29 / 50
29.
しおりを挟む
私はまだ誰にも返事を送っていなかった。
手紙って何か違うのよね。文章にすると綺麗事で纏めてしまうというか……どこか本音ではない感じ。
結局3人にはもうすぐ王都に戻るから、会って話をしましょう、というメッセージのみを送った。
殿下には送れなかった。彼がどこにいるのか分からなかったのだ。
すべてが終わったら会いに行こう。
魔法も誤解も無い状態で話がしたい。
王都に戻ってすぐ、父と共に登城するよう通達が来た。王宮に行くのは久しぶりだわ。王子妃教育で通っていた頃が懐かしい。
謁見の間には、私達だけでなく幾人もの人がいた。私が渡した資料に載せた生徒と両親、学園長と教師達だ。
すごい、一気に方を付けるおつもりかしら。
「ブリッチェ伯爵も呼ばれたのですか?いや、今回の事件は驚きましたね。今時魔法が存在するとは思いませんでしたよ」
そんなに気軽に声を掛けてくるとは思いませんでしたよ?
「……やぁ、バーデン伯爵。なぜここに呼ばれたかは知っているのだよね?」
「学園で魔法による集団催眠のようなことがあったらしいね。手紙には当事者である娘にしっかり確認をしておくようにと書いてあったよ。
それを読んで初めて知ったから本当に驚いたさ。学園からもそんな話は聞かされていなかったし困ったものだ」
「なるほど。お嬢さんは何と?うちの娘の話と同じだろうか」
そう言って父が後ろに立っているバーデン嬢に視線を向ける。気まずそうにしているので、真実は語っていなさそう。
「殿下を自分の思い通りに操って、周りにそれを信じ込ませたと聞いてるよ。恐ろしい話だな」
「本当に恐ろしいね。自分のした事をどこまで隠すつもりなのかな。悪事は必ずバレるのに。あなたもそう思うだろう?バーデン伯爵令嬢」
お父様の様子がおかしい事にやっと気が付いたのだろう。バーデン伯爵が娘に視線をやる。
「……マヌエラ、お前何か」
「国王陛下、並びに王太子殿下がお見えになります!」
話を止め、扉に向き直り頭を下げる。
バーデン伯爵は真実に辿り着く時間が足りなかったわね。どうなるかしら?
陛下と一緒に入ってきたのは王太子殿下のみ。王妃様の姿はない。
「今回、とても残念な事件が起きた。一年に渡る長い期間、学園で魔法が使用された。犯人逮捕と使用した魔導具の回収は終わり、魔法の影響が無くなったことは確認できたので安心してほしい」
よかった。ちゃんと魔導具は見つかったのね。
「さて、君達はなぜここに呼ばれたか分かるだろうか。そうだな、学園長に聞いてみよう。なぜだと思う?」
「は、学園内での事件に気付くことができず、誠に申し訳ございません。その責任を取る為かと思っております」
「君は魔法が解けてから何をしていた?」
「魔法は門外漢ですので、陛下が派遣して下さった調査団にお任せする形になっておりました」
陛下はため息をつき、冷たい視線で全員を見渡す。残念ながら、皆何が悪いのか分かっていないようだ。魔法に掛かった被害者のつもりなのだろう。
「ブリッチェ伯爵令嬢、こちらへ。
では質問を変えよう。なぜここに彼女が呼ばれたか分かるか?」
「……魔法の影響で殿下との仲が悪化し、その、婚約白紙になった被害者だからではないでしょうか」
「なるほどな。どうだ、リーゼロッテ。合っているかな。この場はお前の為に用意したものだ。遠慮なく話してくれていい」
え、陛下ったら丸投げですか?こんなにも大勢の人達の前で?学園長やら侯爵やら色々いますけど。この人達に遠慮なく言っていいの?
