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第1話 役立たずの聖女は、もういらない
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「エリーナ・フォレスター。貴様のような魔力のない『偽聖女』との婚約は、今この時をもって破棄させてもらう!」
王城の舞踏会場。
シャンデリアが煌めく大広間の中心で、王太子アレクセイ様のよく通る声が響き渡った。
音楽が止まり、ざわめきが広がる。
派手なドレスに身を包んだ貴族たちの視線が、一斉に私――エリーナに突き刺さる。
……ああ、やっぱり来たか。
私は内心で深くため息をついた。驚きはない。
むしろ「やっと終わるのか」という安堵の方が大きいくらいだ。
「アレクセイ様、それは……本気でございますか?」
一応、形式として悲しげな声を震わせてみる。
けれど、アレクセイ様は私の顔を見るのも汚らわしいといった様子で隣に侍らせていた小柄な少女の腰を抱き寄せた。
ピンクブロンドのふわふわした髪に潤んだ瞳。
異世界から私と一緒に召喚された、もう一人の聖女候補――ミリアだ。
「見ろ、このミリアの愛らしさを! 彼女こそが膨大な光魔法を持つ『真の聖女』だ。それに比べて貴様はどうだ? 聖女の力どころか、攻撃魔法の一つも使えない無能ではないか!」
「そうよぉ、エリーナちゃん。ごめんねぇ? アレクセイ様ったら、私のこと放っておけないみたいで」
ミリアが私のほうを見て、にんまりと口角を上げた。
その瞳には優越感がたっぷりと滲んでいる。
私たちがこの異世界に召喚されてから一年。
ミリアは派手な光魔法を使えたため、すぐに周囲からチヤホヤされた。
一方、私のステータス画面に表示されていたのは【生活魔法】という謎のスキルのみ。
傷を癒やすことも、魔物を倒すこともできない。できることといえば、お茶を適温にしたり、シミを一瞬で抜いたり、布団をふかふかにすることだけ。
国の上層部は早々に私を見限り、「予備の聖女」として飼い殺しにしていたのだ。
「国費を無駄にする穀潰しめ。貴様には『国外追放』を言い渡す! 二度と私の、そしてミリアの視界に入るな。即刻この国から出て行け!」
ビシッ、と出口を指差される。
周囲の貴族たちからも、冷ややかな嘲笑が聞こえてきた。
「あんな地味な女が聖女なわけがないわよね」
「王太子殿下もご苦労されたことだ」
普通なら、ここで泣き崩れるのが「悲劇のヒロイン」なのだろう。
でも。
(国外追放……? それってつまり、自由ってことよね?)
私の胸の内でパチンと何かが弾けた。
元々、日本の社畜OLだった私にとって、堅苦しい王城での生活は息が詰まるものだった。
役立たずと罵られながら、ミリアのわがままに付き合わされる日々。食事は冷え切った残り物。
そんな生活から解放されるのだ。
私は顔を上げ、背筋をピンと伸ばした。
「承知いたしました、アレクセイ殿下。これまでお世話になりました」
一切の未練を見せず、優雅にカーテシーを決める。
あまりに潔い私の態度に、アレクセイ様とミリアが「えっ?」と呆気にとられた顔をしたのが見えた。
「では、お言葉に甘えてすぐに出て行きますね。――さようなら、皆様。どうかお幸せに」
私は踵を返し、大広間の扉へと歩き出した。
後ろでアレクセイ様が何か喚いていたけれど、もう関係ない。
重い扉を押し開け、夜風を浴びた瞬間。
「やったあああああ!! 自由だあああ!!」
私は思わずガッツポーズをした。
夜空には満月。最高の旅立ち日和だ。
「もう誰にも気を使わなくていい! これからは私の【生活魔法】を使って、好きな場所で、美味しいものを食べて生きてやるんだから!」
そう、彼らは知らないのだ。
私の【生活魔法】が、実は極めることでとんでもない効果を発揮することを。
そして、私が密かに王城の厨房でスキルを磨き上げ、どんな食材でも絶品に変える腕前を持っていたことを。
