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本編
第6話(過去編)
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私には『姉様』と呼んでとても親しく、そして慕っている方がいた。公爵令嬢セレスティナ・エリーユア様だ。
家同士の仲が良いという訳ではなく、私が5歳の時にお茶会で見かけ、歳は2つ違うが友として付き合い始めた。貴族令嬢の模範と言っても過言では無い立ち居振る舞いに、いつも憧れていた。
交流を続ける内に姉様と呼ぶようになり、セレス姉様はよく公爵家に私を招いてくれた。本当はユシェナート侯爵家にも来て欲しかったのだが、両親はミフェラばかりに構っていて私は邪魔者扱いだった。故に侯爵家には来ない方が良いだろうと考え、セレス姉様にも事情を説明し、了承を得ていた。
私がエリーユア公爵家に何回も通っていると、公爵家の使用人がとても優しく接してくれるようになった。いっそエリーユア公爵家に住みたいと思ったほどだ。
そしてそんなある日、セレス姉様が第二王子エイルス・ディア・セイラン殿下と婚約したと教えてくれた。私は自分事のように喜び、祝福した。だが幸せな日々は、突然ある男によって奪われてしまった──
セレス姉様が14歳の時、それは起こった。
第一王子の生誕を祝うパーティーにて、国王陛下が職務の為に2時間程で会場をあとにした時、待ってましたと言わんばかりにヴィアルスは動いた。
全体の半数以上の王国貴族が参加していた生誕パーティー。そんな貴族達にヴィアルスは注目するように促すと、セレス姉様を呼んだ。
そして……
「お前が行ってきた悪事の数々を、今ここで明かすッ。」
などと、とんでもないことを言い始めたのだ。私は驚きのあまり固まってしまったが、すぐに止まっていた思考を動かす。セレス姉様がそのような事をするはずがない……と。
ずっと姉様を傍で見てきたのだ。憧れの存在として、また見習うべき模範として。心優しい方であることを、誰よりも私がよく知っている。
「あ、悪事など私は行っておりません…!」
セレス姉様は必死にそう訴える。当然のことだ。実際に姉様は悪事と言えるようなことは何もしていない。だが……
「嘘を吐くな!お前がどれほどの罪を犯してきたのか、私は知っているのだ!」
全く聞く耳を持とうとしないヴィアルス。まるで自分の言葉が全て正しいのだと、信じて疑わない者の態度だ。
漂う雰囲気だけで、会話に入ってはいけないと、誰もが感じていた。私も声を押し殺して成り行きを見守った。
そしてここで、エイルス殿下が割って入る。婚約者なので当然だろう。
「兄上!お話は後ほどお伺いします。この場は私に免じて、どうか!」
「エイルス、いくら婚約者とはいえ罪人を庇うのか?ここで断罪するからこそ意味があるのではないか!」
「っ……。」
歯を食いしばって俯くエイルス殿下。そのお気持ちは痛いほど分かる。それにヴィアルスの表情を見ると、考えが透けて見えていた。
セレス姉様はエイルス殿下自ら選んだ婚約者だ。つまりその婚約者が罪を犯した場合、エイルス殿下の慧眼が疑われる。周囲からの評価が下がるということを意味するのだ。
エイルス殿下は第二王子とはいえ王位継承権を持っている。ヴィアルスは己が確実に継承できるよう蹴落とすつもりなのだろう。その為に何の罪もない婚約者を利用するなど……、本当に反吐が出る。
「エイルスの婚約者セレスティナ・エリーユアは、公爵家という権力を振りかざし、下級貴族に王国の民から物を奪わせるなどの悪行を繰り返している!さらには平民への過度ないじめ!」
「そんな…!」
「心当たりがあるのだろう?そういう人の目をしているぞ!その他にも数多あるが、公爵の顔を立ててここまでにしてやろう。」
格好良く言っているが、嘘を言っているので真逆にしか見えない。私はほぼ毎日セレス姉様に会いに行っていた。姉様はお人好しで、貴族令嬢達にとても優しい。それにあまり友を作っていないことも知っている。大勢から話しかけられることはあれど、友と呼べる人物は3、4人だ。私も似たような人数であり、友が誰なのかも知っていた。
そんなセレス姉様が悪事を働くなど絶対に有り得ない。
「衛兵!セレスティナ・エリーユアを連行しろ!」
「「はっ!」」
