16 / 103
出禁 第九話 中層進出 その2
しおりを挟む「はいこれ、『真実のメガネ』~」
オレはアーティファクトのリングから“真実のメガネ”を取り出して四人に貸してやる。
これは魔物の真実を見せるメガネだ。
昔、若い頃はオレも仲間もコレのお世話になっていたんだ。とっておいて良かった。
「これって何? 」
「アーティファクトか!? 」
赤姉が勢い込んで聞いてくる。いや、そこらで売ってる普通の魔道具だ。
「来た! いいからかけてッ」
メガネの効用を伝える前に魔物、【フレイムドッグ】が群れで襲ってきた。
「リズ姉がワントップ、アイ姉は右ウイング、ネー姉が左ウイング、赤姉は扇の要」
と、広げた扇のように四人を展開させる。ここは浅層よりも通路が広いので、一度に襲ってくる魔物の数も多くなる。一方でこちらも一度に戦える人数が多く出来る。
「赤姉はその後ろから弓で遠距離狙撃して」
扇の要の位置にケイロンボウ・コレクティオを構えた赤姉が陣取る。皆メガネをかけさせる。
「ね、ねえ、ワンちゃん火ついてないよ~」
「シッ」
リズ姉が位置について腰を落とした瞬間、赤姉が矢を放った。
しかし「速い、避けられた!」リーダー犬は、その攻撃を察知していたのか、簡単に避けてしまう。
「赤姉、続けて狙って。狙い続けるだけでリーダーの統率が取れなくなるッ」
「ん! 」
「矢は遠くに飛ばすと落ちていくから、少し上を狙って。どのくらい上を狙うかは距離と弓の勢いで変わるから何度も試して自分で覚えて」
赤姉は続けて二回矢を外すが、四射目で見事にリーダー犬の後ろ脚に矢を命中させ、それをネー姉が短剣で仕留めた。
今日初めて弓を握ったのに赤姉、凄い順応能力だな。ミストを込めると命中率が上がるとはいえ、すぐに出来ることじゃない。
そしてリーダー犬が統率を取れなくなったため、アイ姉とリズ姉達が簡単に他の【フレイムドッグ】を一掃した。
「これ凄いね~。メガネがないと、ワンちゃんが燃えてるように見えるけど~、メガネつけると燃えてないんだよね」
オレが貸したメガネは真実を見せるメガネだ。
燃えている様に見える【フレイムドッグ】の身体に触れると火傷するが、この“真実のメガネ”をつければ、【フレイムドッグ】はただの犬に見え、燃えていないと分かると、身体に触っても火傷しない。
幻覚を真実にするのがこの魔犬の魔法であり、その幻覚を見破るのがこのメガネの特徴だ。初めて中層に進出するパーティーは、だいたいがこの魔犬の幻覚に悩まされ、それを克服するためにこのメガネが利用される。なれればなくても問題ない。
ギルドや街の魔道具店で売っているそれほど高くない魔道具だ。
こんな準備もしていないとは、やはり中層はちょっと早かったかな。
だがこういう人たちがいるから、ガイドシェルパの存在価値があるというものだ。
「欲しい? ちょっと高いものだから売ることは出来ないけど、特別に安くレンタルしてもいいよ」
あまり高くないけど、ちょっと恩着せがましく、特別とか安くとか言ってみる。
「やっぱり金取るのかよ」
「でもこれ、あったほうが良くないか? 」
「ウン、絶対に必要。貸して~貸して~」
「じゃあアイリスの取り分から」
「やっぱり、あたしの金かよ」
まいどあり~。
チャリンとコインの鳴る幻聴がする。
こうしてオレ達は、七階層をまあまあ順調に攻略し、魔物沸きスポットへとたどり着いた。直径にして二十~三十マイトルほどのちょっとした広場になっている。
七階層にはいくつかの【スケルトン】の魔物沸きスポットが存在する。その中でもここは、下層へ行く最短ルートから外れているため、意外と知られていない穴場だ。
「【スケルトン】の素材は特別高くもないけど、それほど強くもないし数が多く出るのでそれなりに稼げるから、中層に進出したばかりのパーティにはおススメだよ」
詳しくは知らないが、ダンジョンにはいくつかダークミストの吹き出る穴があり、ダークミストが多いと魔物が発生するらしい。
この広場はそのダークミストの吹き出る穴があるため、魔物が発生するスポットとなっている。
理由は不明だが、ここは様々な種類の【スケルトン】が発生する。
こうした【スケルトン】の特異発生スポットで稼ぐ冒険者を総称して、誰が呼んだかボーンコレクターと呼ぶ。
“骨を集める者”ってことだな。
まあ新人冒険者から中級冒険者へ上がるための登竜門的な場所で、ここが物足りなくなる頃には新人は卒業、りっぱな冒険者だ。
広場への出入り口は少し狭くなっていて、そこから中をのぞくと、中にはワラワラと様々な【スケルトン】がひしめいていた。三十体? 頭? 匹? はいるかな。
赤姉が弓をオレに返して、大剣に持ち替える。早速突っ込もうとするのをオレはあわてて止める。
「ま、待った。いきなり行っちゃダメでしょ」
あの数に対して切り込むのは、中層初心者にはちょっと荷が重いだろう。
浄化の魔法が使えるなら、まずは一旦浄化の魔法で数を減らしてから残ったのを殲滅し、後は沸いてくるところを各個撃破するほうが安全だ。
「ネー姉、浄化の魔法って使える? 」
「も、もしかしてあの骸骨達に? ……私が!? 」
オレは無言で頷く。
60
あなたにおすすめの小説
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る