「……あとから私が捕まるとかないですよね?」
「もちろんだ。1年も黙ってきたのだ。言いたいことを言っていい。私からももちろん謝罪はするが、それでは足りないだろう。この場が詫びの一つだ。受け取ってくれ」
嬉しいような、楽して狡いような。
まぁいいわ。ありがたく受け取りましょう。
「分かりました。では、ありがたく言いたい事を言わせて頂きますね。
皆様、私はブリッチェ伯爵家のリーゼロッテと申します。ジークハルト第二王子殿下の元婚約者です。
私は一年もの間、学園で虐めにあってきました。この場に来ていただいた方達は、実際に手を出して来た方とそのご家族です。先生は私が訴えても無視をしたり、逆に私が悪いと叱責してきた人達です。
もちろん、覚えていますよね?」
手紙って何か違うのよね。文章にすると綺麗事で纏めてしまうというか……どこか本音ではない感じ。
結局3人にはもうすぐ王都に戻るから、会って話をしましょう、というメッセージのみを送った。
殿下には送れなかった。彼がどこにいるのか分からなかったのだ。
すべてが終わったら会いに行こう。
魔法も誤解も無い状態で話がしたい。
王都に戻ってすぐ、父と共に登城するよう通達が来た。王宮に行くのは久しぶりだわ。王子妃教育で通っていた頃が懐かしい。
謁見の間には、私達だけでなく幾人もの人がいた。私が渡した資料に載せた生徒と両親、学園長と教師達だ。
すごい、一気に方を付けるおつもりかしら。
「ブリッチェ伯爵も呼ばれたのですか?いや、今回の事件は驚きましたね。今時魔法が存在するとは思いませんでしたよ」
そんなに気軽に声を掛けてくるとは思いませんでしたよ?
「……やぁ、バーデン伯爵。なぜここに呼ばれたかは知っているのだよね?」
「学園で魔法による集団催眠のようなことがあったらしいね。手紙には当事者である娘にしっかり確認をしておくようにと書いてあったよ。
それを読んで初めて知ったから本当に驚いたさ。学園からもそんな話は聞かされていなかったし困ったものだ」
「なるほど。お嬢さんは何と?うちの娘の話と同じだろうか」
そう言って父が後ろに立っているバーデン嬢に視線を向ける。気まずそうにしているので、真実は語っていなさそう。
「殿下を自分の思い通りに操って、周りにそれを信じ込ませたと聞いてるよ。恐ろしい話だな」
「本当に恐ろしいね。自分のした事をどこまで隠すつもりなのかな。悪事は必ずバレるのに。あなたもそう思うだろう?バーデン伯爵令嬢」
お父様の様子がおかしい事にやっと気が付いたのだろう。バーデン伯爵が娘に視線をやる。
「……マヌエラ、お前何か」
「国王陛下、並びに王太子殿下がお見えになります!」
話を止め、扉に向き直り頭を下げる。
バーデン伯爵は真実に辿り着く時間が足りなかったわね。どうなるかしら?
陛下と一緒に入ってきたのは王太子殿下のみ。王妃様の姿はない。
「今回、とても残念な事件が起きた。一年に渡る長い期間、学園で魔法が使用された。犯人逮捕と使用した魔導具の回収は終わり、魔法の影響が無くなったことは確認できたので安心してほしい」
よかった。ちゃんと魔導具は見つかったのね。
「さて、君達はなぜここに呼ばれたか分かるだろうか。そうだな、学園長に聞いてみよう。なぜだと思う?」
「は、学園内での事件に気付くことができず、誠に申し訳ございません。その責任を取る為かと思っております」
「君は魔法が解けてから何をしていた?」
「魔法は門外漢ですので、陛下が派遣して下さった調査団にお任せする形になっておりました」
陛下はため息をつき、冷たい視線で全員を見渡す。残念ながら、皆何が悪いのか分かっていないようだ。魔法に掛かった被害者のつもりなのだろう。
「ブリッチェ伯爵令嬢、こちらへ。
では質問を変えよう。なぜここに彼女が呼ばれたか分かるか?」
「……魔法の影響で殿下との仲が悪化し、その、婚約白紙になった被害者だからではないでしょうか」
「なるほどな。どうだ、リーゼロッテ。合っているかな。この場はお前の為に用意したものだ。遠慮なく話してくれていい」
え、陛下ったら丸投げですか?こんなにも大勢の人達の前で?学園長やら侯爵やら色々いますけど。この人達に遠慮なく言っていいの?
