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第2章 宿敵の家の当主を妻に貰ってから
第57話 波紋は見えないところで広がり始める
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「邪魔するぜ」
部屋に入れば、ローエンは奥で仕事をしていた。周りには誰もいなくて好都合だ。
「ゼロード様? 何か御用でしょうか?」
「おいおい聞いたぜローエン。お前、あの出来損ないの一言で小さなメイドの仕事量を減らすようにメイドどもに言ったみてえじゃねえか」
「……その件に関しては、申し訳ございません」
立ち上がり、頭を下げるローエン。俺はにやりと笑った。
「よくねえなぁローエン。そんなことをしたら、その小さなメイドのためにならねえだろ? 沢山仕事して、その分沢山成長する。それが大事じゃねえか?」
「……は? で、ですがあの子にしては仕事量が多すぎたのです。それは私から見ても間違いな――」
「ローエン」
ごちゃごちゃうるせえローエンの言葉を遮る。お前ごときが俺に意見すんのか? そんなの、許されるわけねえだろ。
「なあローエン、それじゃあの小さなメイドは成長しねえよな?」
「…………」
「しねえよなぁ?」
「…………」
一切返事をしないで、俺をじっと見るローエン。いつもなら不快に感じるところだが、今はこの状況に免じて許してやる。
「なぁに、別にお前も加われって言ってるわけじゃない。ただこれから起こる状況を黙殺しろって言ってるんだ」
「……ゼロード様は一つ間違えておいでです」
「おぉ? なんだよ?」
「私はトラヴィス様の執事であり、ゼロード様の執事ではありません」
「はっ」
あまりにも可笑しくて、笑いが止められねえ。いいねぇ、ローエンなら「そう言う」と思ってたぜ?
「ダメだぜローエン、父上にも母上にもこのことは秘密だ。伝えちゃいけねえ」
「……お断りし――」
「もし伝えたら」
ローエンの顔を覗き込むようにして嗤う。
「俺が当主になったときにお前がどういう立場になるのか、よく考えろよ?」
「……そのようなことで私が退くとでも?」
「お前だけじゃないぜぇ? あのクソガキだってどうなるか分からねえよなぁ? この屋敷にいようがいなかろうが、俺はやるぜ?」
「…………」
手を伸ばしてローエンの肩に手を置く。懇切丁寧に、こいつが俺の要求を護らなかった場合にどうなるのかを、じっくりと教えてやる。
「よく考えてみろよ。たかだかメイド一人のために父上や母上が動くか? まあ、ひょっとしたら母上は動くかもなぁ。でもよぉ、俺が当主になったときにこの家の頂点に立つのは俺だ。その頃はきっと父上も母上もそんなことは覚えてねえし、覚えてたとして俺にメイド一人のことなんざぐだぐだ言うわけがねえ。けどな、俺は結構記憶力は良いんだぜ? しっかり覚えているだろうさ。お前の事も、あの小さなクソガキのこともなぁ。なあローエン、目も耳も塞げ。何もするな。いいか?
なにも、するな」
「……あまりにも……あまりにもやりすぎだと感じた場合は……私とて我慢は出来ません」
この状況でも果敢に言い返してくるのは、流石は父上の補佐を長年務めただけはあるな。けどなローエン、お前の言葉が、拳が怒りで震えていることは気づいているぜ?
