宿敵の家の当主を妻に貰いました~妻は可憐で儚くて優しくて賢くて可愛くて最高です~

紗沙

文字の大きさ
59 / 237
第2章 宿敵の家の当主を妻に貰ってから

第59話 ユティさんとの語らい

しおりを挟む
「シアについてはよく分かりました。今度はオーロラちゃんについて聞いてもいいですか?」

「はい、構いませんよ。ノヴァさんはオーラの魔法についてどう思っていますか?」

 ユティさんにオーロラちゃんの魔法について聞かれて、俺は考える。実際に彼女の魔法を何度も見たわけじゃないけど、周りからの評価を聞いていると14歳っていう年齢が信じられないくらいには優秀なんだと思う。
 本人はシアと比べて落胆していたけど、シアは別というか、なんというか。

「あくまでもイメージですが、天才ですかね? オーロラちゃんの魔法を見たことはそんなにないんですけど、それでもゲートの魔法は素人目から見てシアのとほとんど変わらなく見えました」

「そうですね。アークゲート家の中でも、オーラはそのように言われることも多いです。もちろん今の状態で彼女と力比べをしたら、オーラに勝てるであろう人物はいます。私もそうですし、分家の者や従妹たちも何人か当てはまるでしょう。
 ですがオーラが成長して私と同じくらいの年齢になったとき、彼女はきっと私を越えます。少なくとも14歳の時の私は、今のオーラのようなことは出来ませんでしたから」

「……なんていうか、ユティさんから聞くとやっぱりオーロラちゃんはそうなんだなって思いますね。シアに聞いても同じような答えが返ってくるんですけど、ちょっと違うというか」

 もちろんシアが嘘を言っていないことは分かっているけど、冷静に状況を分析できて言葉で伝えられる、頭のいいユティさんに説明されるとより納得するというか。いや別にシアの事をそう思ってないわけじゃないけど……ちょっと言葉にするのが難しい。

「ああ……きっと自覚しているかの違いだと思います。私も当主様もオーラを天才だと思っていますが、私は数年でオーラに抜かされると思っている一方で、オーラが当主様を抜かすことはないでしょうから」

「……なるほど」

 つまりは価値観の違いというか、見ている視点の違いってことか。そう考えるとシアって本当に凄いっていうか、こういうふうに考える場合はやっぱり例外として捉えないといけないんだろうなぁ。

「ちなみに、もうすでに防御魔法に関してはオーラの方が私よりも上ですからね」

「オーロラちゃんは防御魔法が得意なんですか?」

「はい、より強固な魔法を思い描けるらしいですよ。これに関しては彼女の先生であるグレイスや当主様も高く評価していますね」

「自分や皆を護れる防御魔法が得意……何というか、オーロラちゃんらしいですね」

あの底抜けの明るさは皆を明るくしてくれる。もちろんオーロラちゃんが抱えているのも重く暗いものだけど、彼女はそれに負けないくらい輝いている子だ。
同じような事を思っているのか、ユティさんも少しだけ口角を上げていた。

「もしも当主様がいなければ、アークゲート家の当主になっていたのはオーラだったでしょうね。あ……ですがそうすると……」

「?」

「……いえ、何でもないです。まだ拙いところもありますが、これから先が楽しみな天才児がオーラってことですね」

「はい、ありがとうございました」

 少しだけ頭を下げて、ふと思う。ここまでシアとオーロラちゃんの話を聞いてきて、比較対象として出してくれたけど、ユティさん自身については聞いたことがなかったなと。

「あの……ユティさんはどうなんですか? 得意な魔法とかあるんですか?

