27 / 237
第1章 宿敵の家の当主を妻に貰うまで
第27話 初めて、認められた
しおりを挟む
さっき三人で話していたテーブルからは少し離れた場所で、俺とシアは向かい合う。俺の右手には木刀が収まっていて、シアは生身の状態だ。
これは模擬戦で、俺の相手は北の戦争を終わらせた英雄。圧倒的な格上にどこまで通じるのか、楽しみだった。
しかし一方で、シアは苦笑いしている。
「あ、あのノヴァさん……戦えてうれしいのは分かりますけど、やりすぎないでくださいね」
「ご、ごめん……これからシアと戦えると思うと、昂っちゃって」
「私相手にそうなってくれるのはとても嬉しいんですけどね」
穏やかな雰囲気はそこまで。シアはまっすぐに俺を見つめてくる。ピリピリとした雰囲気を感じると同時に、俺達を覆うように半透明の蒼い半球が包んだ。どうやらオーロラちゃんがなんらかの魔法を使ってくれたらしい。
「じゃあ、お姉様とノヴァお兄様の模擬戦を始めます。お互いに使う魔法や技に関しては常識の範囲内で!」
オーロラちゃんの言葉を聞いて、木刀を持つ手に力が入る。
始まる。英雄との一戦が。
「はじめ!」
試合開始の合図の瞬間、視界を金が覆った。眩い程の光を識別すると同時に、木刀で防御の構えを取る。
飛来した光線は、俺の持つ木刀に吸い取られるように消えた。
地面を蹴ると同時、空間にいくつもの穴が空き、あらゆる方向から光線が飛んでくる。そのいくつかを木刀で叩き落とし、体を翻しながら前に進む中であることに気づいた。
光線の数はあまりにも多くて、木刀一本では対応できない。けど反応できなかった光線は俺の体に当たるよりも前に掻き消えていく。それがなぜか考えている暇すらなかった。
さらに一歩踏み込み、視界をぼやけさせる。中央にシアのみを捉え、これまでにない程の加速で彼女に肉薄。どこか半透明に見える彼女の首筋目がけて木刀を振るったとき。
――っ!?
右手に全力を込めて、振り払いを止めようとした。そうしなければ手遅れになると本能が察したからだ。俺の右腕は脳からの伝達を寸分の狂いなく受け止め、速度を0にした。
直立するシアと、彼女の首筋に木刀を添えることに成功した俺。勝敗は、明らかだった。
「……無理です。私では絶対にノヴァさんには勝てません」
何故かニッコリと微笑むシアに、ようやく俺の体から力が抜けた。
「ノヴァお兄様、凄い! お姉様の攻撃、最後の方全部斬ってたわよ!」
「あ、ああ……ありがとう……」
オーロラちゃんが俺達の元に駆けてきてくれるけど、なんとも言えない感じだった。消化不良というわけではないけど。
「ノヴァさん、今回の戦いで起こったことと、分かったことを説明しますね」
そんな俺のために、シアはこれまでの戦いを簡単に振り返ってくれるらしい。
「まず、ノヴァさんは私の魔法を受けるとそれを力に変えます。事実途中までは光線を防ぎきれていませんでしたが、最後には完全に対応していました。剣を振るう速度や反射神経、その他含め全てが段違いでした」
「そ、そうなのか……」
確かに途中から体が羽のように軽くなったし、光線がどこか遅く感じていた。サリアの街でシアの魔法を受けた時も絶好調だったけど、今回はそれ以上だった。
「加えて、ノヴァさんの剣の前ではあらゆる防御魔法が通用しません。一応防御の魔法を体に張っていたのですが、木刀が触れるだけで消えちゃいました」
その言葉を聞いて、先ほど木刀を振るおうとした首筋に目をやる。痣などは見当たらなかったので一安心だ。
「ノヴァさん」
「シア?」
「最初の段階でも、あそこまで私の魔法を防げる人はほとんどいません。剣技だけならフォルス家でも一二を争う、と聞いていましたが、それは本当ですね。見入ってしまうような、惚れ惚れするような剣舞でした」
「あ……」
優しい目で微笑むシアを見て、俺は心の奥底がジンッと熱くなるのを感じた。
「ずっと頑張ってきたんですね。ノヴァさんは」
「…………」
初めてだった。初めて自分の剣を認めてもらえた。家族に認めてもらえるという願いは結局叶わなかったけど、それでもいいと思えるくらいの人に認めてもらえた。
「うん、私も色んな人の剣技を見たことあるけど、お世辞抜きに良かったわ」
「オーロラちゃん……」
シアにオーロラちゃん。間違いなく俺よりも強くて、そして俺よりも才能に溢れている二人に認められているってことが、ただただ嬉しかった。
「ありがとう。ははっ……剣の訓練、やってきてよかったよ」
一日も休むことなくやってきて、本当に良かった。
「……それに、お姉様はノヴァお兄様を超強化できるってことでしょ? 正直、最後の方のノヴァお兄様、強すぎてびっくりしたわよ」
「そうですね。覇気よりも強いと思います」
「お姉様の力を借りて、ノヴァお兄様が最強になる。なんかロマンチックね!」
「そ、そうかな……」
確かに言われてみれば、最後の瞬間は何でもできるような気がしていた。いつもの俺とはまるで別人みたいな。
そうか……あれがシアとの力なんだ。シアと一緒の時だけ出せる、力。
そう考えるとなんだか恥ずかしくなって、シアから目線を外してしまう。オーロラちゃんの言うロマンチックっていう言葉もまさにその通りで、顔の熱さが引きそうにない。
「ご、ごめん……ちょっと、トイレ行ってくるね!」
「あ、場所は――」
「さっき案内されたから分かるよ!」
そう言って俺は逃げるように中庭を後にした。口元が緩んでいるのが、自分でも分かっていたから。
これは模擬戦で、俺の相手は北の戦争を終わらせた英雄。圧倒的な格上にどこまで通じるのか、楽しみだった。
しかし一方で、シアは苦笑いしている。
「あ、あのノヴァさん……戦えてうれしいのは分かりますけど、やりすぎないでくださいね」
「ご、ごめん……これからシアと戦えると思うと、昂っちゃって」
「私相手にそうなってくれるのはとても嬉しいんですけどね」
穏やかな雰囲気はそこまで。シアはまっすぐに俺を見つめてくる。ピリピリとした雰囲気を感じると同時に、俺達を覆うように半透明の蒼い半球が包んだ。どうやらオーロラちゃんがなんらかの魔法を使ってくれたらしい。
「じゃあ、お姉様とノヴァお兄様の模擬戦を始めます。お互いに使う魔法や技に関しては常識の範囲内で!」
オーロラちゃんの言葉を聞いて、木刀を持つ手に力が入る。
始まる。英雄との一戦が。
「はじめ!」
試合開始の合図の瞬間、視界を金が覆った。眩い程の光を識別すると同時に、木刀で防御の構えを取る。
飛来した光線は、俺の持つ木刀に吸い取られるように消えた。
地面を蹴ると同時、空間にいくつもの穴が空き、あらゆる方向から光線が飛んでくる。そのいくつかを木刀で叩き落とし、体を翻しながら前に進む中であることに気づいた。
光線の数はあまりにも多くて、木刀一本では対応できない。けど反応できなかった光線は俺の体に当たるよりも前に掻き消えていく。それがなぜか考えている暇すらなかった。
さらに一歩踏み込み、視界をぼやけさせる。中央にシアのみを捉え、これまでにない程の加速で彼女に肉薄。どこか半透明に見える彼女の首筋目がけて木刀を振るったとき。
――っ!?
