【完結】勇者と国王は最悪。なので私が彼らを後悔させます。

凛 伊緒

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15話

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わあぁぁぁぁぁああ!!!


王城へと、革命軍が突入した。
防衛に回した兵士達は、手のひらを返したのだ。
守る為に王城の防壁に向かったと見せかけ、革命軍に合流した。
そして王城を守護している騎士団は三つ存在するのだが、内二つは革命軍に加わった。
二つの騎士団は、その騎士団を所有している貴族が反旗を翻したのだ。
つまり、王城にいた騎士や兵士を合わせた全体の3分の2は、革命軍側についたことになる。
その原因は、平民からの成り上がりの者が多いからだった。


「くっそぉ……。」

「どうにも出来ませんわ…。」

「余の何が悪いというのだ…!」


国王、ゼイス、メーシアの3人は王室にて、頭を抱えていた。
すぐ側まで革命軍が迫っている。
いくら勇者の力があるといえど、数で負けている。
それに、勇者が人を殺すなど、絶対にあってはならないのだ。
既に人殺しに加担しているのだが……。

扉を勢いよく開け、十数人の革命軍が入ってきた。


「動くな!」

「くっ……。」

「今の貴方に国王の権威はない!暗愚の王よ。」

「余の行いの何がいけないのだ!」

「自分で気付いていないからこそ、今の状況があるのだと知れ!」

「何ぃっ!?」

「勇者ゼイス、貴方も同罪だ!」

「私は命令されて……。」

「俺を裏切るのか、メーシア!」

「……。」

「聖女メーシア。貴方は今後一切、教会から出ることを禁じる。既に教皇には話をつけてある。」

「……分かりました…。」

「おい!」

「さようなら、勇者様。」


ゼイスは思った。
ずっと付き添って来てくれたメーシアですら、自分を裏切った……。
いや、見限ったという方が相応しいのだろうかと。

メーシアは分かっていた。
自分の行いが、勇者を笑顔で肯定していることが、本当は聖女として間違っているのだと。
だが聖女として勇者の味方をしなければならない以上、何も言うことが出来なかった。
正直、シェルアの言い方には腹が立った。
しかし自分も彼女に対して酷い仕打ちをしたのだから、彼女に手を加えるようなことはあってはならない。
勇者と行動を共にするうちに、何が聖女として正しい行いなのか分からなくなってしまった…。
今更後悔しても、何もかも遅い。


(せめて……せめて、謝りたかった…。彼女はとても怒っているもの……謝罪なんて受け入れてくれるはずがないわよね…。)


そして、メーシアは教会へと帰っていった。
残されたのは国王と勇者のみ。
その2人も今、手を魔法封じの魔道具で縛られている。
言葉通り、魔法を使えなくするものだ。
逃げられないようにするためである。


「俺を牢に入れていれば、魔王が攻めて来るんだぞ!?」

「その心配はない。魔王は対話を望んでいると、シェルア殿が言っていたでは無いか。」


革命軍のリーダー、リュディーガはそう言い返す。
かつてエルザームに命を救われ、今や平民から騎士団の団長にまで上り詰めた。
憧れの英雄を、国王が計画的に殺したのだと知っていた人物だ。
行動を起こす機会をずっと待っていた。
革命を成したい平民達と通じ、こっそりと活動していた。
いつしか彼らの中のリーダーとなり、今回シェルアが公にしたことで、平民が多く革命軍に加わってくれた。
この気を逃すまいと、行動を開始したのだ。


「余が立っていなければ、他国が攻めてくるぞ!」

「それも問題ない。シェルア殿が、革命の間から落ち着くまで、この国に手を出さないよう各国の国王陛下や皇帝陛下に話をつけておくと言ってくれている。」


そう。
シェルア本人がリュディーガに直接話をするために訪ねて来たのだ。
『貴方の好きなように行動を起こしなさい。私は他国を抑えたり、貴方に都合が良いように動いてあげるから。』
そう言った。
何故そこまでしてくれるのかと問うたが、質問に対する答えはただ一言。
『貴方がエルザーム師匠を慕ってくれていたから……。』
やはり良い人だと思った瞬間だった。
女性だが、とても格好良かった。
背を向けて歩いていく彼女に、英雄エルザームの姿が重なったように見えた……。



「鵜呑みにするのか!?」

「当然だ!貴方達より断然信用出来る!それに、『革命軍をけしかけたのは自分なのだから、その責任としてこの国を滅ぼさせない』と、真っ直ぐな目で私に伝えてきた。本来ならば、あの方がこの国の王になるべきだ。だが魔族側についた。何故だと思う!」

「「……。」」

「師であり義父のエルザーム様を殺した国に、尽くしたくなかったからだ!さらに勇者パーティーを追放され、その事実が広まった。他国であっても、シェルア殿は人族の国では上手くいかなかったのだと商人達も言っていた!
だが魔族側についたとしても、あの方は人族を想って動いているんだ……。これ以上ないくらいの、善人なんだぞ!?そんな方に……貴方達……いいや、貴様達は最低な事をしてくれたんだ!」

「あいつは俺といる時、初級魔法しか使わなかったんだぞ!追放するのも当然だ!」

「何を言っている!貴様にシェルア殿が使っていた『付与魔法』というのは、普通は初級魔法であったとしても、人に向けて使えないものなんだぞ!?
人に向けて使うのは『強化魔法』だ。付与魔法では強すぎて肉体が耐えられない。つまりは、強化魔法で肉体を強化してから、付与魔法にて様々な能力をあげていたんだ。二つ以上同時に違う系統の魔法を扱うなど、世界中にシェルア殿以外出来ない!」

「なっ!?」

「本当に何も分かっていない!一生牢で反省しているが良い!」

「くそっ……!」

「何なのだ……!」

「絶対に牢を抜け出して、復讐してやるからな……!」


綺麗な捨て台詞を吐き、連行されていった。

その後、革命軍に参加した全員の意見が一致し、リーダーのリュディーガが国王の座に就いた。
平民からの『超』大出世である。
そしてさらに二週間後には、魔王と人族の国王や皇帝などのトップ達が集まり、人族と魔族の会談が始まった。


その会談の後に魔族との共存という新時代が幕を開けたことから、《始まりの会談》と呼ばれることになるのだった。
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