魔法のせいだから許して?

ましろ

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「マルティナ様、お元気ですか。
私は隣国に留学することが決まりました。国を出るのは初めてなの。まずは船旅が楽しみよ!
それにね、ギレッセンはジーク様もいらっしゃるわ。あなたに掛けられた迷惑な魔法が解けてから、熱烈な求愛を受けていたの。一年間の反動だったみたい。でも、あの頃はまだ彼のことが怖くて受け入れる事ができなかった。
でも、今度こそ完全に魔法が解けたから、お会いできるのが楽しみよ。どんな話ができるかしら。お会い出来たらまた手紙を書きます。どうかまた私の内緒話にお付き合いくださいませ」


よし、嫌がらせのお手紙はこれでいいかしら。先日の先輩に告白されたという手紙は効果覿面だったらしい。
なぜあんなに私の事が嫌いなのだろう。本当に私の幸せな生活を知ると怒りまくるみたいだから手紙を書くのが止められない。
それにマルティナ様に手紙を書くのは意外と楽しい。ジーク様のことをこれみよがしに書くのは、あの頃の吐きそうなくらいの恐怖の仕返しだ。
なるほど。嫌がらせは確かに楽しいわ。

アルブレヒト殿下も笑っていた。幸せを綴って復讐するのは斬新だとお褒めの言葉をいただいてしまった。
殿下は2年後には即位するみたい。
きっと立派な王になることでしょう。




船旅は──思いっきり酔った。酔い止めを飲みながら、1日でも早く着くように願ったくらい。それでも、広い海を眺めるのは気持ちよかった。
水平線というものを初めて見たわ。世界は本当に広いのね。あんな小さな学園での出来事なんてどうでもよくなるくらい、美しい景色だった。




『留学を受け入れて下さり感謝申し上げます。リーゼロッテ・ブリッチェです。よろしくお願い致します』

「おや、さすがだ。ギレッセン語が流暢ですね。
私は担任のロイターです。あなたの様な優秀な生徒は大歓迎ですよ。
基本的には学園では共通語を使います。ですが、中には母国語で会話をすることを好む者もおります。君ならすぐに馴染めそうですね。まずは園内を案内しましょう」


やはり国が変わると建物も少し雰囲気が違うわね。ギレッセンの方が実用的というのかしら。華美な装飾を控えていて落ち着いている。


「あぁ、あそこにいますよ」

「え?」

「ハルト君!お待ちかねの人が来ましたよ!」


ハルト?そんな人知らない……
先生が声を掛けた方を見る。


「リーゼ!本当にリーゼだ!!」


ジーク様が嬉しそうに駆けて来る。
まるで、魔法に掛かる前のような笑顔だ。
私の大好きだった、


「……ジーク様」

「リーゼ、会いたかった!」


会いたかった。そうね、ずっと会いたかったあなたがここにいる。


「うん、私もに会いたかった」


会ったらどうしようって思ってた。恐怖が、憎しみが溢れたらどうしようって。
でも、溢れてきたのはようやく会えた喜びと涙だった。


「リーゼ、泣かないで」


そう言って優しく涙を拭ってくれる。懐かしい香りがするわ。


「おい、ハルト大丈夫か?吐き気はどうだ?」


先生が慌てて声を掛けてきた。やだ、先生の前でこんなこと!


「ごめんなさい、ジーク様。体調が悪いのですか?気が付かなくて申し訳ありません」

「まさか!今は最高の気分だよ。先生、リーゼと話をさせてもらってもいいですか?」

「あぁ、本当に大丈夫なんだな?」

「はい、リーゼなら大丈夫です」

「分かった。談話室を使っていいですよ。何か体調の変化があったらすぐに知らせてくださいね」


やっぱり体調が悪いのかしら。まさか魔法に副作用があるとかではないわよね?


「ジーク様、どこか体を壊されたのですか?」

「違うんだ。とりあえず座って話そう」


見た感じ顔色はいいけど。心配しつつも椅子に腰掛ける。


「船旅は大変だっただろう?陸路より景色はいいんだけど、慣れないと酔うよね」

「ええ、あんなに酔うとは思わなくて驚いたわ。でも、海がとても綺麗でした。ジーク様も船でしたの?」

「うん、それで思い切り酔った」


こんなふうに他愛無い話が出来るとは思わなかった。すべてが懐かしい。そうね、一年は長かったわ。


「こちらではハルト様と呼ばれているのですね。ギレッセン流の愛称なのですか?」


気になっていた呼び方のことを聞くと、なぜだか気不味そうな顔になってしまった。どうしたのかしら。まさか身分を偽っているわけではないわよね?


「……実はさっき先生が心配していた体調と関係があるんだ」


名前の呼び方と体調の関係って?


「女性にジークと呼ばれると気分が悪くなる。それに体に触れられると吐くんだ」




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