あなたはダンジョン出禁ですからッ! と言われた最強冒険者 おこちゃまに戻ってシェルパから出直します

サカナタシト

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出禁 第九話 中層進出 その1

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「ヘックショイ、ヘックショイ」
「やだJJくん風邪? うつさないでよね」
「いや変だな、そんなんじゃないと思うけど」
 だれか地上でオレの噂話をしてるのかな。
 そんな事を考えながらオレは地下六階からさらに下、中層へ下りる階段を進む。
 浅層の広さは、それぞれの階が二百マイトル四方から五百マイトル四方の大きさの廃坑だ。最短距離を進めば、魔物が出てもそれほど時間はかからない。
 ミストだまりをぶち抜く前のメセタ鉱山は、地下深いところほど貴金属の採掘量が多かったため下層、深層ほど広くなっている。最下層は三十階と聞いているが本当のところは不明だ。公には出来ない事情でもっと奥深く掘られていたとか、謎の古代地下帝国と繋がっていたとか……、なんて都市伝説というか迷宮伝説がある。
 地下七階より下、中層からは一キロマイトル四方以上の大きさになり、魔物も強くなるので時間がかかる。土魔法を使って掘っているので坑道はけっこう頑丈で、まず崩れたりしないのでけっこう広く深く掘られていると聞いている。
「あれ~、JJくんってばもしかして誰かに噂されてる~? 地上に誰か恋人とかいる~? おませさん~♪」
 ネー姉ねーねえことネイサンがウサ耳をピンと立ててニヤケ面でオレに声をかけてくる。
「違う、“惚れられる”のはくしゃみ三回。くしゃみ二回は“怒られた”」
 赤姉(あかねえ)ことレオ族の獣人ケデシュトイルビネトがろくでもないことを言って来る。
「クッソ、ヘエッキシン」
 無理やりくしゃみをして三回にしてやった。
「誰か地上でぼくの魅力について話してるんだよ。もてる男はつらいなぁ」
「「……フ~ン」」
 アイ姉あいねえことアイリスと、リズ姉りずねえことエリザベスの反応が冷たい。
 もうこの話はやめよう。
 赤姉の弓の練習をしながら、ようやく昼過ぎに七階層の入り口にたどり着いた。
「ここからは魔物も強くなるけど、美味しい魔物沸きスポットもあるからお姉ちゃん達頑張ってね」
「ここまでもけっこう魔物多かったと思うけど」
「そうね、最近魔物が増えてるって話も聞くわね」
 リズ姉がちょっと不安そうな顔をして、アイ姉は周囲を見回しながら同意している。
「そうかな。まあ、ちょっと多かったかもしれないけど、誤差じゃない?」
 オレにとっては、普段とあまり変わらない気がするけどな
「そうなんだ~。ちなみに、ここからはどんな魔物が出るの~」
 ネー姉は相変わらずというかのん気だ。
「場所によって変わるけど、七階層なら全身炎の犬【フレイムドッグ】、サイの魔獣【サイノクラス】、場所によっては【アンデッド】かな。あと、魔物沸きスポットにはいろんな【スケルトン】が出るよ」
「ボーンコレクターってわけね」
 アイ姉の言うボーンコレクターとは【スケルトン】を中心に狩る冒険者の事を言う。
 まあ今日の目的地は、その【スケルトン】の魔物沸きスポットだからそうなるかな。
「その魔物沸きスポットにでる【スケルトン】って簡単に倒せるの?」
 アイ姉が興味深そうに聞いてくる。
 魔物沸きスポットはイコールお金が稼げる場所だ。お金が絡むとアイ姉は目の色が変わる。
 そこの【スケルトン】の魔物は、人型、犬型、ゴリラ型、馬方、恐竜型などなど様々なガイコツが出る。それらのドロップアイテムの骨は打撃武器にそのまま使えたり、盾などの補強素材、魔杖の素材ににすれば魔法の補助素材に使えるなど需要は多く、それなりにいい値段で売れたりする。
「武器の相性しだいかな。一番相性がいいのは打撃も出来る聖属性の魔杖、あとはメイスとか戦斧とかの打撃武器、赤姉の大剣がいいね。リズ姉の槍は突かないで振り回してダメージを与えればかなり有効だよ」
「JJくん私は~? 」
「そうだね~、ネー姉の杖は打撃には使えそうも無いから、普通に魔法で戦ったほうが良いね。浄化の魔法が使えれば一瞬だよ。ミスト量次第では相手を全滅出来るかもね」
「それじゃ私は? 」
「アイ姉は……アイ姉の細剣はどうかな……」
「どうかなってどうなの? 」
 言葉を濁すオレに、なおもせっつくアイ姉。
 みなまで言わせるな、この態度で接してほしい。
「え、えっと、一番相性悪いかも。なんせガイコツだから。突いてもすり抜けちゃう」
 私スッゴ~イ、と喜ぶネー姉の横でアイ姉はズンと暗く肩を落とす。
 オブラートに包んでも気づかない人のようなので、仕方なく正直に言ってあげる。
 細剣は突きがメインの武器で、斬撃には向かない。剣が細いので折れやすいからね。
「だ、大丈夫だよ。そこは【スケルトン】以外にも別のフィールドから普通の魔物が入ってくるから、アイ姉だって活躍のチャンスはいっぱいあるって」
「そ、そうよね」
 その一言で、ようやくアイ姉は立ち直る。
 子供に励まされる大人って……。
 そのとき妖精がオレに魔物の気配を伝えてくる。
「それよりいたよ。前方に【フレイムドッグ】十二頭の群れ。真ん中一番でかいのがリーダー犬」
「どこ!? 」
 赤姉がレオ族獣人特有の三角耳をピコピコと前後左右に動かすが、魔物は見つけられないようだ。
「んん、まだ分からないの? 二百マイトルくらい先」
「「「「分かるか! 」」」」
 あれ、怒られた。
「こいつ、ホントに分かってるのかな、それともふかしかな(ヒソッ)」
「今までけっこう索敵よかったけど~、それは偶然ってこと~?(ヒソヒソッ)」
 聞こえてるんですけど。
 まあ信頼を得るのにはもう少し実績が必要ってところかな。
「それより、どうやって戦う? 」
 赤姉が聞いてきた。
 みんな戦い方が分からないらしい。中層が初めてとは言ってたけど、事前情報もなしによくそれで中層に行きたいとか言ってたな。
「さっそく弓の出番だよ。まず赤姉の弓でリーダーを狙撃して。リーダーを倒したら、後は烏合の衆だから戦い方は浅層のウルフと変わらないよ」
 【フレイムドッグ】は中層の魔物の中ではそれほど強くない。だが、中層ならではの特徴がある。
「えっと~、でも【フレイムドッグ】って言うくらいだから、燃えてるんでしょ~、そんなの私達に倒せる~? 」
 そう、その思い込みが、この階層の最初の難関なのだ。
 【フレイムドッグ】は見た目燃えている。実際に触ってみると熱いし火傷する。
 だが本当にその魔物が燃えているかというと違う。燃えているように見せる幻覚だ。
 幻覚だが、燃えているものに触ったと思ったら、熱いし痛い、そして本当に火傷する。そういう魔法だ。
 火に包まれたと思ったら、本当に火に包まれた様に熱風を吸い込んで肺が火傷したあげく、息が出来ずに死ぬことになる。
 幻覚による思い込みが現実になる。中層の魔物はこのように一癖あるものが多い。これが中層の恐さだ。
 当然、対処方法はあるのだが、この四人は何も用意はしていないらしい。
 ホントに何も知らないんだな~。アレ貸してあげるか。
「はいこれ、『真実のメガネ』~」
 オレはアーティファクトのリングから“真実のメガネ”を取り出して四人に貸してやる。


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