事前にヴィアルスが用意していたであろう衛兵が、セレス姉様の両手を縛り、会場の外へと連れて行く。兵達は王族の命令に逆らえない為、ヴィアルスの発言が嘘だと分かっていても、従うしかないのだろう。
家同士の仲が良いという訳ではなく、私が5歳の時にお茶会で見かけ、歳は2つ違うが友として付き合い始めた。貴族令嬢の模範と言っても過言では無い立ち居振る舞いに、いつも憧れていた。
交流を続ける内に姉様と呼ぶようになり、セレス姉様はよく公爵家に私を招いてくれた。本当はユシェナート侯爵家にも来て欲しかったのだが、両親はミフェラばかりに構っていて私は邪魔者扱いだった。故に侯爵家には来ない方が良いだろうと考え、セレス姉様にも事情を説明し、了承を得ていた。
私がエリーユア公爵家に何回も通っていると、公爵家の使用人がとても優しく接してくれるようになった。いっそエリーユア公爵家に住みたいと思ったほどだ。
そしてそんなある日、セレス姉様が第二王子エイルス・ディア・セイラン殿下と婚約したと教えてくれた。私は自分事のように喜び、祝福した。だが幸せな日々は、突然ある男によって奪われてしまった──
セレス姉様が14歳の時、それは起こった。
第一王子の生誕を祝うパーティーにて、国王陛下が職務の為に2時間程で会場をあとにした時、待ってましたと言わんばかりにヴィアルスは動いた。
全体の半数以上の王国貴族が参加していた生誕パーティー。そんな貴族達にヴィアルスは注目するように促すと、セレス姉様を呼んだ。
そして……
「お前が行ってきた悪事の数々を、今ここで明かすッ。」
などと、とんでもないことを言い始めたのだ。私は驚きのあまり固まってしまったが、すぐに止まっていた思考を動かす。セレス姉様がそのような事をするはずがない……と。
ずっと姉様を傍で見てきたのだ。憧れの存在として、また見習うべき模範として。心優しい方であることを、誰よりも私がよく知っている。
「あ、悪事など私は行っておりません…!」
セレス姉様は必死にそう訴える。当然のことだ。実際に姉様は悪事と言えるようなことは何もしていない。だが……
「嘘を吐くな!お前がどれほどの罪を犯してきたのか、私は知っているのだ!」
全く聞く耳を持とうとしないヴィアルス。まるで自分の言葉が全て正しいのだと、信じて疑わない者の態度だ。
漂う雰囲気だけで、会話に入ってはいけないと、誰もが感じていた。私も声を押し殺して成り行きを見守った。
そしてここで、エイルス殿下が割って入る。婚約者なので当然だろう。
「兄上!お話は後ほどお伺いします。この場は私に免じて、どうか!」
「エイルス、いくら婚約者とはいえ罪人を庇うのか?ここで断罪するからこそ意味があるのではないか!」
「っ……。」
歯を食いしばって俯くエイルス殿下。そのお気持ちは痛いほど分かる。それにヴィアルスの表情を見ると、考えが透けて見えていた。
セレス姉様はエイルス殿下自ら選んだ婚約者だ。つまりその婚約者が罪を犯した場合、エイルス殿下の慧眼が疑われる。周囲からの評価が下がるということを意味するのだ。
エイルス殿下は第二王子とはいえ王位継承権を持っている。ヴィアルスは己が確実に継承できるよう蹴落とすつもりなのだろう。その為に何の罪もない婚約者を利用するなど……、本当に反吐が出る。
「エイルスの婚約者セレスティナ・エリーユアは、公爵家という権力を振りかざし、下級貴族に王国の民から物を奪わせるなどの悪行を繰り返している!さらには平民への過度ないじめ!」
「そんな…!」
「心当たりがあるのだろう?そういう人の目をしているぞ!その他にも数多あるが、公爵の顔を立ててここまでにしてやろう。」
格好良く言っているが、嘘を言っているので真逆にしか見えない。私はほぼ毎日セレス姉様に会いに行っていた。姉様はお人好しで、貴族令嬢達にとても優しい。それにあまり友を作っていないことも知っている。大勢から話しかけられることはあれど、友と呼べる人物は3、4人だ。私も似たような人数であり、友が誰なのかも知っていた。
そんなセレス姉様が悪事を働くなど絶対に有り得ない。
「衛兵!セレスティナ・エリーユアを連行しろ!」
「「はっ!」」
事前にヴィアルスが用意していたであろう衛兵が、セレス姉様の両手を縛り、会場の外へと連れて行く。兵達は王族の命令に逆らえない為、ヴィアルスの発言が嘘だと分かっていても、従うしかないのだろう。
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