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第3章 宿敵の家と宿敵でなくなってから
第136話 王都での邂逅
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「今日はありがとうございました」
お店の出口でベルさんと別れの挨拶を交わす。彼女はこの後、護衛と一緒に王都に借りている家へと戻るらしい。
フードを深く被った状態で軽く頭を下げたベルさんは穏やかな笑みを浮かべてくれた。
「レティシア様のみならず、ノヴァさんという後ろ盾も得られたのは大きいですね」
「いや後ろ盾なんて、そんな」
「とても頼りになる後ろ盾だと思っていますよ」
自分がそんな力になれるとは思えないし、シアと同列とまでは流石に行かないだろうと思ったんだけど、ベルさんはそうは思っていないようで、引き続き笑顔だった。
「では、私どもはこれで」
「うん、気を付けてね」
小さく手を振り、ベルさんは護衛の二人を引き連れて王都の街並みへと消えていく。
それを見送った後に空を見上げた。時間としてはまだ昼過ぎ。今からアークゲートの屋敷の方に顔を出そうかな、なんてことを思った。
「……どうせならお土産を買っていくか」
そう思ったところで、ふとあることに気づいた。前回オーロラちゃんに王都を案内してもらったときにユティさんへのお土産は買ったから、ユティさんにはそれを買っていけばいい。
シアに関しても話を聞いたことがあるから、彼女へのお土産も買うことが出来る。
でもオーロラちゃんは何がお土産だと嬉しいんだろう? 聞いたことはなかった。
「ノーザンプションなら最初に会ったあのお菓子屋だって分かるんだけど、ここは王都だしな……聞いてみるか」
ポケットから桃色の便箋を取り出して、ペンを走らせる。立った状態で書くからあまり綺麗な字にはならなかったけど、読み取れはするだろう。
『王都に居てこれからアークゲートの屋敷に行こうと思うから、どうせならお土産を買っていこうと思うんだけど、オーロラちゃんはどこのお店の何がいいとかある?
あ、ユティさんとシアには何を買っていくかもう決めているよ』
書き込み終わってからアークゲート家の家紋を押して少し待つ。するとすぐに気付いてくれたようで、オーロラちゃんからの返信があった。
お店の名前と、お菓子の名前が記載されているものの、いつもの文字と違って走り書きのように思えた。
もう少し待っていると、オーロラちゃんの方からその理由を明らかにしてくれる。
『ありがとうノヴァお兄様。今ちょっと外出していて屋敷にはいないの。
ただユティお姉様はいるから、そっちに渡しておいてくれると助かるわ。
久しぶりに食べるから、楽しみにしているわね』
どうやらオーロラちゃんも俺と同じで立ったまま便箋に書き込んだらしい。走り書きのように見えたのはそのためだろう。
書き込みが終わった便箋をポケットに仕舞い、歩き始める。
ここからだとユティさんのお店、シアのお店、そしてオーロラちゃんのお店の順に近い。
三人の喜ぶ表情を思い浮かべながら、俺は軽い足取りで王都の大通りを進んだ。
×××
「うん、これで全部だな」
大きな袋に入れた、三つのお菓子の箱。それを上から見下ろして頷く。これでお土産は用意できたし、あとはアークゲートの屋敷に向かうだけだ。
オーロラちゃんは不在だそうだけどユティさんは居るみたいだし、シアもいつも通りアークゲートの屋敷で仕事をしているはずだ。
時間的にもちょうどいいくらいだと思って、ゲートの機器が使えそうな裏路地を探す。流石に大通りで機器を使うわけにはいかないからだ。
辺りを見回せば、路地裏へと続く場所を見つけた。あそこの先で良いだろう、そう思ってそこに進む。
近づいてみれば人の気配はないし、ちょうど良い。足を踏み入れようとしたとき。
ふと何かを感じ取って右側を見た。通りの向こうに、闇夜に溶けるような黒髪が風に靡くのを見た。小さい後ろ姿を見て俺は動きを止めて、呟く。
「……シア?」
服装は見慣れないものだけど、後ろ姿がシアのように見えたために通りの方を進む。人を避けながら足早に近づくものの、通りの角を曲がってしまったシア。
少しだけ歩幅を大きくして、同じように角を曲がる。シアは歩いていたために、俺と彼女の距離は縮まっていた。
「シア? どうして王都に?」
背後から声をかけると、シアはピクリと一瞬だけ固まって振り返る。
「……え?」
「?」
振り返った女性を見て、俺は声を上げてしまっていた。後ろ姿からシアだと思っていたのは、シアではなかった。
背格好や髪の色は似ている――いやほぼ同じだけど、顔つきが違う。いや、今声をかけた彼女も彼女で整った顔立ちをしているけど、どちらかと言うと美人という部類に入るだろう。
「シア……もしかするとあなたが旦那様……ノヴァ様でしょうか?」
「え? あ、はい……」
女性の言葉に返事をする。彼女の灰色の瞳と姿に、シアやユティさん、オーロラちゃんが被った。そして気づく、ひょっとしたらシスティさんのようなシアの血縁者かもしれない。従妹か?
