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「分かりました。では、条件をひとつ聞いてくださるのであれば結婚いたしましょう」
「本当か⁉ もちろん、出来うる限りの努力をすると誓うよ!」
そんな……、ここでとうとうナディージュ様が折れてしまわれるなんて……。
護衛たちの中から泣き崩れる者が出てしまった。
すると、ナディージュ様がなぜかそんな護衛たちに微笑みかけた。
「私の条件をクリアするためには、たぶん、護衛の方達の協力が必要になります」
「……護衛の? それは一体?」
「私と殿下の間に壁様を置いてほしいのです」
「………………………は?」
「壁様を乗せる台座には車輪を付け、可動式に。どうしても移動させるのは人力になりますので、そうすると護衛の皆様にお手伝いいただくことになるかと思われます。いえ、新たに壁様のお付きの者を編成すればよいのでしょうか?」
「………え?」
「ですが、壁様は優秀ですよ! 私の視界から殿下の姿を隠してくださいますし、そのお声も完全に消音とまではいきませんが、嫌味すらも和らげてくださいます。そして、暗殺者の襲撃の際には盾となって私を守ってくださることでしょう。
壁様……、本当になんと頼もしいのでしょうか」
まさかの移動式壁様降臨!
あれ? そうすると初夜は? まさか壁越しには無理だと思うのですが。
「もちろん、誓いの口付けも壁様と。あら? そうすると、壁様は殿下とも口付けるのですか。……それは面白くありませんね」
まさか、壁様と殿下の口付けに嫉妬まで⁉ え、本当にそこまで壁様を愛しているのか⁉
「ふむ。いままで気が付きませんでしたが、どうやら私は壁様に愛を感じていたみたいですね?」
とうとう愛に気が付いた! どうするんですか、絶対に殿下のせいですよ⁉
「まさか壁と添い遂げるつもりか⁉」
「愛に気が付いたのです、やぶさかではございません」
「あのね、ナディージュ。あなたがどれほど傷ついたのか、よ~~~~く分かったわ。でもね? 残念ながら、あなたと壁様が結ばれることはないのよ」
それまでずっと黙っていた王妃陛下が可哀想な子を見るような眼差しで優しく諭し始めた。
「そうでしょうか。中流階級の伯爵令嬢が王太子殿下と結婚するより、問題は小さいと思いますわ。
それに、両陛下も本当はバイヤールの姫君と結婚してほしいのではありませんか?」
それはそうだろう。婚姻を結べば、友好国として海洋条約だけでなく、もっと多くの利点がある。
「でも、この子は本当に幼い頃からあなた一筋で」
「一筋でここまでこじれたのですから、殿下のようなお方は恋心でお相手を決めないほうがよろしいのでは?
それに、バイヤールのシャンタル王女は控えめでお優しいお方だと伺っております。殿下のようなタイプには、優しく包み込んでくれるような女性の方が合っていると思いませんか」
あ、確かに。国王陛下もそう思ったようだ。王妃とアイコンタクトを取っている。
旗色の悪くなった殿下が口を開こうとしたその時、ひとりの伝令が入ってきた。
「フェーン国よりお届けものが来ており、至急、ご確認いただきたいとのことなのですが、いかがいたしましょう」
「今はそれどころではないのだが」
「『ナディージュ・シャリエ伯爵令嬢の壁を届けに来た』と言えば分かるとおっしゃっていまして」
「まあ! 壁様がここへ?」
「まさか、わざわざフェーンに注文したのか⁉」
「いいえ? もともとは第三王子殿下のものでしたの。留学中に親しくなって、殿下の壁様にも大変お世話になっていたんです。ですが、まさかここまでしていただけるなんて……」
あ、ナディージュ嬢の瞳が恋する乙女だ。
それに、第三王子の壁ってなに。特注なの? 大理石? それとも金箔や宝石が埋め込んであるとか?
「……お前の壁に会わせてくれ」
その真剣な眼差しは一見格好いいが、台詞が『壁』なのでなんとなく締まらない。
「わかった。では、中に入れてくれ」
やった! 壁様が見られる! もう、本当になんのために集まっているか分からないが、このまま壁様を拝めずに解散はしたくないんだ!