「私ですか?」

 少し驚いた様子のユティさんに頷いた。

「はい、シアやオーロラちゃんについては聞きましたけど、ユティさんについても聞きたいなって」

「……自分の事を自分で話すのは少し恥ずかしいですね」

 少し困ったような雰囲気を出すけど、ユティさんはゆっくりと話し始めてくれた。

「得意というか性格の問題ではあるのですが、魔法を用いて前線で戦うよりも誰かの支援をする方が合っています。お母様の補佐をしていた先生にこっそり色々なことを教えていただきましたし、以前アークゲート家は北のコールレイク帝国との戦争に参加していたのですが、その時も軍を率いるより後方支援の方が良いなと思っていたくらいなので」

「シアの前は、ユティさんが戦場に? それも指揮官だったんですか?」

「いえ、私が任されていたのは本当に小さな部隊です。本隊はお母様が率いていましたから。ただ個人的に誰かを支援するのが性に合っているだけで、戦うことが出来ないわけではないんです。流石に当主様と比べると足元にも及びませんが、こう見えても結構強いんですよ、私」

 確かにユティさんは大人しい雰囲気で、深窓の令嬢といった感じがする。けど彼女もまたアークゲート家の、しかもシアのお姉さんだ。

「はい、そうだろうとは思っていました」

「……こほんっ」

 自分で言っていて少し恥ずかしくなったのか、顔をほんのり赤くしたユティさん。けどその珍しい光景はすぐになくなってしまった。

「……ただまあ、その後ちょっとごたごたがありまして、戦争を当主様が一瞬で終わらせたので戦うようなことはなくなりましたが」

「……そんなに一瞬だったんですか?」

「本当にすぐでしたよ。見ていただけですが、当主様が敵からの攻撃を無視して敵陣の真ん中に一人で歩いていって、それで協定にこぎつけたんですから」

「……なんていうか、凄すぎますね」

 戦場に身を置いたことはないけど、南のナインロッド国との小競り合いの場にいたことはある。あれよりも険悪な戦場でそんな芸当が出来るなんて。

「敵からは化け物だと呼ばれていましたけど、出来ればこんなことを聞いてもノヴァさんには当主様を普通の人間として――心配無用でしたね。ありがとうございます」

「……え?」

「すごい顔してましたよ。本当、あの子に対する悪意には敏感で絶対に許さない、姉としては嬉しい限りですけどね」

「そ、そうでしたか、すみません」

 ちょっと心がざわついたけど、どうやら表情に出ていたみたいだ。気を付けないといけないな。

「少し話は逸れましたが、その後は今のノヴァさんが知っている通りです。私は当主様の補佐をしているという感じですね。当主様の要望で調べ物をしたりが主な仕事です……たまにやりすぎてしまうことがありますが」

「……ははは」

 苦笑いで返すと、ユティさんはじっと目線をこちらへと向けてきた。

「さて、私達の事は色々と話したので、今度はノヴァさんの事も教えて欲しいですね」

「俺の事、ですか? 何でも話しますよ」

 といっても、話せる程の内容はなかったりするんだけど。

「ではお聞きしたかったのですが、覇気を考慮しない場合、ノヴァさんはどれほど強いのですか?」

「……あぁ」

 やっぱり姉妹だなと思って、俺は少しだけ笑ってしまった。

「?」

「すみません、オーロラちゃんにも全く同じ質問をされたので。……うーん、難しいところではあります。父上やフォルス家の指南役の方には敵わないと思いますが、二人の兄上とは互角にやり合えるかもしれません。運が良ければ勝てるかと」

 少し控えめに返事をしたけど、内心ではゼロードの兄上とカイラスの兄上には勝てると信じている。そのくらい剣とは真面目に向き合ってきたつもりだ。
 けどユティさんは別の部分が気になったようだった。

「フォルス家の指南役……確か、ギリアムという方でしたか?」

「よくご存じですね……はい、ギリアム・ストアドさんです。といっても、俺は指導を受けたことはほとんどないんですけどね。出来損ないの俺には教師なんか必要ないって父上に言われてしまって」

「……本当、見る目がないですね」

 不満そうにそう言ってくれるユティさんだけど、あの家は覇気が全て。長年フォルス家に仕えてくれていて、父上すら指導したギリアムさんの時間を俺なんかに割くのは無駄だって考えたのはよく分かることだ。

「そのギリアムさんも覇気を使えるんですか?」

「はい、遠い親戚らしくて、覇気が扱えるそうです。フォルス家や分家以外では珍しい家系だそうで」

「ノヴァさんも私みたいに従妹がいるんですか?」

「はい……といっても会ったことはありませんが……でも兄上達ほど剣の腕は立たないと聞いたことがありますね」

 確かライラックの叔父上には数人の男児がいた筈だ。俺は会ったことがないけど、ゼロードの兄上やカイラスの兄上は会ったことがあるだろう。

「もしも覇気というものが選定の根底になければ、ノヴァさんの評価は高かったでしょうね……」

「そう……かもしれませんね」

「ところで、フォルス家の当主はまだ次期当主を指名していませんよね?」

 ちょっと返答に詰まったのに気づいてくれたのか、ユティさんはすぐに話題を変えてくれた。
 こういったちょっとした心遣いが嬉しかったし、やっぱりシアのお姉さんだなって思った。