そんなことを思っていると、女性は穏やかに微笑んで頭を下げる。さらに静かな声で自分の名前を告げてくれた。
「初めまして、私はノクターン・アークゲート。関係的にはレティシアの叔母に当たります。親しい人はノークと呼ぶこともあります」
「あなたが……ノクターンさん……?」
話だけは聞いていたシアのもう一人の叔母に、俺は邂逅した。
お店の出口でベルさんと別れの挨拶を交わす。彼女はこの後、護衛と一緒に王都に借りている家へと戻るらしい。
フードを深く被った状態で軽く頭を下げたベルさんは穏やかな笑みを浮かべてくれた。
「レティシア様のみならず、ノヴァさんという後ろ盾も得られたのは大きいですね」
「いや後ろ盾なんて、そんな」
「とても頼りになる後ろ盾だと思っていますよ」
自分がそんな力になれるとは思えないし、シアと同列とまでは流石に行かないだろうと思ったんだけど、ベルさんはそうは思っていないようで、引き続き笑顔だった。
「では、私どもはこれで」
「うん、気を付けてね」
小さく手を振り、ベルさんは護衛の二人を引き連れて王都の街並みへと消えていく。
それを見送った後に空を見上げた。時間としてはまだ昼過ぎ。今からアークゲートの屋敷の方に顔を出そうかな、なんてことを思った。
「……どうせならお土産を買っていくか」
そう思ったところで、ふとあることに気づいた。前回オーロラちゃんに王都を案内してもらったときにユティさんへのお土産は買ったから、ユティさんにはそれを買っていけばいい。
シアに関しても話を聞いたことがあるから、彼女へのお土産も買うことが出来る。
でもオーロラちゃんは何がお土産だと嬉しいんだろう? 聞いたことはなかった。
「ノーザンプションなら最初に会ったあのお菓子屋だって分かるんだけど、ここは王都だしな……聞いてみるか」
ポケットから桃色の便箋を取り出して、ペンを走らせる。立った状態で書くからあまり綺麗な字にはならなかったけど、読み取れはするだろう。
『王都に居てこれからアークゲートの屋敷に行こうと思うから、どうせならお土産を買っていこうと思うんだけど、オーロラちゃんはどこのお店の何がいいとかある?
あ、ユティさんとシアには何を買っていくかもう決めているよ』
書き込み終わってからアークゲート家の家紋を押して少し待つ。するとすぐに気付いてくれたようで、オーロラちゃんからの返信があった。
お店の名前と、お菓子の名前が記載されているものの、いつもの文字と違って走り書きのように思えた。
もう少し待っていると、オーロラちゃんの方からその理由を明らかにしてくれる。
『ありがとうノヴァお兄様。今ちょっと外出していて屋敷にはいないの。
ただユティお姉様はいるから、そっちに渡しておいてくれると助かるわ。
久しぶりに食べるから、楽しみにしているわね』
どうやらオーロラちゃんも俺と同じで立ったまま便箋に書き込んだらしい。走り書きのように見えたのはそのためだろう。
書き込みが終わった便箋をポケットに仕舞い、歩き始める。
ここからだとユティさんのお店、シアのお店、そしてオーロラちゃんのお店の順に近い。
三人の喜ぶ表情を思い浮かべながら、俺は軽い足取りで王都の大通りを進んだ。
×××
「うん、これで全部だな」
大きな袋に入れた、三つのお菓子の箱。それを上から見下ろして頷く。これでお土産は用意できたし、あとはアークゲートの屋敷に向かうだけだ。
オーロラちゃんは不在だそうだけどユティさんは居るみたいだし、シアもいつも通りアークゲートの屋敷で仕事をしているはずだ。
時間的にもちょうどいいくらいだと思って、ゲートの機器が使えそうな裏路地を探す。流石に大通りで機器を使うわけにはいかないからだ。
辺りを見回せば、路地裏へと続く場所を見つけた。あそこの先で良いだろう、そう思ってそこに進む。
近づいてみれば人の気配はないし、ちょうど良い。足を踏み入れようとしたとき。
ふと何かを感じ取って右側を見た。通りの向こうに、闇夜に溶けるような黒髪が風に靡くのを見た。小さい後ろ姿を見て俺は動きを止めて、呟く。
「……シア?」
服装は見慣れないものだけど、後ろ姿がシアのように見えたために通りの方を進む。人を避けながら足早に近づくものの、通りの角を曲がってしまったシア。
少しだけ歩幅を大きくして、同じように角を曲がる。シアは歩いていたために、俺と彼女の距離は縮まっていた。
「シア? どうして王都に?」
背後から声をかけると、シアはピクリと一瞬だけ固まって振り返る。
「……え?」
「?」
振り返った女性を見て、俺は声を上げてしまっていた。後ろ姿からシアだと思っていたのは、シアではなかった。
背格好や髪の色は似ている――いやほぼ同じだけど、顔つきが違う。いや、今声をかけた彼女も彼女で整った顔立ちをしているけど、どちらかと言うと美人という部類に入るだろう。
「シア……もしかするとあなたが旦那様……ノヴァ様でしょうか?」
「え? あ、はい……」
女性の言葉に返事をする。彼女の灰色の瞳と姿に、シアやユティさん、オーロラちゃんが被った。そして気づく、ひょっとしたらシスティさんのようなシアの血縁者かもしれない。従妹か?
そんなことを思っていると、女性は穏やかに微笑んで頭を下げる。さらに静かな声で自分の名前を告げてくれた。
「初めまして、私はノクターン・アークゲート。関係的にはレティシアの叔母に当たります。親しい人はノークと呼ぶこともあります」
「あなたが……ノクターンさん……?」
話だけは聞いていたシアのもう一人の叔母に、俺は邂逅した。
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