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1話
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「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
さらには最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた──
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の名前はシェルア。
12歳の時から5年間、私は勇者パーティーの一員として仲間と共に魔物討伐を行ってきた。
毎日荷物持ちを押し付けられる。
と言っても、異空間収納があるのでそこは気にしていない。
当然と言われれば当然だからだ。
問題はその他にある。
殴る蹴るなどの暴行に加え、理由の分からない報酬の減額。
そんな中、今日もギルドの依頼で魔物討伐に向かっていた。
「クソ魔法使い、早く付与魔法を全員にかけろ。」
「分かりました。」
正直、こんな奴に魔法は使いたくないが、生きるためにはそうも言っていられない。
勇者が本格的に活動を開始したのは、パーティーメンバーが決まった5年前だった。
一度勇者パーティーに加わったならば、抜けることは許されない。
勇者本人に追放を言い渡される以外は。
この世界では、勇者が生まれた国の国王が勇者のパーティーメンバーを決める。
つまり、パーティーを勝手に抜けることは国王に対する不敬も同義となっているのだ。
故に、抜けたくても抜けられないのが現状だった。
《グルルル……ガアァアァァ!!》
討伐対象の魔物、『ブラックウルフ』の変異種が現れた。
名前の通り黒い狼の魔物なのだが、変異して顔と尾が二つの強力な魔物と化していた。
放っておけば、数多の被害が出ることだろう。
「お前はせいぜい、いつもの『初級魔法』で援護すればいい。さぁ、行くぜぇ!」
勇者ゼイスは、盾役ガネンと共に前衛に出ていく。
中衛として、狩人のラディナ。
後衛に魔法使いの私と、癒し手の聖女メーシアが構える。
私が初撃で、ブラックウルフを身動きが出来ないよう凍らせる。
使った魔法は初級魔法『氷結』。
小さな小動物までを凍らせることが出来る魔法だ。
では何故私が初級魔法程度で巨大なブラックウルフを凍らせられるのか…。
私が異常だからだ。
師匠にも『シェルアは異常だよ…。』とよく言われたものである。
しかしこの勇者パーティーのメンバーは、私が異常であることを知らない。
これが普通だと思っているから……。
「とどめを刺すぜ!はあぁぁぁ!」
「ゼイス様、格好いいですわぁ~。」
魔物は首を落とされ、その場に倒れる。
メーシアは笑顔で拍手し、褒め称える。
そしてゼイスは私を睨んだ。
「今日も初・級・魔・法・を!ありがとう、クソ魔法使い。」
「まだまだ精進して参ります。」
「当たり前だろ。てめぇみたいな初級魔法以外使えねぇクソ魔法使いが、パーティーに入れているだけありがたいと思え!」
この場合「はい。」といえば、「勘違いしてるんじゃねぇ」と殴られる。
ありがとうと言っているが、感謝という意味ではない。嫌味だ。
私は別に、『初級魔法以外使えない』というわけではない。
初級魔法程度で良い魔物ばかりなのだ。
その後ブラックウルフの素材を持ち帰り、討伐報酬を受け取る。
報酬は平等……ではない。私だけ。
他のパーティーメンバーの3分の1だ。
生活は問題なく出来るので、気にしていない。
いつも通り受け取ろうとしたが、ゼイスが奪った。
「何をなさるのでしょうか。」
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
突然の追放宣言。
メーシアは嘲笑うかのように私を見ながら勇者を肯定した。
「分かりました。ですが何故私物を渡さなくてはならないのですか?」
「訳を分かっていないとは馬鹿め。お前が今持っている物は、俺達が稼いだ金で買った物だ。つまり、パーティーを追放される以上お前が持っている資格はないということだ!」
「そうですか。ではどうぞ。」
「何だその態度は!?」
「異空間収納に収めている分も全て出しました。」
「その態度は何だと言っている!」
ゼイスは私に殴りかかってきた。
いつもならば抵抗せず受けるのだが、私は結界で身を守った。
ゼイスの拳は結界に当たり、ガンという強い音がなる。
「いっ…てぇな!何すんだよ!」
「それはこちらの台詞です。これまではパーティーリーダーである貴方に抵抗せず受けていましたが、追放された今、私は無関係な者となりました。貴方に殴られる筋合いはありません。」
「てめぇ…!」
「私は陛下にご報告に向かいます。『私の力が足りなかったばかりに』と申し上げるつもりです。貴方のことを悪くは言いませんよ。」
「当たり前だ!お前が弱いのが原因だからな!役立ちそうな魔法使いを俺自身で見つけると、陛下に伝えておけ。」
「分かりました。では。」
