないし、監視の目を緩めるつもりもない。
明日のドーフェンとの会話、一言一句聞き逃さないようにしなければならないわね──
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