また、護衛たちの心が一つになった。
「本当か⁉ もちろん、出来うる限りの努力をすると誓うよ!」
そんな……、ここでとうとうナディージュ様が折れてしまわれるなんて……。
護衛たちの中から泣き崩れる者が出てしまった。
すると、ナディージュ様がなぜかそんな護衛たちに微笑みかけた。
「私の条件をクリアするためには、たぶん、護衛の方達の協力が必要になります」
「……護衛の? それは一体?」
「私と殿下の間に壁様を置いてほしいのです」
「………………………は?」
「壁様を乗せる台座には車輪を付け、可動式に。どうしても移動させるのは人力になりますので、そうすると護衛の皆様にお手伝いいただくことになるかと思われます。いえ、新たに壁様のお付きの者を編成すればよいのでしょうか?」
「………え?」
「ですが、壁様は優秀ですよ! 私の視界から殿下の姿を隠してくださいますし、そのお声も完全に消音とまではいきませんが、嫌味すらも和らげてくださいます。そして、暗殺者の襲撃の際には盾となって私を守ってくださることでしょう。
壁様……、本当になんと頼もしいのでしょうか」
まさかの移動式壁様降臨!
あれ? そうすると初夜は? まさか壁越しには無理だと思うのですが。
「もちろん、誓いの口付けも壁様と。あら? そうすると、壁様は殿下とも口付けるのですか。……それは面白くありませんね」
まさか、壁様と殿下の口付けに嫉妬まで⁉ え、本当にそこまで壁様を愛しているのか⁉
「ふむ。いままで気が付きませんでしたが、どうやら私は壁様に愛を感じていたみたいですね?」
とうとう愛に気が付いた! どうするんですか、絶対に殿下のせいですよ⁉
「まさか壁と添い遂げるつもりか⁉」
「愛に気が付いたのです、やぶさかではございません」
「あのね、ナディージュ。あなたがどれほど傷ついたのか、よ~~~~く分かったわ。でもね? 残念ながら、あなたと壁様が結ばれることはないのよ」
それまでずっと黙っていた王妃陛下が可哀想な子を見るような眼差しで優しく諭し始めた。
「そうでしょうか。中流階級の伯爵令嬢が王太子殿下と結婚するより、問題は小さいと思いますわ。
それに、両陛下も本当はバイヤールの姫君と結婚してほしいのではありませんか?」
それはそうだろう。婚姻を結べば、友好国として海洋条約だけでなく、もっと多くの利点がある。
「でも、この子は本当に幼い頃からあなた一筋で」
「一筋でここまでこじれたのですから、殿下のようなお方は恋心でお相手を決めないほうがよろしいのでは?
それに、バイヤールのシャンタル王女は控えめでお優しいお方だと伺っております。殿下のようなタイプには、優しく包み込んでくれるような女性の方が合っていると思いませんか」
あ、確かに。国王陛下もそう思ったようだ。王妃とアイコンタクトを取っている。
旗色の悪くなった殿下が口を開こうとしたその時、ひとりの伝令が入ってきた。
「フェーン国よりお届けものが来ており、至急、ご確認いただきたいとのことなのですが、いかがいたしましょう」
「今はそれどころではないのだが」
「『ナディージュ・シャリエ伯爵令嬢の壁を届けに来た』と言えば分かるとおっしゃっていまして」
「まあ! 壁様がここへ?」
「まさか、わざわざフェーンに注文したのか⁉」
「いいえ? もともとは第三王子殿下のものでしたの。留学中に親しくなって、殿下の壁様にも大変お世話になっていたんです。ですが、まさかここまでしていただけるなんて……」
あ、ナディージュ嬢の瞳が恋する乙女だ。
それに、第三王子の壁ってなに。特注なの? 大理石? それとも金箔や宝石が埋め込んであるとか?
「……お前の壁に会わせてくれ」
その真剣な眼差しは一見格好いいが、台詞が『壁』なのでなんとなく締まらない。
「わかった。では、中に入れてくれ」
やった! 壁様が見られる! もう、本当になんのために集まっているか分からないが、このまま壁様を拝めずに解散はしたくないんだ!
また、護衛たちの心が一つになった。
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