私はその場を後にし、国王に謁見する為に王城へと向かった。
「それは良いですわね、勇者様!」
勇者でありパーティーリーダーのゼイスに追放を宣言された。
隣にいる聖女メーシアも、大きく頷く。
さらには最後の嫌味と言わんばかりに、今持っている物全てを奪われた──
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
私の名前はシェルア。
12歳の時から5年間、私は勇者パーティーの一員として仲間と共に魔物討伐を行ってきた。
毎日荷物持ちを押し付けられる。
と言っても、異空間収納があるのでそこは気にしていない。
当然と言われれば当然だからだ。
問題はその他にある。
殴る蹴るなどの暴行に加え、理由の分からない報酬の減額。
そんな中、今日もギルドの依頼で魔物討伐に向かっていた。
「クソ魔法使い、早く付与魔法を全員にかけろ。」
「分かりました。」
正直、こんな奴に魔法は使いたくないが、生きるためにはそうも言っていられない。
勇者が本格的に活動を開始したのは、パーティーメンバーが決まった5年前だった。
一度勇者パーティーに加わったならば、抜けることは許されない。
勇者本人に追放を言い渡される以外は。
この世界では、勇者が生まれた国の国王が勇者のパーティーメンバーを決める。
つまり、パーティーを勝手に抜けることは国王に対する不敬も同義となっているのだ。
故に、抜けたくても抜けられないのが現状だった。
《グルルル……ガアァアァァ!!》
討伐対象の魔物、『ブラックウルフ』の変異種が現れた。
名前の通り黒い狼の魔物なのだが、変異して顔と尾が二つの強力な魔物と化していた。
放っておけば、数多の被害が出ることだろう。
「お前はせいぜい、いつもの『初級魔法』で援護すればいい。さぁ、行くぜぇ!」
勇者ゼイスは、盾役ガネンと共に前衛に出ていく。
中衛として、狩人のラディナ。
後衛に魔法使いの私と、癒し手の聖女メーシアが構える。
私が初撃で、ブラックウルフを身動きが出来ないよう凍らせる。
使った魔法は初級魔法『氷結』。
小さな小動物までを凍らせることが出来る魔法だ。
では何故私が初級魔法程度で巨大なブラックウルフを凍らせられるのか…。
私が異常だからだ。
師匠にも『シェルアは異常だよ…。』とよく言われたものである。
しかしこの勇者パーティーのメンバーは、私が異常であることを知らない。
これが普通だと思っているから……。
「とどめを刺すぜ!はあぁぁぁ!」
「ゼイス様、格好いいですわぁ~。」
魔物は首を落とされ、その場に倒れる。
メーシアは笑顔で拍手し、褒め称える。
そしてゼイスは私を睨んだ。
「今日も初・級・魔・法・を!ありがとう、クソ魔法使い。」
「まだまだ精進して参ります。」
「当たり前だろ。てめぇみたいな初級魔法以外使えねぇクソ魔法使いが、パーティーに入れているだけありがたいと思え!」
この場合「はい。」といえば、「勘違いしてるんじゃねぇ」と殴られる。
ありがとうと言っているが、感謝という意味ではない。嫌味だ。
私は別に、『初級魔法以外使えない』というわけではない。
初級魔法程度で良い魔物ばかりなのだ。
その後ブラックウルフの素材を持ち帰り、討伐報酬を受け取る。
報酬は平等……ではない。私だけ。
他のパーティーメンバーの3分の1だ。
生活は問題なく出来るので、気にしていない。
いつも通り受け取ろうとしたが、ゼイスが奪った。
「何をなさるのでしょうか。」
「お前はこのパーティーに相応しくない。今この場をもって、追放とする!それと、お前が持っている物は全て置いていってもらうぞ。」
「それは良いですわね、勇者様!」
突然の追放宣言。
メーシアは嘲笑うかのように私を見ながら勇者を肯定した。
「分かりました。ですが何故私物を渡さなくてはならないのですか?」
「訳を分かっていないとは馬鹿め。お前が今持っている物は、俺達が稼いだ金で買った物だ。つまり、パーティーを追放される以上お前が持っている資格はないということだ!」
「そうですか。ではどうぞ。」
「何だその態度は!?」
「異空間収納に収めている分も全て出しました。」
「その態度は何だと言っている!」
ゼイスは私に殴りかかってきた。
いつもならば抵抗せず受けるのだが、私は結界で身を守った。
ゼイスの拳は結界に当たり、ガンという強い音がなる。
「いっ…てぇな!何すんだよ!」
「それはこちらの台詞です。これまではパーティーリーダーである貴方に抵抗せず受けていましたが、追放された今、私は無関係な者となりました。貴方に殴られる筋合いはありません。」
「てめぇ…!」
「私は陛下にご報告に向かいます。『私の力が足りなかったばかりに』と申し上げるつもりです。貴方のことを悪くは言いませんよ。」
「当たり前だ!お前が弱いのが原因だからな!役立ちそうな魔法使いを俺自身で見つけると、陛下に伝えておけ。」
「分かりました。では。」
私はその場を後にし、国王に謁見する為に王城へと向かった。
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