燃ゆるローマ  ――夜光花――

文月 沙織

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 観客たちは、男も女も、女戦士のアキリアが、小人たちにいたぶられている姿を好色な目で見ている。
「よせ! 来るな! 下種!」
 アキリアの抵抗は演技などではなく、本気だということがリィウスには知れた。
 月光と、明々あかあかとかかげられた松明たいまつが、彼女の胡桃くるみ色の健康そうな肌を照らしだす。剣闘士には異国人も多いが、彼女もローマ人では、少なくとも生粋きっすいのローマ人でないことは、その肌が物語っていた。
 リィウスはヴェールの下でいっそう眉をひそめていた。 
 アキリアがどれほど叫んで嫌がっても、すでに身体を覆っていたなめし革の防具も、薄手の布も剥ぎとられ、鍛え抜かれた、女にはあるまじきほどに凛々しい肉体が、観客の視線のもとにさらけ出されていく。
 これから何が起こるかリィウスにも想像できる。
「ひっ、ひっ、ひっ!」
 小人たちが卑しい笑い声をあげる。三人とも、見るからに不潔な身なりで、かなり下級の奴隷たちなのは一目瞭然だ。
 色を売りものにする見世物では、体格の良い男奴隷が可憐な女を嬲るものらしいが、今宵の見世物は、それを逆にして、たくましく勇ましい女戦士を、貧相な小人たちに嬲らせて、見る者の嗜虐心や欲望をあおっているのだ。
 張りつめたふくよかな女の胸に、遠慮なく小人の手が伸びる。そこから下の腹や腰は、鍛えられており、通常の女が持ちえぬうっすらとした筋肉が見える。女戦士アマゾンの乙女のような、月と狩猟の女神ディアナや、智恵と戦の女神ミネルワァを思わせる、己の身体で戦う女たちだけが持ちえる肉体美が、卑しい男たちの手によって凌辱されようとしている。
 卑猥な笑い声や、浅ましい言葉が飛びかう。絹の衣に宝石の飾り物をつけた客たちが、世にも淫らな目つきで、愚劣な品評をくりひろげる。
「放せ! 放せ! 話が違うぞ!」
 どれほど声をあげて叫んでも、誰も止めに入る者はいない。
 三人の小さな獣たちの手によって、アキリアは四つん這いの惨めな姿勢を強要されてしまう。
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