「うーん、でもゼロードの兄上で決まりだと思います。ライラックの……いえ、分家の人も支持していますし、父上もそのつもりだと思うので」

 正直、あの乱暴者のゼロードの兄上が当主になって大丈夫かと思わなくもないけど。でもきっと、ゼロードの兄上だって当主になれば流石にしっかりとやるだろう。

「彼が当主になるなら、なってしばらくは苦労しそうですね。彼がではなく、フォルス家が、ですが」

 ユティさんの言葉に苦笑いで返す。きっと大変なのは父上だと思うけど。

 その後、互いの事を話し終えた俺達は他愛ない話をした。ナタさんとの共同での開発のように大事な話もあれば、屋敷でのターニャの笑い話のようにくだらない事まで。
 時間が来るまで、楽しく過ごした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】うっかり異世界召喚されましたが騎士様が過保護すぎます!

雨宮羽那
恋愛
 いきなり神子様と呼ばれるようになってしまった女子高生×過保護気味な騎士のラブストーリー。 ◇◇◇◇  私、立花葵(たちばなあおい)は普通の高校二年生。  元気よく始業式に向かっていたはずなのに、うっかり神様とぶつかってしまったらしく、異世界へ飛ばされてしまいました!  気がつくと神殿にいた私を『神子様』と呼んで出迎えてくれたのは、爽やかなイケメン騎士様!?  元の世界に戻れるまで騎士様が守ってくれることになったけど……。この騎士様、過保護すぎます!  だけどこの騎士様、何やら秘密があるようで――。 ◇◇◇◇ ※過去に同名タイトルで途中まで連載していましたが、連載再開にあたり設定に大幅変更があったため、加筆どころか書き直してます。 ※アルファポリス先行公開。 ※表紙はAIにより作成したものです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

親友に恋人を奪われた俺は、姉の様に思っていた親友の父親の後妻を貰う事にしました。傷ついた二人の恋愛物語

石のやっさん
恋愛
同世代の輪から浮いていた和也は、村の権力者の息子正一より、とうとう、その輪のなから外されてしまった。幼馴染もかっての婚約者芽瑠も全員正一の物ので、そこに居場所が無いと悟った和也はそれを受け入れる事にした。 本来なら絶望的な状況の筈だが……和也の顔は笑っていた。 『勇者からの追放物』を書く時にに集めた資料を基に異世界でなくどこかの日本にありそうな架空な場所での物語を書いてみました。 「25周年アニバーサリーカップ」出展にあたり 主人公の年齢を25歳 ヒロインの年齢を30歳にしました。 カクヨムでカクヨムコン10に応募して中間突破した作品を加筆修正した作品です。 大きく物語は変わりませんが、所々、加筆修正が入ります。

【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……

buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。 みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……

私の手からこぼれ落ちるもの

アズやっこ
恋愛
5歳の時、お父様が亡くなった。 優しくて私やお母様を愛してくれたお父様。私達は仲の良い家族だった。 でもそれは偽りだった。 お父様の書斎にあった手記を見た時、お父様の優しさも愛も、それはただの罪滅ぼしだった。 お父様が亡くなり侯爵家は叔父様に奪われた。侯爵家を追い出されたお母様は心を病んだ。 心を病んだお母様を助けたのは私ではなかった。 私の手からこぼれていくもの、そして最後は私もこぼれていく。 こぼれた私を救ってくれる人はいるのかしら… ❈ 作者独自の世界観です。 ❈ 作者独自の設定です。 ❈ ざまぁはありません。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

異世界に落ちて、溺愛されました。

恋愛
満月の月明かりの中、自宅への帰り道に、穴に落ちた私。 落ちた先は異世界。そこで、私を番と話す人に溺愛されました。

処理中です...