目指すは北の辺境。
魔物が多い危険な土地らしいけれど、そこには珍しい食材がたくさんあると本で読んだことがある。
私の第二の人生は、ここから始まるのだ。
王城の舞踏会場。
シャンデリアが煌めく大広間の中心で、王太子アレクセイ様のよく通る声が響き渡った。
音楽が止まり、ざわめきが広がる。
派手なドレスに身を包んだ貴族たちの視線が、一斉に私――エリーナに突き刺さる。
……ああ、やっぱり来たか。
私は内心で深くため息をついた。驚きはない。
むしろ「やっと終わるのか」という安堵の方が大きいくらいだ。
「アレクセイ様、それは……本気でございますか?」
一応、形式として悲しげな声を震わせてみる。
けれど、アレクセイ様は私の顔を見るのも汚らわしいといった様子で隣に侍らせていた小柄な少女の腰を抱き寄せた。
ピンクブロンドのふわふわした髪に潤んだ瞳。
異世界から私と一緒に召喚された、もう一人の聖女候補――ミリアだ。
「見ろ、このミリアの愛らしさを! 彼女こそが膨大な光魔法を持つ『真の聖女』だ。それに比べて貴様はどうだ? 聖女の力どころか、攻撃魔法の一つも使えない無能ではないか!」
「そうよぉ、エリーナちゃん。ごめんねぇ? アレクセイ様ったら、私のこと放っておけないみたいで」
ミリアが私のほうを見て、にんまりと口角を上げた。
その瞳には優越感がたっぷりと滲んでいる。
私たちがこの異世界に召喚されてから一年。
ミリアは派手な光魔法を使えたため、すぐに周囲からチヤホヤされた。
一方、私のステータス画面に表示されていたのは【生活魔法】という謎のスキルのみ。
傷を癒やすことも、魔物を倒すこともできない。できることといえば、お茶を適温にしたり、シミを一瞬で抜いたり、布団をふかふかにすることだけ。
国の上層部は早々に私を見限り、「予備の聖女」として飼い殺しにしていたのだ。
「国費を無駄にする穀潰しめ。貴様には『国外追放』を言い渡す! 二度と私の、そしてミリアの視界に入るな。即刻この国から出て行け!」
ビシッ、と出口を指差される。
周囲の貴族たちからも、冷ややかな嘲笑が聞こえてきた。
「あんな地味な女が聖女なわけがないわよね」
「王太子殿下もご苦労されたことだ」
普通なら、ここで泣き崩れるのが「悲劇のヒロイン」なのだろう。
でも。
(国外追放……? それってつまり、自由ってことよね?)
私の胸の内でパチンと何かが弾けた。
元々、日本の社畜OLだった私にとって、堅苦しい王城での生活は息が詰まるものだった。
役立たずと罵られながら、ミリアのわがままに付き合わされる日々。食事は冷え切った残り物。
そんな生活から解放されるのだ。
私は顔を上げ、背筋をピンと伸ばした。
「承知いたしました、アレクセイ殿下。これまでお世話になりました」
一切の未練を見せず、優雅にカーテシーを決める。
あまりに潔い私の態度に、アレクセイ様とミリアが「えっ?」と呆気にとられた顔をしたのが見えた。
「では、お言葉に甘えてすぐに出て行きますね。――さようなら、皆様。どうかお幸せに」
私は踵を返し、大広間の扉へと歩き出した。
後ろでアレクセイ様が何か喚いていたけれど、もう関係ない。
重い扉を押し開け、夜風を浴びた瞬間。
「やったあああああ!! 自由だあああ!!」
私は思わずガッツポーズをした。
夜空には満月。最高の旅立ち日和だ。
「もう誰にも気を使わなくていい! これからは私の【生活魔法】を使って、好きな場所で、美味しいものを食べて生きてやるんだから!」
そう、彼らは知らないのだ。
私の【生活魔法】が、実は極めることでとんでもない効果を発揮することを。
そして、私が密かに王城の厨房でスキルを磨き上げ、どんな食材でも絶品に変える腕前を持っていたことを。
目指すは北の辺境。
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