神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】
元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。
ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、
理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。
今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。
様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。
カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。
ハーレム要素多め。
※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。
よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz
他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。
たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。
物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz
今後とも応援よろしくお願い致します。
竜騎士の俺は勇者達によって無能者とされて王国から追放されました、俺にこんな事をしてきた勇者達はしっかりお返しをしてやります
しまうま弁当
ファンタジー
ホルキス王家に仕えていた竜騎士のジャンはある日大勇者クレシーと大賢者ラズバーによって追放を言い渡されたのだった。
納得できないジャンは必死に勇者クレシーに訴えたが、ジャンの意見は聞き入れられずにそのまま国外追放となってしまう。
ジャンは必ずクレシーとラズバーにこのお返しをすると誓ったのだった。
そしてジャンは国外にでるために国境の町カリーナに向かったのだが、国境の町カリーナが攻撃されてジャンも巻き込まれてしまったのだった。
竜騎士ジャンの無双活劇が今始まります。
「役立たず」と追放されたが、俺のスキルは【経験値委託】だ。解除した瞬間、勇者パーティーはレベル1に戻り、俺だけレベル9999になった
たまごころ
ファンタジー
「悪いがクビだ、アレン。お前のような戦闘スキルのない寄生虫は、魔王討伐の旅には連れていけない」
幼馴染の勇者と、恋人だった聖女からそう告げられ、俺は極寒の雪山に捨てられた。
だが、彼らは勘違いしている。
俺のスキルは、単なる【魔力譲渡】じゃない。
パーティメンバーが得た経験値を管理・分配し、底上げする【経験値委託(キックバック)】という神スキルだったのだ。
俺をパーティから外すということは、契約解除を意味する。
つまり――今まで彼らが俺のおかげで得ていた「かさ増しステータス」が消え、俺が預けていた膨大な「累積経験値」が全て俺に返還されるということだ。
「スキル解除。……さて、長年の利子も含めて、たっぷり返してもらおうか」
その瞬間、俺のレベルは15から9999へ。
一方、勇者たちはレベル70から初期レベルの1へと転落した。
これは、最強の力を取り戻した俺が、雪山の守り神である銀狼(美少女)や、封印されし魔神(美少女)を従えて無双し、新たな国を作る物語。
そして、レベル1に戻ってゴブリンにも勝てなくなった元勇者たちが、絶望のどん底へ落ちていく「ざまぁ」の記録である。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
復讐完遂者は吸収スキルを駆使して成り上がる 〜さあ、自分を裏切った初恋の相手へ復讐を始めよう〜
サイダーボウイ
ファンタジー
「気安く私の名前を呼ばないで! そうやってこれまでも私に付きまとって……ずっと鬱陶しかったのよ!」
孤児院出身のナードは、初恋の相手セシリアからそう吐き捨てられ、パーティーを追放されてしまう。
淡い恋心を粉々に打ち砕かれたナードは失意のどん底に。
だが、ナードには、病弱な妹ノエルの生活費を稼ぐために、冒険者を続けなければならないという理由があった。
1人決死の覚悟でダンジョンに挑むナード。
スライム相手に死にかけるも、その最中、ユニークスキル【アブソープション】が覚醒する。
それは、敵のLPを吸収できるという世界の掟すらも変えてしまうスキルだった。
それからナードは毎日ダンジョンへ入り、敵のLPを吸収し続けた。
増やしたLPを消費して、魔法やスキルを習得しつつ、ナードはどんどん強くなっていく。
一方その頃、セシリアのパーティーでは仲間割れが起こっていた。
冒険者ギルドでの評判も地に落ち、セシリアは徐々に追いつめられていくことに……。
これは、やがて勇者と呼ばれる青年が、チートスキルを駆使して最強へと成り上がり、自分を裏切った初恋の相手に復讐を果たすまでの物語である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる