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本編
第7話(過去編)
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「待って…!姉様は……姉様はそんな事をするような人じゃないっ!」
私の声は届かず、セレス姉様は今にも泣きそうな表情で連行されて行った。
一方のヴィアルスは笑みを浮かべ、端から嵌めるつもりだったのだと容易に推測できた。全てはヴィアルスが悪い。この時、私は心の中で誓った。
【王子だろうが何だろうが、この男だけは地獄に落とす】
──と。
それからというもの、私はヴィアルスにとって何をすれば地獄と感じるのかを考えた。《死》という罰では生ぬるい。もっと《生き地獄》と思わせられるような、あの男にとって最悪な結末を与えなければ、私の怒りは収まらない。
姉様はきっと、私がヴィアルスに手を下すことを望んではいないだろう。だがこれは私自身がやりたいことだ。誰に止められようとも、何を諭されようとも、ヴィアルスだけは必ず地獄に落とす。
エリーユア公爵様の助言で、先ずはセレス姉様との関係が知られないよう手を回し、賄賂などあらゆる手段にて口止めをした。ヴィアルスに目を付けられないようにする為だ。
公爵様はご令嬢が大変な事になっているにも拘らず、ヴィアルスの被害者が増えないように尽力されている。本当にお優しく、素晴らしいお方だ。
「ご協力感謝致します、エリーユア公爵様。」
「気にするな。君達は何も悪くないのだからな……。」
「あの……、セレス姉………セレスティナ様は、現在どうなされているのですか…?」
「ああ、セレスは──」
ヴィアルスの言っていたセレス姉様の罪とやらは、証拠はなく人の証言のみだった。それだけでは裁けないと判断されたが、現在は地下牢に投獄されているそうだ。
冤罪とはいえ王族があのような場で言った言葉を無かったことには出来ず、さらには冤罪だということを明かすことは、王家の信頼に関わるからとエリーユア公爵様も強気に出られないでいた。王家の信頼が落ちることは、王国を運営する上で避けなければならないのだ。
エイルス殿下との婚約は継続しているそう。殿下はセレス姉様に非は無いとしていて、たとえ自分の評価が下がる事になるとしても、婚約は解消しないと言い切ったのだとか。エイルス殿下の姉様に対する愛情や、自分にも責任があるという気持ちがよく伝わってくる。
私は月に一度だけ、セレス姉様に手紙を出すことにした。どうやってかは分からないが、姉様からも手紙は返ってきた。おそらく獄中であっても、手紙程度ならば許されているのだろう。
紙には私の名を書いているが、封にはエリーユア公爵様からということにしている。姉様も表向きは公爵様宛だが、内容は2枚であり、1枚は私宛になっていた。
しかし私が13歳になる年に、3年間の王立学園での生活が始まった。それと同時に寮暮らしとなるので、手紙のやり取りも出来なくなってしまった。
「……はぁ…。会えないというのは、辛いものね…。」
学園生活が始まった頃、私は気持ちが沈んでいた。本来ならば、学園でセレス姉様と会えるはずだった。1年だけでも、同じ環境で学びを得られることが、私にとってはどれほど楽しみだったことか……。
だがここに姉様はいない。面会という形で学園の代わりとなる授業を受けているそうだが、薄暗い獄中で1人受ける授業は、きっと寂しいものだろう……。
そんな時、私は学園でとある噂を耳にし、希望を見出した。
「知っていますか?あの噂!」
「えぇ、聞いた事がありますわ。確か……」
「王太子殿下の婚約者を誰にするか、国王陛下が悩まれている……でしたわね。」
「そうですの!そして毎年この学園から優秀な生徒を王城で働かせる為に、国王陛下が御自ら選定されるそうですわ。」
「つまり、成績が高く国王陛下のお眼鏡にかなえば、王太子殿下の婚約者になれるのですわね!」
「きっとその通りですわ!」
令嬢達の会話からこの噂を知った私は、賭けに出ることにした。私より歳上の方が婚約者に選ばれる可能性もあったが、あえて陛下の興味を引く成績にしようと考えたのだ。
陛下は歴代の王の中でも英明と言われている。ならば必ず私の意図に気付き、声をかけてくるはずだ。その時に私は婚約者となれるよう言葉を紡ぎ、そして動くだけだ。