右手に全力を込めて、振り払いを止めようとした。そうしなければ手遅れになると本能が察したからだ。俺の右腕は脳からの伝達を寸分の狂いなく受け止め、速度を0にした。
直立するシアと、彼女の首筋に木刀を添えることに成功した俺。勝敗は、明らかだった。
「……無理です。私では絶対にノヴァさんには勝てません」
何故かニッコリと微笑むシアに、ようやく俺の体から力が抜けた。
「ノヴァお兄様、凄い! お姉様の攻撃、最後の方全部斬ってたわよ!」
「あ、ああ……ありがとう……」
オーロラちゃんが俺達の元に駆けてきてくれるけど、なんとも言えない感じだった。消化不良というわけではないけど。
「ノヴァさん、今回の戦いで起こったことと、分かったことを説明しますね」
そんな俺のために、シアはこれまでの戦いを簡単に振り返ってくれるらしい。
「まず、ノヴァさんは私の魔法を受けるとそれを力に変えます。事実途中までは光線を防ぎきれていませんでしたが、最後には完全に対応していました。剣を振るう速度や反射神経、その他含め全てが段違いでした」
「そ、そうなのか……」
確かに途中から体が羽のように軽くなったし、光線がどこか遅く感じていた。サリアの街でシアの魔法を受けた時も絶好調だったけど、今回はそれ以上だった。
「加えて、ノヴァさんの剣の前ではあらゆる防御魔法が通用しません。一応防御の魔法を体に張っていたのですが、木刀が触れるだけで消えちゃいました」
その言葉を聞いて、先ほど木刀を振るおうとした首筋に目をやる。痣などは見当たらなかったので一安心だ。
「ノヴァさん」
「シア?」
「最初の段階でも、あそこまで私の魔法を防げる人はほとんどいません。剣技だけならフォルス家でも一二を争う、と聞いていましたが、それは本当ですね。見入ってしまうような、惚れ惚れするような剣舞でした」
「あ……」
優しい目で微笑むシアを見て、俺は心の奥底がジンッと熱くなるのを感じた。
「ずっと頑張ってきたんですね。ノヴァさんは」
「…………」
初めてだった。初めて自分の剣を認めてもらえた。家族に認めてもらえるという願いは結局叶わなかったけど、それでもいいと思えるくらいの人に認めてもらえた。
「うん、私も色んな人の剣技を見たことあるけど、お世辞抜きに良かったわ」
「オーロラちゃん……」
シアにオーロラちゃん。間違いなく俺よりも強くて、そして俺よりも才能に溢れている二人に認められているってことが、ただただ嬉しかった。
「ありがとう。ははっ……剣の訓練、やってきてよかったよ」
一日も休むことなくやってきて、本当に良かった。
「……それに、お姉様はノヴァお兄様を超強化できるってことでしょ? 正直、最後の方のノヴァお兄様、強すぎてびっくりしたわよ」
「そうですね。覇気よりも強いと思います」
「お姉様の力を借りて、ノヴァお兄様が最強になる。なんかロマンチックね!」
「そ、そうかな……」
確かに言われてみれば、最後の瞬間は何でもできるような気がしていた。いつもの俺とはまるで別人みたいな。
そうか……あれがシアとの力なんだ。シアと一緒の時だけ出せる、力。
そう考えるとなんだか恥ずかしくなって、シアから目線を外してしまう。オーロラちゃんの言うロマンチックっていう言葉もまさにその通りで、顔の熱さが引きそうにない。
「ご、ごめん……ちょっと、トイレ行ってくるね!」
「あ、場所は――」
「さっき案内されたから分かるよ!」
そう言って俺は逃げるように中庭を後にした。口元が緩んでいるのが、自分でも分かっていたから。
101
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語
石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。
本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。
『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。
「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。
カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。
大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
私の手からこぼれ落ちるもの
アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。
優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。
でもそれは偽りだった。
お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。
お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。
心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。
私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。
こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら…
❈ 作者独自の世界観です。
❈ 作者独自の設定です。
❈ ざまぁはありません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
婚約者が他の女性に興味がある様なので旅に出たら彼が豹変しました
Karamimi
恋愛
9歳の時お互いの両親が仲良しという理由から、幼馴染で同じ年の侯爵令息、オスカーと婚約した伯爵令嬢のアメリア。容姿端麗、強くて優しいオスカーが大好きなアメリアは、この婚約を心から喜んだ。
順風満帆に見えた2人だったが、婚約から5年後、貴族学院に入学してから状況は少しずつ変化する。元々容姿端麗、騎士団でも一目置かれ勉学にも優れたオスカーを他の令嬢たちが放っておく訳もなく、毎日たくさんの令嬢に囲まれるオスカー。
特に最近は、侯爵令嬢のミアと一緒に居る事も多くなった。自分より身分が高く美しいミアと幸せそうに微笑むオスカーの姿を見たアメリアは、ある決意をする。
そんなアメリアに対し、オスカーは…
とても残念なヒーローと、行動派だが周りに流されやすいヒロインのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる