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出禁 第九話 中層進出 その2
しおりを挟む「はいこれ、『真実のメガネ』~」
オレはアーティファクトのリングから“真実のメガネ”を取り出して四人に貸してやる。
これは魔物の真実を見せるメガネだ。
昔、若い頃はオレも仲間もコレのお世話になっていたんだ。とっておいて良かった。
「これって何? 」
「アーティファクトか!? 」
赤姉が勢い込んで聞いてくる。いや、そこらで売ってる普通の魔道具だ。
「来た! いいからかけてッ」
メガネの効用を伝える前に魔物、【フレイムドッグ】が群れで襲ってきた。
「リズ姉がワントップ、アイ姉は右ウイング、ネー姉が左ウイング、赤姉は扇の要」
と、広げた扇のように四人を展開させる。ここは浅層よりも通路が広いので、一度に襲ってくる魔物の数も多くなる。一方でこちらも一度に戦える人数が多く出来る。
「赤姉はその後ろから弓で遠距離狙撃して」
扇の要の位置にケイロンボウ・コレクティオを構えた赤姉が陣取る。皆メガネをかけさせる。
「ね、ねえ、ワンちゃん火ついてないよ~」
「シッ」
リズ姉が位置について腰を落とした瞬間、赤姉が矢を放った。
しかし「速い、避けられた!」リーダー犬は、その攻撃を察知していたのか、簡単に避けてしまう。
「赤姉、続けて狙って。狙い続けるだけでリーダーの統率が取れなくなるッ」
「ん! 」
「矢は遠くに飛ばすと落ちていくから、少し上を狙って。どのくらい上を狙うかは距離と弓の勢いで変わるから何度も試して自分で覚えて」
赤姉は続けて二回矢を外すが、四射目で見事にリーダー犬の後ろ脚に矢を命中させ、それをネー姉が短剣で仕留めた。
今日初めて弓を握ったのに赤姉、凄い順応能力だな。ミストを込めると命中率が上がるとはいえ、すぐに出来ることじゃない。
そしてリーダー犬が統率を取れなくなったため、アイ姉とリズ姉達が簡単に他の【フレイムドッグ】を一掃した。
「これ凄いね~。メガネがないと、ワンちゃんが燃えてるように見えるけど~、メガネつけると燃えてないんだよね」
オレが貸したメガネは真実を見せるメガネだ。
燃えている様に見える【フレイムドッグ】の身体に触れると火傷するが、この“真実のメガネ”をつければ、【フレイムドッグ】はただの犬に見え、燃えていないと分かると、身体に触っても火傷しない。
幻覚を真実にするのがこの魔犬の魔法であり、その幻覚を見破るのがこのメガネの特徴だ。初めて中層に進出するパーティーは、だいたいがこの魔犬の幻覚に悩まされ、それを克服するためにこのメガネが利用される。なれればなくても問題ない。
ギルドや街の魔道具店で売っているそれほど高くない魔道具だ。
こんな準備もしていないとは、やはり中層はちょっと早かったかな。
だがこういう人たちがいるから、ガイドシェルパの存在価値があるというものだ。
「欲しい? ちょっと高いものだから売ることは出来ないけど、特別に安くレンタルしてもいいよ」
あまり高くないけど、ちょっと恩着せがましく、特別とか安くとか言ってみる。
「やっぱり金取るのかよ」
「でもこれ、あったほうが良くないか? 」
「ウン、絶対に必要。貸して~貸して~」
「じゃあアイリスの取り分から」
「やっぱり、あたしの金かよ」
まいどあり~。
チャリンとコインの鳴る幻聴がする。
こうしてオレ達は、七階層をまあまあ順調に攻略し、魔物沸きスポットへとたどり着いた。直径にして二十~三十マイトルほどのちょっとした広場になっている。
七階層にはいくつかの【スケルトン】の魔物沸きスポットが存在する。その中でもここは、下層へ行く最短ルートから外れているため、意外と知られていない穴場だ。
「【スケルトン】の素材は特別高くもないけど、それほど強くもないし数が多く出るのでそれなりに稼げるから、中層に進出したばかりのパーティにはおススメだよ」
詳しくは知らないが、ダンジョンにはいくつかダークミストの吹き出る穴があり、ダークミストが多いと魔物が発生するらしい。
この広場はそのダークミストの吹き出る穴があるため、魔物が発生するスポットとなっている。
理由は不明だが、ここは様々な種類の【スケルトン】が発生する。
こうした【スケルトン】の特異発生スポットで稼ぐ冒険者を総称して、誰が呼んだかボーンコレクターと呼ぶ。
“骨を集める者”ってことだな。
まあ新人冒険者から中級冒険者へ上がるための登竜門的な場所で、ここが物足りなくなる頃には新人は卒業、りっぱな冒険者だ。
広場への出入り口は少し狭くなっていて、そこから中をのぞくと、中にはワラワラと様々な【スケルトン】がひしめいていた。三十体? 頭? 匹? はいるかな。
赤姉が弓をオレに返して、大剣に持ち替える。早速突っ込もうとするのをオレはあわてて止める。
「ま、待った。いきなり行っちゃダメでしょ」
あの数に対して切り込むのは、中層初心者にはちょっと荷が重いだろう。
浄化の魔法が使えるなら、まずは一旦浄化の魔法で数を減らしてから残ったのを殲滅し、後は沸いてくるところを各個撃破するほうが安全だ。
「ネー姉、浄化の魔法って使える? 」
「も、もしかしてあの骸骨達に? ……私が!? 」
オレは無言で頷く。
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