だが協力者は必要だろう。そこでとある人物に接触することにした。
「お時間をくださり感謝致します、ルーズフィルト公爵様。」
私の声は届かず、セレス姉様は今にも泣きそうな表情で連行されて行った。
一方のヴィアルスは笑みを浮かべ、端から嵌めるつもりだったのだと容易に推測できた。全てはヴィアルスが悪い。この時、私は心の中で誓った。
【王子だろうが何だろうが、この男だけは地獄に落とす】
──と。
それからというもの、私はヴィアルスにとって何をすれば地獄と感じるのかを考えた。《死》という罰では生ぬるい。もっと《生き地獄》と思わせられるような、あの男にとって最悪な結末を与えなければ、私の怒りは収まらない。
姉様はきっと、私がヴィアルスに手を下すことを望んではいないだろう。だがこれは私自身がやりたいことだ。誰に止められようとも、何を諭されようとも、ヴィアルスだけは必ず地獄に落とす。
エリーユア公爵様の助言で、先ずはセレス姉様との関係が知られないよう手を回し、賄賂などあらゆる手段にて口止めをした。ヴィアルスに目を付けられないようにする為だ。
公爵様はご令嬢が大変な事になっているにも拘らず、ヴィアルスの被害者が増えないように尽力されている。本当にお優しく、素晴らしいお方だ。
「ご協力感謝致します、エリーユア公爵様。」
「気にするな。君達は何も悪くないのだからな……。」
「あの……、セレス姉………セレスティナ様は、現在どうなされているのですか…?」
「ああ、セレスは──」
ヴィアルスの言っていたセレス姉様の罪とやらは、証拠はなく人の証言のみだった。それだけでは裁けないと判断されたが、現在は地下牢に投獄されているそうだ。
冤罪とはいえ王族があのような場で言った言葉を無かったことには出来ず、さらには冤罪だということを明かすことは、王家の信頼に関わるからとエリーユア公爵様も強気に出られないでいた。王家の信頼が落ちることは、王国を運営する上で避けなければならないのだ。
エイルス殿下との婚約は継続しているそう。殿下はセレス姉様に非は無いとしていて、たとえ自分の評価が下がる事になるとしても、婚約は解消しないと言い切ったのだとか。エイルス殿下の姉様に対する愛情や、自分にも責任があるという気持ちがよく伝わってくる。
私は月に一度だけ、セレス姉様に手紙を出すことにした。どうやってかは分からないが、姉様からも手紙は返ってきた。おそらく獄中であっても、手紙程度ならば許されているのだろう。
紙には私の名を書いているが、封にはエリーユア公爵様からということにしている。姉様も表向きは公爵様宛だが、内容は2枚であり、1枚は私宛になっていた。
しかし私が13歳になる年に、3年間の王立学園での生活が始まった。それと同時に寮暮らしとなるので、手紙のやり取りも出来なくなってしまった。
「……はぁ…。会えないというのは、辛いものね…。」
学園生活が始まった頃、私は気持ちが沈んでいた。本来ならば、学園でセレス姉様と会えるはずだった。1年だけでも、同じ環境で学びを得られることが、私にとってはどれほど楽しみだったことか……。
だがここに姉様はいない。面会という形で学園の代わりとなる授業を受けているそうだが、薄暗い獄中で1人受ける授業は、きっと寂しいものだろう……。
そんな時、私は学園でとある噂を耳にし、希望を見出した。
「知っていますか?あの噂!」
「えぇ、聞いた事がありますわ。確か……」
「王太子殿下の婚約者を誰にするか、国王陛下が悩まれている……でしたわね。」
「そうですの!そして毎年この学園から優秀な生徒を王城で働かせる為に、国王陛下が御自ら選定されるそうですわ。」
「つまり、成績が高く国王陛下のお眼鏡にかなえば、王太子殿下の婚約者になれるのですわね!」
「きっとその通りですわ!」
令嬢達の会話からこの噂を知った私は、賭けに出ることにした。私より歳上の方が婚約者に選ばれる可能性もあったが、あえて陛下の興味を引く成績にしようと考えたのだ。
陛下は歴代の王の中でも英明と言われている。ならば必ず私の意図に気付き、声をかけてくるはずだ。その時に私は婚約者となれるよう言葉を紡ぎ、そして動くだけだ。
だが協力者は必要だろう。そこでとある人物に接触することにした。
「お時間をくださり感謝致します、ルーズフィルト公爵様。」
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