「あぁ、いいぜぇ? ただよく考えろよ? 俺の考えるやりすぎとお前の考えるやりすぎが同じかどうかは分かんねえからなぁ」
「…………」
ローエンは何も言わなかったが、きつく唇を噛みしめた表情を見れただけで十分だ。
これで仕上げは終わった。
「じゃあなローエン。また今度会おうぜ。ちゃんと、守れよ?」
言い捨ててローエンの部屋を後にする。
さあクソガキ、地獄の再開だぜ? せいぜい頑張れよ。
自室に戻るための廊下を歩ているところで、気づいた。
あぁ、さっきまではイライラしていたけど……今はそうでもねえな。
部屋に入れば、ローエンは奥で仕事をしていた。周りには誰もいなくて好都合だ。
「ゼロード様? 何か御用でしょうか?」
「おいおい聞いたぜローエン。お前、あの出来損ないの一言で小さなメイドの仕事量を減らすようにメイドどもに言ったみてえじゃねえか」
「……その件に関しては、申し訳ございません」
立ち上がり、頭を下げるローエン。俺はにやりと笑った。
「よくねえなぁローエン。そんなことをしたら、その小さなメイドのためにならねえだろ? 沢山仕事して、その分沢山成長する。それが大事じゃねえか?」
「……は? で、ですがあの子にしては仕事量が多すぎたのです。それは私から見ても間違いな――」
「ローエン」
ごちゃごちゃうるせえローエンの言葉を遮る。お前ごときが俺に意見すんのか? そんなの、許されるわけねえだろ。
「なあローエン、それじゃあの小さなメイドは成長しねえよな?」
「…………」
「しねえよなぁ?」
「…………」
一切返事をしないで、俺をじっと見るローエン。いつもなら不快に感じるところだが、今はこの状況に免じて許してやる。
「なぁに、別にお前も加われって言ってるわけじゃない。ただこれから起こる状況を黙殺しろって言ってるんだ」
「……ゼロード様は一つ間違えておいでです」
「おぉ? なんだよ?」
「私はトラヴィス様の執事であり、ゼロード様の執事ではありません」
「はっ」
あまりにも可笑しくて、笑いが止められねえ。いいねぇ、ローエンなら「そう言う」と思ってたぜ?
「ダメだぜローエン、父上にも母上にもこのことは秘密だ。伝えちゃいけねえ」
「……お断りし――」
「もし伝えたら」
ローエンの顔を覗き込むようにして嗤う。
「俺が当主になったときにお前がどういう立場になるのか、よく考えろよ?」
「……そのようなことで私が退くとでも?」
「お前だけじゃないぜぇ? あのクソガキだってどうなるか分からねえよなぁ? この屋敷にいようがいなかろうが、俺はやるぜ?」
「…………」
手を伸ばしてローエンの肩に手を置く。懇切丁寧に、こいつが俺の要求を護らなかった場合にどうなるのかを、じっくりと教えてやる。
「よく考えてみろよ。たかだかメイド一人のために父上や母上が動くか? まあ、ひょっとしたら母上は動くかもなぁ。でもよぉ、俺が当主になったときにこの家の頂点に立つのは俺だ。その頃はきっと父上も母上もそんなことは覚えてねえし、覚えてたとして俺にメイド一人のことなんざぐだぐだ言うわけがねえ。けどな、俺は結構記憶力は良いんだぜ? しっかり覚えているだろうさ。お前の事も、あの小さなクソガキのこともなぁ。なあローエン、目も耳も塞げ。何もするな。いいか?
なにも、するな」
「……あまりにも……あまりにもやりすぎだと感じた場合は……私とて我慢は出来ません」
この状況でも果敢に言い返してくるのは、流石は父上の補佐を長年務めただけはあるな。けどなローエン、お前の言葉が、拳が怒りで震えていることは気づいているぜ?
「あぁ、いいぜぇ? ただよく考えろよ? 俺の考えるやりすぎとお前の考えるやりすぎが同じかどうかは分かんねえからなぁ」
「…………」
ローエンは何も言わなかったが、きつく唇を噛みしめた表情を見れただけで十分だ。
これで仕上げは終わった。
「じゃあなローエン。また今度会おうぜ。ちゃんと、守れよ?」
言い捨ててローエンの部屋を後にする。
さあクソガキ、地獄の再開だぜ? せいぜい頑張れよ。
自室に戻るための廊下を歩ているところで、気づいた。
あぁ、さっきまではイライラしていたけど……今はそうでもねえな。
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