「……あとから私が捕まるとかないですよね?」
「もちろんだ。1年も黙ってきたのだ。言いたいことを言っていい。私からももちろん謝罪はするが、それでは足りないだろう。この場が詫びの一つだ。受け取ってくれ」
嬉しいような、楽して狡いような。
まぁいいわ。ありがたく受け取りましょう。
「分かりました。では、ありがたく言いたい事を言わせて頂きますね。
皆様、私はブリッチェ伯爵家のリーゼロッテと申します。ジークハルト第二王子殿下の元婚約者です。
私は一年もの間、学園で虐めにあってきました。この場に来ていただいた方達は、実際に手を出して来た方とそのご家族です。先生は私が訴えても無視をしたり、逆に私が悪いと叱責してきた人達です。
もちろん、覚えていますよね?」
528
あなたにおすすめの小説
(完結)婚約破棄から始まる真実の愛
青空一夏
恋愛
私は、幼い頃からの婚約者の公爵様から、『つまらない女性なのは罪だ。妹のアリッサ王女と婚約する』と言われた。私は、そんなにつまらない人間なのだろうか?お父様もお母様も、砂糖菓子のようなかわいい雰囲気のアリッサだけをかわいがる。
女王であったお婆さまのお気に入りだった私は、一年前にお婆さまが亡くなってから虐げられる日々をおくっていた。婚約者を奪われ、妹の代わりに隣国の老王に嫁がされる私はどうなってしまうの?
美しく聡明な王女が、両親や妹に酷い仕打ちを受けながらも、結局は一番幸せになっているという内容になる(予定です)
あなたが捨てた花冠と后の愛
小鳥遊 れいら
恋愛
幼き頃から皇后になるために育てられた公爵令嬢のリリィは婚約者であるレオナルド皇太子と相思相愛であった。
順調に愛を育み合った2人は結婚したが、なかなか子宝に恵まれなかった。。。
そんなある日、隣国から王女であるルチア様が側妃として嫁いでくることを相談なしに伝えられる。
リリィは強引に話をしてくるレオナルドに嫌悪感を抱くようになる。追い打ちをかけるような出来事が起き、愛ではなく未来の皇后として国を守っていくことに自分の人生をかけることをしていく。
そのためにリリィが取った行動とは何なのか。
リリィの心が離れてしまったレオナルドはどうしていくのか。
2人の未来はいかに···
白い結婚の行方
宵森みなと
恋愛
「この結婚は、形式だけ。三年経ったら、離縁して養子縁組みをして欲しい。」
そう告げられたのは、まだ十二歳だった。
名門マイラス侯爵家の跡取りと、書面上だけの「夫婦」になるという取り決め。
愛もなく、未来も誓わず、ただ家と家の都合で交わされた契約だが、彼女にも目的はあった。
この白い結婚の意味を誰より彼女は、知っていた。自らの運命をどう選択するのか、彼女自身に委ねられていた。
冷静で、理知的で、どこか人を寄せつけない彼女。
誰もが「大人びている」と評した少女の胸の奥には、小さな祈りが宿っていた。
結婚に興味などなかったはずの青年も、少女との出会いと別れ、後悔を経て、再び運命を掴もうと足掻く。
これは、名ばかりの「夫婦」から始まった二人の物語。
偽りの契りが、やがて確かな絆へと変わるまで。
交差する記憶、巻き戻る時間、二度目の選択――。
真実の愛とは何かを、問いかける静かなる運命の物語。
──三年後、彼女の選択は、彼らは本当に“夫婦”になれるのだろうか?
蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。
【完結】亡くなった人を愛する貴方を、愛し続ける事はできませんでした
凛蓮月
恋愛
【おかげさまで完全完結致しました。閲覧頂きありがとうございます】
いつか見た、貴方と婚約者の仲睦まじい姿。
婚約者を失い悲しみにくれている貴方と新たに婚約をした私。
貴方は私を愛する事は無いと言ったけれど、私は貴方をお慕いしておりました。
例え貴方が今でも、亡くなった婚約者の女性を愛していても。
私は貴方が生きてさえいれば
それで良いと思っていたのです──。
【早速のホトラン入りありがとうございます!】
※作者の脳内異世界のお話です。
※小説家になろうにも同時掲載しています。
※諸事情により感想欄は閉じています。詳しくは近況ボードをご覧下さい。(追記12/31〜1/2迄受付る事に致しました)
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。
アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。
今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。
私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。
これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる