【完結】私の望み通り婚約を解消しようと言うけど、そもそも半年間も嫌だと言い続けたのは貴方でしょう?〜初恋は終わりました。

るんた

文字の大きさ
11 / 58

冬の訪れとリベンジデート side J

しおりを挟む

 学園の庭の景色は秋から冬に変わりつつある。彼女とは仲の良い友人のままだ。

 今思えば、秋の収穫祭のデートは、思い描いてたものとは違っていた気がする。まさかあんなに食べ物屋台の近くに居続けるとは……。女の子の好みそうなアクセサリーや雑貨を見て、何か贈るつもりだったのに……。
 あれでは男同士の祭りの楽しみ方に近いかも知れない。むしろ、男だけの方が他の女の子と話す分、色気があると言えるのかも。

 ……でも、間違いなく彼女とは仲良くなれたと思う。あの日から彼女の僕に向ける眼差しに、親しみのような柔らかさを感じるようになったから。

 それにしても、学園での彼女を見ていると、あの日、ふわふわのツインテールで両手に串焼きを持ち、次々と頬張っていた姿は夢だったんじゃないかと思えてくる。

 教室で友人達と話している彼女をじっと見ていると、こちらに気づき、小首を傾げて穏やかな笑みを向けてきた。可愛い。うん。きっとこっちの姿が本来の彼女なのだろう。

 デートを仕切り直そう。

 まず王都を散策しよう。彼女に似合うアクセサリーとか一緒に選んでプレゼントしよう。秋にオープンしたカフェに寄ってから、雰囲気のいい場所で想いを伝えよう。

 最近クラスでは、彼女の一番近くにいるのは僕だという認識がされてきているけど、それでも彼女を諦めていない男はいると思う。だって彼女は一番可愛い。


 次の朝、いつもより早起きして学園に向かい、エントラスホールのソファで彼女を待つ。程なくして伯爵家の馬車が停まり、彼女と兄君が下りて来るのが見えた。声は聞こえないけど、彼女が笑顔で何かを言うと、兄君は指先で彼女の額を軽く触れたあと、手を振りながら離れていった。兄妹の仲が良さそうだ。

 彼女は兄君の背を見送った後、エントランスホールを教室棟に向かって歩きだした。僕は立ち上がり、近づいて挨拶した。
 彼女は兄君との会話の余韻なのか、いつもよりも楽しそうだった。誘うのは今しかない。

「よかったら休みの日に、うちの店に来てくれない?若い年齢層向けだから、ぜひ意見を聞かせて欲しいんだ」

 少し言い訳がましい気もするけど、とにかく彼女をデートに誘う。

「次の休日は家の予定があるけど、その日以外なら喜んで」

 やった!今度こそ頑張ろう。


 早速カフェに予約を入れるよう手配し、ひとりで彼女を連れて行く予定の店に行った。父の商会の中でも若い女性向けの雑貨が主で、高級ではないけどそれなりに質の良いアクセサリーも置いている。
 彼女に似合いそうなものはないかと店内を回っていると、店の奥から出てきた男に声を掛けられた。

「坊ちゃま、何かお探しですか?」

 父にこの店を任されている男はロブと言い、僕の子供の頃から商会に勤めているため、いまだに『坊ちゃま』と呼ぶ。思わず苦笑が漏れるけど、何も言わずに話を進める。

「ここに招待したい友人がいて、今日はその下調べだよ」

 僕の言葉に一度驚いた顔をしたあと、目尻に皺を作って笑う。

「ご友人ですか。なるほど。ご希望等はございますか?」

「聡明で慎ましい感じの人だから、派手ではなく繊細なデザインがいいと思うんだ」

「それでは……」

 そう言いながら店の奥のショーケースに近づき、いくつかのアクセサリーをトレイにのせて戻ってきた。

 僕はその中で、小さなダイヤがいくつも飾られた華奢なデザインの指輪を迷わず手に取った。彼女にぴったりだ。これならきっと制服の時でも着けられる。
 あまり高級なものだと渡す意味が重くなってしまいそうだけど、今の気持ちを伝えるのには丁度いい。

「これ、石をいくつか青いものに替えることはできるかな?」

「勿論でございます」

「それで用意しておいて欲しい」

「かしこまりました。ご友人とのご来店、心よりお待ちしております」

 扉まで見送られて店を出た。


 彼女は笑顔で受け取ってくれるだろうか。なんとなくふわふわした気分で家まで帰った。

しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

ヴェルセット公爵家令嬢クラリッサはどこへ消えた?

ルーシャオ
恋愛
完璧な令嬢であれとヴェルセット公爵家令嬢クラリッサは期待を一身に受けて育ったが、婚約相手のイアムス王国デルバート王子はそんなクラリッサを嫌っていた。挙げ句の果てに、隣国の皇女を巻き込んで婚約破棄事件まで起こしてしまう。長年の王子からの嫌がらせに、ついにクラリッサは心が折れて行方不明に——そして約十二年後、王城の古井戸でその白骨遺体が発見されたのだった。 一方、隣国の法医学者エルネスト・クロードはロロベスキ侯爵夫人ことマダム・マーガリーの要請でイアムス王国にやってきて、白骨死体のスケッチを見てクラリッサではないと看破する。クラリッサは行方不明になって、どこへ消えた? 今はどこにいる? 本当に死んだのか? イアムス王国の人々が彼女を惜しみ、探そうとしている中、クロードは情報収集を進めていくうちに重要参考人たちと話をして——?

婚約破棄に乗り換え、上等です。私は名前を変えて隣国へ行きますね

ルーシャオ
恋愛
アンカーソン伯爵家令嬢メリッサはテイト公爵家後継のヒューバートから婚約破棄を言い渡される。幼い頃妹ライラをかばってできたあざを指して「失せろ、その顔が治ってから出直してこい」と言い放たれ、挙句にはヒューバートはライラと婚約することに。 失意のメリッサは王立寄宿学校の教師マギニスの言葉に支えられ、一人で生きていくことを決断。エミーと名前を変え、隣国アスタニア帝国に渡って書籍商になる。するとあるとき、ジーベルン子爵アレクシスと出会う。ひょんなことでアレクシスに顔のあざを見られ——。

幼馴染に振られたので薬学魔法士目指す

MIRICO
恋愛
オレリアは幼馴染に失恋したのを機に、薬学魔法士になるため、都の学院に通うことにした。 卒院の単位取得のために王宮の薬学研究所で働くことになったが、幼馴染が騎士として働いていた。しかも、幼馴染の恋人も侍女として王宮にいる。 二人が一緒にいるのを見るのはつらい。しかし、幼馴染はオレリアをやたら構ってくる。そのせいか、恋人同士を邪魔する嫌な女と噂された。その上、オレリアが案内した植物園で、相手の子が怪我をしてしまい、殺そうとしたまで言われてしまう。 私は何もしていないのに。 そんなオレリアを助けてくれたのは、ボサボサ頭と髭面の、薬学研究所の局長。実は王の甥で、第二継承権を持った、美丈夫で、女性たちから大人気と言われる人だった。 ブックマーク・いいね・ご感想等、ありがとうございます。 お返事ネタバレになりそうなので、申し訳ありませんが控えさせていただきます。 ちゃんと読んでおります。ありがとうございます。

夫に相手にされない侯爵夫人ですが、記憶を失ったので人生やり直します。

MIRICO
恋愛
第二章【記憶を失った侯爵夫人ですが、夫と人生やり直します。】完結です。 記憶を失った私は侯爵夫人だった。しかし、旦那様とは不仲でほとんど話すこともなく、パーティに連れて行かれたのは結婚して数回ほど。それを聞いても何も思い出せないので、とりあえず記憶を失ったことは旦那様に内緒にしておいた。 旦那様は美形で凛とした顔の見目の良い方。けれどお城に泊まってばかりで、お屋敷にいてもほとんど顔を合わせない。いいんですよ、その間私は自由にできますから。 屋敷の生活は楽しく旦那様がいなくても何の問題もなかったけれど、ある日突然パーティに同伴することに。 旦那様が「わたし」をどう思っているのか、記憶を失った私にはどうでもいい。けれど、旦那様のお相手たちがやけに私に噛み付いてくる。 記憶がないのだから、私は旦那様のことはどうでもいいのよ? それなのに、旦那様までもが私にかまってくる。旦那様は一体何がしたいのかしら…? 小説家になろう様に掲載済みです。

目覚めたら公爵夫人でしたが夫に冷遇されているようです

MIRICO
恋愛
フィオナは没落寸前のブルイエ家の長女。体調が悪く早めに眠ったら、目が覚めた時、夫のいる公爵夫人セレスティーヌになっていた。 しかし、夫のクラウディオは、妻に冷たく視線を合わせようともしない。 フィオナはセレスティーヌの体を乗っ取ったことをクラウディオに気付かれまいと会う回数を減らし、セレスティーヌの体に入ってしまった原因を探そうとするが、原因が分からぬままセレスティーヌの姉の子がやってきて世話をすることに。 クラウディオはいつもと違う様子のセレスティーヌが気になり始めて……。 ざまあ系ではありません。恋愛中心でもないです。事件中心軽く恋愛くらいです。 番外編は暗い話がありますので、苦手な方はお気を付けください。 ご感想ありがとうございます!! 誤字脱字等もお知らせくださりありがとうございます。順次修正させていただきます。 小説家になろう様に掲載済みです。

本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました

音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。 ____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。 だから私は決めている。 この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。 彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。 ……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。

婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。 だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。 理由は簡単だった。 「君は役に立ちすぎた」から。 すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、 “静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。 そこで待っていたのは―― 期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。 前に出なくていい。 誰かのために壊れなくていい。 何もしなくても、ここにいていい。 「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」 婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、 何者にもならなくていいヒロインの再生と、 放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。 これは、 “役に立たなくなった”令嬢が、 ようやく自分として生き始める物語。

【完結】私を捨てて駆け落ちしたあなたには、こちらからさようならを言いましょう。

やまぐちこはる
恋愛
パルティア・エンダライン侯爵令嬢はある日珍しく婿入り予定の婚約者から届いた手紙を読んで、彼が駆け落ちしたことを知った。相手は同じく侯爵令嬢で、そちらにも王家の血筋の婿入りする婚約者がいたが、貴族派閥を保つ政略結婚だったためにどうやっても婚約を解消できず、愛の逃避行と洒落こんだらしい。 落ち込むパルティアは、しばらく社交から離れたい療養地としても有名な別荘地へ避暑に向かう。静かな湖畔で傷を癒やしたいと、高級ホテルでひっそり寛いでいると同じ頃から同じように、人目を避けてぼんやり湖を眺める美しい青年に気がついた。 毎日涼しい湖畔で本を読みながら、チラリチラリと彼を盗み見ることが日課となったパルティアだが。 様子がおかしい青年に気づく。 ふらりと湖に近づくと、ポチャっと小さな水音を立てて入水し始めたのだ。 ドレスの裾をたくしあげ、パルティアも湖に駆け込んで彼を引き留めた。 ∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞∞ 最終話まで予約投稿済です。 次はどんな話を書こうかなと思ったとき、駆け落ちした知人を思い出し、そんな話を書くことに致しました。 ある日突然、紙1枚で消えるのは本当にびっくりするのでやめてくださいという思いを込めて。 楽しんで頂けましたら、きっと彼らも喜ぶことと思います。

処理中です...